『宇宙兄弟』(うちゅうきょうだい)は、小山宙哉による日本の漫画。講談社の漫画雑誌『モーニング』にて2008年1号(2007年12月6日発売)から連載されている。第56回小学館漫画賞一般向け部門、第35回講談社漫画賞一般部門受賞作品。2012年には実写映画およびテレビアニメ、2014年にはアニメーション映画が制作された。
タイトルの通り、宇宙を題材にした漫画作品である。主人公である兄・南波六太および弟・日々人が、様々な問題に対して奮闘する様を描いている。
宝島社「このマンガがすごい!2009」オトコ編にて2位、マンガ大賞においても2009年度、2010年度の2年連続で2位を受賞し、第34回講談社漫画賞選考会でも次点に選出された。これを受け、作者や出版社自身がこれを自虐ネタとし『宇宙兄弟』の新刊販売時、コミックスの帯に『2位獲得回数第1位 いつも「お・し・い」けど、最高に「おもしろい」!!』と印字して出版したことがある。その後、2011年に小学館漫画賞および講談社漫画賞を受賞している。2023年1月時点で電子版を含めた累計部数は3100万部を突破している。
2012年には実写映画が公開された。監督は森義隆が務め、小栗旬が主演に起用された。また、テレビアニメが2012年から2014年まで読売テレビ・日本テレビ系列にて放送され、主題歌にスキマスイッチや作者の小山がファンであるユニコーンなどが起用された。
1巻
2006年7月9日、謎のUFOを目撃した南波六太とその弟の日々人は、「一緒に宇宙飛行士になろう」と誓い合う。それから19年後の2025年、夢を叶え宇宙飛行士となった日々人は、第1次月面長期滞在クルーの一員として、間もなく日本人初となる月面歩行者として歴史に名を残そうとしていた。一方兄の六太は、勤めていた会社の上司に頭突きをしたのでクビになってしまい、鬱屈した日々を送っていた。そんな六太の下に、JAXAから宇宙飛行士選抜の書類審査通過の通知が送られてくる。それは、共に宇宙を目指すという夢を諦めない日々人が応募したものであった。いつの頃からか、宇宙飛行士になることを諦めていた六太は、再び宇宙を目指すことを決意する。
2~5巻
1次試験、2次試験を終えた六太は3次試験までの間、日々人に呼ばれヒューストンに滞在する。そこで巷を騒がせていた強盗を偶然捕まえ一躍有名人となり、その評判がJAXAにも届いたことで無事2次試験を通過。各組5人で2週間を閉鎖空間で過ごす3次試験に挑む。JAXAから個別に出されるグリーンカード、秘密指令によって一時は疑心暗鬼に陥りながらも、共に問題を乗り越え結束を強めてゆく。最終日に合格者2人を自分たちで決める難題を、六太の組ではジャンケンで決めたものの、提案者の六太は落選した。その後JAXAからの追加合格者として、別組の北村絵名と受験当初からの友人の真壁ケンジ、そして六太の3名が選ばれ、最終審査までたどり着く。
なお、3巻「#26 3次元アリ」で、野口聡一宇宙飛行士を模する人物が、少年期の主人公2人から「なぜ人は宇宙へ行くのか」と問われた際に語る宇宙アリ(3次元アリ)の寓話は、実際に野口聡一氏が著者の小山宙哉氏に話したもの。
6~7巻
最終選考が行われるヒューストンへ再び飛んだ六太は、最終審査の合否が決定するまでの間に、日々人たちCES-51クルーを乗せたロケットの打ち上げを目撃した。日本中が見守る中、2026年3月8日、日々人は遂に月へと到着する。嬉しさのあまり何度も跳び跳ねる姿「ムーンジャンプ」、月面上で発した第一声「イエ~!!」は一大ブームとなる。
8~9巻
日本に戻った六太は、JAXAの星加から合格を告げられ、ケンジ、せりか、新田、北村の4名と共に宇宙飛行士候補生となる。一方、日々人は月での船外活動(EVA)のミッション中、クルーのダミアンと共に谷底に落ちる事故に遭う。NASAとJAXA、そして六太の尽力により無事救出された日々人は、ダミアンを救助した功績により勲章を授与される。
