『インサイド・ヘッド』(原題:Inside Out)は、2015年公開のアメリカ合衆国のコンピュータアニメーション3D映画。アメリカ合衆国では2015年6月19日、日本では2015年7月18日に公開された。同時上映は「南の島のラブソング」。キャッチコピーは「これは、あなたの物語―」。
人間の少女の頭の中を舞台に、そこに住む「喜び」「悲しみ」「怒り」「嫌悪」「恐れ」の5つの「感情」を題材としており、擬人化されたそれらのキャラクターを主人公に据え、彼らが少女を幸せにすべく奮闘する様子が描かれている。
ピクサーの長編映画第1作である『トイ・ストーリー』の全米公開から20年後にあたる2015年に本作が公開されたため、「ピクサー長編アニメーション20周年記念作品」とされている。またピクサーの長編映画が日本で7月に公開されたのは2013年公開の「モンスターズ・ユニバーシティ」以来2年ぶりとなる。
ちなみに、原題の"Inside Out"は「裏返し」という意味である。
アメリカのミネソタ州にライリー・アンダーセンという女の子が生まれた。それと同時にライリーの頭の中には、ヨロコビという感情と、少し遅れてカナシミという感情が生まれた。
やがてライリーの成長と共に、曲がったことが嫌いなイカリ、嫌なものを遠ざけるムカムカ、心と体の安全を守るビビリという感情も生まれる。彼ら5つの感情はヨロコビをリーダーとして、ライリーの頭の中にある「司令部」で彼女の人生を幸せにするために日々奮闘している。それによってライリーにできた思い出は、黄色(ヨロコビ)青(カナシミ)赤(イカリ)緑(ムカムカ)紫(ビビリ)のいずれか1色に色分けされた「思い出ボール」となリ、ライリーの脳内にある「長期記憶の保管場所」に保存される。なかでもライリーの人生にとって重要な意味をもつ5つの思い出は、すべてヨロコビの黄色をした「特別な思い出」となり、「長期記憶の保管場所」ではなく司令部の中に保管される。そして「特別な思い出」が、「ホッケーの島」「おふざけの島」「友情の島」「正直の島」そして「家族の島」という性格の島を脳内に製造することで、アイスホッケーと友達と家族が大好きな陽気で正直な少女というライリーの性格を作り上げている。そんな中、ライリーを悲しませることしかできないカナシミだけは役に立った試しがなく、その役割は大きな謎に包まれていた。
ある日、11歳になったライリーは生まれ育ったミネソタの田舎町を離れ、父親の起業のために慣れない大都会サンフランシスコへ引っ越す。しかし、新居が狭くて薄暗かったり、引越トラックが当日に来なかったりと初日からトラブルが続き、司令部の感情たちも愚痴りまくって混乱に陥る。中でもカナシミは、過去にできたヨロコビの思い出を触っただけでカナシミの青色にしてしまうなどたびたびトラブルを起こす。懸念したヨロコビはカナシミにマニュアル読みを強いるなど仕事をさせないようにし、なんとか自分がライリーを幸せにしようと強く決意するのだった。
翌日は登校初日。ライリーがヨロコビの思い出を回想しながらクラスで自己紹介をしていると、カナシミがその「思い出ボール」に触ったことで、突如ライリーが泣き出してしまう。そのうえ、初めてカナシミの青色をした「特別な思い出」が製造され、ライリーに新しい性格を作ろうとした。それを阻害しようとしたヨロコビと、引き留めようとしたカナシミが揉め合ってるうちに「特別な思い出」が散らばり、「長期記憶の保管場所」へ向かうチューブに吸い込まれる。さらにチューブは、ヨロコビとカナシミまでも一緒に吸い込んでしまった。深い谷のような「記憶のゴミ捨て場」で司令部と隔てられ、迷路のように複雑な「長期記憶の保管場所」へ飛ばされてしまったヨロコビとカナシミは、そこをくぐり抜けて「性格の島」から司令部へ帰ろうとする。
