第17回統一地方選挙(だい17かいとういつちほうせんきょ)は、地方自治体の首長および議会議員を全国一斉に改選するため、2011年(平成23年)に行われた日本の統一地方選挙である。4月10日と4月24日の2回に分けて行われた。
選挙は都道府県の首長(知事)と議員、および政令指定都市の首長(市長)と議員を選出するための選挙が4月10日に、続いて基礎自治体の市区町村の首長(市長、区長、町長、村長)と議員を選出するための選挙が4月24日に執行された。2010年(平成22年)11月30日の衆議院本会議で選挙実施に必要な特例法が可決・成立し、日程が決まった。
2009年(平成21年)に国政の政権交代が実現してから初の統一地方選挙ということもあり、民主党政権に対する事実上の審判の意味合いを持った選挙と目された。大阪府・愛知県では地域政党と既存政党との対立が争点としてクローズアップされていたが、直前の3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下東日本大震災)の影響で、他地域と同じく防災・原子力発電所の扱いも幾分争点になっている。
また、東日本大震災の影響を考慮して選挙の期日を延期する法案が3月18日に参議院で可決され、3月22日に公布された。これにより総務大臣によって指定された地域では、選挙期日が2か月から6か月の範囲内で延期されることになった。この中には、加藤宏暉町長が震災の津波で死亡して首長を欠いたままだった岩手県大槌町も含まれる。その後さらに、選挙期日を最大2011年12月31日まで再延期する法改正が行われている。
平成生まれの者が選挙権(当時は20歳以上)を得た最初の統一地方選である。
相模原市と岡山市は、この回から政令指定都市として前半戦での選挙実施となる。相模原市は札幌市と同じく、県知事選・県議選・市長選・市議選の4つが同日選挙(カルテット選挙)となった。
5月27日付および7月7日付の指定により、統一地方選挙の日程にはなかった以下の首長・議会の選挙についても延期された。
千葉県議会議員選挙において、後述の経緯により浦安市選挙区で「当選者なし」の結果となったため、再選挙が5月13日告示、5月22日投開票で実施された。
東日本大震災を理由として延期された岩手県を除く12都道県知事選挙に立候補した候補者は以下の通りである。民主党と自民党による2大政党の対決型選挙は、北海道と三重県だけに留まり、前回の5つから半減した。
(太字は2011年4月現在、衆議院又は参議院に議席を有している政党)
東日本大震災で被災したため選挙が延期された岩手県と宮城県、福島県を除いた41道府県議会議員選挙には、過去最低となる3,457名が立候補した。党派別では政権与党の民主党、地域政党を含めた諸派が前回を上回る候補者を擁立した一方、自民党や公明党、共産党、社民党の候補者数は前回を下回った。
政令指定都市市長選挙に立候補した候補者は以下の通りである。5つの指定市長選挙のうち、浜松市長選挙は現職の鈴木康友以外に立候補届け出がなかったため、無投票で鈴木の当選が決まった。
(太字は2011年4月現在、衆議院又は参議院に議席を有している政党)
市長および区長選挙は、17日に告示された。市長選挙は、津市(三重県)、高松市(香川県)、長崎市(長崎県)、大分市(大分県)の県庁所在都市4市を含む88市で、区長選挙は世田谷区や渋谷区など13区で行われた。市長選挙では203人が立候補した。このうち、現職の大西秀人が無投票再選された高松市を含む9道府県の15市で無投票当選となった(前回は19市)。区長選挙には46人が立候補を届け出た。
町村長選挙は19日に告示され、選挙が告示された121町村で201人(うち女性は6人)が立候補し、58町村で無投票当選となった。なお立候補者は全員が無所属候補である。
市議会選挙(293市)と区議会選挙(21区)は17日に告示された。市議選では9市116人が無投票当選となった。
19日に告示された町村議会選挙では、定数4423議席に対して5026人が届け出た(うち女性は466人)。この内84の選挙では定数を上回る候補がなかったため、893人が無投票当選となった。
