『命の別名/糸』(いのちのべつめい / いと)は、日本のシンガーソングライター、中島みゆきの35枚目の両A面シングルである。1998年2月4日に発売された。
解説
本作の2曲は、いずれもTBS系テレビドラマ『聖者の行進』の主題歌に使用された。当初はカップリング曲扱いだった「糸」が使用され、シングルがリリースされた5話以降は新曲の「命の別名」に差し替えられた。ドラマの終盤では「糸」が再び主題歌となっている。このため、発売当初カップリング曲扱いだった「糸(TV Mix)」は収録されていない。
シングルCDとしてのセールスは前作に及ばなかったものの、2曲目「糸」は1992年のアルバム『EAST ASIA』から20年以上経過した、2010年代に大きな支持を受けるに至り(後述)、2017年にはJASRAC賞(著作権使用料分配額)の金賞(=年間1位)を獲得した。このため、「糸」もA面に昇格、両A面シングル扱いとなっている。
8cmCDシングル自体既にメジャー音楽メディアで無くなったため、店頭に置いてない所もあるが、このシングルは2023年現在でも販売中で、CDショップでも注文は出来る店はある。またポニーキャニオンリリース情報でも、メーカー通販サイトでは販売されていないものの、各通販サイトをリンクして商品紹介がされている。
2022年11月28日に、ヤマハミュージックコミュニケーションズからデジタル・ダウンロード配信された。しかし、ジャケット画像はシングルジャケットを使用されているが、シングルコレクションアルバム『Singles 2000』の音源のため、「命の別名」はこのシングルCDよりも収録時間が短くなっている。
楽曲
命の別名
- 「命の別名」は、中島みゆきがドラマ『聖者の行進』のために書き下ろした新曲であり、日本のスタジオミュージシャンとともに国内でレコーディングが行われた。
- 1980年代前半の中島のアルバム『生きていてもいいですか』や『miss M.』などで編曲・プロデュースなどに携わり、1980年代後半以降はソングライティング・チームを組んで工藤静香に多数の楽曲を提供したベース奏者の後藤次利とは、このシングルが2018年時点で最後の共演となっている。また、1983年のアルバム『予感』の後半のアレンジを手がけた井上堯之が、15年ぶりに中島の作品に参加してギターを弾いている。
- シングルの翌月に発表された25枚目のオリジナル・アルバム『わたしの子供になりなさい』には、アメリカのロサンゼルスで録音された別のヴァージョンが収められている。リメイク版はオリジナルとはアレンジが大きく異なり、より低いキーで攻撃的に歌いあげる中島のヴォーカルと、マイケル・トンプソンによるディストーションのかかったエレクトリックギターを前面にフィーチャーしたハードロック調のアプローチで表現されている。映画やドラマのテーマ曲をまとめたベスト盤『大銀幕』が同年秋に発売された際には、実際にドラマでは流されなかったアルバム・ヴァージョンが収められた。シングル・ヴァージョンは、1994年から2000年までに発表されたシングル7枚のA面・B面曲を集めた2002年リリースのコンピレーション・アルバム『Singles 2000』で初めてアルバムの一部として入手可能になったが、当初発売されたオリジナルよりフェードアウトが30秒ほど早い短縮版である。
糸
- 「糸」は元来、1992年に天理教の4代真柱である中山善司の結婚を祝して作られた楽曲で、中島はほどなくしてこのパワー・バラードをレコーディングし、通算20作目となるスタジオ録音作『EAST ASIA』を締めくくるナンバーとして同年の10月に公式に発表した。このアルバムに収録された曲のベーシック・トラックは全般的に日本国内で録音されたものだったが、のちにコーラスとストリングスがハリウッドのキャピトル・スタジオで追加されている。この曲のコーラスも海外で録音されており、『EAST ASIA』の表題曲の弦編曲を担当したデヴィッド・キャンベルの配偶者だったレイヴァン・ケーン、1970年代からセッション・シンガーとして活動しているザ・ウォーターズによって歌われている。
- この曲は2004年に、Mr.Childrenのヴォーカル櫻井和寿とプロデューサーの小林武史が結成したチャリティ・プロジェクト、Bank Bandのカヴァー・アルバム『沿志奏逢』で取り上げられた。彼らのカヴァーはシングルとしてリリースされなかったものの、翌年に住友生命のコマーシャルに使用され、これを機に楽曲そのものの存在が広く認知されるようになった。さらに世間一般に知られるようになったのは2013年頃、バラエティー番組でBGMやカバーされたりすることがきっかけである。
