全日本吹奏楽コンクール(ぜんにほんすいそうがくコンクール、All Japan Band Competition)は、一般社団法人全日本吹奏楽連盟と朝日新聞社が主催し、毎年開催するアマチュア吹奏楽団体を対象とした音楽コンクールである。1940年(昭和15年)に同新聞社が創設したものの、太平洋戦争勃発により中断、戦後は1956年(昭和31年)に再開された。本大会は、日本の吹奏楽界では最大規模の大会である。
〈戦争のために中断〉
(出典:)
参加を希望する団体はまず該当地域の吹奏楽連盟に加盟登録し、連盟理事会で毎年指定する課題曲(吹奏楽連盟会報「すいそうがく」、連盟公式ホームページ、朝日新聞紙上、吹奏楽関連雑誌で発表)と各団体が選曲する自由曲の2曲を決めて参加申込をする。 なお、以下の規定は全日本吹奏楽コンクール(便宜上、以下「全国大会」と記す)に通じる部門【A】のものである。
中学生の部(以下、中学の部)、高等学校の部(以下、高校の部)、大学の部、職場・一般の部 の4部門
中学の部:50名以内 高校の部:55名以内 大学の部:55名以内 職場・一般の部:65名以内
ただし、支部大会の申込人員を超えることはできない。なお、指揮者はこの人員に含まれない。
同一人が二つ以上の団体に重複して出場することは認めない。なお、年齢については問わない。
指揮者の資格については制限しないが、同一部門において指揮することができるのは1団体とする。課題曲と自由曲は同一人が指揮すること。(2013年度大会より)
全日本吹奏楽連盟は2012年から毎年、Q&Aを作成し公表している。
この節の審査方法は全国大会のものである。下位大会については「予選」を参照のこと。
第61回大会(2013年)以降の審査方法は次のとおり。
第44回大会(1996年)から第60回大会(2012年)までの審査方法は次のとおり。
9人の審査員が上述の課題曲と自由曲のそれぞれに対し、「技術面」「表現面」に分けてABCDEの5段階で各々絶対評価を行う(つまり審査員は、課題曲の技術面・表現面、自由曲の技術面・表現面の4点についてABCDEの評価をそれぞれ行う)。その後、ABCDEの評価を得点化し、その得点の上位順から●金賞・●銀賞・●銅賞のいずれかの賞が与えられる。ただし、審査の公平性をより高めるため、9人の審査員の審査のうち「最も高い評価をした審査員1人・最も低い評価をした審査員1人」の評価はカットされる(カット対象となる評価が同一の場合は、いずれか1人の評価のみをカット)。よって得点化されるのは9人の審査員の評価のうち、最高点・最低点間の評価を行った7人の審査員の評価となる。結果発表後、各演奏団体の代表者には各審査員から合計9枚の自団体の審査票が渡される。審査票には表があり、課題曲・自由曲の技術・表現の評価がA〜Eのいずれか1つにそれぞれ○がつけられている。特記事項の欄が表の下に設けられているが、講評が書いてあることはまれであった。審査票には審査員名も書かれておらず、どの審査員の評価かわからないものであった。審査結果の一覧は、開催年度の1月発行の会報「すいそうがく」で2012年度まで公表されていた。それを見ることで出場団体の順位を知ることができた。
第31回大会(1983年) 審査内規を改定。
第30回大会(1982年)の審査方法は次のとおり。
イ)審査員は課題曲と自由曲の2曲を、それぞれ「技術」と「表現」の2項目について、A・B・C・D・E の5段階で評価する。
ロ)A〜Eを次の点数に換算し合計点の多い方から金・銀・銅の3つのグループに分けて賞を贈り表彰する。
A=5 B=4 C=3 D=2 E=1
ハ)金・銀・銅の3つのグループ分布の判定は採点委員が行い審査委員長がこれを決定する。その結果を審査員に報告し了解を得る。
第18回大会(1970年)から第29回大会(1981年)までの審査方法は次のとおり。
A・B・C の3段階で評価する。
第16回大会(1968年)の審査方法は次のとおり。
9名の審査員が、課題曲70点満点(小数第1位まで)、自由曲30点満点(小数第1位まで)、合計100点満点(小数第1位までなので実質1,000点満点)の絶対評価で採点する。
『バンドジャーナル』(1959年11月号 15頁)で全日本吹奏楽連盟理事の広岡淑生が、当時の採点方法や点数発表の仕方について「採点法は増沢式順位制が今のところよいようである。審査の結果を審査員が採点したのを一覧表にして入賞団体だけの点数を発表するが、他の成績は希望によって知らせ反省の資とするようになっている。」と述べている。
