第85回東京箱根間往復大学駅伝競走(だい85かいとうきょうはこねかんおうふくだいがくえきでんきょうそう)は、2009年1月2日から1月3日まで開催された第85回目の東京箱根間往復大学駅伝競走である。
総距離217.9km
第84回大会で関東学連選抜が総合4位となったため、第85回大会ではシード校が1校減った代わりに予選通過枠が1校増えている。また第85回大会は記念大会であるため、例年よりも出場枠数を3校増やした23校で争われた。
上武大学が初出場。青山学院大学が33年ぶりの箱根路復活を果たした。法政大学はわずか6秒及ばず連続出場を逃した。
2009年の箱根駅伝は85回目を記念して史上最多の23チームで行なわれた。戦前の予想では前回大会優勝・出雲駅伝2位・全日本大学駅伝優勝の駒大と、前回大会2位・全日本大学駅伝2位で、オリンピアンランナーの竹澤健介を擁する早大が優勝争いの軸になると目されていた。
往路は、1区・3区・4区で区間賞を獲得した早大と、2区のメクボ・ジョブ・モグスの区間新記録で勢いに乗る山梨学大が争う展開となった。ところが、5区で東洋大のスーパールーキー・柏原竜二が8人を抜き、早大との4分58秒差をひっくり返し、東洋大が出場67回目で悲願の往路初優勝を果たした。個人記録では2区から5区で計5人が区間新記録を樹立した。
復路は、6区で2位に後退した東洋大が8区で早大を再逆転し首位に立つとそのまま逃げ切り、初の総合優勝を果たした。併せて復路優勝も記録した東洋大は初のタイトルを完全優勝で飾った。初出場から76年、67回目の挑戦での東洋大初優勝は箱根駅伝史上最も遅い優勝となった。
なお東洋大の往路戸塚中継所通過14位、平塚中継所と小田原中継所通過9位は総合優勝校史上最低順位(平塚中継所ではタイ記録)であり、未だ破られていない記録でもある。
金栗四三杯(MVP)は5区で区間新記録を達成した東洋大の柏原竜二が受賞した。
中盤まではスローペースとなり23人が一団で進んでいたが、15kmの給水ポイントを境に帝京大・西村知修や国士大・小島康彰が集団を揺さぶり、六郷橋の手前で9校が抜け出した。19.3kmで早大のルーキー・矢澤曜がスパートをかけ、2位の神奈川大に4秒差をつけトップでタスキリレー。早大の1区区間賞は第73回大会以来13年ぶり。
連覇を目指す駒大は、末松裕一が六郷橋の上りで10位集団からも脱落し57秒差の19位と波乱のスタート。20チームが1分以内にタスキリレーする団子状態となったが、集団から最初に脱落した日大は1分46秒差の22位と出遅れ、順大は2年連続1区を務めた関戸雅輝が前回大会に続いて今回も脚に痙攣を起こし失速。2分16秒差の最後尾でタスキを渡した。
4位でタスキを受けた山梨学大のメクボ・ジョブ・モグスが2kmで先頭に立つと独走。2位争いは5.2kmで中央学大・木原真佐人が早大・明大をかわして単独2位に浮上する。
3位争いは早大と明大に日体大・中大・東農大が追いつき5人の集団となると、東農大・外丸和輝が集団を引っ張り、一度は引き離された木原との差を詰めていく。権太坂の上りで集団から抜け出した外丸と明大・石川卓哉が15kmで木原を捉えるが、木原も粘って17kmから再び2人を引き離す。
後方では22位でタスキを受けた日大のギタウ・ダニエルが猛追。横浜駅前では15位、権太坂では8位まで浮上すると、17.8kmで明大・早大の5位争いを捉えごぼう抜き最多記録を更新。さらに18.6kmで外丸と中大・徳地悠一をかわし19人抜きで3位に浮上する。ダニエルは18.9kmで木原をも捉えたが、外丸と木原も懸命に食らいつく。
先頭のモグスは10km以降ややペースが落ちるも15km以降は立て直し、2位に2分40秒の差をつけトップでタスキリレー。自身の持つ区間記録を19秒更新する1時間06分04秒の区間新記録を樹立した。
2位争いは20.3kmで外丸が後退。ダニエルと木原は戸塚中継所直前まで激しく競り合ったが、最後はダニエルがスパートし2位でタスキリレー。史上最多となる20人のごぼう抜きを記録した。3秒差で続いた木原は日本人トップの区間3位・8人抜きの健闘を見せた。
東農大・外丸は10人抜きで4位、中大・徳地は8人抜きで5位に浮上。1区で出遅れた駒大は宇賀地強が11人を抜き8位に、亜大・池淵智紀も7人抜きで13位に浮上した。一方で神奈川大が2位から17位、城西大が10位から22位に転落した。
