
『江戸を斬る』(えどをきる)とは、TBS系で月曜20時 - 20時54分の『ナショナル劇場』(後のパナソニック ドラマシアター)で放送された時代劇シリーズ。原作は葉村彰子、音楽はいずみたくが担当。ナレーションは芥川隆行。
本項では、西郷輝彦が遠山金四郎役で主演し、松坂慶子がヒロインのおゆきを演じた第2部 - 第6部について説明する。シリーズ全体の詳細は『江戸を斬る』を参照。
義理人情に厚い名物女将・お政が営む魚屋「魚政」にふらりと出入りする、桜吹雪の見事な彫り物をした若い浪人。彼の正体は奉行などの要職を歴任した名門遠山家の跡取り息子・遠山金四郎で、お政は彼の元乳母だった。気楽な日々を送っていた金四郎は悪に苦しむ善良な人間を目の当たりにし、水戸藩藩主・烈公水戸斉昭(徳川斉昭)の導きで江戸を守る北町奉行に就任することを決意。
江戸を騒がす事件が起きれば腹心の同心や岡っ引きは勿論、金四郎の恋人で魚政の看板娘だが生来の正義感から謎の覆面剣士・紫頭巾に変装するお政の娘・おゆき(正体はお政に預けられた水戸家の姫・雪姫で、父・斉昭に金四郎を紹介した張本人)、魚政の売り子の一人だが実は金四郎に見逃されて改心した元義賊の大泥棒・鼠小僧の次郎吉と協力して潜入捜査にあたる。
そして捕縛した悪党や巻き込まれた人々を、金四郎が白州で時に厳しく怒りを持って、時に優しく慈悲を持って裁いていくのだった。
第二部では奸計を巡らせ、無実の者を陥れて私腹を肥やす南町奉行の「妖怪」・鳥居耀蔵と対峙。金四郎が南町奉行に就任した後の第三部では、傍若無人で強権的な取り締まりを進める火盗改めの「死神の重蔵」・脇坂重蔵と子飼いの悪徳岡っ引き・閻魔の伊蔵と対立する関係となる。
次郎吉が料理屋「まさご」を開業し、金四郎とおゆきが結婚して嫁姑問題が終息した後の第四部以降は、金四郎は正体を隠して威勢のいい町人・「大工の金公」に変装。一人冷や冷やする配下の同心・石橋堅吾をよそに、女岡っ引きの「捕物小町」・お京とその子分の出目の金太、堅吾の利発な息子・堅太郎達に親しく接する。おゆき・次郎吉と共に事件を解決して賢吾やお京らに影から花を持たせ、江戸の平和を守っていく。
第2部 - 第6部を通した主題歌「ねがい」はいずれも主演の西郷輝彦が歌ったもので、作詞は山上路夫、作曲はシリーズのBGMを担当したいずみたく。第2部ではEDテーマとして、第3部以降ではOPテーマとして流された。
第2部EDに使用されたバージョンは未発売で、第3部以降で使用されたものよりもキーが低い。第3部以降のOPには1976年10月発売のレコード用に再録音されたフルコーラス版の前奏を短縮し、1コーラスに編集したバージョンが使用された。
「江戸を斬るⅡ」(えどをきる2)は1975年11月10日から1976年5月17日までTBSで放送されたナショナル劇場のドラマ。製作はC.A.L。全28話。ナショナル劇場としてもはじめての遠山金四郎物語である。
保科正之の双子の弟・梓右近と幕府転落を企む由井正雪一派の動乱を描いた政治サスペンス劇の前作『江戸を斬る 梓右近隠密帳』から一転、『遠山の金さん』をモチーフに恋愛とホームドラマ要素を取り入れた一話完結ドラマに路線を変更した。
当時人気歌手だった西郷輝彦が 『水戸黄門』にゲスト出演した際の熱演を評価され、『どてらい男』(関西テレビ制作)で俳優としての頭角を現したことで時代劇初主演を果たした作品。松坂慶子は前作から引き続きヒロインを演じ、本作で大ブレイクを果たした。主演の西郷と松坂が美男美女同士で女性陣のお色気シーンもあってか、男性視聴者と女性視聴者両方の支持を獲得し高視聴率をマークし人気シリーズとなる。