金賞・銀賞・銅賞のいずれかとする。
参加団体はまず、例年7月から8月に行われる地区大会・府県大会に参加する(「コンクール予選構成」も参照のこと)。審査によって代表に推薦されると上位大会である支部大会(北海道支部・東北支部・東関東支部・西関東支部・東京都支部・北陸支部・東海支部・関西支部・中国支部・四国支部・九州支部)に出場できる。支部大会で審査によって代表に推薦されるとさらに上位大会である全国大会へ出場できる。全国大会の審査は上述の方法で行われるが、各支部大会、各府県大会ごとに審査方法、審査員の人数、代表選出方法は異なっている。なお、支部大会、都道府県大会によっては、前年度の大会で上位大会に進んだ団体に対してシード権を付し、上位大会である府県大会や支部大会からの参加を認める場合がある。
全日本吹奏楽連盟では、中学の部および高校の部において全国大会の予選部門は「A」(以下、【A】とする)と呼称しているが、支部によって「大編成」、「A部門」、「A編成」、「A組」、「Aの部」、「Aパート」等と呼称が統一されていない。一方、全国大会の予選部門以外の部門を「B」(以下、【B】とする)と呼称しているが、各支部・各都道府県吹奏楽連盟内で呼称される「B部門」、「B編成」、「B組」、「Bの部」、「Bパート」等とは定義が異なっている。東関東吹奏楽連盟内では「B部門」は30名以内の小編成部門のことを指すが、福岡県はじめ九州支部内の一部の県吹奏楽連盟では「Bパート」はフリー部門のことを指す。同様に、「C部門」であっても各支部・各都道府県吹奏楽連盟によって小編成部門を指したり、フリー部門を指したり、合同部門を指したりするなど定義が異なっている。
各支部・各都道府県吹奏楽連盟によって小編成部門やフリー部門、合同部門、プライマリー部門、ジュニア部門など【B】を設置している。これらの部門は支部大会まで、府県大会まで、地区大会までなど全国大会への道は開かれていない。しかし、各支部・各都道府県吹奏楽連盟内の実態にあわせて複数の団体の合同バンドを認めたり人数規制を緩和するなど柔軟に対応しているので、人数や予算に制約があるが吹奏楽コンクールに参加意思のある団体が参加しやすようになっている。また中学や高校で部員数増加により全ての部員を【A】に出場させることができない場合、残りの部員を【B】に相当するフリー部門やジュニア部門で参加できるようにしている地区もある。
なお、北海道・東北・東関東・西関東・東京都・北陸の各支部連盟では、小学生部門および中学・高校の小編成部門の最上位大会として東日本学校吹奏楽大会を設置している。
金賞・銀賞・銅賞のグループ表彰制を行っている支部・府県・地区吹奏楽連盟が多いが、部門によって優秀賞・優良賞のグループ表彰を行っている地区吹奏楽連盟もある。 金賞・銀賞・銅賞の数は、審査集計結果に基づいて各支部、各府県、各地区の理事長が承認・決定する場合が多い。支部代表数、府県代表数、地区代表数は、事前に決められているので、代表数と金賞の数は同数ではないことが多い。そのため、金賞を受賞しても上位大会へ推薦されないことがある。 金賞を受賞しながら上位大会に推薦されなかった場合の金賞は、「ダメ金」や「タダ金」などと通称・俗称される。ダメ金においても、茨城県大会のように補欠として「次点」の団体を公表する都道府県大会もある。一方で、代表数の関係で、銀賞受賞でも上位大会へ推薦されることもある。 表彰式の結果発表の際やステージ上での吹奏楽連盟理事長等の読み上げの際は、金賞と銀賞は発音が似ていて聞き間違いによる誤解を招く危険性があることから、金賞は「ゴールド金賞」「金賞ゴールド」「ゴールド」等、銀賞は「銀賞」「シルバー」等と読み上げる場合が多い。これは、ファイナリストに金・銀・銅のメダルを送る制度を擁していた、今は失われてしまったヴィオッティ国際音楽コンクールの名残である。
各支部大会、各府県大会、各地区大会ごとに代表選出方法が異なる。審査集計結果に基づいて、合計得点の上位から決定する方法、新増沢式採点法によって決定する方法、勝ち点方式によって決定する方法、金賞団体の中から投票で決定する方法、金賞団体の中から審査員の合議で決定する方法(得点上位校が代表に推薦されるとは限らない)など様々である。
吹奏楽コンクールで全国大会まで開催される部門【A】では、課題曲の演奏が義務付けられている。近年は、朝日作曲賞の入選作品3 - 5曲(大賞受賞作品は翌年度の課題曲 I となる。ただし、過去に I 以外の課題曲となった例外有。)と、連盟の委嘱による作品1曲前後が課題曲に選ばれている。