前年の北京オリンピック5000m・10000mに出場した早大・竹澤健介と、4年連続の区間賞・区間新記録が期待される東海大・佐藤悠基の対決が注目された。
トップと3分26秒差の6位でタスキを受けた竹澤は、3.5kmで2位に浮上するとトップの山梨学大を猛追。佐藤の持っていた区間記録を32秒上回る1時間01分40秒の区間新記録で、自身3年連続の区間賞を獲得。山梨学大との差を3分10秒も縮め、16秒差でタスキリレー。
トップと5分30秒差の18位でタスキを受けた佐藤は、13人抜きで順位を5位まで押し上げる好走を見せたが、自身の持つ区間記録にはわずか6秒及ばず、4年連続の区間賞・区間新記録はならなかった。
そのほか、東洋大・大西智也が14位から9位、青学大・米澤類が23位から18位とそれぞれ5人抜きの快走。一方で駒大は渡邉潤が10km以降全くペースが上がらず、区間21位の苦しい走りで17位に転落。亜大も13位から20位に後退している。
早大のルーキー・三田裕介が1.1kmでトップの山梨学大・後藤敬に追いつくと、10kmに渡って併走。10.1kmから後藤が苦しい表情で後退し、三田が単独先頭に立つ。三田はこれまでの区間記録を16秒上回る、55分04秒の区間新記録を樹立。山梨学大に48秒の差をつけトップでタスキリレー。早大の小田原中継所トップ通過は第74回大会以来11年ぶり。
3位以降は混戦模様となったが、明大・松本昂大が区間3位の走りで10位から3位に浮上。帝京大・馬場圭太は三田に8秒及ばなかったものの55分12秒の区間新記録を樹立し、12位から5位に浮上した。一方で日大が3位から10位、中大が6位から12位に後退。駒大は18位と苦戦が続く。
山梨学大・高瀬無量がトップの早大・三輪真之との差をひたひたと詰め、11.6kmで三輪に追いつく。しかし高瀬は宮ノ下の急坂を登った直後に酸欠の様な状態に陥り失速。再び三輪が単独先頭に立つ。
後方では、トップと4分58秒差の9位でタスキを受けた東洋大のルーキー・柏原竜二が区間記録を大幅に上回るペースで激走。12.8kmでここまで区間2位の走りを見せていた日体大・竹下正人をかわして3位に浮上すると、16.5kmで高瀬をかわし、山下りに入った19.2kmで遂に三輪を捉えトップに立つ。
三輪も粘って20.8kmで再び柏原に追いつくと山下りで激しく競り合ったが、山を下り終えた21.6kmで柏原がスパート。三輪はついていくことができず、東洋大が67回目の出場で初の往路優勝を飾った。東洋大は出場回数50回以上の大学で唯一優勝経験が無かったが、往路優勝で初のタイトルを獲得した。柏原は第83回大会で順大・今井正人がマークした区間記録を47秒も上回る、1時間17分18秒の区間新記録を樹立した。
早大は22秒差の2位で往路を終えた。竹下が区間3位の快走を見せた日体大が1分43秒差の3位に入った。中央学大は大学史上最高の4位。山梨学大は高瀬が区間22位に沈み、4分13秒差の5位に終わった。
シード権争いは大混戦となり、6位の国士大から18位の順大まで13チームが4分28秒の間に相次いでゴールテープを切った。駒大は星創太が15位まで順位を上げたが、トップと7分55秒差・10位帝京大とは2分02秒の差がついた。前回大会5区でゴールまで残り500m地点で途中棄権となった順大・小野裕幸は、区間2位の快走で23位から18位に浮上した。
初出場の上武大は20位、33年ぶり出場の青学大は22位で往路を終えた。東海大は2年連続の5区となる河野晴友が大平台の定点以降急失速。芦之湯の定点では歩くような状態となってしまい、山下りで立て直したものの7位から21位に急落した。史上最多の21チームが時差スタートとなり、復路一斉スタートとなったのは青学大と城西大の2校のみ。これは第76回大会と並び現行制度(第60回大会以降)では最も少ない校数である。
先頭争いは大激戦となった。2位でスタートした早大・加藤創大が山上りで22秒差を一気に詰め、3.2kmで東洋大・富永光を逆転する。しかし加藤が6kmで腹痛を起こしペースダウンしたこともあり、互いに追いついては抜き返す展開が続き、実に5度に渡って首位交代が行われた。最後は18.8kmで加藤がスパートし、富永に18秒の差つけてトップでタスキリレー。