選挙の結果、地域政党の大阪維新の会は議席を倍増させ、大阪府議会の過半数を獲得。社民党の全国議席数を上回った。同じく地域政党の減税日本・日本一愛知の会も議席を伸ばし、みんなの党も社民党を上回る躍進となった。たちあがれ日本は、初めて当選者を出した。
既成政党は低調で、特に政権与党である民主党の苦戦が目立った。これは党の内紛および、震災・原発事故への対応における批判が影響している。民主党は改選時に比べ69議席減。当選率は61%と、前回より18%ポイント低下した。自民党は改選時からは128議席を減らしたが、21県で公認のみで単独過半数を維持した。共産党・社民党も、それぞれ議席を減らし、国民新党は議席を失った。公明党は4議席を増やしたが、地方選挙としては5年6ヶ月ぶりの落選者を出した。
千葉県議会選挙浦安市選挙区(定数2)では、後述の千葉県議会議員選挙の浦安市での選挙事務執行停止問題により「当選者なし」となり、再選挙が実施されることになった。
投票日:2011年(平成23年)4月24日
北海道江別市・赤平市・三笠市・千歳市・伊達市、埼玉県行田市、福井県あわら市、新潟県加茂市、岐阜県多治見市、大阪府大阪狭山市、京都府京田辺市・木津川市、香川県高松市の13市長選挙は、現職市長以外の立候補者がおらず無投票当選が決定した。また、北海道砂川市と茨城県日立市は新人一人(いずれも民主・自民・公明相乗り)のみの立候補しか届け出がなく、こちらも無投票当選が決定した。なお市長選挙当選者88名中87名は無所属候補(無投票当選含む)である(残る1名は大阪府の諸派候補)。町村長選挙では58箇所で無投票当選となった。
告示時期の直前に発生した東日本大震災によって、被災した多くの自治体で選挙自体が延期されたことがこの選挙の最大の特徴であるが、その他にも以下の点が挙げられる。
この選挙を大きく特徴づけたのは、地域差はあるものの、震災直後からの自粛ムードの広がりが選挙活動にも及んだことであった。有権者の間に、この時期に選挙を行うこと自体への疑問や批判、選挙どころではないという雰囲気があり、候補者もそうした有権者、あるいは直接被災した有権者や選挙区内に避難した被災者の心情に配慮して、出陣式や選挙カー、街頭演説を控えるなど選挙活動の自粛が各地で見られた。これにはガソリンの供給不足や計画停電といった、物資・環境面での制約要因も影響している。さらには、選挙活動ばかりか立候補そのものを見合わせるケースもあり、無投票当選を増やす要因にもなった。自粛ムードは候補者だけでなく、選挙管理委員会による啓発活動にも及んだ。
この選挙に限ったことではない日本の地方選挙の特徴であるが、上述の要因に限らず、選挙の実施前から政策の競り合いの乏しさ、無投票当選の多さが指摘されている。4月1日に告示された道府県議会議員選挙(総定数2330名)では、立候補者が過去最低(3457名)となったこともあり、無投票当選は前回(392名、東日本大震災で選挙が延期された地域を除外)を上回る410名となった。特に衆院小選挙区2議席を自民党が独占し、民主党の基盤が弱い島根県では70.27%と全国一高い無投票当選率を記録した。
九州・山口の県議会選挙では、全体の3割以上が無投票となる見通しであることを「読売新聞」が報じた。保守的な地盤であること、農業など有力団体の支援により現職議員の地盤が強固であり、対抗馬が生まれないことが理由に挙げられる。
福岡県議会選挙は46選挙区のうち13選挙区で定数通りしか立候補届け出がなく、1日の告示と同時に、前回同様20名(前回は18選挙区20名)が無投票当選した。一方、前原市・糸島郡(定数2)では無投票の伝統が破られ、実に20年ぶりの選挙が実施された。大都市(政令指定都市)でも、愛知県名古屋市中区(定数1)では、それまで自由民主党所属議員が無投票で当選していたものの、減税日本が候補者を擁立したため、実に12年ぶりの選挙戦になった。
