『チコちゃんに叱られる!』(チコちゃんにしかられる、英語: Chico Will Scold You!)は、2018年4月13日(レギュラー放送)からNHK総合テレビジョンで放送されているバラエティ番組。
「好奇心旺盛でなんでも知っている5歳の女の子」という設定の着ぐるみの少女のチコちゃんが、ナインティナインの岡村隆史をはじめとする大人の解答者たちに対して素朴かつ、当たり前過ぎてかえって答えられないような疑問を投げ掛ける、クイズ形式のバラエティ番組。2017年3月以降の3回の単発放送を経て、2018年4月13日からレギュラー放送が開始された。
解答者が答えに詰まると、CGによって突然真っ赤になり巨大化した顔で、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」の決めゼリフと共に叱って(場合によっては叱らない)答えを明かし、専門家に取材をした解説VTRを流して答えを掘り下げる、という構成で進められる。逆に解答者が正解した場合には「つまんねーヤツだな〜」と拗ねてしまい、その場で漢字の書き取り問題を出題(回によっては省略されることもある)、この問題の不正解者に対して「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱ってから解説VTRに入る。つまり、よほど雑学と漢字に詳しくない限り、叱られることはほぼ確定なのである。これは度々ネットでも話題になる。
以上の進行形態からクイズ番組的要素もあるが、多くの疑問では番組内で示される答えが「いくつかある説の一つを紹介」するものであり、そのことについては最後に「諸説あります」という注釈が加えられ、必ずしも番組として正解を求めているわけではないことが暗示されている。タイトルロゴに描かれた「Don’t sleep through life!」は「ボーっと生きてんじゃねーよ!」の意訳であり、英語での正式タイトルとは異なる。岡村は、これがはじめてのNHKでのレギュラー番組でもある。
かつてフジテレビで「笑う犬」シリーズなど数々のバラエティ番組を手がけ、共同テレビジョン(共テレ、フジテレビの関連会社)に出向中だった小松純也が企画し、当番組のプロデューサーを務める。ただし、番組そのものはNHKエンタープライズ(NEP)の単独制作名義となっており、これに共同テレビや、同社の子会社であるベイシスなど複数の番組製作会社が制作に関わる。
番組中にはにらめっこのコーナーがたいてい挿入され、「あっぷっぷ」のかけ声と共にCGでいろいろチコちゃんが変化し(たいていキョエを伴う)、すぐスタジオに戻りチコちゃんが笑うシーンが放送され(なおにらめっこがなくても笑うシーンは放送される)、出演者やそれまでのネタで笑いを取ってからそのまま次の問題に移る。
番組の最後に視聴者からのお便りを紹介するコーナー「ひだまりの縁側で…」が挿入される。また、2020年度後期は番組中盤に「私は流されない 唯我独尊ゲーム」が設けられていた。放送時間を拡大したスペシャル版では、ゲストがチコちゃんと狭い部屋で一対一で向き合い、チコちゃんからの質問に答えるコーナー「チコの部屋」が挿入される。このほか、チコちゃんの顔を全く映さないうえで、薄暗いスタジオの隅で岡村とトークする「働き方改革のコーナー」もしくは「CO2削減のコーナー」も放送されている。2020年度までは不定期での放送だったが、2021年度からは「唯我独尊ゲーム」を廃止した代わりにゲストから1人を交えて3人でトークするコーナーとして毎週放送されるようになり、更に2023年1月6日放送回からは番組の次回予告も毎週挿入されるようになった。
放送時間は本放送が毎週金曜19:57 - 20:42で、再放送が土曜(本放送の翌日)8:15 - 9:00であるが、本放送時間帯(金曜夜)は各地域放送局(首都圏を含む)で独自番組が放送される場合があることや、特設ニュース(報道特別番組)により放送自体が休止になる場合もあるため土曜日の放送が本放送になる週や地域もある。そのほか、毎週のレギュラー放送とは別に、過去の放送から質問1問分を抜粋し10分に再編集したミニ番組「チコちゃんに叱られる!チコっとだけスペシャル」も不定期に放送されている。
2020年3月6日放送回からは、ネット常時同時・見逃し配信サービスのNHKプラスにて視聴可能になった。在京民放テレビ局5社が共同運営している動画配信サービスのTVerでもミニ番組「チコっとだけスペシャル」の配信を行っている。
