タイ・カダイ語族(タイ・カダイごぞく、Tai-Kadai languages)またはクラ・ダイ語族(クラ・ダイごぞく、Kra-Dai languages)は、東南アジア(タイ、ラオス、ベトナム)から中国南部で話される言語の語族であり、代表的なものとしてタイ語、ラーオ語があり、その他多数の少数民族の言語を含む。
タイ・カダイ諸語(カム・タイ語群とも)をシナ・チベット語族のシナ語派およびチベット・ビルマ語派、ならびにミャオ・ヤオ諸語(ミャオ・ヤオ語族)と合わせて、シナ・チベット諸語と呼ぶこともある。
中国南東部で特に多様性があり、この付近が故地と考えられる。タイ・ラオスには歴史時代に入ってから雲南省方面から住民が移住したのであり、それまでこの付近はオーストロアジア語族住民で占められていた。
基本的に単音節的孤立語で声調言語であり、語順はSVO型で、修飾語は被修飾語のあとにつくのが普通である。これらの性質は中国から東南アジア大陸部の広い範囲の言語と共通するが、これは系統的な性質というより、地域特性(言語連合)と考えられる。
ベトナム語も似た性質を持っているが、基本的にはオーストロアジア語族である(タイ・カダイ語族の強い影響を受けて変化した)と考えられている。
分類
Edmondson & Solnit(1997)による分類を以下に掲げるが、確定した分類ではない。
- 黎語派 (Hlai)
- 加茂語 (Jiamao) - (海南島)
- 黎語 (Hlai) - (海南島)
- カダイ語派 Geyang languages
- 夜郎語 (Yelang) - (中国、夜郎)
- 仡佬語 (Gelao) - (中国、ベトナム)
- 拉基語 (Lachi) - (ベトナム)
- White Lachi (ベトナム)
- 布央語 Buyang (中国)
- 村語 Cun (海南島)
- En (ベトナム)
- 普標語 (Qabiao) - (ベトナム)
- Laqua (ベトナム)
- Laha (ベトナム)
- カム・タイ語派Kam-Tai languages
- Be-Tai languages
- 臨高語 (Ong Be) - (海南島)
- タイ・チワン諸語
- チワン語
- タイ族諸言語
- 北部タイ諸語
- 中央タイ諸語
- 南西タイ諸語
- 南タイ語
- Chiang Saen languages
- Lao–Phutai languages
- Northwestern Tai languages
- シャン語 (Shan)
- 傣仂語 (Tai Lü)
- 傣哪語 (Tai Nüa)
- en:Tai Phake language
- en:Tai Aiton language
- カムティ語
- セック語Saek (ラオス)
- Lakkia-Kam-Sui languages
- Lakkia-Biao languages (中国)
- カム・スイ諸語 (中国)
- 錦語 Ai-Cham
- 草苗語 Cao Miao
- 北トン(侗)語 Northern Dong
- 南トン(侗)語 Southern Dong
- Kang
- 莫語 Mak
- ムーラオ(ムーラム・仫佬)語 Mulam
- マオナン(毛南)語 Maonan
- 水語 (Sui)
- 佯僙語 T’en
話者数
他の語族との系統関係の仮説
- オーストロ・タイ語族
- 複数の学者によってオーストロネシア語族との関連性が提示されている。両語族の核となる語彙には、同根語がある。Ostapirat (2013)は両者は姉妹語であるとし、ロジャー・ベンチ (2018) はオーストロネシア語族話者が台湾やフィリピンから大陸に逆移住したことでタイ・カダイ語族を生じたとしている。
- シナ・タイ語族
- タイ・カダイ語族はかつては、語彙の多くが類似していることから、シナ・チベット語族の一員と考えられていた。しかし、それらに基礎語彙は含まれず、タイ・カダイ語族の全ての系統で見いだせるわけではないため、古い借用語と考えられている。
- モン・ミエン語族
- Kosaka (2002)はタイ・カダイ語族とモン・ミエン語族の関連性を論じた。加えて、オーストロネシア語族との関連性や、さらに古い祖先(東アジア祖語)についても論じた。
- 日本語族
- Vovin (2014)は日本語族の原郷を中国南部に想定した。Vovinは、日本祖語が単音節のSVO構文であり、タイ・カダイ語と同様の孤立語であった可能性を示す類型論的証拠を示した。ただし、これらの共通特徴は遺伝的関係ではなく、激しい言語接触によるものとしている。
関連項目
脚注
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