全国の道府県議選挙と政令市選挙の候補者の中には、菅直人首相の支持率低下や民主党の内紛を嫌って、公示前に民主党の公認・推薦を辞退する者が続出した。民主党によると、道府県議選で38人、政令市議選で12人が辞退した(延期となった選挙を含む)。
愛知県議会選挙では日本一愛知の会へ2名、減税日本へ1名が民主党の公認・推薦を反故にした上でくら替えした。岐阜県議会選挙では、減税日本へ1名がくら替え、民主党の推薦を取り消された。
国民新党は4月1日深夜に至って、民主党が郵政改革法案を審議する衆院特別委員会の設置を拒否したことへの「報復措置」として、民主党の統一地方選挙候補者683人のうち385人の推薦を取り消した。推薦を取り消された候補者が公示後に「国民新党推薦」の表記を用いた選挙公報やポスターを用いた場合、公職選挙法に違反し、虚偽事項公表罪となる。公示直前の国民新党の報復に対して民主党は猛反発し、連立与党内に深刻な亀裂が入った。
一部の選挙区では、与党である民主党が擁立に奔走したものの、党内の内紛やそれに伴う支持の低下により、候補者を擁立することを断念している。
今回の統一地方選挙、およびその前哨戦においては、減税日本が名古屋市議会で第一党の地位を獲得したり、大阪維新の会が大阪府議会・大阪市会・堺市議会で第一党の地位を確保するなど地域政党の躍進が目立った。
福岡市議会選挙早良区では、曾祖父から続く4代目を目指す36歳の男が出馬した。街頭で配るチラシには「息子に託しました」「父を超えたい」と、一般的には忌避される世襲を堂々とアピールしたが、男は「地元で家名が知れ渡り、隠そうとしてもみっともないだけ」と話した。この候補者は当選している。
統一地方選後半選として行われた豊島区議会議員選挙・中野区議会議員選挙で、LGBTであることをカミングアウトして立候補した石川大我(社民党)・石坂わたるがそれぞれ当選を果たした。
千葉県浦安市は液状化現象による被害が著しく、災害救助法の適用を受けた。しかし、千葉県議会議員選挙については、松崎秀樹市長と市の選挙管理委員会が求めていた浦安市選挙区のみの選挙期日の延期が認められず、2011年4月1日に告示された。これに対して市長と市選管は、市民生活および投票所周辺への被害が著しく、市役所職員が対応に追われているため正常な選挙を行うことができないとして、選挙事務の執行を拒否し続けた。そして、告示の翌4月2日からの開始が公職選挙法で義務付けられている期日前投票は投票所が設けられず、投票整理券も発送されず、ポスター掲示板も設置されなかった。
千葉県選挙管理委員会は予定通り実施する姿勢を変えず、市選管に対して4月1日には地方自治法に基づく勧告を、2日には同法に基づく是正指示を行った。この問題について、森田健作千葉県知事は3月31日には県選管と市選管に対話を求めるコメントを発表し、4月5日には県選管と同じく地方自治法に基づく勧告を行った。
結局、浦安市選挙区では4月10日の投開票事務も行われず、定数2に対して3名が立候補を届け出ていたが、「当選者なし」、5月以降に再選挙を実施するという異例の事態となった。
現職2人は4月29日で任期満了となり失職し、再選挙が実施されるまで、県議が欠けた状態となった。片山善博総務大臣はこの問題について参議院総務委員会で、再発防止策として法的な解決策も検討すると述べた。
再選挙は5月13日に告示され、4月まで現職だった自民党(内田悦嗣、のちの浦安市長)と民主党の候補者2人が再度立候補した他、1回目の選挙に立候補した無所属の新人が出馬を見送った一方、みんなの党から新たに1人が立候補した 。5月22日に投開票が実施され、4月までの現職2人が再選された。
なお、同市では市議会議員選挙も予定されていた。こちらについては、市長と市選管が4月4日の会見で、告示までにライフラインが復旧する目処が立ったため必要な人員を確保して予定通り実施できるとの見通しを示しており、4月17日に告示が行われた。ただし県議選とは異なり、被災や復興支援活動の優先を理由として立候補の辞退が相次いだ。
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