『アップルシード』(APPLESEED)は、士郎正宗のメジャーデビュー作となる日本のSF漫画。1985年から1989年にかけて発表された。コミックスは4巻まで刊行され、物語が中断した状態で作者による凍結宣言が出されている。
タイトルはアメリカの開拓時代のリンゴ農園民話『ジョニー・アップルシード物語』より。キャラクターや設定の各所にギリシア神話由来の名前が使われている。
サイバーパンクSF『攻殻機動隊』で知られる士郎正宗のもうひとつの代表作で、近未来を舞台に展開するSFアクション作品。1985年2月に青心社という関西の新興出版社から、雑誌連載を経ずに単行本描き下ろしという形で発表された。
考え抜かれた設定、緻密に描き込まれたメカニックや背景、しっかりしたデッサンのカワイイ女の子たちが作品の魅力となっている。
OVA『APPLESEED』(1988年)、アニメ映画『APPLESEED』(2004年)と続編『EX MACHINA』(2007年)、テレビアニメ『APPLESEED XIII』(2011年)、リブート映画『Appleseed Alpha』(2014年)と複数回アニメ化されており、映像の需要の高い作品。特に海外から高い評価を得ており、海外展開を視野に日本より先に公開されることが多い。
2015年1月、コミックスの第1巻初版刊行から30周年を記念して電子書籍化され、各電子書店で配信が開始された。電子化に際し、士郎本人が監修し、インターネットや携帯端末の普及により不要になった一部の欄外脚注は削除され、言い回しが古くなったセリフや誤解を招く部分は修正されている。しかし、絵と基本的な内容や時代設定等に関しては当時のまま一切変更を加えていない。
物語の舞台は、地球規模の世界大戦が繰り返された22世紀の荒廃した世界に存在する理想郷こと巨大都市・オリュンポス。全世界で化学兵器・生物兵器が使用された大戦を生き抜いた特殊部隊の女性隊員・デュナン・ナッツと、その恋人で全身をサイボーグ化したブリアレオスの活躍を描いた近未来サイエンスフィクション作品。
本作品は後に執筆された『攻殻機動隊』から約100年後の世界にあたり、両作品とも作中に日本の近海に存在する人工島を本社とした企業国家ポセイドンが登場する。
世界は、中東戦争を契機に勃発したEC・米対ソ連による核戦争(第三次世界大戦)後、戦後に勃興したECと被害が少なかったアジア諸国(後に大東合衆国を結成)との間で摩擦が生じ、日本への核攻撃を契機としてEC・米と第四次非核大戦が勃発、2026年にアジア側が勝利して「地球統一ブロック」が樹立される。
この期間に電脳技術やバイオテクノロジー、核汚染除去の為のナノテクノロジー、マイクロマシン技術が飛躍的に発展、宇宙開発も月に都市を建設出来るまで発展し、終戦後には火星のテラフォーミングが行われる。
2100年頃まで地球全土で戦災からの復興活動が進められるが、2125年に勃発した世界規模の武力紛争「大戦」により再度荒廃し、第四次世界大戦の頃から北大西洋のアゾレス諸島とカナリア諸島の間に密かに建設が進められていた人工島オリュンポスに設置された総合管理局が台頭、世界をその影響下に置いている。
2127年、逃亡生活を続けていたデュナンと戦闘サイボーグであるブリアレオスは、ヒトミと名乗る少女から総合管理局の調停による停戦の知らせと“オリュンポス”への招待を受け、総合管理局の内務省部隊、ESWAT(ESpecially Weapon And Tactics)に所属して対テロ作戦などに加わる。その中で巨大な計画、旧大国の策謀が明らかになっていく。
第五次大戦後、国家や情報網は破壊され尽くし、デュナンとブリアレオスは廃墟となった無人都市を転々としながら流浪の日々を送っていた。他にどれぐらいの人間が生き残っているのかも分からない状況の中、突然来訪した若い女性・ヒトミによってオリュンポスへの移住を持ちかけられ、デュナンとブリアレオスは疑うが、警察官 (SWAT) として復職できる望みから受諾する。やがてオリュンポスに着いたデュナンとブリアレオスを待っていたのは、戦後世界とは信じられないほど、清潔かつ高度で豊かな都市だった。
オリュンポスは人類がついに建設した理想郷とされているうえ、人口の半分を占める人為的にコントロールされて生まれた人間・バイオロイドが人間同士の無用な衝突を避ける緩衝剤として機能しており、人間とバイオロイドの関係性が精妙に描かれている。デュナンとブリアレオスは「ゲスト」としてオリュンポスで暮らし始め、やがて特殊部隊の隊員として「復職」する。
しかし、当初は理想郷に見えたオリュンポスも人の業を脱することはまだできておらず、さまざまな問題を抱えていた。戦争の後遺症とも言えるテロリズム、オリュンポス行政院と立法院の対立、他国との駆け引き、ライフサイエンス解禁によって科学技術が人間や社会の在り様にまで干渉する。デュナンとブリアレオスは、オリュンポスを巡るさまざまな思惑や陰謀に巻き込まれていく。
独特の生物的なフォルムや動作原理や素材、内部構造などの詳細な描写が本作の特徴の一つでもある。
