RVR(アールブイアール)は、三菱自動車工業が製造・販売しているトールワゴン/クロスオーバーSUVタイプの乗用車である。
RVブームの最中の1991年2月に発表。カープラザ店専売とされた。
1986年頃、ミニバンより下位の「マイクロバン」を欲していたクライスラーとの共同開発でプロジェクトが始まったが、「北米での販売台数が予測できない」というクライスラー側の意向により、開発は三菱が手がけ、クライスラーは北米における販売のみ担当することとなった。北米では三菱・エキスポLRV(Expo LRV)として販売されたほか、クライスラーへもOEM供給が行われ、ダッジ/プリムス・コルトビスタ、イーグル・サミットワゴンとして販売された。
デビュー前の2代目シャリオのシャシー構成要素を短くして、2列シート、片側スライドドアを装備したクロスオーバーSUV風のトールワゴンである。後席が通常の3人掛け(定員5人)とロングスライドシートの2人掛け(定員4人)の2種類が設定されており、4人乗りタイプはシートアレンジ次第で後席で足が伸ばせるほどの広大な室内空間を作り出すことが可能であった。
デビュー当初は走行性能をアピールするため2.0Lの4G63型エンジンのモデルのみだったが、その後1.8Lガソリン/2.0Lディーゼルターボエンジンが追加。モデル中期には同社ランサーエボリューション向け4G63型エンジンのデチューン版を搭載した「X3」「スーパースポーツギア」や、車体天井の前半を電動収納できる特異なオープンモデル「オープンギア」などを追加しバリエーションを拡大。1997年1月には最強モデルとなる「ハイパースポーツギア」が追加され、従前ボンネットにあったインタークーラーを前面に配したことで出力が向上した。
開発時期の関係からE30系ギャラン/エテルナの機械部品の流用が多いが、荷室の広さと走行性能を両立させるため、当時の三菱では珍しいセミトレーリングアーム式のリアサスペンションを採用している。
個体によってはATが6万km程度、プラグコードが3年程度で寿命を迎える、スロットルボディ回りのセンサーやサーボ機構が不調になる(アイドリングしないなどの症状として現れる)など、よく知られた不具合がある。AT車のシフトロック機構は電気的に制御するのではなく、ブレーキペダルから伸びたワイヤーで機械的に規制解除するという独特の方式であった。これはバッテリーがあがっても影響を受けないという利点があった。ただしブレーキペダルを深く踏み込まないと解除しないため、エンジン停止から時間が経過しブレーキマスターバック内の負圧が漏洩減少するとペダルストロークが不足し、解除が困難になる傾向があった。
先代同様にシャリオの後継、シャリオグランディスの部品を短縮化して流用した。シャリオは3ナンバーサイズになったが、RVRは5ナンバーでミニバン風の見た目の「GDI RVR」と3ナンバーでクロスオーバーSUVの「RVR スポーツギア」の2つに分けられるかたちとなった。 先代の特徴であったロングスライドシートやリアスライドドアなどの機構は踏襲されているが、ライバル車種のようなウォークスルーを実現するため、シフトレバーがフロアシフトからインパネシフトに改められている。
1999年のマイナーチェンジ時に当時売れ行き好調であったシャリオグランディスの意匠を思い起こさせる大幅なフェイスリフトが行われた。また要望の多かった両側スライドドア車も新設定された。スポーツギアはスペアタイヤキャリアや若干高められた車高等、オフロード色を2代目においても前面に出していたが、その後オンロードを重視した意匠の「スポーツギア・エアロ」が設定され、若者を中心にした新たな購買層開拓を図った。
グレードは標準タイプの「X」(後期は「エクシード」)とスポーツタイプの「スポーツギア」に大きく分類され、標準タイプの「X」は1.8L GDIエンジンを、「スポーツギア」は2.4L GDIエンジンもしくは、ランサーエボリューションと同じ2L 4G63型ターボエンジン(250 PSにデチューン)を搭載した。なお、最強モデルの「スポーツギアX3」は、レベライザー付きキセノンヘッドライトや本革巻ステアリング・シフトノブ、ナスカの地上絵のハチドリの模様が織り込まれたオリジナルシートなどが奢られていた。
本モデルはOEM供給は行われなかったが、欧州では三菱ブランドからスペースランナー(Space Runner)として販売された。
三菱自動車は2009年12月3日、2007年のフランクフルト・モーターショーで初めて披露された『Concept-cX』をベースに、2010年春市場に投入する予定の新型コンパクトSUVを日本では「RVR」として販売すると発表した。これにより8年ぶりに「RVR」の名が復活した。