10~13巻
六太たち候補生はアメリカへと渡り、NASAの訓練に参加する。訓練教官のビンセント・ボールドによって、僅か1年半で基礎訓練を終わらせる過密スケジュールが課せられ、砂漠でのサバイバル訓練、キャンサット(超小型衛星)作成、T-38A(N)での飛行訓練、水中での無重力訓練を行う日々が続く。その中で六太はパラシュート設計士のピコ・ノートンや、飛行訓練教官のデニールの目に留まり評価を得ていく。やがて日々人が月から帰還し、兄弟が幼い頃から世話になっていたシャロン博士により月面天測望遠鏡プロジェクトも進み始めるが、シャロンはALSを発症する。2027年、基礎訓練を終えた六太達はようやく宇宙飛行士として認定された。
14~15巻
六太は、多くの推薦状を得て国際宇宙ステーション(ISS)のバックアップクルーに選ばれたが、日々人と誓い合い、シャロンのプロジェクトにもつながる月面滞在クルーを目指す気持ちから、これを辞退。父の死因となったALSの新薬開発実験のため、一貫してISSを目指してきたせりかに譲る。代わりに、バギー事故の克服に頭を悩ませる月面基地局の開発部署へ配属される。そこで、以前務めていた会社とJAXAの協力を得て、月面ナビを発案した功績を認められ、NEEMO訓練への参加が決まる。一方、船外活動中の事故以来パニック障害(PD)を患っていた日々人はロシアへ渡り、イヴァンの下で密かにPD克服の訓練を始めたものの、訓練未了のままNASAに連れ戻され、閑職に追いやられてしまう。
16~17巻
ケンジと同組で参加したNEEMO訓練における月面基地の改良案を高く評価された六太は、ビンセント達CES-62のバックアップクルーに選ばれ、ケンジは選ばれなかった代わりに有人小惑星探査ミッションのメンバーに新田と共に選ばれる。その頃、密かにリハビリを続けていた日々人は、再び宇宙を目指すための試験に挑み、復帰を望むCES-51のクルーからの励ましもあって無事PDを克服する。そして六太は、曲者ぞろいのCES-62バックアップクルーたちと共に訓練を開始する。
18~20巻
CES-62バックアップクルーはリーダーにエディ・Jを加え、「ジョーカーズ」と名乗るようになり、六太はCES-62のキャプコムに選ばれる。一方、日々人の周囲は彼に冷たく、日々人は六太に「もう月に行けないかもしれない」と告白し、失踪する。六太はキャプコムの訓練に集中できなくなってしまうが、ビンスの家族やピコに支えられる。半年後、CES-62は打ち上げられる。その後、シャロン月面望遠鏡の建設や、せりかのISS搭乗が決定する。
21〜24巻
ジョーカーズのCES-66アサインがプログラムマネージャーのゲイツに却下され、ジョーカーズは様々な手段でコスト削減案を提出、同時期にゲイツも過去を思い出し、ジョーカーズに対する態度を一転、ジョーカーズはCES-66にアサインされる。他にも、ケンジたちのミッションの発表、せりかたちの打ち上げ成功などいいニュースが続くなか、ジョーカーズのメンバー、カルロが失踪する。カルロは母国イタリアで父の最期を看取り、父に対する誤解を解消して帰国するが、バックアップクルーのモッシュがプライムクルーとなっていた。
25巻〜
「声 - ○○」は、テレビアニメ版の声優。「演 - ○○」は実写映画版の俳優。舞台版キャストは#人狼 ザ・ライブプレイングシアターの節を参照。
2012年4月1日から2014年3月22日まで読売テレビ・日本テレビ系列(NNS加盟29局)にて放送された。全99話。同局で青年誌の漫画を原作としたアニメが全国ネットで放送されるのは、『バケツでごはん』以来約16年振りである。
