都市雇用圏(としこようけん、Urban Employment Area, UEA)とは、金本良嗣らが日本を対象として考案した、雇用を基準とする都市圏の定義。都市経済学において標準的な都市の定義とされる。
概ね中心都市とその都市への通勤者が一定割合いる周辺地域を合わせたものをいい、233の圏域が日本の総人口の95%をカバーする。都市圏を設定し人口を集計するに当たっては、便宜的に市町村ごとに都市圏に含まれるか判定することが多いが、都市雇用圏は基準の明確なことが長所とされ、地域の横断的な分析などに用いる。
中心都市と郊外の定義
中心都市の定義
以下の条件のいずれかを満たす市町村を中心都市とする。複数存在する場合には、それらの集合を中心とする。
- DID(人口集中地区)人口が1万以上の市町村で、他都市の郊外でない。
- 郊外市町村の条件を満たすが、
- a. 従業常住人口比が1以上で、
- b. DID人口が中心市町村の3分の1以上か、あるいは10万以上である。
- 一部の区が上記の条件を満たす政令指定都市。
郊外の定義
中心都市への通勤率が
- 10 % 以上のものを(1次)郊外市町村とし、
- 郊外市町村への通勤率が 10 % を超え、しかも通勤率がそれ以上の他の市町村が存在しない場合には、その市町村を2次以下の郊外市町村とする。ただし、
- a. 相互に通勤率が 10 % 以上である市町村ペアの場合には、通勤率が大きい方を小さい方の郊外とする。
- b. 中心都市が複数の市町村から構成される場合には、それらの市町村全体への通勤率が 10 % 以上の市町村を郊外とする。
- c. 通勤率が 10 % を超える中心都市が2つ以上存在する場合には、通勤率が最大の中心都市の郊外とする。
- d. 中心都市及び郊外市町村への通勤率がそれぞれ 10 % を超える場合には、最大の通勤率のものの郊外とする。
主な都市雇用圏
- 統計値は2010年及び2015年。
- 2015年が2010年と比べて減少した都市圏の人口は赤字。
- 「人口」は中心市町村と郊外市町村の人口の合計。
- 「DID人口」と「従常比」は郊外条件を満たさない中心都市のDID人口と従業常住人口比。
- 中心都市のDID人口合計が5万人以上の場合は「大都市雇用圏」(Metropolitan Employment Area, MEA)(白)、5万人以下の場合は「小都市雇用圏」(Micropolitan Employment Area, McEA)と呼ぶ(黄)。
- 大都市雇用圏地図 (PDF) (1995年)
- 下表は都道府県庁所在地が中心都市の場合、順位の背景色を青とした。
※副中心が設定されている都市圏(市町名は2015年当時のもの)
- 東京都市圏 : 横浜市・川崎市・千葉市・立川市・武蔵野市・さいたま市・厚木市
- 大阪都市圏 : 堺市・東大阪市・門真市
- 名古屋都市圏 : 小牧市・半田市・東海市・刈谷市・安城市
- 京都都市圏 : 草津市
- 札幌都市圏 : 小樽市
- 前橋都市圏 : 高崎市
- つくば都市圏 : 土浦市
- 那覇都市圏 : 浦添市
- 太田都市圏 : 大泉町
- 神栖都市圏 : 鹿嶋市
- 那須塩原都市圏 : 大田原市
- 三条都市圏 : 燕市
- 岩国都市圏 : 大竹市
- 御殿場都市圏 : 裾野市
- 横手都市圏 : 湯沢市
上位都市圏の時系列
郊外化によって周辺自治体が次々と中心都市へ10%以上の通勤比率になっていったため、統計上は人口増がジャンプアップする都市圏が多い。特に岡山都市圏では、統計上、別だった倉敷都市圏が、2000年では合一し、「岡山・倉敷都市圏」という形になって統計上人口が激増した形となっている。
また名古屋都市圏は、2015年時に岡崎都市圏、刈谷都市圏、半田都市圏、安城都市圏、西尾都市圏、碧南都市圏の6都市圏12市町を吸収(2010年までは、統計上別個の都市圏を成していた。またこの中で名古屋市への通勤率が10%を超えているのは半田都市圏の阿久比町のみである。詳細は名古屋都市圏のページを参照。)したため、都市圏人口が約140万人増加している。
一方、北九州都市圏では、都市圏構成自治体の人口減の他に、福岡都市圏のそれに変化した自治体が出現し、都市圏が縮小して人口も減少している。
都市雇用圏の総数は1980年の315個から2000年には269個まで減る一方で、日本の総人口のうち大都市雇用圏に含まれる割合は75%から82%に増えていることから、都市圏に集中化現象の起きていることが示唆される。
- 中心市の合併、あるいは、中心数の変化があった都市圏は太字で表す。
- 各都市圏の背景色は、地方別に以下のように分類する。
脚注
参考文献
- 徳岡一幸「日本の都市圏に関する二つの定義 ―標準大都市雇用圏と都市雇用圏―」『經濟學論叢』第55巻第2号、同志社大学経済学会、2003年9月20日、21-82頁、NAID 120002640472。
関連項目
- 日本の市の人口順位
- 都道府県の人口一覧
- 五大都市圏
- 支店経済都市
- モータリゼーション
- 交通弱者
外部リンク
- 都市雇用圏
- 地域経済研究会(第2回 2008年12月25日)配付資料 - 経済産業省
- (資料6)2005年国勢調査に基づく都市雇用圏について (PDF) - 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
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