父島(ちちじま)は、東京都・小笠原諸島の父島列島の島。東京都島嶼部に属する。東京都小笠原村の中心的機能を担う島であり、村役場はこの島に所在する。
硫黄島に次いで、小笠原諸島で2番目に大きな島である。周囲の兄島、弟島などの島とともに父島列島を形成する。一度も大陸と陸続きになったことがない海洋島で、多くの固有種が存在する。島全体が小笠原国立公園に指定されている。集落は島の北西部の大村地区が中心。島の西側に西に開けた二見湾があり、湾の北部に二見港がある。
1920年代から大日本帝国陸軍によって砲台などの軍施設が建設され、太平洋戦争の頃には更に増強が進んで父島要塞となった。飯盛山近くの洲崎地区には大日本帝国海軍の飛行場(洲崎飛行場跡)が建設された。 現在でも夜明山や衝立山などには、日本軍施設・塹壕・砲台の跡、高射砲などの残骸が残っている。また、海上自衛隊の父島基地や宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の小笠原追跡基地、国立天文台のVERA観測局などが島内に設置されている。
戦後はアメリカの支配下に置かれ、建設された米海軍の施設には1965年まで核兵器が貯蔵されていたとされる。1968年に日本に返還され、小笠原諸島振興開発特別措置法により10年間で約300億円規模の公共事業などが実施された。復興に当たり水や電気の配給を効率的にするため、一島一集落にまとめるよう住民の移転が行われたが、父島は面積が広く農家が通勤を強いられるようになるため一島二集落として整備が行われた。 ある程度の大きさの旅客機が離着陸できる飛行場の建設は長年の悲願であり、2022年現在、東京都が洲崎地区で建設に向けた調査を行っている。
沖縄と同じく温帯と熱帯の境界域に近いが、沖縄と異なり梅雨の時期がないため年間降水量は沖縄(那覇で約2000ミリ)より格段に少ない。このため、沖縄本島(北緯26度00分 - 27度00分)が熱帯雨林気候に近い亜熱帯気候(気候区分上は温暖湿潤気候)なのと異なり、父島の気候は熱帯モンスーン気候に分類される。なお最高気温35℃を超える猛暑日にはなったことが一度もない。
2022年9月現在、本土との定期的な交通手段は竹芝埠頭と父島の二見港を結ぶ航路が唯一で、約24時間かかり、かつ、おおむね6日に1便のみの運航である。1990年-2000年代初頭に、高速船を建造して本土と小笠原諸島との移動時間を短縮する「超高速貨客船テクノスーパーライナー (TSL)」計画が旧運輸省を中心に企画され、実際に115億円かけて高速フェリーが建造されたが、原油価格の高騰によって採算性が失われ、計画は放棄された。建造された高速フェリーは就役することなく解体された。
現状では本土との往来に約10日を要し、緊急時の対応に支障があるため、東京都と小笠原村は2008年に「小笠原航空路協議会」を設置し、島内に空港を建設し航空路を開設するための調査・検討を行っている。空港の位置についてはさまざまな案が上がり、父島の北に隣接する兄島、島内南部の時雨山、父島から北に70 kmの聟島などが検討されたが、いずれも自然環境への影響が大きいとして撤回され、2018年からはかつて大日本帝国海軍飛行場があった洲崎地区に候補が絞られている。
島内では自治体バス(コミュニティバス)として、小笠原村営バスが運行されている。
トカゲの一種、グリーンアノールが定着し、昆虫類を大量に捕食している。
1990年頃に侵入したニューギニアヤリガタリクウズムシがカタツムリなどを捕食し、2000年頃に30種いた陸貝類のうち4割が絶滅した。
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