首尾の松(しゅびのまつ)は、隅田川西岸の、東京都台東区浅草蔵前に生育している松。
概要
柳橋の舟宿から猪牙舟に乗って大川(隅田川)へ出て、山谷(吉原遊廓方面)へ向かったところにある、川面に枝をつき出した松をこう呼んだ。
御蔵の四番堀と五番堀の間にあり、江戸の名所を記した案内記『江戸名所花暦』では
とある。名前の由来は、
- 吉原帰りの客がこの松の生えている場所で舟を泊め、今宵の遊女との首尾を語り合ったことから。
- これから吉原へ向かう人々がここで首尾を祈った。または、「首尾を果たす松」としゃれて験を担ぎ、ここから舟で吉原へ向かった。
- 松のある辺りに屋根舟を舫いつけ、何か用事をこしらえた船頭が陸に上がっている間に、客が一緒に乗った芸者などと「しっぽり首尾をする」ことから。
- 舟で吉原から帰る際に、この松のある場所で明け方を迎えれば首尾もよいことから。
など、諸説ある。
- 「十をばかり水をこぢると松に成り」 - 柳橋の舟宿から猪牙舟に乗って大川(隅田川)へ出ると、左岸の御蔵に首尾の松が見えたことを詠んだ歌。「こぢる」は艪を押すこと。
- 「名木は水の中から枝を出し」 - 松が河面へ枝を張り出していたことを詠んだ歌。
といった川柳も作られた。
松の変遷
初代の松は、安永年間に風で倒れ、2代目は安政年間に折れた。
3代目の松は明治の末に枯れ、4代目は戦災で失われた。
蔵前1丁目3番地の蔵前橋畔南側にある松は7代目(1999年3月時点)で、江戸時代に生えていた場所よりも約100メートル川上にある。
歌川広重の浮世絵
歌川広重の浮世絵『名所江戸百景』にも描かれている。この絵の右に描かれているのが平戸新田藩の松浦氏の屋敷で、その先にある椎の木の森は「嬉の森(うれしのもり)」と呼ばれる。
脚注
参考文献
- エディキューブ編 『彩色 大江戸事典』双葉社 ISBN 978-4-575-30375-9
- 江戸人文研究会編 『江戸の用語解説』廣済堂出版 ISBN 978-4-413-04380-9
- 正井泰夫監修 『江戸の地図帳』青春出版社 ISBN 978-4-413-04380-9
- 三谷一馬著 『江戸吉原図聚』 中公文庫 ISBN 4-12-201882-X
- 台東区文化財調査報告書 第24集『蔵前に札差あり - 江戸の金貨からたどる文化史』
関連項目
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