『顔』(かお)は、松本清張が1956年10月に出版した短編集。松本清張による初めての推理小説短編集として、1956年10月、講談社ロマン・ブックスより刊行された。第10回(1957年)日本探偵作家クラブ賞受賞作。
及び当該短編集に収録された表題作の短編小説。
本短編集により1957年3月、第10回日本探偵作家クラブ賞を受賞した。日本探偵作家クラブ会長・木々高太郎は、清張の作品のいずれを選ぶか種々意見は分かれいろいろ議論された結果、『顔』その他として、圧倒的な支持により全会一致で受賞が決定した旨を述べた、という。
「顔」(かお)は、松本清張の短編小説。『小説新潮』1956年8月号に掲載、1956年10月短編集『顔』に収録された。
またはそれを原作とする映画、テレビドラマ。
東京の劇団で役者として活動する井野良吉に、映画出演の話が舞い込んだ。しかし良吉には、全国的に顔が売れることを恐れる理由があった。良吉は9年前に、妊娠したからと結婚を迫るガールフレンドの山田ミヤ子を殺していたのだ。
9年前、温泉旅行を口実にミヤ子を連れ出した良吉は、殺害の前に、ミヤ子の知り合いである石岡貞三郎に顔を見られていた。この9年間、良吉は興信所を使って、貞三郎の動向を調べ続けていた。これまでは、島根県に住む貞三郎と顔を合わせる心配はなかったのだ。
良吉は、ミヤ子の親戚を装って、貞三郎を京都に呼び出した。ミヤ子の殺害犯を見つけたので面通しをして欲しいという口実で、貞三郎を殺すことが目的だった。しかし、貞三郎は途中で偶然に出会った良吉の顔に気づかなかった。貞三郎は犯人の顔を覚えていない。安堵した良吉は殺害計画を中止し、映画スターとして脚光を浴び始めた。
その映画を見た貞三郎は、良吉の些細な仕草から、自分が目撃した殺人犯が良吉であることを思い出すのだった。
1957年1月22日に松竹系にて公開された。松本清張原作の初映画化作品。現在はDVD化されている。主役は新進のファッションモデル・水原秋子となっている。
東海道線の夜行列車から、男が転落死する事件が起きた。男は、闇で堕胎手術を請け負う飯島という無免許医だった。当初は事故と判断されたが、病院の死体置き場に未知の女性から花束が届けられた。刑事の長谷川は、これは殺人ではとの疑念を深めた。
匿名で花束を送ったのはファッションモデルの水原秋子だった。夜行列車から飯島が転落したのは、秋子との口論が原因だったのだ。秋子は少女の頃から一人ぼっちで苦労し、水商売から人気モデルにまで成り上がった女だった。
そんな秋子の前に、石岡三郎が現れた。石岡は秋子と飯島が夜行列車で言い争う現場を目撃していたのだ。目撃情報を警察に売り、見覚えのある顔だからと、刑事と共にファッションモデルのいる会場を巡る石岡。しかし、秋子を見つけ出しても、石岡は刑事に事実を告げなかった。
警察は抜きで、秋子に接近する石岡。石岡の殺害を決意する秋子。しかし、手を下す前に石岡はトラックに轢かれて死亡した。安堵して恋人の江波の家に戻る秋子。だが、事前に石岡の訪問を受けていた江波は、もはや秋子を信じることが出来なくなっていた。
刑事の長谷川は、堕胎手術の関係者の線から捜査を進め、秋子に辿り着いていた。行き場を失い、モデル会場で立ち尽くす秋子の元へ、刑事たちが到着した。
他
1958年7月29日に日本テレビ系列の「山一名作劇場」枠(20時 - 20時30分)にて放送された。
1959年8月27日にフジテレビ系列の「木曜観劇会」枠(20時 - 21時45分)にて放送された。
1960年11月7日と11月14日(20時30分 - 21時)にKRテレビ(現:TBS)系列の「ナショナル ゴールデン・アワー」枠、「松本清張シリーズ・黒い断層」の一作として2回にわたり放送された。
1962年10月25日と10月26日(22時15分 - 22時45分)にNHKの「松本清張シリーズ・黒の組曲」の1作として2回にわたり放送された。
1963年9月15日にNET(現・テレビ朝日)系列の「シオノギ日本映画名作ドラマ」枠(22時 - 23時)にて放送された。主演は映画と同じ大木実(ただし別の役)。
1966年3月29日に関西テレビ制作・フジテレビ系列(FNS)の「松本清張シリーズ」枠(21時 - 21時30分)にて放送された。
『松本清張おんなシリーズ・心の影』のタイトルで、1978年6月4日にTBS系列の「東芝日曜劇場」枠にて放送された。視聴率19.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。新劇の女優・良枝を主人公としている。
『松本清張の「顔」・死の断崖』のタイトルで、1978年11月18日にテレビ朝日系列の「土曜ワイド劇場」枠にて放送された。視聴率14.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
『松本清張の「顔」』のタイトルで、1982年9月3日から9月24日まで、TBS系列の「金曜ミステリー劇場」枠にて連続ドラマとして放送された。平均視聴率18.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。ライブハウスの人気歌手・夏川ケイを主人公に設定している。
『松本清張特別企画・顔』のタイトルで、1999年10月7日の21時 - 22時54分にTBS系列にて放送された。視聴率15.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。女優を目指す井野良子を主人公に設定している。
松本清張生誕100年を機に「松本清張ドラマスペシャル」としてテレビドラマ化され、NHK総合にて2009年12月29日の21時から22時13分に放送された。主演は谷原章介。時代設定は原作同様に昭和31年とその9年前となっている。DVD化されている。
『松本清張スペシャル 顔』のタイトルで、2013年10月3日の21時 - 23時14分にフジテレビ開局55周年特別番組として放送された。主演は松雪泰子。
時代設定は原作同様に昭和22年とその9年後としている。
『テレビ朝日開局65周年記念 松本清張 二夜連続ドラマスペシャル』の第一夜として、2024年1月3日にテレビ朝日系列で放送された。主演は後藤久美子と武井咲。後藤は1994年放送のドラマ「誰よりも君のこと」以来30年ぶりかつ女優復帰後初のテレビドラマ出演となった。
今回は舞台を「現代・歌手」に置き換え、武井が人気アーティスト役として、2011年発表のシングル曲「恋スルキモチ」以降久々の歌唱に臨んだ。終盤の歌番組での歌唱シーンの演出は「ミュージックステーション」のチームが協力した。
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