- 2022年現在、のべ40組以上のアーティストによって相次いでカヴァー・ヴァージョンが商品化され、中島によるオリジナルも複数のテレビドラマやコマーシャル、イベントなどでたびたび使用されている。
- 日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料分配額(国内作品)ランキングで2015年度の年間3位、2016年度の年間1位、2017年度の年間4位、2018年度の年間3位、2019年度の年間3位を獲得した。2016年JASRAC賞銅賞を、2017年金賞、2019年銅賞、2020年銅賞をそれぞれ受賞した。
- 2017年にはJOYSOUNDの年間カラオケランキングで2位となった。
- 2018年2月度日本レコード協会リリースにおいて、(着うたフル+ネット配信)でのミリオンに認定された。2002年4月のフル配信開始から15年10か月かかっており、既往の記録であった中島美嘉「雪の華」(13年0か月)を抜き、史上もっとも長い年月をかけてフル配信ミリオンに到達した楽曲となった。
- 2020年、本楽曲に着想を得た映画『糸』(監督:瀬々敬久、脚本:林民夫、主演:菅田将暉・小松菜奈)が公開された。中島の楽曲が映画のモチーフになるのはこれが初めて。
収録曲
タイアップ、メディア使用
命の別名
- 『聖者の行進』主題歌(第5 – 9話) (1998年)
糸
- 『聖者の行進』主題歌 (第1 – 4、10 – 11話) (1998年)
- 『ありがとう!チャンピイ』のテーマ曲(2008年9月13日にフジテレビで放送されたスペシャルドラマ)
- 「七十七銀行」CMソング(2009年)
- 『ミエルヒ』挿入歌(北海道テレビ、2009年、歌唱:渡辺いっけい)
- 「関西電力」CMソング(2010年)
- 「サントリー・ボスレインボーマウンテン 高見盛ver.」CMソング(2013年)
- 「トヨタホーム」(2016年)
- 『陸王』劇中歌(2017年)
- 『糸』の主題歌
- 「BOSS」平成最後の特別CM 宇宙人ジョーンズ、タモリ、大杉漣さん……豪華キャストで4月30日に一夜限り放送CMソング
収録作品
アルバム
映像作品
カバー
クレジット
参加ミュージシャン
それぞれシングル「命の別名/糸」の裏ジャケット、アルバム『EAST ASIA』『わたしの子供になりなさい』の歌詞カードより
- 命の別名 (シングル・ヴァージョン)
- Drums:大久保敦夫, 青山純
- E.Bass:後藤次利
- E.Guitar:井上堯之
- A.Piano:中西康晴
- Programming:浦田恵司
- 糸
- Drums:山木秀夫
- E.Bass:富倉安生
- A.Piano, Keyboards:倉田信雄
- Programmer:瀬尾一三, 浦田恵司
- BackGround Vocals:Raven Kane, Julia Waters, Maxine Waters, 中島みゆき
- 命の別名 (アルバム・ヴァージョン)
- Drums:Gregg Bissonette
- E.Bass:Neil Stubenhaus
- E.Guitar:Michael Thompson
- E.Guitar Solo:Micheal Thompson
- A.Piano, B-3 Organ, Keyboards:Jon Gilutin
- Back up Vocals:Julia Waters, Maxine Waters, Oren Waters
製作
- 命の別名 (シングル・ヴァージョン)
- Recorded, Engineer:Brian Scheuble
- 糸
- Mixed:Tad 後藤
- Mixed (補助役):市川高信, Ray Blair
- Mixed (補助役):Joe Chiccarelli at Larrabee North(Los AngIes)
- Mastered:Tom Baker
- 命の別名 (アルバム・ヴァージョン)
- Recorded, Engineer:David Thoener
- Engineer (補助役):Michael Scotella
脚注
外部リンク
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