司令部は残りの3人、イカリとムカムカとビビリに委ねられるが、新しい学校のことを尋ねる両親におびえたり反抗したりと上手くライリーの感情をコントロール出来ない。結果、父に厳しく叱られ家族との関係が崩れてしまう。この一連のトラブルにより「おふざけの島」が崩壊してしまい、ライリーは冗談を言わなくなってしまう。ヨロコビとカナシミは遠回りを強いられ「友情の島」を通ろうとするが、ミネソタでの親友メグに新しい友達ができたと知ったライリーがカッとなった瞬間、「友情の島」まで崩れ落ちてしまった。
そんな中、2人は猫や象を組み合わせたようなビンボンと出会う。ビンボンはライリーの空想の友達であり、幼少時代は毎日のようにビンボンの姿を思い浮かべて遊んでいた。中でも手作りのロケットに乗って月へ飛んでいく遊びがお気に入りであったが、最近ではすっかり思い出してくれなくなったことにビンボンは落ち込んでいた。それを知ったヨロコビは、司令部への道を教えてくれたらライリーにビンボンのことを思い出させると約束する。それを聞いたビンボンは大喜びし、まるで遊園地のようなイマジネーションランドへ案内する。この中に司令部へ向かう「考えの列車」の駅があるのだが、そこではライリーの成長に合わせて次々と空想の産物が解体され、谷のような「記憶のゴミ捨て場」へ落とされていた。月へ飛んでいくロケットもゴミ捨て場に捨てられてしまい、ビンボンはその光景を見て落ち込む。
ヨロコビは冗談を言ってビンボンを元気づけようとするがまったく効果がない。しかしカナシミがビンボンの隣に腰掛けて話をじっくりと聞くと、ビンボンは飴玉でできた涙を流したあと元気を出す。そのおかげで考えの列車に乗ることが出来たが、ライリーが眠ってしまったことで列車は止まってしまう。一行はライリーに怖い夢を見せることで起こすことにし、紆余曲折の末に成功する。その傍ら、ライリーは前日に行われたアイスホッケーチームの入団テストで満足にプレイ出来ず「ホッケーの島」まで崩壊していた。それを見たイカリは「幸せな思い出は全てミネソタで作られたものだった」とライリーに家出をけしかけるが、ライリーはミネソタ行きの高速バスの切符を買うために母親のクレジットカードを財布から抜き取り、「正直の島」まで崩壊する。その影響で列車が脱線して司令部に着けず、再び長期記憶の保管場所へ戻る。そして、最後の「家族の島」も崩壊し、ヨロコビとビンボンはカナシミを残し、脱出不可能とされるゴミ捨て場へ落ちてしまう。感情の島が全て消えたのを見た司令部の3人はライリーの家出を止めようとするが、ライリーは既にバスに乗り、一切の感情を感じなくなっていた。
ヨロコビが絶望に暮れながら手元の特別な思い出を眺めていると、ある思い出に悲しみと喜びが混じっていることに気付く。それは、ライリーが試合で負けて気を落としているところをみんなに励ましてもらったという記憶。カナシミの重要性に気づき、絶対に脱出することを決心したヨロコビは、捨てられたビンボンのロケットで脱出するが、自分が足を引っ張っていると気がついたビンボンは一人ゴミ捨て場で消えることを選ぶ。ヨロコビはカナシミを探し出し、2人は遂に司令部に辿り着き、カナシミに司令を任せると、ライリーに悲しみという感情が生まれ、バスが高速道路に入る寸前で降りる決断をさせることに成功した。そして家族と再会し、「本当はミネソタが好き」「前の家に帰りたい」と涙ながらに自分の本心を打ち明けたライリーに喜びと悲しみが混じった思い出が生まれ、その思い出ボールが全ての感情の島を復活させる。
その後司令部では複雑な感情も制御出来るようになり、「ケンカするほど仲がいい」「先輩への叶わぬ片想い」など、様々な感情が交じった思い出が増えて行く。ライリーも元に戻り、サンフランシスコで幸せな暮らしを送るのだった。
これらはライリーだけでなく他の人物たちも有している。統率・調和がとれる、一つの感情が支配する、無感動で心が働いていないなどの個体差がある。
2009年8月、監督のピート・ドクターが共同監督のロニー・デル・カルメンとプロデューサーのジョナス・リヴェラと2日間かけ、映画のアイディアを話したという。ドクターは同年10月にジョン・ラセターにゴーサインをもらい、2010年に本格的に映画製作が始動した。スタッフは製作始動時の2010年はたった8人だったが、最終的に2014年には207人まで増えた。