原作では実在の日本人宇宙飛行士に相当する人物がよく似た名前(例:毛利衛→毛莉、野口聡一→野淵)に変更され登場していたが、アニメ版ではJAXAが協力しているため実名が使われている。第13話、第26話では、野口聡一が本人役のゲスト声優として出演し、第26話では野口聡一の他、若田光一と星出彰彦が声は無いが面接官として登場している。また、2012年9月には史上初の試みとして、星出が国際宇宙ステーション滞在中に本人役の声優としてアフレコを行い、第31話で放送された。第37話では、ロンドンオリンピック柔道女子48kg級日本代表の福見友子が溝口の同級生役で出演した。その後第45話ではジャズシンガーの綾戸智恵が小町ミチコ役で3週続けて出演し、また、本作の原作者の漫画家小山宙哉も第45話で劇中のテレビ番組の芸人役でゲスト出演している。 それとは逆に、版権が関わりそうな固有名詞(原作第1話で出たPUFFYの曲、「セガール映画」など)は、ほとんどが別のものに置き換えられるか出番を省略されるかしている。
番組開始から1年間、次回予告の直後には、少年時代のムッタとヒビトがJAXAの提供した宇宙開発に関係する写真を発表する「今週の宇宙写真」のコーナーが存在し、番組ホームページでその写真、およびその説明が公開されていた。
2013年4月6日からは、放送時間が土曜17:30 - 18:00に変更された。その後18:00からの『名探偵コナン』と合わせ、読売テレビ制作のアニメ作品が1時間枠での放送となったが、『コナン』は週刊少年サンデー(小学館)連載作品であるため、キャラクターの共演は行われず、開始前のジャンクションで南波兄弟が「『名探偵コナン』の前に『宇宙兄弟』」と告知したり、コナン役の高山みなみが毎回アバンで「これまでのあらすじ」を語る程度にとどめられている。 ただしフジテレビ系列とのクロスネット局であるテレビ大分では、2013年4月以降も従前と放送時間は変わらないため、13時間30分遅れネットとなる。その結果、NNS加盟29局全局同時ネットアニメが消滅する。
次番組である『金田一少年の事件簿R』以降の作品からは放送期間が全て2クールに統一されたため、『コナン』を除くと本作が2クールを超えて放送された最後の読売テレビ制作アニメとなっている。
Blu-ray BOX
DVD
読売テレビでは放送枠移動を控えた2013年3月30日の土曜 15:05 - 15:30枠にて『宇宙兄弟お引越しスペシャル!』が放送された。出演はTKO、優香、小島よしお、小島瑠璃子。日本テレビでも4月2日 火曜 25:59 - 26:29に放送された。
『宇宙兄弟#0』(うちゅうきょうだいナンバー・ゼロ)のタイトルで2014年8月9日に公開。脚本を原作者の小山自身が手掛ける。原作では描かれていない、本作の前日譚となっている。入場者プレゼントは本作の脚本の一部を収録した「#0巻」。
キャッチコピーは「あの日、夢が、落ちた。」「勇気を、もう一度、打ち上げろ。」「『さよなら』と『勇気』の物語」「勇気をもって、飛んでいけ。」。
全国210スクリーンで公開され、2014年8月9、10日の初日2日間で興収7,861万5,500円、動員5万8834人になり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第8位を記録。 また、ぴあの調査による初日満足ランキングでは満足度92.0となり第2位となっている。
公開から2年以上ソフト化がされていなかったが、2016年9月23日に原作単行本29巻の限定版特典として小山の監修でシーン修正や約5分のシーン追加を行った「宇宙兄弟#0 小山宙哉 Special Edition」のDVDが、セルソフトとして「宇宙兄弟#0劇場公開版 」ブルーレイディスク版が発売となった。
