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にがり(苦汁、滷汁)とは、海水からとれる塩化マグネシウムを主成分とする食品添加物。海水から塩を作る際にできる余剰なミネラル分を多く含む粉末または液体であり、主に伝統的製法において、豆乳を豆腐に変える凝固剤として使用される。
海水に含まれている塩類は、塩化ナトリウムが大部分を占める。海水から食塩を生成する場合、塩化ナトリウムが先に結晶化するので、これをかき集めるなどして物理的に取り除いたのちに残る液体が苦汁である。にがりの成分は、塩化マグネシウムが中心である。ほかにナトリウム、カリウムを含む。味は、主にマグネシウムイオンにより、文字通り苦い。
イオン交換膜によって得られる物の1リットルあたりの大まかな組成は、以下のとおりである。
食品衛生法では、にがりは「粗製海水塩化マグネシウム」という名称で既存添加物名簿に収載されている。法律では食品に添加物を使用した際は基本的に名簿にある物質名で表記をすることになっているが、粗製海水マグネシウムは豆腐の凝固剤として使用した場合と、食用塩の原材料に使用した場合、粗製海水塩化マグネシウムの後に「(にがり)」と付記してもよいことになっている。豆腐の凝固剤としては、他にも焼石膏やグルコノデルタラクトンなどが使用されている。
にがりは、煮物料理のアク抜き、また初乳や生乳を固めた「牛乳豆腐」を固める凝固剤にも用いられる。
硫酸マグネシウム、塩化カリウム、臭素等の原料とされる。
天日採塩法で塩を得る場合、完全に水分を蒸発させると出来上がった塩にマグネシウム分が多く残って苦味が出てしまう。塩化マグネシウムは塩化ナトリウムより溶解度が高いので、塩化ナトリウムが析出した後で、かつマグネシウム分がすべて結晶化してしまう前のタイミングで塩を収穫する。収穫した塩は湿っているので、これを高床にした小屋に運び込むとマグネシウム分に富んだ水分がにがりとして床下にしたたり落ちる。日本では1972年にイオン交換膜法による製塩に切り替わるまで煎熬採塩法が広く行われていたが、この場合は鹹水を煮詰めて析出した塩を採った残りの液体としてにがりが得られる。なお、出来上がった塩にもマグネシウム分が含まれているので、これをカマスなどに詰めて置いておくとにがりがしたたり落ちてくる(塩化マグネシウムは塩化ナトリウムよりも水への溶解度が高く、潮解性があるので、吸湿して溶け出してくる)。にがり成分をしたたり出させる工程を「枯らし」といい、塩を2年、3年など長期間に渡って枯らした塩は珍重された。
にがりの成分は、製法やメーカーで大きく異なる実態がある。
2004年5月30日に放映された『発掘!あるある大事典II』で「にがりダイエット」が放映されてから、にがりのダイエット効果が話題になっていたが、科学的根拠はなく、同番組を見て試した視聴者が下痢などの症状を訴えることが相次いだため、後に厚生労働省から警告が出された。なお、同番組はダイエットなど健康に関する話題で過去にたびたび信憑性の低い内容を放送し、2007年には「納豆ダイエット」についての放送でデータ捏造が発覚し、番組が打ち切りとなる事態に発展した。
にがりはマグネシウムを多く含むため、飲み過ぎると下痢などの消化器症状を起こすことがある。
また高マグネシウム血症などの悪影響が出る場合があり、過剰摂取は危険である。2004年3月に神奈川県の知的障害者入居施設で、職員が女性入所者に誤ってにがりの原液400mlを飲ませたところ血管が詰まって危篤状態となり、翌4月に死亡する事件が起きた
なお「第6次改定日本人の栄養所要量について」によると、マグネシウムの所要量は約320mg/日、マグネシウムの許容上限摂取量は約700mg/日である。
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