『フラクタル』 (FRACTALE) は、A-1 Pictures制作の日本のテレビアニメ。2011年1月から3月までフジテレビ・ノイタミナ枠などで放送された。
山本寛監督にとって初のオリジナルテレビアニメ。アニメーション制作はA-1 Picturesで、山本が当時、代表取締役を務めていたアニメ会社Ordetがプロダクション協力に加わっている。ストーリー原案は小説「クォンタム・ファミリーズ」で三島由紀夫賞を受賞している批評家・哲学者の東浩紀、シリーズ構成は岡田麿里が担当した。
山本ら3人は、この作品のために2009年12月から合宿を行うなどして企画を練って臨んだ。放映開始前、山本はオリジナルアニメシリーズを手掛けることについて「原点ともいえる冒険活劇に立ち戻ることができた事はありがたいと思っています」と周囲への感謝を述べるとともに「言いたいことは全部作品に込めました。作品を見てくださいとしか言いようがありません」と決意を語り、それに対して東は「今流行しているアニメとは違うものを作るんだ、という(山本の)熱意に共感しました」と述べていた。
「フラクタル」というタイトルは、監督の山本が、北野武が映画『TAKESHIS'』の仮タイトルとして発表していたものを流用した。
作品は32世紀のアイルランドを舞台としており、いくつかのエピソードでゴールウェイに実在する場所が登場する。物語の発端となる主人公クレインの住む島は東の提案にもとづきアラン島をモデルにしている。
フジテレビの「ノイタミナ」枠で放送されたが、番組枠の開設以来製作に関わってきたアスミック・エースは、本作を持ってスポンサーから撤退している。番組の視聴率が同枠のワースト記録を作ったことについて、フジテレビプロデューサーの山本幸治は「これは作品の良し悪しではなく、プロデューサーの責任だ。」と述べている。
番組終了後、東浩紀はインタビュー等で山本寛と脚本の方向性をめぐって対立し、一時は降板も考えていたことを明かしている。また山本の方は、2016年に岡田斗司夫と対談した際に「俺何やりたかったんだろう?と思って、非常に困ったのが『フラクタル』です」と当時を振り返っている。
22世紀に確立された世界を管理する「フラクタルシステム」。それはネットワーク化された数兆の計算機の総体で、人体に「フラクタルターミナル」を埋め込みライフログを定期的に高々度浮遊サーバに送信することで全ての人が基礎所得を受け取ることができるシステムである。これによって、働く必要も争う必要もなくなり、人類は楽園のような生活を手に入れた。そして、「ドッペル」と呼ばれるアバターを使うことによって、どこでも好きな場所から自由にコミュニケーションを取れるようになって以来、多くの人は定住せずに悠々自適に暮らす個人主義の社会が形成されていた。
しかし、システムの恩恵が得られてから1000年が経過し、電波を中継する「バルーン」の殆どが故障し、システムは崩壊の危機にあった。だがもはやシステムを管理する「僧院」ですらシステムを修復する術を忘れてしまい、残された手段は再起動だけだった。
この世界で珍しく家を構えドッペルも持たない少年クレインは、ある日システム再起動の鍵となる僧院の少女・フリュネと出会う。クレインは、フラクタルシステムを否定する「ロストミレニアム」の一派「グラニッツ一家」に追われていた彼女を保護するが、翌日彼女はブローチを置いて消えてしまう。残されたブローチを解析すると、中からネッサと名乗る少女のドッペルが現る。
その後二人はグラニッツのエンリ達に拉致され、僧院の「星祭り」の妨害に連れて行かれる。そこでクレインは、ただの祭典だと思っていた星祭りが、実は体内のナノマシンをアップデートすることによって、フラクタルシステムに疑問を抱かないようにさせる洗脳行為であることを教えられる。その時クレインは僧院の人の中に、フリュネの姿と、彼女を「お姉さま」と呼ぶネッサと瓜二つの少女の姿を見つける。
グラニッツのリーダー・スンダはフリュネを拉致するが、それが切っ掛けとなり、僧院に指名手配されることとなる。クレイン達3人もグラニッツの船「ダナン」に乗り、逃亡生活を共にする。その道中、システムの故障によりシステム圏内を求めてさまよう難民の姿や、ロストミレニアムの「アラバスター」のディアス達が彼らを騙してターミナルを除去し、強引に仲間に引きこむ姿を見る。クレインは、ロストミレニアムのやり方に疑問を抱く一方で、彼らと生活するうちに、システムに魅力を感じなくなっていった。