過去には、既存曲や吹連委嘱曲として團伊玖磨、大栗裕、小山清茂、別宮貞雄、三善晃など現代日本を代表する作曲家による作品が課題曲となったこともあるほか、河辺浩市、間宮芳生、東海林修、保科洋、三枝成彰、原博、池辺晋一郎、藤掛廣幸、西村朗、木下牧子、和田薫など一線級の作曲家による作品も課題曲となっている。他には、岩井直溥、藤田玄播、兼田敏、真島俊夫など、その他の吹奏楽作品の作編曲でも知られる作曲家も課題曲を書いている。
また、近年では邦人作曲家による新曲が主であるが、かつてはジョン・フィリップ・スーザ、アルフレッド・リード、ウィリアム・フランシス・マクベス、ロバート・ジェイガーなど外国人作曲家の既存の楽曲もしくは吹連委嘱曲が課題曲になった。
2020年度の大会が新型コロナウイルス感染症の流行の収束予測が立たないため中止となったので、その年度の課題曲5曲は、2021年度の課題曲として引き継がれた。
第41回(1993年) - 第55回(2007年)大会の15年間、西暦で奇数年はマーチの楽曲、偶数年はマーチ以外の楽曲が指定されてきたが、第56回(2008年)大会より以下の通り変更が施行される。
第65回(2017年)大会以降、毎年1曲、委嘱を行うことが決定された。2022年度理事会(3月)では、外国人作曲家への委嘱依頼について早い段階から進めること、引き続き専門委員会で検討していくことの説明があった。2023年度理事会(9月)において、2026年度以降の課題曲の委嘱について、1曲を邦人以外の作曲家に委嘱するという、課題曲に関する専門委員会の提言が報告された。
課題曲の設定については、時代によって変わってきた。
第59回大会(2011年)の職場・一般の部において、課題曲Iのトランペットパートの一部を1オクターヴ上げて演奏した団体があったことを受け、全日本吹奏楽連盟2011年度理事会(3月)で、実施規定が「課題曲のスコアに記譜された音・音域を変えて演奏することは認めない。もし、当日あるいは事後にこのことが判明した場合は、失格とする。」に改定され、2012年度から実施された。
課題曲のスコア上の楽器及びパートが欠けてしまう場合は、毎年、全日本吹奏楽連盟のWebで発表される「全日本吹奏楽コンクールについてのQ&A」に従って他の楽器で演奏することが認められている。
連盟は次のように対応した。
全日本吹奏楽連盟定時総会の協議会で話題になることがある。
一部の楽器の楽譜を空欄にし、それらの楽器の楽譜を創作したり、記譜されている楽譜を変更することを許された課題曲があった。
(1) 空欄の楽器、および各打楽器、ピアノ、ハープ、そのほか(コール・アングレなど)を自由に加えてよい。
(2) その際は、主旋律・副旋律ともにオクターヴの上下での追加も許される。
(3) 和音については、その最低音を変えなければ(基本形・転回形という位置関係を変えないで)、和音内の音をどの位置に加えてもよい(配置・重複は自由にしてよい)。
(4) 打楽器は、イメージを最大限に創りあげる意味で自由に加えてよい。
(1) 旋律・和声を変えない範囲で、スコア編成内の楽器を加えたり変えてもよい。
(2)「Optional Percussion」について 楽譜に記載以外のサンバで使用する打楽器を工夫して入れてよい。
吹奏楽コンクールにおいて、課題曲を任意にカットして演奏することは規定違反になるが、これまでに指定の小節をカットすることを認める指示がある課題曲があった。
かつてはすべての部門を同一の会場で開催し、かつ会場は毎年全国各支部持ち回りであった。1977年(昭和52年)・第25回より普門館ですべての部門を開催していたが、1980年(昭和55年)・第28回より大学・職場・一般の部のみ再び全国各支部持ち回りでの開催となった。
中学の部および高校の部の全国大会は、愛知県名古屋市熱田区にある名古屋国際会議場センチュリーホールで行われる。
東京都杉並区にあった普門館(立正佼成会所有)で行われていた。
初めて使用されたのは、第20回(1972年)大会である。その後、第25回(1977年)大会から第59回(2011年)大会まで(第53回大会を除く)開催されていた。さらに、予選を勝ち抜いた学校のみ演奏できたことから、「吹奏楽の甲子園」と呼ばれていた。
