『雲のじゅうたん』(くものじゅうたん)は、1976年(昭和51年)4月5日から10月2日まで放送されたNHK連続テレビ小説17作目。
概要
浅茅陽子扮するヒロイン真琴が、大正・昭和時代に飛行家(操縦士)という夢に向かって奮闘する姿を伸びやかに描いている。秋田県が主な舞台となった初めての作品である。
中条静夫演じるヒロインの父・左衛門の、頑固親父ぶりも人気を博した。ナレーションの田中絹代は総集編の収録終了後の1976年12月27日に静養のため入院し、そのまま1977年3月に亡くなった。
1976年の平均視聴率は40.1%、最高視聴率は48.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。全156回。1976年12月20日から12月29日まで、45分の総集編全10回が放送された。
民放で販売され再放送された初のNHKドラマでもある。
1976年当時、同タイトルで小説化本が発売された(田向正健・追島小葉・著、日本放送出版協会)。
ロケ撮影ではフィルムが用いられている。
前述のように初めて民放へ本格的に販売されたNHKの番組である。これまでも1967年に東京12チャンネルに提供したドラマや放送番組センターを通して配給したドキュメント番組があったがそれらは非営利だった。『雲のじゅうたん』の販売は国際映画社の仲介でNHKサービスセンターとの間で1977年5月に推定2,500万円で販売契約が成立し、作家・音楽家・出演者の再放送分報酬を除いた1,000万円前後がNHKの取り分となった。
1999年10月4日から2000年4月1日まで、NHK BS2で月 - 土午前7時46分 - 8時1分に全156回が再放送された。
2001年には、全5巻の総集編VHSビデオが発売された。
各地のNHKアーカイブスの番組公開ライブラリーで総集編全10回を視聴可能。
ただし完全版・総集編共にDVDは未発売。
放送ライブラリーでは第1回が公開。
テーマ曲はCD「朝ドラ~NHK連続テレビ小説テーマ集」(2006年、ソニー・ミュージック、MHCL-722)に収録されている。
キャスト
- 小野間(稲葉)真琴
- 演 - 浅茅陽子
- 小野間左衛門
- 演 - 中条静夫
- 小野間たき
- 演 - 幸田弘子
- 小野間千代
- 演 - 堀井永子
- 小野間直子
- 演 - 浅利香津代
- 小野間行雄
- 演 - 小鹿番
- 小野間良子
- 演 - 斉藤友子
- 小野間英子
- 演 - 川島ゆかり
- 井原高子
- 演 - 山田はるみ
- 稲葉忠裕
- 演 - 竜崎勝
- 稲葉誠
- 演 - 井上純一(幼少期: 演 - 古川清隆)
- 遠井知恵子→稲葉知恵子
- 演 - 佐野布美子
- 利根優
- 演 - 高松英郎
- 飛行学校校長
- 白川義信
- 演 - 船越英二
- 白川春子
- 演 - 馬渕晴子
- 白川信之助
- 演 - 辻辰行
- 高沢兼子
- 演 - 千石規子
- 茅野隆二
- 演 - 志垣太郎
- 海軍少尉
- 三吉
- 演 - 北村和夫(幼少期: 演 - 兼安博文)
- とめ
- 演 - 大久保正信
- 加屋徳次郎
- 演 - 戸浦六宏
- 順三
- 演 - 鈴木公久
- 安藤先生
- 演 - 奥村公延
- 小林町長
- 演 - 小松方正
- 大林良平
- 演 - 矢崎滋
- 俊堂
- 演 - 風間杜夫
- 飛行訓練生
- 正吉
- 演 - 桐原史雄
- その他
- 演 - 金井大、山崎猛、山谷初男、大山高男、矢田稔、東啓子、佐藤輝、山田康雄 他
スタッフ
- 脚本 - 田向正健
- 音楽 - 坂田晃一
- 演奏 - 新室内楽協会