製作期間は約5年で、8〜9本の長編映画ができるくらいの脚本を作り、試行錯誤を重ねながら脚本を練り上げていったという。ドクターは、自身の娘の成長や感情の変化に戸惑う気持ちが本作を作るきっかけになったと話している。また、映画を作るために8〜10人の神経科学者たちと意見を交わしたという。
5つの感情をつかさどるキャラクターのうち、キャラクターが完成した順番は、1番目がヨロコビ、2番目がビビリ、3番目がカナシミ、4番目がイカリ、最後がムカムカで、ビビリが2番目の理由はビビリとヨロコビを主人公に予定していたときがあったためである(最終的な脚本では、ヨロコビとカナシミが主軸となって物語が進行している)。ヨロコビのデザインは、妖精や体操選手、オードリー・ヘプバーンを参考に作られた。
1億7500万ドルの製作費に対して、2015年10月11日時点で、全世界で8億1880万ドル(うち北米で3億5540万ドル)の興行収入を記録した。
本作をめぐって、以下の様に少なくとも3件の訴訟問題が発生している。
2017年6月、ミネソタ州の小児心理学者のデニーズ・ダニエルズは、「インサイド・ヘッド」が自身の「The Moodsters」というプロジェクトに対して著作権侵害だとしてディズニーとピクサーに対して訴訟を起こしたが、2018年1月に判事フィリップ・S・グティエレスはダニエルズ側の主張を棄却し、ダニエルズはアメリカ合衆国第9巡回区控訴裁判所に訴訟を持ち込んだが、「DC Comics v Mark Towle 事件」と同様に材料不十分だとして2020年3月に棄却された。
2018年、デイモン・ポウシアンが自身の短編作品である「Inside Out」(「インサイド・ヘッド」の原題も「Inside Out」である)の盗作として訴訟を起こした。
この他にも、ネバダ州の児童発育専門家カーラ・J・マスターソン、「インサイド・ヘッド」が自身のプログラムの盗作だとして訴訟を起こしている
2017年6月16日に『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系列)で地上波初放送され、本編終了後には特別短編として字幕版短編エピソードが放送された。
短編エピソード
ライリーの嫌いな食べ物は、字幕版は「ブロッコリー」だが、日本語吹替版では「ピーマン」になっている。これは、子供が嫌いな食べ物がアメリカではブロッコリーが定番だが、日本はピーマンやニンジンが定番のためで、製作のディズニーによると、「日本の観客に本作を自分の物語として楽しんでもらいたい」という意図から変更されている。また、その意図から感情たちの役名も日本語版をはじめ世界42言語版で、それぞれの「感情」を表す言葉が役名に付けられている。
日本では本作の公開直前に同名の漫画を原作にした実写映画『脳内ポイズンベリー』が公開されており、設定や雰囲気が似ていると話題になった。感情などを表すキャラクターが議論をする脳内を描いた作品は、ディズニー製作のものに限っても短編アニメ『Reason and Emotion』(1943年)やテレビドラマ『Herman's Head』(1991年)などが存在し、特に前者については、ピート・ドクター監督がインスピレーションを受けた作品の1つであるとインタビューで語っている。
日本では劇場公開時に本編上映前に、事前に募集した一般人の写真が主題歌「愛しのライリー」に合わせてスライドショーされるという「"あなたの物語"キャンペーン」が実践された。この映像はDVDには収録されておらず、劇場公開時に映画館のみでしか見ることができなかった。
2001年に公開された『モンスターズ・インク』に登場する少女・ブーの声が、幼少期のライリーの声として一部再利用されている。そのため、本作のエンドロールにてブーの声優であるメアリー・ギブスの名前が記載されている。
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