従来のRVRとはコンセプトが大きく異なる本モデルにおいてその名を復活させた理由については、時間と経費をかけずに売り込むことができる方法を思案した結果、三菱の持っている資産(登録商標やブランドイメージ)を活用するのが得策と考えたからだという。
フロントデザインは、ギャランフォルティスやアウトランダーの北米仕様などと共通の「ジェットファイターグリル」と呼ばれるデザインモチーフを用いている。ボディには、衝突安全強化ボディRISE(ライズ)が採用された。RISE(ライズ)は、高エネルギー吸収構造と高耐力キャビン構造と高張力鋼板の採用で、正面衝突をはじめオフセット衝突、側面衝突、後面衝突など、全方向の衝突安全性を飛躍的に向上させている。
パワートレインはギャランフォルティスにも搭載される1.8リットル「MIVEC」DOHC・16バルブエンジンの4B10型に「INVECS-III」6速スポーツモードCVTを組み合わせ。減速エネルギー回生システム(高効率発電制御)や電動パワーステアリング、空力性能の向上をはじめとする細部にわたる低燃費化技術の採用で、「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」と「平成22年度燃費基準+15%」を同時に達成した。日本仕様は後に4J10 1.8L 直列4気筒SOHC16バルブを採用した。このエンジンはSOHCでありながら従来のDOHCエンジンと同等の性能を持ち、さらにAS&Gと組み合わせることで、「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」に適合し、「平成27年度燃費基準」を達成した(「M」の4WD車は、メーカーオプションの装着により車両重量が1,421kg以上となった場合に達成する)。なお、欧州仕様であるASXには同じDOHC・16バルブでも4N13型コモンレール式ターボディーゼルエンジンとなり、トランスミッションに6速MTが組み合わされる。
フロントにマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式を採用している。ギャランフォルティスと同じく電子制御4WDを採用している。電子制御4WDは燃費の良い「2WD」、路面状況や走行条件に応じて、前後に駆動力を適切に配分する「4WDオート」、強力なトラクションが得られる「4WDロック」の3モードを選択することができる。
日本国外においては、欧州、南米諸国、オーストラリア、ジャマイカ、中国、台湾、ロシア、ブラジルではASX(Active Sports Crossover(=X-over)の略)、アメリカではアウトランダースポーツ、韓国とカナダでは日本と同じRVRとして販売された。
基本グレード(特別仕様車除く):
2022年9月21日、ルノー・日産・三菱アライアンスを活かし、キャプチャーをベースとした新型三菱・ASXが欧州にて発表、2023年3月に発売開始された。グリル、エンブレム類以外はキャプチャーとほぼ同じで、MI-PILOT(:マイパイロット、キャプチャーの「ルノー イージー ドライブ」と同一)も搭載する。尚、ルノーから三菱にOEM供給されたのはトラフィックのオセアニア市場向け「エクスプレス」以来、2例目である。
「RVR」は「Recreational Vehicle Runner」の頭字語に由来する。なお、初代および2代目ロゴは頭のRを左右反転させてキリル文字のЯ(「ЯVR」)のようになっており(偽キリル文字)、アンビグラムになっていた。
なお、1989年の第28回東京モーターショーで同名のコンセプトカーが発表されているが、「走りを重視したRV」というコンセプトを示したもので、バータイプのドアにオープンボディと、市販車とは異なるものであった。
3代目に設定される「ROADEST」については他車同様、道を意味する「Road」と最上級を意味する「est」を掛け合わせた造語である。
1996年のパリ・ダカール・ラリーにRVRを冠したプロトタイプ車「RVRスペースランナー」が出場、増岡浩選手が乗り総合6位で完走した。基本的な構造はパジェロプロトタイプとほぼ同じものとなっていた。
また、市販車改造部門にもスポーツギアがエントリーしたことがある。左ハンドル仕様で、スライド式ドアがガルウィングドアに改められていた他、サスペンションが前後ともにパジェロ・プロトと同様のスイングアーム式ダブルウィッシュボーンに改められていた事が特筆される。ミツビシの取材用車両及び、プライベーターから各一度ずつエントリーしている。
2013年のダカールラリーにはASXが市販車改造部門にプライベーターチームからエントリーしている。
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