- 主題歌 - 「あの空へ帰ろう」(歌 - チェリッシュ)
- 制作 - 篠原篤彦
- 撮影 - 森谷定政
- 美術 - 水速信孝
- 技術 - 門弘
- 効果 - 寺田尚弘
- 演出 - 北嶋隆、八木雅次、澁谷康生、渡辺耕、高橋康夫。
- 語り - 田中絹代
「モデル」とされた飛行士たち
好評を得たドラマであり、初期の女性飛行士たちにも注目が集まった(後に掲げる、「モデル」と取りざたされた人々は放送時点で存命であった)。モデル探しの過熱や、特定人物と過度に結び付けられることに配慮したためか、1976年時点で脚本の田向正健は「あくまでもオリジナル作品で、特定のモデルはいない」と強調している。2020年現在のNHKは、「ヒロインのモデルとなった人物は日本初の女性飛行士をはじめ複数いたそうだ」と記している。
第二次世界大戦以前の日本で飛行士の資格を取得した女性は30人ほどいる。「『雲のじゅうたん』の主人公のモデル」として、以下のように複数の人物の名が挙げられる(カッコ内は結婚後の姓。資格取得順)。
- 兵頭精 - 愛媛県出身。日本初の女性飛行士(1922年3月に三等飛行機操縦士資格取得)。1980年没。
- 木部シゲノ - 福岡県出身。最初の女性二等飛行機操縦士(1927年8月に資格取得)。戦後は及位野衣らと日本婦人航空協会を設立。1980年没。
- 前田あさの(龍あさの) - 奈良県出身。1925年12月に4人目の女性飛行家となる。1979年没。
- 今井小まつ(西原小まつ) - 京都府出身。1927年12月、木部に続いて二等飛行機操縦士。航空作家としても活動。1984年没。
- 松本キク(西崎キク) - 埼玉県出身。女性水上飛行機操縦士第1号。1934年、海外に飛行した初の女性飛行士の一人。1979年没。
- 馬淵テフ子 - 秋田県鹿角郡出身(出生地は青森県弘前市)。1934年、秋田に郷土飛行。海外に飛行した初の女性飛行士の一人。1985年没。
- 及位野衣 - 秋田県山本郡生まれ、角館町で幼少期を過ごし、山形県で成長。戦後も飛行士として活動。2005年没。
その他
ドラマに登場する複葉機の「利根号」は木村秀政が設計した。
『ふたりっ子』の初期では、主人公の野田家で朝、登場人物が「雲のじゅうたん」を視聴している設定のシーンがあった。また、『カムカムエヴリバディ』の第69話でも、主人公の大月家で家族3人が視聴するシーンが描かれている。
作品中で、『へば』(秋田地方の方言)が使用されているので、”へばちゃん”がブームとなる。主人公役の方が、へばちゃんと呼ばれ、親しまれる。
脚注
注釈
出典
参考文献
- 秦郁彦『太平洋戦争航空史話』下(中公文庫、1995年) ISBN 4-12-202371-8 第十六章 「雲のじゅうたん」考 女流飛行家第一号の周辺 11~31ページ
- 村山茂代「飛行士をめざした卒業生 : 馬渕てふ子と長山きよ子」『日本女子体育大学紀要』第37巻、2007年、2021年5月7日閲覧。
- 鹿角市先人顕彰館研究員(編)『江戸期から平成期の 鹿角人物事典』鹿角市教育委員会、2020年。https://www.city.kazuno.akita.jp/material/files/group/23/kazunojinbutushuusei.pdf。2021年5月9日閲覧。
関連項目
- 舞いあがれ! - 2022年度下半期に放送された朝ドラ。本作と同様、ヒロインがパイロットを目指す。
外部リンク
- 連続テレビ小説 雲のじゅうたん - NHK放送史
- 連続テレビ小説「雲のじゅうたん」 - NHKドラマ
- 兵頭精、空を飛びます
- 郷土の偉人西崎キク
. Source: