奇 誠庸(キ・ソンヨン、기성용、1989年1月24日 - )は、大韓民国・光州広域市出身のサッカー選手。FCソウル所属。元韓国代表。ポジションはMF。
本貫は幸州奇氏。中学高校時代の5年間をオーストラリアのジョン・ポール・カレッジでユースサッカー教育を受け帰国。
2006年にFCソウルに入団。2007年にトルコ代表をFIFAワールドカップ・日韓大会で3位に導いたシェノル・ギュネシュがソウルの監督に就任すると、気に入られレギュラーを獲得。
2009年の夏に横浜F・マリノスが獲得に動いたが、FCソウル側の激しい引き止めにあい日本への移籍は叶わなかった。
2009年12月13日にセルティックと契約。契約期間は4年間で、移籍金はおよそ200万ポンド(約3億円)。 移籍当初はレギュラーとして出場していたが、3月頃からレギュラーを外され不本意な成績に終わった。翌シーズンの2010-2011シーズンは月間最優秀若手選手を受賞するなど活躍している。
2010年12月27日に行われたセント・ジョンストン戦では、0-0のまま後半ロスタイムに突入する中、車ドゥリと奇がそれぞれゴールを決め2-0の勝利の貢献した。セルティックでの初の韓国人アベックゴールとなった。
2011年5月21日に行われたスコティッシュカップ決勝のマザーウェル戦で左足の強烈なミドルシュートを決め、セルティックの優勝に貢献。この試合の最優秀選手に選ばれた。
2012年8月24日、スウォンジー・シティAFCの移籍が決定。なお、韓国側がこの契約に20試合先発出場させるというオプションを入れさせていたことが判明している。2012-13シーズンは公式戦38試合に出場、クラブ初タイトルとなるリーグカップ制覇にも貢献した。
翌シーズンはジョンジョ・シェルヴェイなど同じポジションにライバル選手が加入した影響を受け、2013年8月31日、サンダーランドAFCにレンタル移籍した。2014-15シーズンにはプレミアリーグ33試合出場8ゴールを挙げクラブの年間最優秀選手に選ばれた。
2018年5月、チームが2部リーグに降格した直後に自身のSNSで、スウォンジー・シティAFCの退団を表明した。
2018年6月29日、フリー移籍でニューカッスル・ユナイテッドFCと2年契約を締結したことが発表された。しかしラファエル・ベニテスの元では途中出場が多く、定位置確保には至らなかった。更に2019年に就任したスティーヴ・ブルースのもとでは完全に構想外となり、2020年1月31日にニューカッスルとの契約解消に合意した。
2020年2月24日、RCDマヨルカと2019-20シーズン終了までの契約を結んだ。しかし、コンディション不足でリーグ戦1試合の出場にとどまり、6月30日に契約満了で退団した。
2020年7月21日、古巣であるFCソウルへの復帰が発表された。11年ぶりのKリーグとなる。
代表では全世代を経験しており、FIFA U-20ワールドカップ、北京オリンピックにも出場している。2008年6月7日のW杯予選・ヨルダン戦でフル代表に19歳でデビューして、中盤のレギュラーを獲得。同年9月10日の北朝鮮戦で代表初ゴールを記録。韓国代表がW杯出場を決めた2009年6月6日のUAE戦でもダメ押しゴールを決めた。
AFCアジアカップ2011では猿マネなどの騒動はあったものの、韓国のベスト4入りに貢献をし、マルカとガゼッタ・デロ・スポルトの2紙からはベストイレブンに選ばれた。
2015年1月、韓国代表のキャプテンに就任した。
2018ワールドカップに出場したが、またしても決勝トーナメントには進出出来なかった。2019年アジアカップをもって韓国代表からの引退を表明した。
2011年1月25日、AFCアジアカップ2011準決勝「日本対韓国戦」において、奇は前半にPKで得点した後、ゴールパフォーマンスで「猿」の物真似を行った。「猿」は韓国人が日本人を侮辱するときに多用される表現であることから波紋を呼んだ。奇は翌26日に自身のTwitterで「観客席の旭日旗を見て涙が出ました。私も選手の前に大韓民国国民です…」と旭日旗に腹が立ったことを理由として、故意に猿真似パフォーマンスを行ったことを釈明をした。しかし、実際に観客席に旭日旗は確認されていない。その後は「スコティッシュ・プレミアリーグで猿真似で人種差別された奇誠庸はやってはならなかった」等という猿真似パフォーマンスへの批判よりも韓国ネチズンの間では「旭日旗に復讐しただけ」という賛成意見が大勢を占めるようになった。サッカー評論家の金子達仁は奇の行為への批判の声もあったことについて、「日本人に対する差別的行為を非難できる韓国人がいたことに驚かされた」とスポーツニッポンに寄稿している。
韓国国内の騒動を受け、日本のメディアでもこの騒動が報道された。日本サッカー協会(JFA)は、大韓サッカー協会(KFA)に対し、奇への聞き取り調査を依頼した。奇が「あのパフォーマンスは日本人に対してではなく、(スコットランドの)セルティックでプレーしていて相手チームのサポーターからサルの鳴き声で馬鹿にされたことがある。その連中に向けてやったことだ。」「日本人向けではない。」と前言の旭日旗に関する発言を翻し、KFAも「結果として日本の皆さんに誤解を与えることになり、申し訳なく思っている」と謝罪したとして、JFAは正式な抗議を行わないことにした。JFAがKFAからの謝罪を受け入れたため、奇はAFCからの制裁を回避した。
この騒動は日韓間にとどまらず、奇がプレーしているスコットランドやその他海外の国々にも飛び火した。イギリスのタブロイド紙ザ・サンは「Cheeky monKI(生意気な モン奇ー=猿)」と銘打った記事で痛烈に批判した。同紙は「(奇誠庸は)スコットランドのサポーターを人種差別者として告発することで苦い国際的確執から脱出しようとした」と奇の説明を批判的に報道したほか、イギリスのサッカー場での人種差別行為を監視する団体SRTRCの幹部が奇の説明を疑問視していることも紹介している。猿真似を正当化する理由がなくなると、奇は「もう死にたい」と言いだしたという。
この試合を取材していた産経新聞のカメラマンは「日本側の応援席で旭日旗を見た記憶はありません。断言はできませんが、少なくとも目につくような大きさの旭日旗は見なかった。」と証言している。また、2011年1月27日に放送されたテレビ朝日のワイド!スクランブルでは、旭日旗が掲げられた応援席の写真を映しながら「歴史的な日韓の葛藤」を論拠に奇の行為を擁護した。しかしその写真が2010 FIFAワールドカップの日本対オランダ戦の時のもので、試合当日のものではなかったため、「韓国の報道を検証なしに引用したため間違ってしまった」と翌日の番組で謝罪・訂正することになった。
そして次の日韓戦となった2011年8月10日に行われた日韓親善試合の前日の記者会見で、日本の取材陣からこの時の騒動の釈明を求められると、奇は「当時あまりにも競技が激しかったし…。複合的な理由があった。しかし過去の事であり忘れていた。」と発言した後、会見途中で席を外した。
その後、2012年8月20日に放送された韓国SBSの『ヒーリングキャンプ-嬉しくないのか』にて、「その時、当時の試合で旭日昇天旗があったんです。日本は見せてはいけないのにそれがありました。それを見て情けなかったですし、思わず(カッとした心で)猿セレモニーが出てきました」と再び発言を翻した。また、「人々は猿セレモニーを見て『間違いだ。まだ幼い。未熟だ』と言ったんですが、私もやはり人間で感情があって表現が出てきました」と説明した。
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