『釣りバカ日誌』(つりバカにっし)は、作・やまさき十三、画・北見けんいちによる日本の釣り漫画で、1979年から小学館『ビッグコミックオリジナル』で連載され、1980年から小学館ビッグコミックスより刊行されている。
また、実写映画化、テレビアニメ化、実写テレビドラマ化もされた。略称は「釣りバカ」。
万年ヒラ社員(営業職)のサラリーマンであるハマちゃんこと浜崎伝助は、上司の佐々木課長に教わった釣りにすっかりハマってしまい自他共に認める「釣りバカ」に。ある日ハマちゃんはひょんなことから知り合った「スーさん」という初老の男性を釣りに誘う。しかしこのスーさん、他ならぬハマちゃんが勤める資本金50億円の中堅ゼネコン会社『鈴木建設株式会社』の社長・鈴木一之助だったのである。この2人の奇妙な友情を中心に、ハマちゃんの釣りバカぶりがもたらす珍騒動(に振り回される佐々木課長ほか)を描く人気シリーズである。
第28回(昭和57年度)小学館漫画賞青年一般部門受賞。2020年5月時点で累計発行部数は2600万部を突破している。
サザエさん方式で物語が進められているが、鯉太郎の成長過程は描かれている。
作画担当については北見の他にも何人かの候補で検討を行っていた頃、担当編集である林洋一郎の草野球チームの対戦相手に助っ人として北見がいたことからそれも何かの縁ということから決定となった。
鈴木建設営業三課に所属する浜崎伝助は愛妻家で真面目だが、無趣味で出世欲に欠けるうだつが上がらないサラリーマンだった。出世競争に出遅れた伝助はいまや同期で唯一のヒラ社員となってしまい、妻のみち子からも「出世のために趣味の一つでも覚えて上司に取り入ったらどうか」と苦言を呈される有様であった。
現状を見かねた上司の佐々木課長は伝助を海釣りに誘い、釣りの手ほどきをする。初めは全く釣りに興味を持たなかった伝助だが、次第に釣りの楽しさを覚えていく。ところが今まで無趣味だった反動なのか、次第に会社内で堂々と釣り新聞を広げたり妻の出産と釣りを天秤にかけるなど、趣味を通り越した「釣りバカ」へと変貌を遂げてしまい、性格も人情にこそ篤いがざっくばらんで常識外れな言動をするように変わってしまう。結果としてますます出世から遠ざかってしまうが、当の伝助は「出世すると釣りをする時間が減る」と放言し、佐々木は心労で日々胃を痛める羽目になった ある日、伝助は会社で出会った老人鈴木一之助に請われて一緒に釣りに出かけ、手ほどきをしたことで一之助の「釣りの師匠」となる。この一之助こそ、実は伝助が勤める鈴木建設の泣く子も黙る鬼社長であった。だが伝助は自社の社長にも関わらず顔を覚えていなかったため、気づかぬまま対等に「スーさん」「ハマちゃん」と呼び合う仲になる。意気投合した二人は盛んに釣り勝負へ出かけるようになるが、いつしか一之助は自分が社長だと伝助にバレることで関係が変わることを恐れるようになる。しかし、あるきっかけから一之助は意を決して伝助に自らの正体を明かしたものの、予想に反して伝助の態度は全く変わらなかった。釣りは「公私の私」であるとして、業務外では「鈴木社長とヒラ社員浜崎」ではなく「スーさんとハマちゃん」として、二人は今後も釣り勝負に付き合うことになる。
1988年から2009年にかけて松竹系にて、1995年・1999年を除き毎年1本新作が公開された。全22作品の脚本を山田洋次が手がけ、『男はつらいよ』シリーズと並び松竹を代表する国民的映画シリーズでもあった。本稿では1作目と全体について記述し、シリーズ各作品については該当の項を参照のこと。
『男はつらいよ』の同時上映作品として1988年12月に第1作『釣りバカ日誌』が公開され、松竹もそれ程力を入れてはいないB面映画であったものの、公開後の評判も良く、特に渥美清の逝去により『男はつらいよ』シリーズが終了となってからは、松竹を支える看板映画シリーズとして製作された。当初は第1作のみで完結する予定でラストもそのように作られているが、シリーズ化により第1作と2作以降は繋がらなくなっている。主演の西田・三國両名の高齢化もあり、2009年12月公開の第22作『釣りバカ日誌20 ファイナル』をもって終了した。
地上波によるテレビ放送はTBS系列が最新作(地上波初公開)の優先的放送権を持っているが、それ以外の作品は民放5系列全てで放送されている。また、アメリカ合衆国、カナダ、プエルトリコを放送対象地域とするNHK国際放送テレビジャパンが数作品を放送している。