例年、定員をはるかに超える入場希望者に対応するため、第44回(1996年)大会以降、中学の部・高校の部それぞれ全29団体のプログラムを「前半の部」と「後半の部」の2部に分け、完全入替制で大会を進行していた。
2012年に立正佼成会が専門家に依頼した耐震調査で、「大ホールの天井について十分な耐震性が確保されていない」ことが判明したため、2013年11月13日に、立正佼成会が普門館ホールの耐震工事を断念、使用停止すると発表。これにより、普門館での開催の歴史に幕を閉じた。
普門館でのエピソードとして、第52回(2004年)大会中学後半の部の開催中、新潟県中越地震が発生し、大会史上初めて一時中断するという事態が発生した。高校後半の部では、演奏中にステージ裏側で誤って次の団体が楽器を落下させてしまうということがあり、これらのことを機に、大会を安全に運営するためのマニュアルが連盟によって作成された。
普門館での演奏の特徴の傾向を、2009年と2013年に審査員を務めた指揮者の小林恵子は、「音楽性や音色よりも、迫力や音量ばかり追い求める学校が増え、『爆音系』が主流になってきた印象があります」と述べている。また、会場の特徴を、審査員経験があり東京佼成ウインドオーケストラでトロンボーン奏者だった萩谷克己は、「舞台が広く、反響板まで距離があるため、セッティング(楽器の配置)による有利不利が出にくい」と述べている。
初めて使用されたのは、第53回(2005年)大会である。この時は、立正佼成会大聖堂の改修事業に伴い、大聖堂の代替施設として普門館が利用されたことに伴うものだった。
第60回(2012年)大会からは、普門館の使用停止・参加団体の増加に伴い、中学の部・高校の部それぞれ全30団体の会場として当ホールが使われている。第71回(2023年)大会までは名古屋市で開催された。名古屋国際会議場が改修工事に入るため、第72回(2024年)は宇都宮市文化会館での開催が決定し、第73回(2025年)大会も宇都宮市文化会館での開催が検討されている。なお、宇都宮市文化会館で開催される第72・73回大会においては、中学生・高等学校の部において、前半・後半の2部制に加え、客席入替4部制にて行われる予定である。
第74回(2026年)大会においても名古屋国際会議場が使用できない可能性が指摘されている。
大学の部および職場・一般の部の全国大会は、会場は固定されていない。
近年では、東京文化会館・大阪府立国際会議場・アクトシティ浜松・宇都宮市文化会館など同一の会場で複数回開催される例もある一方で、Kitara・ミューズ・りゅーとぴあ・びわ湖ホールなど音響に優れた音楽専用のホールを会場として開催される例もある。
中学の部および高校の部とは違い、コンサートホールや、きちんとした反響板を備えている多目的ホールで開催されることが多いものの、一方で大阪府立国際会議場・仙台サンプラザなど響かないホール・横に長いホール・変則的な楽器の配置が必須となるホールで開催されることもある。
毎年会場を変えているため、会場の特性を把握できないまま本番に臨む団体がほとんどである。この場合、必然的にホールを知っている地元支部の団体が有利となる。持ち回り開催のため、このような問題がある。
2022年現在、大学、職場・一般の部の開催場所の固定化について支部理事会で検討が行われている。
各支部・都道府県・地区大会は、その地域のホールが主に使われる。
2004年まで東京都大会が普門館で主に行われていたものの、参加団体の増加などにより4日連続でホールを借りなければならず普門館では4日連続で行うことができなくなったため、2005年からほかのホールで行われている。
全日本吹奏楽コンクール徳島県大会は、長年会場として使用されていた鳴門市文化会館が休館となり、県内に開催条件に合うホールがないことから、2021年度から県外開催となっている。
2024年度 第72回大会
各種TV番組などで度々紹介される。
近年、全国大会の会場では出場団体の演奏を収録したCD-Rの当日販売が行われる。演奏を終えた団体の録音が演奏終了後15分程度で即売ブースに並ぶため、休憩時間などには熱心なファンが列を作る光景が見られる。また大会から1・2ヶ月程度で、実況録音・録画がCDやDVD、Blu-rayとして一般のレコード店やインターネット・ショップにて販売、iTunes等から音楽配信されている。
など(括弧内は主催者)
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