『遊仙窟』(ゆうせんくつ)は、中国唐代に書かれた伝奇小説である。
作者は唐の張鷟(中文版) )と伝えられる。作者と同名の「張文成」なる主人公が、黄河の源流を訪れる途中、神仙の家に泊まり、寡婦の崔十娘(さいじゅうじょう)、その兄嫁の五嫂(ごそう)らと情を交わし、一夜の歓を尽くすが、明け方に外のカラスが騒がしくなり情事が中途半端に終わらせられる、というストーリーである。
唐代の伝奇小説の祖ともいわれるが、中国では早くから佚存書となり、存在したという記録すら残っていない。後に魯迅によって日本から中国に再紹介された。
文章は当時流行した駢文(四六文)によって書かれている。
日本では遣唐使が帰途にあたり、この本を買って帰ることが多く流行した。例えば、奈良時代の山上憶良は『万葉集』に「遊仙窟に曰く、九泉下の人は、一銭にだに直(あたひ)せず」と記している。また『万葉集』巻4の大伴家持による国歌大観番号の741、742、744番の相聞歌も『遊仙窟』中の句を踏まえている。
また、松尾芭蕉の俳句「つね憎き烏も雪の朝哉」や高杉晋作の都々逸「三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい」、更にそれを踏まえた落語「三枚起請」も、作中で情事を邪魔したカラスを踏まえたものである。
なお『唐物語』第9篇は張鷟(張文成)と則天武后が絡む話だが、中国典籍が古来不詳である。
『遊仙窟』の日本国内に残存する主要な伝本は、山田孝雄によれば4種ある。
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