原作より「釣り」に対する描写は薄められ、西田敏行演ずるハマちゃんのベタなキャラクターと三國連太郎の渋めのスーさんとのやり取りがいい味を出している。ハマちゃんとスーさんの魅力を引き出す重要なキャラクターであるハマちゃんの妻・みち子さん役はシリーズ1〜6、および7作目『釣りバカ日誌スペシャル』までを石田えりが演じ、シリーズ7以降は浅田美代子が演じている。また、浜崎の家は(一戸建て(2~10)、マンション(1)(14)、アパート(11))など毎回変わっている。ただ、全作共通しているのは隣にハマちゃんの親友でもある釣り舟屋「太田屋」を営む太田八郎が住んでいる事である。また、鈴木建設の外観や営業三課の内装も作品ごとに異なっている。
『男はつらいよ 寅次郎の縁談』に西田敏行がハマちゃん役で1シーンのみカメオ出演したことがある。
1988年12月24日より松竹系にて公開された。
鈴木建設の四国支社高松営業所に勤める浜崎伝助こと「ハマちゃん」は3度の飯より釣りが好き。出勤前に大きなクロダイを釣った日に東京本社への「栄転」を営業所長から命じられる。しかし、当初はハマちゃんは「東京では釣りができない」と断り消極的だったが、妻のみち子さんに「東京湾にも魚がいる」と説得され、船宿の向かいのマンションに引っ越し、まずは一段落の合体。
初日から遅刻ばかりで社内ではあくびばかりの毎日を送るハマちゃん。近くの食堂で憂鬱な顔をした男と出会う。出会ったばかりの男に「こんな風にヒラメを骨だけ残して食べるものだ、それが魚に対する供養」だと残りを食べてあげる(みち子さんと知り合ったのも同じパターンだった)。連絡先を通じて気晴らしにと釣りに誘う。しかし、この男がワンマン社長の鈴木一之助だった。
船釣りに登山の格好で現れた男を「スーさん」と呼び、東京湾を楽しみ、初めてながら大漁になる。夜はみち子さんから気さくな歓迎を受け、初めての本格的な釣りに疲れて眠り込み、そのまま浜崎の家でお泊まり。
数日後にハマちゃんの勤めている会社に連絡しようとして秘書から我が社の社員だと知る。その日の自宅で「社長の顔を知らないとは」と妻に愚痴ると、彼女は「背中丸めて、陰気な顔をしてるから。不幸せな老人と思われても仕方ない。でも、その老人を優しく労ってくれたんでしょ」と言う。
次の日曜日、再びハマちゃんと投釣りに出掛け、再び浜崎家にお世話になる。問題児のハマちゃんは「世の中一生懸命な奴ばかりじゃつまらない。会社だってアジもメバルもサバだって、いろんな人がいるから面白い」というのに妙に説得される。ハマちゃんはスーさんを食うに食わずの孤独な老社員だと思い込んで、仕事を世話してあげるが、スーさんは社長であることを明かさずに断る。しかし偶然、会社に訪れたみち子さんはスーさんの素性を知って「私たちをだましていたのね」と涙ぐむ。スーさんはそれでも、「公私を別にして、友人として今後とも付き合いをしてほしい」とハマちゃんに電話をする。しかしハマちゃんは「俺も辛いけど、この関係はスーさんのためにならないよ」と関係を絶ってしまう。
その後、ハマちゃんの突然の栄転もコンピューターの入力ミスと分かって、定期異動の際に高松営業所へ戻ることになる。人事部長が事情を説明すると、「ぜひ高松に戻りたい」と言ったハマちゃんにガッカリするスーさんだが、「せめて役付で戻してやれなかったのか?」と問いかける。すると人事部長は係長の昇進を約束したが、浜崎はこれを断り、ヒラのまま高松営業所に転勤することになったと答える。
別れの言葉も無く、スーさんとの別れを惜しんだみち子さんは新幹線から電話をして「ひどい事言ってごめんね」と謝罪し3人のわだかまりも溶ける。
主要人物は#レギュラーキャストを参照。
2002年11月2日から2003年9月13日までテレビ朝日系列(フルネット24局)にてテレビアニメが放送された。放送時間は毎週土曜19時30分 - 20時00分であり、同時間帯でアニメが放送されるのは『忍ペンまん丸』第8話以来5年ぶりである。テレビ朝日と東映アニメーションの制作による事実上の前番組は2002年9月まで、ローカルセールス枠で土曜朝9時55分に放送されていた『ののちゃん』である。
劇場版映画を制作する松竹が本作の映像作品化をアニメ作品やテレビ番組も含む形で独占されていたため、同業企業の東映子会社である東映アニメーション制作でありながら、松竹も製作協力として東映本体と共にクレジットされていた。同業同士の協力関係となっていたため、アニメ映画版が製作されたことは無かった。