同番組のプロデューサーでもある小松が、NHKチーフプロデューサー(CP)の水高満と飲んでいたとき、小松が「5歳児の女の子にクイズを出され、知らないと『ボーッと生きてんじゃねえよ!』と叱られる番組をやりたい」と話したことが番組誕生のきっかけである。プロデューサーの小松の談話によると、この番組の企画はかつて1996年に自分が企画して『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ)で放送された、正解して当たり前というクイズを出題していた『君たちは漫然と生きていないか?』コーナーを意識したものであったという。またチコちゃんのキャラクターの原点は、これも小松が演出・プロデューサーを務めていた『平成日本のよふけ』(フジテレビ)に登場した『赤さん』である(赤さんの声は、チコちゃんと同じ木村祐一が担当している。ただし、ボイスチェンジャーがチコちゃんよりも低めのトーンに調整されていたり、着ぐるみではなくパペットという違いがある。)。
チコちゃんには、「一昔前にいた、ちょっとこまっしゃくれたおませな女の子」という設定を与えているため、チコちゃんの衣装や髪型に昭和のイメージを与えているといい、番組セットにもレトログッズをちりばめている。そのチコちゃんを、「5歳児」に設定したのは5歳ぐらいが「ヘンな言葉覚えて大人をしかったとしてもイラッとこない感じとか、背伸びしてもかわいい感じ」「まだ社会生活や規律に染まっていない」点にあるという。小松プロデューサー曰く、名前だけは可愛くしたいということで、小松の親友の妻のニックネームから「チコ」と言う名前を採っている。
チコちゃんの顔は、CGで無限に変化することができるが、これは映像や着ぐるみ、CG合成などの案があったなかで、NHKアートの技術担当者やNHK放送技術研究所にも相談して、通常のバラエティでどこまでできるのかを試した結果だという。実際の収録現場での様子は秘匿されている部分も多いが、水高CPの説明によると、スタジオでの収録時には着ぐるみのチコちゃんがいて、ボイスチェンジャーで変換させた木村祐一の声を同時収録であてており、チコちゃんの顔(表情)は収録後にCGで組み替え(メイク)しているとのこと。チコちゃんの顔(表情)の組み替えのため、収録時にチコちゃんを複数のカメラで同時収録し、放映時に頭部を3DCGのモデル(着ぐるみの頭部を精緻に3Dスキャンしたもの)に差し替えているが、実際は他の出演者が手前に被った際のマスク処理や、鏡や主演者のサングラス、現場の映像確認用モニターなどにチコちゃんが映り込んだ場合の処理など多くの手間のかかる作業を要する。この様な事情から収録からオンエアまでに約2か月程度を要するため、2020年に岡村の結婚が報じられた際は、このタイムラグにより当分番組内で岡村の独身弄りネタが続く事を説明している。
チコちゃんの声に木村を起用した意図について、水高CPは木村のアドリブ力の高さと(チコちゃんの見た目との)ギャップの激しさを挙げている。木村自身は女の子を演じることについて「いろんな人に聞いてください、板尾(創路)さんとかYOUとかに。『キム兄は女子だよね』って言いますから」「女子会に参加できるタイプなんです」などと、元々女子的なキャラクターを持ち合わせていることを述べている。
森田美由紀(NHKアナウンサー)が担当する解説VTRのナレーションは、「今こそ全ての日本国民に問います」「そんなことも知らずに、やれ○○だとか、○○などと言っている日本人のなんと多いことか」と、「全国民」に対して上から目線で淡々と毒を吐くスタイルだが、これは番組からの「NHKスペシャル風にやってほしい」とのリクエストに応じたもので、水高CPによると「おちゃらけたバラエティーのナレーションではなくて、真面目に淡々と読む、だけど言っていることは変、という方が面白いというのがあって、『ザ・NHK』に読んでもらった方が、その面白さが増す」との意図で起用したものであるという。ただし、意図的に笑いを誘うナレーションもある。
問題・解説のVTRは問題ごとに別々のディレクターを中心としたチームが担当し、VTRの演出スタイルは担当ディレクターの作家性に委ねられているという。取材前に「面白そうに膨らませるポイント」をスタッフ全員で共有した上で取材に臨み、その上で「NHKは真摯に取材し伝える」という基本線を崩さないように、疑問に関しての取材と解説VTRは「芯のしっかり通ったもの」を作った上で、それを崩しているという。過去の『NHKスペシャル』など他の番組の映像をほぼそのまま解説VTRに使ったり『ダーウィンが来た!』のディレクターに依頼して解説VTRを制作したり、『プロジェクトX』『その時歴史が動いた』などのNHK人気番組のパロディなど大胆な演出も見られる。仮に「答え」の内容が想定外の方向に進んだとしても、そこまでの制作過程は徹底してオープンにすることも心がけているという。