逆転こそされたものの、「9区突入までは1分以内の遅れは許容範囲」と考えていた東洋大監督代行・佐藤尚としては御の字な結果となり、「下りで1分半の差を付ける」と考えていた早大監督・渡辺康幸とは対照的なレース展開となった。
後方では中央学大が3位に浮上。9位でスタートした大東大・佐藤匠が区間賞を獲得する快走で6位に浮上した。シード権争いでは国士大が6位から12位に転落、中大が11位から10位に浮上するも、5位山梨学大から13位東農大まで9チームが2分20秒の間にひしめく混戦が続く。
また、後にマラソン選手として頭角を現すことになる学習院大・川内優輝が関東学連選抜から出走し、区間3位の好走で13位から11位に浮上している。
先頭の早大・八木勇樹が序盤から積極的に飛ばし、二宮の定点では東洋大・飛坂篤恭との差を54秒まで広げる。しかし後半になると八木がペースダウン、イーブンペースを刻み続けた飛坂との差がどんどん縮まり、平塚中継所ではわずか12秒差となった。飛坂は八木を6秒抑え、区間賞を獲得した。
シード権争いは、11kmで中大・関東学連選抜・東農大・国士大・日大の5チームが9位集団を形成する大混戦。12.5kmで日大・関東学連選抜・中大の3校に絞られ、平塚中継所では9位に関東学連選抜、4秒差の10位に日大、さらに2秒差の11位で中大がタスキを繋ぐ。松蔭大初の箱根ランナーとなった関東学連選抜・梶原有高は区間5位の快走で11位から9位に浮上した。
前回大会優勝の駒大は6区・7区でも振るわず、平塚中継所では10位と4分22秒差の14位でタスキリレー。シード権獲得も危うい状況となった。
2位の東洋大・千葉優は、トップの早大・中島賢士との12秒差をじわりじわりと詰めると、7.7kmで中島に追いつき前に出る。その後は千葉の後ろにピタリと中島がつく状態で9kmに渡って併走が続いたが、16.5kmから千葉が中島を引き離し、東洋大が大学史上初めて復路・戸塚中継所をトップでタスキリレー。千葉は区間2位の好走で、早大に45秒の差をつけた。
3位争いは日体大と中央学大が激しく競っていたが、中盤以降は中央学大が急失速し、43年ぶりのシード権を狙う明大が4位に浮上した。
シード権争いは、東農大・園田稔が区間3位の快走を見せ12位から7位にジャンプアップ。一方で山梨学大は5位から12位まで転落した。しかし8位の中大から13位の学連選抜まで、48秒の間に6チームがひしめく混戦が続く。
駒大・高林祐介は順位こそ上げられなかったものの、千葉を15秒抑えて区間賞を獲得する快走。10位との差を2分36秒まで縮め、シード権獲得に望みを繋いだ。前回大会8区で大ブレーキとなった順大・木水良は区間12位と健闘し、18番手でタスキリレー。
往路は最下位だった城西大は復路で追い上げを見せ、8区の石田亮は藤沢の定点まで高林と14番手を争っていたが、17kmを過ぎて急失速。低血糖状態に陥り、両脚の痙攣を起こした石田は走り続けることができず、19.8kmで途中棄権となった。
2位の早大・朝日嗣也がハイペースで突っ込み、権太坂の定点では東洋大・大津翔吾に9秒差まで詰め寄る。しかし前半を抑えた大津がその後は差を広げ、鶴見中継所を大学史上初めてトップでタスキリレー。大津は区間2位の快走で優勝を大きく手繰り寄せた。朝日は中盤以降も粘って区間5位でまとめたが、トップとの差は1分26秒まで広がった。
4位争いは19.7kmで大東大・明大・中央学大の3校が集団となり、中央学大・堀宏和が抜け出して単独4位に浮上。その後方では12位でタスキを受けた山梨学大・中川剛が好走。国士大・帝京大・日大をかわすと、東農大と中大の7位争いにも追いつき、9位でタスキを繋ぐ。中川は大津を9秒抑え、区間賞を獲得した。
シード権争いは日大・笹谷拓磨が終始苦しい表情を見せながらも区間10位でまとめ、10位をキープ。1分17秒差の11位に国士大が続き、さらに3秒遅れて関東学連選抜がシードを追いかける展開となった。
駒大は池田宗司が区間3位の走りを見せて10位と1分59秒差の13位まで追い上げ、かろうじてシード権争いに生き残った。9位でタスキを受けた帝京大・前川剛己は区間22位と失速し、10位と3分34秒差の14位まで後退した。