青心社より単行本4巻が発売されているが、他に同社より原稿原寸版(1-3巻)、講談社よりB5判の大型版(1・2巻合本)、メディアファクトリーより文庫版が刊行されている。なお第5巻は「アルテミスの遠矢」というタイトルが発表され、画集『イントロンデポ』にはカバーイラストも掲載されている。1991年にコミックガイアで『仙術超攻殻ORION』に続いて連載されたが、「やはり連載という形態はアップルには合わない」として中断された。連載分は『士郎正宗ハイパーノーツ』に収録された。現状ではソ連崩壊に伴う作品中の世界観と現実における世界情勢の乖離、および自身のスタンスの変化により続きを描くのは困難と士郎は語っている。
雑誌連載を経ずに直接単行本として刊行された経緯から、一部の巻において雑誌原稿では用いることの出来ない薄墨を用いて、単色ではなくグレースケールで印刷する試みがなされている。
また第4巻刊行後、青心社から設定解説資料や短編を収録した『アップルシード データブック』が刊行され、後に本編新装版に合わせて内容を一部変更した『アップルシードid』として再版された。
1988年4月21日に発売されたOVAで、初のアニメ化作品。監督と脚本は片山一良が手がけている。当初は「ガイナックス制作の劇場用アニメ」と報じられたが、後に60分ほどのOVAと訂正された。またガイナックスは直接制作には携わらず、実制作はAICとセンテスタジオが担当することも明らかになった。
原作の多脚砲台が暴走するエピソードをベースに、作品を理解しやすいようにストーリーが手直しされている。やや密度の薄い出来となっているが、その分、一読しただけでは何がどうなっているのかわからない難解な原作漫画の骨格がわかりやすくなっている。キャラクターデザインをスタジオぴえろ制作の魔女っ子シリーズを手掛けていた洞沢由美子が担当しているため、絵の雰囲気が原作とはまったく異なるが、主人公ふたりは少し茶目っ気のある言動もあり、アニメ化作品の中で原作の雰囲気にいちばん近い。また偏執的に描き込まれた原作に比べて全体的にこだわりの少ない描写の中で、銃器描写は実在する銃(デュナンのコルト・ガバメントや当時の最新鋭モデルであったオーストリア製のグロック17など)を登場させたりとリアルに描いてある。
OVAのプロモーション用に、バンダイが発行していた月刊模型誌「B-CLUB」の企画で製作したブリアレオスとデュナンのコスチュームを使用した実写ショートフィルムが制作された。デュナン・ナッツ役には白人女性を起用している。ショートフィルムは「プレリュードフィルム」というタイトルで、後に発売されたDVDに特典映像として収録された。
第3次世界大戦後の地球。荒廃した世界を統合管理局が立て直し、亜人類バイオロイドによって運営される実験理想都市「オリュンポス」が作られた。生き残った人間はその中でバイオロイドと共存しながら平和に暮らしていた。しかし、いまだ廃墟のままの外の世界から侵入した「自由人間解放同盟」を名乗るテロリストが暗躍しており、オリンポスは彼らに対抗するために特殊部隊を結成した。その隊員であるデュナンとブリアレオスは、バイオロイドと人間に関する機密情報の奪い合いに巻き込まれてしまう。
DVD特典のプロモーション用実写映像。
世界で初めてフル3Dライブアニメという表現手法によって映像化された作品。3Dライブアニメとは3DCGをセルアニメのような画風に変換するトゥーンシェーダーと、登場人物のリアルな動きを可能とするモーションキャプチャ技術を融合させた手法を示す造語である。セルアニメに近い画風でありながら、従来のアニメーションと比べ、自由なカメラワークやよりリアルな動きが表現できる。2004年4月17日の劇場公開を待つことなく、続編の制作が発表された。
原作者の士郎はノータッチである。監督の荒牧伸志は士郎の世界観を壊さずに一般の客層へのアピールを行うことを留意したという。
主人公デュナンは、声優が顔のモーションキャプチャー(フェイシャルキャプチャー)を行い、それ以外のシーンでは2名がアクションシーンと演技シーンを分担してモーションキャプチャーを行っている。声と顔の演技を務めるのは小林愛、全身の演技を三輪明日美が担当。アクションシーンをアクション女優の秋本つばさが担当している。
多脚砲台の登場シーンでは怪獣映画の要素を取り入れている。荒牧は「夜の街で多脚砲台が送電線を横切る」というカットについて、スタッフからの「未来都市に送電線があるのか」「夜景で黒い多脚砲台は見えづらい」という指摘を押しのけて強引に入れ込んだと述べている。
DVDは続編公開時点までに、全世界で42万枚以上を売り上げるなど、好調なセールスを記録した。
2007年10月20日に続編『EX MACHINA -エクスマキナ-』が公開された。プロデューサーは『フェイス/オフ』や『M:i:2』等を監督したジョン・ウーが担当。
衣装デザインはファッションブランド、PRADAのミウッチャ・プラダ。