その他のキャスティングは風車の弥七に相当する助っ人として松山英太郎が前作に続き出演。彼が演じる次郎吉は、普段は眼鏡をかけ、世を欺くために頼りない男として振舞っていた。また魚政の小頭(兄貴と呼ばれる)・太助を高橋元太郎が演じる。『II』のみ、両町奉行所とも、レギュラー出演する同心が設定されていない。
シリーズを通した悪役として、金田龍之介演ずる「妖怪」こと鳥居耀蔵、および、南町奉行所の岡っ引き・閻魔の伊蔵さらにその子分・銀次が登場する。『II』では松坂慶子はじめ、『江戸を斬る』シリーズの第1部である『江戸を斬る 梓右近隠密帳』から引き続き出演した俳優も少なくない。
本作では同じ題材を扱った『遠山の金さん』との差別化のため、奉行としての遠山金四郎が強調されている。金四郎の変装はほとんどが浪人姿や遊び人となっている。また、金四郎自身がトレードマークである桜吹雪の彫り物を「若気の至り」と恥じており、第2 - 4部では1、2回しか登場せず見せた後は白州で「よくも俺に恥をかかせやがったな」と吐き捨てる(当時はタトゥーシールが存在せず撮影の度に数時間もかけて直接肌に絵を描いており、西郷の負担を減らすための措置)。
「江戸を斬るⅢ」(えどをきる3)は1977年1月17日から1977年7月11日までTBSで放送されたナショナル劇場のドラマ。製作はC.A.L。全26話。
本シリーズから、西郷の主題歌がオープニングに移動し、インストゥルメンタル版がエンディングに移動した。本シリーズ以後(正確には第2部の最終回から)金四郎は南町奉行所を勤めている。また、レギュラーの同心がはじめて設定された。本作では田村亮演じる片桐弥平次である。その他のキャスティングでは太助が退職し、次郎吉が「魚政」の小頭になる。前シリーズとは違い、眼鏡もなくなり、松山が「大岡越前」で演じている猿の三次のような、普段から頼もしい「兄貴」になる。お政の次女、お小夜の存在が抹消され、おゆきとお千代の2人姉妹となる。第13回で金四郎がおゆきと結婚する。
本作では成田三樹夫演ずる死神の重蔵こと脇坂重蔵率いる火盗改めが敵対組織として登場。閻魔の伊蔵と銀次も引き続き登場する。伊蔵たちは第24回を最後にフェードアウトし、脇坂とは第25回終盤で和解した。
本シリーズでは、同放送枠の「大岡越前」にレギュラー出演した俳優が最も多かった。
「江戸を斬るⅣ」(えどをきる4)は1979年2月12日から1979年8月6日までTBSで放送されたナショナル劇場のドラマ。製作はC.A.L。本作のみ三船プロダクションが製作協力にあり、撮影も京都でなく東京の同プロダクションのスタジオにて撮影され、三船敏郎もゲスト出演している。全26話。「水戸黄門」第9部の後番組として放映され、以後、VI終了後まで「水戸黄門」と交互に放映された。
1年半ぶりの本作は前作までは町場での金四郎はほとんど浪人姿だったが、本シリーズからは「大工の金公」と名乗って町人姿で探索にあたるスタイルが本格化する。主要登場人物や各設定も本シリーズにおける設定がおおむね最終シリーズのVIまで継承される。なお、西郷は本シリーズ終了後の『大岡越前』第6部でも、本作の「金公」を髣髴とさせる役でレギュラー出演している。
本作の特徴は松坂の多忙によりおゆきの穴埋めのための新ヒロインとして女岡っ引き・お京を登場させた。