それから暫くして、クレインとネッサはシステムが完全に機能している「完全都市」ザナドゥに偶然たどり着く。僧院のウィルス攻撃によって熱を出したネッサを、都市に住むミーガンとコリンが介抱するが、ミーガンは賞金欲しさに僧院に通報。それに気づいたクレインは逃げ出すが、コリンの攻撃によりクレインが重症を負ってしまう。助けに現れたフリュネは、通報を受けて現れたバローにクレインの治療と引き換えに投降する。
僧院のとある施設で目が覚めたクレインは、ネッサと瓜二つの少女「フリュネ」と再会する。クレインは彼女に案内された施設の中で、ガラス管の中に浮かぶ無数の「フリュネ」達と、その「フリュネ」達が次々と処分される様子を目撃する。グラニッツと共に駆けつけたネッサの力を借り、クレインはバローに弄ばれていたフリュネと共に逃げ出す。だが、アラバスターの攻撃によって施設が破壊され、少女のフリュネも犠牲となってしまう。
この事件をきっかけとして、僧院は祭司長モーランが全世界にロストミレニアムの排除する旨の演説を行い、フラクタルに依存する人々の敵意がロストミレニアムに向けられる。だが同時に、フリュネとネッサがシステム再起動の鍵となることに気づいていたディアスの意見により、僧院との全面対決が決まり、ロストミレニアムは僧院の本拠地である「軌道エレベーター」へと向かう。スンダに村に残るように命じられた3人は「ずっと一緒にいようと」約束するが、フリュネは祭司長モーランを説得して全てを終わらせるため、また一人で僧院へと行ってしまうが、クレインもまたネッサとと共にフリュネを追いかけるのだった。
僧院へと戻ったフリュネは、141923番目の「フリュネ」であるモーランに、戦闘停止とネッサを見逃すよう願い出るが、モーランはそれを拒絶した。フラクタルの再起動を「人類のため」と口にしてきたモーランだが、フリュネと違い「鍵」にもなれず、誰からも愛されなかった彼女は、世界に対する復讐として、システムを維持することによって人類をシステムに依存させ、緩やかに滅ぼそうとしていた。
同じ頃、ロストミレニアムと合流したクレイン達はスンダとディアスの手を借りて僧院へと乗り込むが、ディアスはシステムの再起動を阻止するため、フリュネの殺害を目論んでいた。クレインはモーランの本心を知り逃亡していたフリュネと再会するが、その場に現れたバローにフリュネが捕まってしまう。そして、クレインにシステムの「鍵」に纏わる過去を話し始める。
システムが作られた当時、再起動の鍵となるある少女の生体データが登録され、それは肉体と心の二つに分けられた。そして長い年月が流れ、再起動の時が迫った時、なぜか鍵は機能しなかった。僧院は長い間10歳の少女のクローンを作り続け、彼女たちに心を入れてみたが、どれも機能しなかった。クレインが以前見た施設はそのクローン達の処分場であった。
さらに年月が経ち鍵を作る仕事を任されたバローは偶然、鍵となった少女が父親から受けた性的虐待によって二重人格となり、16歳の肉体に10歳の心を宿していたことを知る。真実を知ったバローは同じように16歳となった152589番目となるフリュネを同じように陵辱し、鍵となるフリュネを作りだしたのだった。
バローは勝ち誇った笑みを浮かべるが、その直後にフリュネによって刺され、フリュネは再び逃亡した。事実を告げられ混乱するクレインだったが、合流したエンリに一喝され急いでフリュネの後を追う。だがモーランはシステムを再起動させるため、フリュネを最上階の「空の屋根」へと誘う準備を進めていた。スンダ達と共にフリュネに追いついたクレインだが、その場に現れたディアスがモーランと共に自爆した。混乱の中、スンダは3人を「空の屋根」へと向かうエレベーターに乗せると、再起動させるか否かの選択を3人に託し、「空の屋根」へと送り出した。
ネッサは激しいダメージを受けたことで存在が消えつつあった。ネッサを助けるため、フリュネはネッサと一つとなってシステムを再起動させようと考える。クレインは自分がフリュネを想っていること、だから3人で決めようと伝える。「空の屋根」へと辿り着いた3人は、鍵となった少女の映像を見る。辛い過去を背負いながらも笑っている少女の姿を見たフリュネは再起動を決意した。
