Goはプログラミング言語の1つである。Googleにおいて2009年ロバート・グリースマ、ロブ・パイク、ケン・トンプソンによって設計された。Goは、静的型付け、C言語の伝統に則ったコンパイル言語、メモリ安全性、ガベージコレクション、構造的型付け、CSPスタイルの並行性などの特徴を持つ。Goのコンパイラ、ツール、およびソースコードは、すべてフリーかつオープンソースである。
また、軽量スレッディングのための機能、Pythonのような動的型付け言語のようなプログラミングの容易性、などの特徴もある。Go処理系としてはコンパイラのみが開発されている。マスコット・キャラクターはGopher(ホリネズミ)。
発表当初はLinuxとMac OS Xのみしかサポートしていなかったが、2012年3月にリリースされたバージョン1.0からはWindowsもサポートされている。2014年12月にリリースされたバージョン1.4からAndroidをサポートし、2015年8月19日にリリースされたバージョン1.5からiOSをサポートしている。また、2011年5月10日に公開された Google App Engine 1.5.0でも、Go言語がサポートされている。2018年8月にリリースされたバージョン1.11からWebAssemblyをサポートした。
しばしばGolangやGo言語と表記されることがあるが、言語の正式名称はGoである。golangという通称は、公式サイトのドメインであるgolang.orgに由来するものである。このドメインになったのはgo.orgが取得できなかったからであるとされている。
また、公式のロゴではすべて大文字でGOと描かれているが、言語の名前としてはGoであるとされている。
2009年11月10日にGoが初めて発表され、バージョン1.0が2012年3月28日にリリースされた。GoはGoogleの本番システムの一部で使用されており、他の多数の企業やオープンソースプロジェクトでも使用されている。
主に次の2つの実装が存在する。
Goの起源はGoogleのエンジニアであるRobert Griesemer、ロブ・パイク、ケン・トンプソンによる、新しいプログラミング言語を設計する実験的なプロジェクトに端を発する。Googleなど、多くのIT企業ではソースコードの複雑さや肥大化が問題になっていた。他の言語がよく受ける批判を解決するとともに、それらの言語のよい特徴をできる限り損なわないようにすることを目指した。彼ら設計者たちは、新しい言語として、以下の特徴を持つものを構想していた。
後のインタビューで、3人の言語設計者すべてが、新しい言語を設計する主なモチベーションとしてC++が好きでないことを共有していたことを述べている。
バージョン1.6から、64ビットMIPS上で動作するLinux版および32ビットx86上で動作するAndroid版の実験的なポート(移植)が追加された。
2017年7月13日、バージョン2への取り組みへの開始が発表された。バージョン1.x系とバージョン2の開発は並行して行われ、バージョン1.20がバージョン2と同義となると宣言されている。
2018年4月、旧ロゴ(Gopherマスコット)がテキストと3本の直線からなる新しいデザインのものに変更された。しかし、マスコットはそのまま変わっていない。
2021年8月16日、バージョン1.17がリリースされる。64ビットのARMアーキテクチャー用のWindowsがサポートされる。バージョン2系は、Nightly Build系であり、公式にはリリースされていない。これは、プログラム・アーキテクチャーの変更がユーザーに多大な負担を与える事に配慮しているためである(Rustからの反省)。
次のコードはGoで書いたHello worldプログラムである。
次のサンプルプログラムは、Goの並行性機能をデモンストレーションする非同期プログラムの実装である。2つの"goルーチン"(軽量スレッド)を立ち上げている。一方はユーザーがテキストを入力するのを待機し、他方はタイムアウトを実現する。select文が2つのgoルーチンがメインルーチンにメッセージを送信するのを待機し、最初に到達したメッセージに対して動作を実行する(コード例はDavid Chisnallの本のコードを一部修正している)。
構文は様々な言語に部分的に類似している。変数などにおける型の記法はLimboから引き継いだものと思われる、型名を後置するもので、PascalやAdaに類似している。ブロックの区切りに波括弧を使う記法はC言語他多くと同様である。for文やif文では、条件式を丸括弧で括らず、帰結部分には波括弧が必須である。定数生成器iotaはASP由来である。他に、並列処理について、CSPを参考としている、チャネルによるスレッド間通信機能の構文がある。
Goにはユーザー定義の複合型を記述することのできる構造体の機能があり、下記のように記述する。
上記の例では、name
およびage
というフィールドを持つPerson
構造体の型を定義し、さらにその構造体に対応するPrintName()
およびPrintAge()
というメソッドを定義している。GoにはJavaのような言語が持つクラスやオブジェクトのような概念は無いが、実質的には構造体はそれらに近い役割を提供する。
Goでは、関数に(m *Person)
のようなレシーバーの宣言を追加してメソッドを定義する。レシーバーの宣言は (変数名 型名)
と記述する。レシーバー内の変数名は自由に指定が可能であり、受け取り方は値渡し、ポインター渡しの2種類から指定できる。
型とメソッドが切り離されており、型は一切メソッドに依存しない。メソッドと型は、メソッドの追加対象となる型名をレシーバーの型名に指定することで関連付けるようになっている。メソッドは型から切り離されているため型本体を変更する事なくメソッドを追加することが可能であり、同一パッケージ内限定ではあるが、開放された型を実現している。
Goには型自身を初期化したり終了したりする機能が存在しない。つまりJavaの静的イニシャライザやC#の静的コンストラクタに相当する機能がない。初期化は型に所属しない関数や、他の型のメソッドで行うようになっている。
Goではtype構文を利用して既存の型から新しい型を定義できる。
次の例では、int
型を元に MathInt
という新しい型を定義している。
これはC/C++におけるtypedefやC#におけるusingエイリアスディレクティブと違い、単に既存の型に別名を与えているのではなく、元のint