北見はアニメ化をするとアニメ終了とともに原作の人気も無くなり、連載が終了となってしまうことを危惧してアニメ化には反対の立場を取ってきたが、自分も61歳となり後を気にすることがなくなったことからアニメ化を承諾した。当初は伝助が最初から釣りバカである点や、放送時間がゴールデンタイムでかつ子供向けに改変製作されている関係から「合体」描写が無い以外はほぼ原作に沿っていたが、途中から伝助の仕事風景よりは釣りにうつつを抜かしながらも妻と子供を大事にする伝助の姿や、浜崎一家の仲の良さをメインにしたオリジナルの単発ストーリーが中心となっていった。また、飼い犬・ハゼタロウの声が途中から川津泰彦から進藤尚美に変更され、本編開始前には魚偏の漢字の読みを出題する「おさかな漢字クイズ」が設けられた。
当時テレビ朝日で放送されていた同じ東映の特撮作品『爆竜戦隊アバレンジャー』とのコラボレーションとして、双方にゲスト出演したストーリーもあり、本編では伝助はアバレンジャーのことはそんなに詳しくなく、アバレンジャーとの共闘は夢の中であったが、『爆竜戦隊アバレンジャー』では本編でファンになったため彼らのことを知っており、テレビから抜け出し、本当に彼らと共闘している(アニメでは鯉太郎が『アバレンジャー』のファンという設定があり、アバレンジャーも釣りバカ日誌のファンという設定になっている)。これは、テレビ朝日プロデューサーの中嶋豪が両番組を担当していたことから実現したものである。この他、ゲストキャラクターにはイアン・ソープ(テレビ朝日が中継を行なっている世界水泳選手権の宣伝を兼ねた出演)やアザラシのタマちゃんも登場していたほか、主題歌は20話以降、当時テレビ朝日系列で放送中だった『Matthew's Best Hit TV』のマシュー南が担当していた。
2008年11月から大鵬薬品『ソルマック』のCMキャラクターとして約5年振りの復活を遂げた。
2013年5月よりTOKYO MXにて再放送を行っていた。
※2002年12月14、21、28日、2003年1月4日、4月5日、6月21日、8月9日は特番のため休止。
2002年12月31日に大みそか傑作選スペシャルが放送された。
特番放送として『クレヨンしんちゃん』や『あたしンち』と合同放送されている。
本編のDVDは2003年4月16日から2004年3月17日にかけて発売。全12巻。
『釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助〜』(つりバカにっし しんにゅうしゃいん はまさきでんすけ)のタイトルで、2015年10月23日から12月11日まで毎週金曜日20時 - 20時54分(初回、最終回は2時間スペシャル)に、テレビ東京系の『金曜8時のドラマ』で、濱田岳主演で放送された。連続ドラマ化されるのは今作が初めてとなる。映画版で浜崎伝助(ハマちゃん)を演じた西田敏行が、ドラマ版では鈴木一之助(スーさん)役で出演する。浜崎伝助の新人時代(入社初年度)にスポットライトを当て、時代設定を2015年に変えて描かれるオリジナルストーリーが展開される。なお、映画版の製作・配給を手がけた松竹がドラマ版の制作も担当し、映画版の監督およびチーフ助監督である、朝原雄三と石川勝己がローテーション監督として参加する。なお、ゲストには映画版のレギュラーだった俳優や、他のテレビ東京制作番組の出演者が登場している。
なおこの第1期は2019年10月26日より、BSテレ東で、映画版全作品を放送する「土曜だ!釣りバカ!」(18:30-20:54基本)と連動して、「土曜ドラマ9」として、新たに4Kリマスターリングをしたうえで再放送されている。
2017年1月2日には『YAMADA新春ドラマスペシャル「釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助〜 伊勢志摩で大漁! 初めての出張編」』のタイトルで、単発スペシャルドラマとして放送された。
2017年4月21日から6月16日までは第2シリーズが『釣りバカ日誌 Season2〜新米社員 浜崎伝助〜』のタイトルで放送された。
2019年1月4日には単発スペシャル第2弾が、『新春ドラマスペシャル「釣りバカ日誌〜新米社員 浜崎伝助〜瀬戸内海で大漁! 結婚式大パニック編」』のタイトルで放送された。当該回では、原作漫画およびアニメ版や映画版でも描かれなかった「ハマちゃんとみち子の結婚」がオリジナルストーリーで展開された。また、映画版で浜崎みち子を演じた浅田美代子が、本作ではみち子の母役で出演。若年期が濱田岳にそっくりと話題になっていた火野正平が、本作で浜崎伝助の父役で出演し、濱田との初共演が実現した。
作中でみち子が作った料理は放送終了後に料理アプリクックパッドにてレシピを公開している。
Owlapps.net - since 2012 - Les chouettes applications du hibou