『モアナと伝説の海』(モアナとでんせつのうみ、原題: Moana)は、2016年にアメリカ合衆国で公開された3Dコンピュータアニメーションによるスペクタクル・アドベンチャー映画。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作する56作目の映画である。日本では2017年3月10日に公開された。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編映画が日本で3月に公開されたのは2014年公開の「アナと雪の女王」以来3年ぶりとなる。
劇場公開時の同時上映は『インナー・ワーキング』。キャッチコピーは「海に選ばれた16才の少女――彼女の名は、モアナ。」。
2025年にディズニーによって実写映画が公開予定。
モトゥヌイ島の伝承の一つに、このようなものがあった。
この話を祖母タラから聞かされて育ったモトゥヌイの村長(むらおさ)の娘モアナは、幼い頃から珊瑚礁の向こうの海に関心を抱いていた。しかし村には「珊瑚礁を超えてはいけない」という掟があり、父のトゥイも掟を護り、娘にも同じことを要求した。幼いモアナは砂浜で意思があるかのように振る舞う波と、緑色の石を目にするが、成長するにつれてそのことは忘れ、次第に将来の村長としての自覚も大きくなる。それでも、海への好奇心は抑えられずにいた。
ある時、島の近海から魚が消え、作物も穫れなくなってしまう。モアナは珊瑚礁を超えて魚を獲りに行くことを提案するが、トゥイに猛反対される。モアナは悩みながらも漁師の船でサンゴ礁を越えようとするが、波に飲み込まれてしまい命辛々島に戻る。その様子を見た祖母タラは、モアナを閉ざされた洞窟へ連れて行く。そこには漁に使うより大きな船がいくつも置かれており、モアナは先祖が海を渡り、島を次々と開拓してきたことを知る。タラは幼いモアナの前に現れた波と緑色の石を見ており、モアナこそが「海に選ばれし者」であると告げた。その直後、タラは病に倒れる。死に際、モアナに緑色の石を手渡し、それがテ・フィティの心であると明かす。そして、珊瑚礁を超え、マウイを探し出し、彼と共にテ・フィティへ心を返しに行くよう伝える。決心したモアナはタラの言う通り、掟を破って洞窟の船で珊瑚礁の向こうの海へ繰り出すも、初めての航海では嵐の前に為す術もなく、無人島へ漂着する。
その島には心を盗んで以来、幽閉されていたマウイがいたが、彼は自らの行いについて「感謝されるべきだ」と言い張り、一緒にテ・フィティの元へ行くというモアナの頼みを聞こうとしない。マウイは幽閉されるまで、人間のために島を引き揚げたり、昼間を伸ばしたり、火を人間に与えたりと多くのことをしてきており、そうした彼の偉業や過去はタトゥーとして彼の体に現れているのだと語る。再び人々の英雄となるためマウイはモアナを洞穴に閉じ込め、モアナの船で島を出ようとするが、洞穴から脱出したモアナと「海」の説得により共に航海を始める。ただし、テ・フィティの元へ行くのはマウイがマウイたる所以――テ・カァから逃げる際にテ・フィティの心とともになくした、姿を自在に変える能力を持つ武器「神の釣り針」を、巨大なカニのタマトアから取り返した後に、という条件を付けて。
2人がタマトアの元へ向う途中、テ・フィティの心を狙うココナッツの海賊カカモラの一団が襲撃してくるも、マウイの帆捌きとモアナの機転によりこれを撃退。二人はタマトアの元へ辿り着き、マウイは釣り針を取り返すも、うまく変身できない。タマトアに捕まってしまったマウイを、モアナは光る苔を塗った石を囮にすることで助け出す。そのまま間欠泉を利用して逃げ出し、二人は神の釣り針を取り返すことに成功する。
変身できないことで自信をなくしているマウイに、モアナはどうして自分を信じられないのか尋ねる。すると、彼の持つ「海に捨てられる赤子」のタトゥーについて語り始める――自分は生まれた直後に捨てられた子であり、神に釣り針を与えられてのち、半神マウイとして人間を助け続けてきたのは、感謝されることで自分にも価値があると信じたかったためであると。「心」を盗んだのも、彼と違い命の限られた人間たちのためであったと。そして、釣り針を扱えなくなってしまったら自分には価値はないのではないかと。しかしモアナは、彼が海に神として選ばれたのは理由があるはずであるし、彼が英雄と呼ばれたのは彼自身の勇気と自己犠牲のためだ、とマウイを励ます。その後、モアナに感謝し、彼女を信用したマウイは彼女に航海術を教えるようになり、またマウイは変身の特訓を始める。
テ・フィティの島が近づいた時、2人の前にテ・カァが立ちはだかる。一度はこれに挑んだ二人だが、モアナの作戦の失敗で、テ・カァの攻撃を受け釣り針にヒビが入ってしまう。これにマウイは自身の力、ひいては人間からの感謝を永遠に失うことを恐れて去る。
自信を失ったモアナは海にテ・フィティの心を沈め、モトゥヌイへ帰ろうとする。すると、モアナの前にエイに生まれ変わったタラが現れ、モアナに自分を見つめ直すよう諭す。自分の海に対する愛情は、海に選ばれたから生まれたのではなく、海を渡っていた先祖から受け継がれてきた自分自身のものだということにモアナは気づく。モアナは再びテ・フィティの心を返すことを決意し、再び海を越え単身テ・カァに立ち向かい、海に入れないという弱点をついて、教わった航海術で立ちはだかるテ・カァをかいくぐる。内なる声に従ったモアナの元へマウイも戻り、釣り針を犠牲にしながらもテ・カァの追撃からモアナを助ける。ついにモアナはテ・フィティの島に至るも、その島は環礁のようになっており、テ・フィティが鎮座するはずの場所には海が広がるのみ。モアナは、テ・カァこそが心をなくしたテ・フィティの怒り猛っている姿だと気づくと、彼女に自分を見つめ直すよう説き、テ・カァの胸に「心」を嵌め込む。
心を取り戻したテ・カァはテ・フィティの姿へと戻り、世界には緑と平和が戻ってゆく。マウイはテ・フィティに「心」を盗んだことを謝罪し、新たな釣り針を与えてもらう。マウイの身体には新たに「海に選ばれし少女」のタトゥーが現れる。