それから1年。システムは再起動したが、これまでシステムを管理していた僧院が消滅したことによって、次の再起動は不可能となった。システムに依存してきた人々は、グラニッツのリーダーとなったエンリの指導のもと、徐々にロストミレニアムと同じ昔ながらの生活様式に移っていった。クレインは、再起動以来眠り続けるフリュネと共に生活していたが、ある日フリュネが目覚める。フリュネはクレインの想いに応え、自分もクレインが大好きだと伝える。クレインは涙してフリュネを抱きしめるのだった。
フラクタルシステムを否定するロストミレニアム運動内の一派。全員がフラクタルターミナルを摘出しているためシステムの恩恵は受けられず、ドッペルもバイザー等を付けなければ見ることが出来ない。落下してきた、フラクタルの「星」(=バルーン)を集めて造った「ダナン」と呼ばれる船を持っている。食事も、家族一緒にとるようにしている。移動するときは、なるべくフラクタルシステムの「圏外」を選んで、活動している。「圏外」ではないときは、近くの住民の許可を得ている。「星祭り」の襲撃の後、一家全員が指名手配犯(賞金首)となった。
フラクタルシステムを管理する組織。巫女が願いを捧げ星の加護を受ける儀式「星祭り」等を行い、システムを維持し続けている。元は、科学組織だったが、千年という長い時間が経つにつれ、今は宗教の様相も呈している。「鍵」と呼ばれる者を使って、崩壊しつつあるフラクタルシステムの再起動をしようとしている。軌道エレベーターの中継地点を「僧院」の一大拠点としている。
アニメ評論家の藤津亮太は、放送終了後、朝日新聞のコラムで「現在のアニメの寓意に見える」「アニメによるアニメ業界批評にも見える作品」などと評している。脚本家の沼田やすひろは本作について、スタジオジブリのスタイルに囚われすぎている点と、主人公の動機が曖昧な点を批判している。アニメ評論家の氷川竜介は、公式本の寄稿において「きれいに破綻なく作る、どう売れスジに乗せるかという現在主流の価値観からすれば、これは決してよくできたテレビアニメとは言えない。あまりにいびつに感じられる点が多い」と指摘している。
BDとしてはねんどろいどぷち付きの数量限定生産版(1-2巻のみ)と初回限定生産版、DVDは初回限定生産版1系統のみと計3系統で発売されている。第1巻のみ2話収録で第2巻以降は各巻3話収録となり、全4巻。
発売元はアスミックエース・フジテレビ、販売元は東宝である。
各巻ともパッケージイラストはキャラクター原案の左描き下ろしで封入特典にはブックレットとポストカード、劇伴ピアノ楽譜が封入されている。
各巻のオーディオコメンタリーは全話に収録されているわけではなく、各巻の中で特定の1話のみの収録である。
漫画(コミカライズ)版がアニメに先駆け、スクウェア・エニックスのウェブコミック配信サイト『ガンガンONLINE』にて2010年9月30日更新分から2011年11月17日更新分まで連載された。作画は赤﨑睦美。内容はアニメに準拠したものとなっている。
2011年6月、作者の赤﨑がブログで原作アニメを非難したことが物議を醸し、激怒した監督の山本が連載の打ち切りを示唆した。翌7月に赤崎が製作委員会と山本に対し正式に謝罪をしたことで打ち切りは回避され、最後までストーリーを描き切って完結した。
アニメのストーリー原案を担当した東浩紀による小説『フラクタル/リローデッド』が2011年1月6日発売の『ダ・ヴィンチ』2011年2月号から 4月6日発売の5月号まで連載された。同5月号では2011年秋に単行本が刊行予定と告知されていたが、その後、書籍化はされていない。内容はアニメとは異なる別の物語となっている。
舞台はアニメの最終話でシステムが再起動した大初期化(グレート・イニシャライゼーション)の事件から200年後の世界。主人公はクレインの子孫であり、祖先の真実を探すストーリーとなっている。
2011年03月23日からニジボックスがモバゲータウンとGREEでリリースした、アイテム課金制のソーシャルゲーム。
ブラウザゲームとしてソーシャルゲームが配信されていたが、他に撮りおろしボイスを収録した『フラクタルめざまし フリュネ&ネッサ』が2011年8月12日に発売。「フラクタル」のキャラクターであるフリュネ(cv.津田美波)とネッサ(cv.花澤香菜)の声を収録している。
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