型と別の型を定義している点が大きく異なる。
新しく定義した型であれば、元の型が構造体型でなくともメソッドを追加することができる。例えばint
型やマップ型といった事前定義済み型 (組み込み型) に対してもメソッドを追加することが可能である。
事前定義済み型から新しい型を定義した場合、例えば下記のような記述が可能となる。
Go 1.9ではtypeキーワードを利用した型エイリアス (type alias) 構文が別途追加された。こちらはC/C++のtypedefやC#のusingエイリアスディレクティブと類似の機能である。
Goには継承が意図的に実装されていない。しかし匿名フィールドという機能を用いることで、ある構造体と同じフィールド、メソッドを持つ構造体を容易に作成することができる。
このようにして作られた構造体から匿名フィールドで用いられた元となる構造体の型に暗黙的にキャストするような機能は存在していない。
GoにはC++や他の言語における仮想関数を持ったクラスが存在しない。型に追加したメソッドは一種の非仮想関数である。Goにおいての多態はinterface型を使用して実現する。
interface型は実装を一切持たずメソッドの形式だけを定義した型であり、その点はC#など最近の言語のinterfaceと同じである。但し、Goのinterface型は、代入できる型との関連付けが不要である。interfaceに定義しているメソッドを全て持っていればどんなオブジェクトでも代入可能である。
Goにおけるinterfaceの例を下記に示す。
Goのinterfaceは、MLのsignatureや、かつてg++に存在したsignatureというC++拡張と全く同じ機能である。
Goではdefer
文という例外安全な強制実行のしくみを採用している。
defer
文は、defer
キーワードに続けて、関数呼び出しまたはメソッド呼び出しを記述することで関数終了時に指定した処理の呼び出しを実行する。
ファイルのオープンとクローズなど、組になる作業で両方行われる必要があるものに多く使われる。
defer
は下記の様に記述する。
defer
はブロックを持たず入れ子が深くなるようなことはない。ただし、関数以外のブロックを無視する点に注意が必要である。例えばループ中でdefer
を使用した場合、ループ内では指定した関数が呼ばれず関数終了時にdefer
で指定した全ての関数呼び出しが行われる。
defer
には、関数呼び出しまたはメソッド呼び出ししか記述できず、式や文を直接記述することはできないが、下記のように無名関数の即時実行を利用して、任意の式や文の実行も可能である。
他の言語で使われている方式の例外処理機能はない。Goにも例外があり、リカバーと合わせてtry-catch
のような事もできるが推奨されない。例外機能は、主に0除算など起きてはならないことに使われ普通は強制終了するが、リカバーによって強制終了しないようにする事も可能である。Goでは、事前に例外が起きないよう確認する事や、成功かどうかのBool値を返す事のような、例外を起こさない方法が好まれる。
Goはインターフェース型の値から、基底型の値(インターフェース型に変換される前の型の値)を動的に安全に得るダウンキャストの仕組みとして「型アサーション」と呼ばれる機能を備えている。
標準パッケージのreflectを使うことで、対象の値型やその値などの詳細を得ることができる。
Goには名前とモジュールを管理するために、パッケージという仕組みを持っている。
基本的なパッケージの使用例を下記に示す。
Goには多彩なimport
文が存在するが、その構成要素は、別名の指定とGoのソースを格納したフォルダーの指定(またはパッケージバイナリー)という非常に単純なものである。Goでは名前管理とモジュールの取り込み指定を一つの構文にまとめる事で、他の言語では煩わしいモジュールの結合を簡潔なものとしている。
Goの名前管理の特筆する点として名前解決の方法として階層型の名前空間ではなく別名の仕組(のみ)を採用している点が挙げられる。名前解決をするために長い名前を記述する煩わしさはない。
更にGoにはモジュール管理の点でも特筆すべき点がある。Goはソースファイル中に一つ初期化関数(init
)を定義する事で、初期化関数により実行時に広域変数を初期化できるという機能を持っている。この初期化関数が呼ばれるソースファイルは、main
関数の定義されたソースファイルから連鎖的にimport
されたパッケージに含まれるソースファイルだけである。この特性により使う予定もないのに初期化コードが実行されるおそれはない。また、パッケージが初めて参照されるまで初期化が遅延されてしまうという事もない。
Go には、型レベルのアクセス指定子が存在しないが、パッケージレベルでのアクセス制御が存在する。パッケージレベルでのアクセス制限はシンボル名(変数名、メソッド名、関数など)の先頭一文字目が大文字か小文字かで決定する。大文字であればパッケージに対し公開され、小文字であれば非公開となる。
型の継承、アサーション、オーバーロードといった機能をあえて提供していない。FAQにおいてオーバーロードは効率的見地から排除されたことが述べられている。関数は多値を返すことができるので、それによりエラーの報告は容易である、としている。
Go言語の処理系は2種類ある。
gc
はGo言語で実装されたセルフホスティングのGo言語コンパイラである。バージョン1.4以前はC言語で実装されていたが、バージョン1.5でC言語からGo言語への変換ツールでコンパイラの実装言語を切り替えて、以降はGo言語で開発している。構文解析にyacc・bisonを使用している。
Gccgo
は、再帰下降パーサを持つC++フロントエンド、バックエンドに標準GCCを利用したサードパーティー開発のGo言語コンパイラである。
Goのtourを直接ダウンロードして、オフラインで学習することも可能である。方法としては、まずオフィシャルサイトから最新版のgo-langをダウンロードしてインストールした後、go install golang.org/x/website/tour@latest
を実行することで必要最小限のファイルがダウンロードされる。その後、tourを実行することで、オフラインでGoの文法を学ぶことができる。
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