8区で途中棄権・繰り上げスタートとなった城西大は、伊藤一行が参考記録ながら中川を38秒も上回る快走を見せた。伊藤が繰り上げスタートを回避したことにより、鶴見中継所では第82回大会以来3年ぶりに全チームがタスキを繋いだ。
トップの東洋大・高見諒、2位の早大・三戸格はそれぞれ安定したペースを刻む。三戸は高見との差をじわじわと詰め、20.1kmの馬場先門の定点では59秒差まで追い上げたが、高見は危なげない走りで逃げ切り、東洋大が67回目の出場で初の総合優勝を往路・復路完全優勝で飾った。2位早大との差はわずか41秒であった。
日体大はアンカーの永井大隆が区間賞の走りを見せ、3分51秒差の3位で2年ぶりのシード権獲得。中央学大と大東大による4位争いはラストスパートで大東大・木村茂樹が競り勝ち、大東大が前回大会の途中棄権・予選会10位通過から大躍進を果たし、6年ぶりのシード権を獲得した。中央学大は大学史上初の2年連続シードとなった。
シード権争いは最後まで大混戦であった。蒲田の定点までは東農大・中大・山梨学大が7位集団を形成し、30秒差で単独10位の日大、さらに1分20秒離れて国士大と関東学連選抜が追う展開で進んでいたが、13.5kmで日大が集団に追いつき、4人が縦一列の7位集団を形成する。しかし18kmを過ぎて、それまで向かい風のなかで常に集団を引っ張っていた東農大の主将・倉持貴充が後退。時を同じくして11位争いから関東学連選抜・麗澤大の佐野広明が抜け出し、50秒あった二人の差がどんどん縮まっていく。失速の止まらない倉持を佐野が21kmで逆転し10位に浮上。佐野はさらに22.3kmで中大も捉え9位に浮上した。
最終的には山梨学大が3つ順位を上げ総合6位。日大は総合7位で前回大会に引き続き今回も辛くもシード権を確保した。明大は18km過ぎに7位集団に吸収されたものの、総合8位で第42回大会以来43年ぶりのシード権獲得。関東学連選抜は佐野の区間2位の快走によって2年連続で総合10位以内に入ったため、第86回大会の予選会からの出場枠は1校増となった。中大は10位に滑り込み、25年連続のシード権を確保した。4位の大東大から10位の中大まで、わずか45秒の間に7チームがフィニッシュする大混戦であった。
往路6位の国士大はアンカーの羽島駿介が区間4位の走りで激しくシードを争ったものの、中大と34秒差の総合11位で第66回大会以来19年ぶりのシード権には惜しくも届かなかった。9区を終わって7位だった東農大はまさかの急失速で総合12位まで後退した。
前回大会優勝の駒大は10位と1分47秒差の総合13位に終わり、13年ぶりにシード権を逃した。駒大は史上3校目となる「前年優勝校のシード落ち」を喫したが、過去2例はいずれも途中棄権によるもので、完走した上でのシード落ちは初の事例である。
予選校からは日体大・大東大・明大がシード権を獲得。シード校では駒大・亜大・帝京大がシード権を失った。8区までシード権争いに加わっていた帝京大は9区・10区のブレーキで総合20位まで後退。前回5位の亜大は3区で失速して以降一度もシード権争いに絡むことなく総合16位に終わった。5区のブレーキが響いた東海大は総合18位、1区から流れに乗れなかった順大は総合19位と苦戦した。
この結果直近の優勝校である駒大(76,78-81,84回)・順大(75,77,83回)・亜大(82回)・神大(73,74回)がシード落ちする事態となった(1番直近の優勝校でシード入りは72回大会優勝の中大)。
初出場の上武大は21位、33年ぶり出場の青学大は22位に終わったが、ともにゴールまで一本のタスキを繋ぐことができた。ちなみに優勝した東洋大と完走中最下位の青学大とのタイム差は19分46秒であるが、これは第98回大会現在、優勝校と最下位校との最少タイム差である。
長らく続いた駒大・順大による【紫紺対決】時代の終焉、伏兵・東洋大が悲願の初優勝、史上最長ブランク(当時)の33年振り出場の青学大、43年振りシード権獲得の明大など話題に事欠かない大会となった。
総合優勝:東洋大学 11時間09分14秒(初優勝)
金栗四三杯(最優秀選手)
●は主将。名前の後ろの(数字)は学年。
第84回大会(2008年)までの記録
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