また南町奉行所に所縁のあるレギュラーキャラクターでも、大工の金公が金四郎であることを知らない人物が設定されている。同心・石橋堅吾の息子である石橋堅太郎や岡っ引きのお京、金太である(この3人は『Ⅵ』までを通じて金公が金四郎であることを知る描写はないが、お京と金太は第一話で奉行姿の金四郎に遭遇しており、終盤では侍姿の金四郎とおゆきを訝しがるシーンがある)。
本作の放映開始直前の時期までテレビ朝日系で、西郷が岡っ引きで主演する『風鈴捕物帳』が放送された。同作の音楽もいずみたくの担当であり、本シリーズの『V』以降のBGMは同作からも数多く流用されている。
本作のみ『破れ奉行』や『バトルホーク』などの作品で多用されたブリッジBGMが頻繁に使用された。
本作の第1話は最高視聴率は36.7%(ビデオリサーチ調べ。関東地区のみ計算)を記録。
この『IV』のポスターから「○月○日放送開始」から「○月○日スタート」という表記が使われるようになった。
「江戸を斬るⅤ」(えどをきる5)は1980年2月18日から1980年8月11日までTBSで放送されたナショナル劇場のドラマ。製作はC.A.L。全26話。
今作では松坂の多忙によりおゆきの出番が減った代わりに、金四郎が決め台詞の「お江戸の悪を許しちゃおけねぇ男よ」と共に桜吹雪を見せるシーンが加わった。
第1話では後に同放送枠の「大岡越前」で同心となり、さらに三代目水戸黄門となる佐野浅夫が、お京の父親の岡っ引き役でゲスト出演している。なお、第1話では、お京については岡っ引きになる前の展開にリセットされている。また「まさご」で働くお志乃が同店で働くきっかけとなる話も合って前作とはパラレル的なシリーズとなった。 また前作同様、初回で侍姿の金四郎とお京がすれ違うシーンがある。
『江戸を斬るVI』(えどをきるVI)は、1981年2月16日から8月24日までTBSで放送されたナショナル劇場のドラマ。製作はC.A.L。全28話
西郷輝彦主演版の最終シリーズ。松坂の多忙により本作でのおゆきの出番は7回となった。そのため、本作ではお京がヒロインとなりお京役も由美かおるに交代している。
初演版は第2部放映期間中の1978年に梅田コマ劇場で上演された。設定やキャストはドラマの第2部と同一だが、おゆき役は第2部で水野由美を演じた山口いづみが担当。脚本・大西信行、演出・津村健二。公演後には『西郷輝彦オンステージ』が開催された。
大まかなあらすじは公儀御用達の悪徳商人ばかりを狙う強盗一味・「夜の奉行」(首領役は第3部で脇坂重蔵を演じる成田三樹夫)に、北町奉行・遠山金四郎と紫頭巾に変身するおゆきが立ち向かい、一網打尽にするもの。ストーリーには大友柳太朗扮する謎の浪人と、春川ますみがお政と二役で演じる浪人の妻が絡むほか、南町の岡っ引きの閻魔の伊蔵らが登場する。
2003年10月に、『西郷輝彦芸能生活40周年記念公演』の第一部として 『江戸を斬る〜思い出に咲いた恋〜』が明治座で上演。脚本・池田政行。おゆき役は三原じゅん子。次郎吉は登場せず、設定は第4部以降を踏襲しているが魚政が登場しない。
主なあらすじは、江戸の人気者「大工の金公」の正体は北町奉行・遠山金四郎。江戸の町を凶賊・「十六夜組」が暗躍し、一家皆殺しの残忍な手口から人々を恐怖に陥れる。探索を始めた金四郎の前に現れたのは、十年前に別れた恋人・おのぶだった。驚く金四郎、おのぶと十六夜組の繋がりとは…?というもの。
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