2012年5月5日より全国東宝系にて公開の同名漫画を原作とした実写映画。監督は『ひゃくはち』の森義隆。主演は小栗旬と岡田将生。イギリスロックバンドのコールドプレイはこれが日本映画史上初の楽曲提供となる。
JAXA全面協力の元に筑波宇宙センターでのロケや、NASAケネディ宇宙センターでの実際の宇宙管制室やロケット・ガーデンを使用しての大型ロケも行っている。また、日本人宇宙飛行士の野口聡一と、伝説的な宇宙飛行士であるバズ・オルドリンが本人役として特別出演している。
キャッチコピーは「夢の続きを、始めよう。」。
ストーリーは六太のJAXA宇宙飛行士試験と日々人の日本人初月着陸がメインであり、原作とは違いそれが同時期の出来事として並行して描かれている。エピローグは南波兄弟が同じロケットに乗り込み月へ打ち上げられるシーンで締めくくられる。
全国322スクリーンで公開され、2012年5月5、6日の初日2日間で興収3億8,232万6,100円、動員28万5,341人となり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第2位となった。幅広い層から支持を集めぴあ初日満足度ランキング(ぴあ映画生活調べ)でも第1位となっている。
2012年12月21日発売。発売元は講談社、販売元は東宝。
『宇宙兄弟 CARD MISSION』(うちゅうきょうだい カードミッション)が、GREEにて2012年4月26日配信開始(スマートフォン版は5月1日)。六太たちとミッションをこなしていくソーシャルカードゲームとなっていて、キャラクターカードは全100種類以上。
2012年3月~4月にかけてSCRAP主催のリアル脱出ゲームとのコラボレーションで『宇宙兄弟×リアル脱出ゲーム〜月面基地からの脱出〜』としてライブハウスツアー形式で全国のZeppを巡回してきた。2014年4月にアメリカ・サンフランシスコで開催され、2014年6月にシンガポールで開催された。参加者は月面基地でミッション中の宇宙飛行士となり、ミッション中に酸素ボンベの残量が著しく低下するという事態の中で1時間後に酸素ボンベの量が空になってしまうので、様々な謎を解きながら、1時間以内に月面基地から脱出することがクリア条件。2017年に『宇宙兄弟×リアル脱出ゲーム〜月面基地からの脱出〜』の続編である『宇宙兄弟×リアル脱出ゲーム〜宇宙飛行士選抜試験〜』がリアル脱出ゲーム10周年記念プロジェクトの一環として開催されることが決定した。参加者はネット上に指示された謎を駆使して各々のペースで受験し、ネット上の試験で合格した場合に限り東京・池袋にある常設店舗アジトオブスクラップ池袋と大阪・恵美須町にある常設店舗アジトオブスクラップ大阪ナゾビルにて様々な謎を駆使して1時間以内に受験し宇宙飛行士の資格を得ることがクリア条件。
人狼ゲームを題材とした舞台劇のシリーズの人狼 ザ・ライブプレイングシアターとのコラボレーションで、『人狼TLPT X 宇宙兄弟』が2016年7月22日~24日に新宿村LIVEで全6公演、再演となる『人狼TLPT X 宇宙兄弟 Rebellion of the Fullmoon』が2017年7月26日~8月6日にシアターサンモールで全18公演が行われた。
客席の客も推理する楽しみ方(解答用紙が渡され正解すると景品を得られる)がある舞台作品で、宇宙兄弟とのコラボでは原作コミックで描かれたエピソード(3巻-5巻)をベースに、「有人閉鎖環境滞在試験」の最後の課題として人狼ゲームに挑むという設定で始まり、その後は脚本なく即興芝居で展開される内容となっている。
初演・再演とも、連番は「 - 」で表記。
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