全体的に70年代子ども向け番組へのオマージュがよくみられる。
レギュラー放送開始後の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム。以下において同じ)は、おおむね2桁の数値を挙げている。本番組の視聴率の特徴として「本放送(金曜日)より再放送(土曜日)の視聴率の方が高い」という傾向がある。具体的には、2019年2月9日放送の再放送分が18.0%という視聴率を記録し、2019年2月第1週(2月4日 - 10日)の週間高世帯視聴率番組の「その他の娯楽番組」部門で、前夜の本放送のみならず『笑点』や『世界の果てまでイッテQ!』(いずれも日本テレビで10日放送。)といった番組を抑えて週間1位となる現象が起きている。 この理由について、スポーツ報知は、「再放送が高視聴率を挙げる連続テレビ小説の直後に放送されること」「土曜朝という時間帯が視聴者層に合致したこと」「番組から伝わる『ライブ感』」を挙げている。
本番組で紹介された説は、視聴した専門家や業界関係者から「事実関係に誤りがある」「ものごとを単純化し過ぎている」と指摘されることがある。また、本番組で紹介される『答え』には「諸説ある」という注が付けられているものの、「『諸説ある』という言葉で逃げているだけである」「信憑性がほとんどない説にもかかわらず『諸説ある』という体で取り上げている」との批判もある。
雑学ライターの杉村喜光によると、本番組は「諸説ある中の「特殊なケース」を取り上げることがある」。文化人類学者の亀井伸孝は、「文化人類学では、一つの原理によって一つの答えを押し付ける姿勢を厳しく反省し、自己批判してきた。チコちゃんも同じ問題を抱えている」と評した。さらに亀井は、本番組のフォーマットを「執拗に問い、自身の思考様式に合わない他者を罵倒する」ものだと断じ、「無知で尊大で傲慢です。およそ知的な態度ではありません」と厳しく批判した。
2019年1月15日発売のコロコロコミック2月号と同年2月28日発売の別冊コロコロコミック4月号(共に小学館)からコミカライズ版が連載されることが発表された。作者はコロコロ版では住吉リョウ、学年誌版はあべさよりである。
また、コロコロ版が『女性セブン』『ちゃお』『ぷっちぐみ』、学年誌版が『学習幼稚園』にもそれぞれ読切として掲載されたこともある。
現時点ではコロコロ版のみ刊行。
キャラクターに関するライセンスはNHKエンタープライズが管理しており、同社の許諾により複数の企業から様々なキャラクターグッズが展開されている。
2020年4月24日(23日深夜)放送の民放ラジオ番組『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』(ニッポン放送制作)での岡村の発言内容についてNHKにも苦情が寄せられたことから、同年5月15日放送のラストに「番組からのおことわり」と題したテロップが流され「岡村さんは、自身の発言は不適切なもので、多くの人に不快な思いをさせてしまったと深く反省しています。私たちも皆さまからの声を真摯にうけとめ、これからも心から楽しんでいただける情報をお届けしてまいります」とのメッセージを放送した。
2022年5月20日放送回で「フォークの歯が4本なのは、スパゲティを上手に食べるため」という解説のVTRに、マナー講師の平林都が出演。この際、女性スタッフがフォークを使ってスパゲティを食べる所作に対して、平林が「すごい仏頂面。下を見ずに私を見て」、「下を見るなと言うてるやろ」、「下品」、「人と一緒にいるときは “頂戴いたします” やろ」などの厳しい言葉でマナーを指摘。女性スタッフが耐えきれずに泣き出してしまうと、平林は「泣くな! ええ年して!」と追い打ちをかけるような指摘を行った。VTR後、岡村は「(スタッフが仕事を)やめてしまうよ」とこぼし、また視聴者からも「パワハラではないか」などと批判が相次いだ。NHK会長の前田晃伸は同年6月2日の定例会見において、「批判をいただくことは、あってはならない。放送ではさまざまなことが起きるが、ご意見には真摯に対応していきたい」と語っている。
この番組のフォーマットを用いた海外版が制作されている。
スペインでは、『Mapi』(マピ)が2022年8月から12月まで放送された。日本版のチコちゃんに相当するのは「マピ」という名前の女の子である。
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