モアナはマウイに優れた航海士が必要と言って村に来ないか聞くものの、マウイはすでにモアナがいるから必要ない、と断る。モアナは一人で生きる道を選んだマウイと別れ、モトゥヌイへと戻る。家族や村人との再会を果たしたモアナは、村長になるのではなく、教わった航海術で先祖がしてきたように海を渡り島を開拓していくことを決意したのだった。
エンドロール後、タマトアが間欠泉によりひっくり返ったまま身動きが取れずにいるところで映画は幕を閉じる。
『プリンセスと魔法のキス』の制作後、ロン・クレメンツとジョン・マスカーはテリー・プラチェットの小説『ディスクワールド』シリーズの第4作『死神の館』の翻案に取り組み始めた、しかし権利関係に問題が生じ計画の進行は停止することになった。同様の問題を回避するため、3つの新しい案を売り込み、2011年から独自の構想による映画の制作が開始された。2012年、二人はフィジー、サモア、タヒチへの取材旅行に赴き、南太平洋の人々と会いその文化を学んだ。
モアナは、二人にとってコンピュータアニメーションを主軸とした初めての映画である。コンピュータアニメーションを使用する理由の一つとして、海洋を含む環境の表現に従来の2D映画の技法を用いるよりもより有効であった点がある。また、南太平洋の人種の彫りの深い顔を表現するにあたっても、有用であった。
半神マウイの入墨は、セルアニメの手法で表現されている。
台本は、ジャレド・ブッシュによって書かれた。エリック・ゴールドバーグが動画を制作した。音楽は、オペタイア・フォアッイ(ポリネシアンミュージックグループテ・ヴァカのメンバー)、マーク・マンシーナ、リン=マニュエル・ミランダが作曲した。
当初、フィフス・ハーモニーのメンバーであるダイナ・ジェーンがモアナ役として有望視されていた。しかし、数百人の候補をオーディションで選考した後、14歳のアウリイ・クラヴァーリョ(2000年11月22日生まれ)が起用されることが公表された(なお、彼女はハワイの先住民の血も引いている)。
2014年10月20日、ディズニーは公開日を2016年末と発表し、3月に公開日が公表された8本の映画プロジェクトの内容から、公開日は11月23日となるであろうと示唆された。11月10日には、公開日が11月23日と正式に発表された。
ヨーロッパのいくつかの国では「モアナ」は既に商標として使用されており、スペインではバイアナ(Vaiana)に変更された。さらにイタリアではオセアニア(Oceania)に変更され、モアナの代わりに主役の名はヴァイアナ(Vaiana)となった。
日本語題の「モアナと伝説の海」は2016年7月13日に発表され、同時に2017年3月10日に上映開始されることも発表された。また、主演として新人の屋比久知奈が起用されることとなった。
2016年11月23日に3875館で封切られ、その80%が3Dでの上映となった。公開初日の興行収入は『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』を超える1568万ドルを記録し、5日目時点の成績は『ズートピア』を超える結果となった。映画ランキングでは、公開以来3週連続首位(11月25日〜27日、12月2日〜4日、12月9日〜11日)となり話題を呼んだ。4週目以降も『ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー』や『SING/シング』などの話題作が続々と封切られる中で、2位(12月16〜18日)、6位(12月23日〜25日)、4位(12月31日〜1月1日)、8位(1月6〜8日)とトップ10に7週連続ランクインした。最終的に興行収入2億4821万8355ドルを記録し、2016年に公開されたアニメーション映画の中で5番目のヒットとなった(実写を含めると11番目)。
日本では一足遅れて2017年3月10日から公開され、3月11日~12日の土日2日間全国映画動員ランキングでは、初登場1位を獲得し、動員46万6480人、興行収入5億8948万5600円を記録した。この記録は、前年大ヒットした『ズートピア』のオープニング成績を上回る結果となった。2週目(3月18日〜19日)は、初登場の『SING/シング』に首位を奪われ2位にランクダウンしたが、その後も5週目(4月8日〜9日)までは2位をキープし続け、最終的には8週目(4月29日〜30日)で9位を記録するまで、トップ10には8週間ランクインし続けてた。最終興行収入は51.6億円で、ランキング上位を本作より長期間キープしていた『SING/シング』を僅差で上回った。
『アナと雪の女王』以降、ディズニーのアニメ映画の日本での3D上映は2D版と比べて小規模となっていたが、本作では4月8日から20日まで期間限定で上映された4DX・MX4D版を含め、全て2Dのみの公開となった。実写を含めたディズニー作品全体でも、『BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』や『ピートと秘密の友達』のように、海外では3Dでも公開された作品が日本では2D上映のみとなり、Blu-ray 3Dも未発売(映像ソフトもMovieNEXではなく、通常のBlu-ray・DVDとして発売)となっていたが、本作ではMovieNEX購入者向け、あるいはオンライン限定のセット商品としてBlu-ray 3Dが発売された。
『モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック <日本語版>』の他に、歌詞が全て英語の『モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック <英語版>』が存在する。トラック41の「How Far I'll Go(エンドソング)」は、<日本語版>限定のボーナストラックである。
2017年6月28日にデジタル配信が開始され、7月5日にMovieNEXが発売された。
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