音楽監修を細野晴臣が担当。元YMOの三人(細野、坂本龍一、高橋幸宏)がHASYMO名義でメインテーマ『RESCUE』を書き下ろしている。その他、テイ・トウワ、コーネリアス、m-flo、rei harakamiなどが名を連ねている。
キャストについてはデュナン役は前作から引き続いて小林愛が担当するが、それ以外のキャラクターについては大幅なキャストの変更が加えられている。映像も前作よりリアル調のシェーディング・テクスチャが施されている。
副題の「EX MACHINA」はラテン語のデウス・エクス・マキナという言葉から来ている。意味は「機械じかけの神」、転じてご都合主義的な話の展開などを表すネガティブな言葉である。
『アップルシード α(Appleseed Alpha)』は、3作目となる長編アニメ。2014年7月に欧米を中心にビデオスルー公開、日本では2015年1月に劇場公開された。原作第一巻をベースとしたリブート作。荒牧伸志による長編アニメ三作目で、過去の二作品よりも更に実写的なCGスタイルで制作された。
2008年3月30日、東京国際アニメフェアにて『APPLESEED GENESIS』(アップルシード・ジェネシス)のタイトルで、全編3DCGのテレビアニメを製作することが発表された。オリュンポスが完成する以前、理想郷の完成を阻止しようとするテロリストたちとデュナン・ナッツらESWATとの戦いが描かれるオリジナルストーリーで、各話30分全26話で2009年春より放送予定であった。製作は3Dアニメーションで定評のあるミコット・エンド・バサラ、監督は3DCGのインディーズ作家として同じく士郎正宗原作の『警察戦車隊 TANK S.W.A.T. 01』のアニメーションを監督し、メジャーのテレビシリーズ監督はこれが初となるロマのフ比嘉、キャラクターデザインは美樹本晴彦。海外販売を前提にしていたため、通常のテレビアニメと異なり、放送開始までに全話数の制作を完了することを目指し、放映1年前のこの時点で既に制作に入っていた。
しかし、2008年9月にアニメ制作会社ラディクスモバニメーションが、制作元のミコット・エンド・バサラを制作代金の未支払いを理由に提訴。その後、2011年にミコット・エンド・バサラが倒産したため、製作は中止となった。
アップルシード XIII(サーティーン)」は、「アップルシード」の映像作品としては初の、全13話(=サーティーン)からなる完全新作アニメシリーズ。2011年6月より、劇場での期間限定上映、ネット配信、Blu-ray Disc・DVD発売を同時展開。
2011年6月13日より劇場リミックス版「アップルシード XIII 〜遺言〜」、同年10月24日より「アップルシード XIII 〜預言〜」が公開。
宮川輝により漫画化され、『月刊アフタヌーン』(講談社)2011年12月号より2013年6月号まで連載された。
ストーリーはアニメ本編のシナリオをほぼなぞる形になっているが、ラストシーンなど一部はオリジナルの展開で再構築されている。また、原作や過去のアニメ化作品のオマージュと思われるシーンが多く、アニメ本編には登場しない立法院の七賢老、大佐、アルゲス、吉野、A-10(ボルト、ジャンク)が登場したり、デュナンとブリアレオスの恋愛関係が強く押し出されたラブコメ的な場面もたびたび登場する。細密なメカニック描写やアクションシーンが高く評価される一方で、独特の画風やキャラクターのデフォルメ、関西弁を多用したセリフ回しは賛否両論となっている。
余談であるが、作者の宮川輝は今回のコミカライズの依頼があるまで漫画のアップルシードを読んだことがなく、担当者を驚かせたという。
大武完による『アップルシード』のスピンオフ小説。同じ世界を舞台にした外伝。
非核大戦の動乱はハワイにも及んだ。味方の裏切りによる殺戮をかろうじて生き延びたルシア、ゲンゾー、シフォンの三人は、ヒトミに救助されてオリュンポスに入植する。
1988年5月5日にキングレコードから発売されたイメージアルバム。OVA版の事実上のサウンドトラック的な内容のドラマCDだが、ドラマパートのキャストはOVA版とは異なる。
スーパーファミコンおよびPlayStation 2用として『アップルシード EX』が発売されている。また、オンラインゲーム『アップルシード タクティクス』としても展開されている。
『アップルシード EX』(アップルシード エクス)は、2007年2月15日にセガが発売した ガン&ファイティングアクションゲーム。製作はドリームファクトリー。
漫画を題材に2004年に劇場公開された映画『APPLESEED』を元にしている。ゲーム中に流れるムービーなどは監督である荒牧伸志と同映画でCGを担当したデジタル・フロンティアが製作するなど、映画との連動を強く打ち出しているものの、ゲームの内容についてはファミ通レビューにおいて過去の最低点より一つだけ上(40点満点中13点)という評価がなされている。
アップルシード XIII(サーティーン)のマルチプラットフォーム対応ブラウザ型ソーシャルゲーム。
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