ラグビーワールドカップ2019 日本代表 (ラグビーワールドカップ2019 にほんだいひょう)は、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップ2019のラグビー日本代表である。
ラグビーワールドカップ2015イングランド大会で南アフリカに勝利するなど、初めて一次リーグで3勝をあげ躍進を遂げたブレイブ・ブロッサムズだが、大会後にエディ・ジョーンズヘッドコーチが退任。2016年1月、新ヘッドコーチにジェイミー・ジョセフを迎え、新体制が始動。同年6月、アタックコーチにトニー・ブラウン、スクラムコーチに長谷川慎を招聘。10月に、チームスローガンを「ONE TEAM」に決定した。2019年8月29日に、ワールドカップ2019日本大会の登録メンバー31名が発表された。チームソングはビクトリーロード。
2016年9月、ジェイミー・ジョセフHCが正式に就任。トップリーグの視察を繰り返した上で代表選手を選考し、その後に短期合宿を2回行った上で11月からのテストマッチに備えた。
世界ランキング12位のジェイミー・ジャパン初のテストマッチは、2016年11月5日に秩父宮ラグビー場でランキング9位アルゼンチンに20-54で完敗した。翌週からヨーロッパ遠征となり、ランキング11位ジョージアとのテストマッチは、22-18でジェイミー・ジャパンとして初勝利。その翌週のランキング6位ウェールズ戦は7万人を超える大観衆の中で行われ、互角の戦いを行い、30-33の僅差で敗れた。年度最終フィジー戦では、レッドカード退場で1人少ないフィジー相手に25-38で完敗。ジェイミー・ジャパン1年目のテストマッチ4連戦は、1勝3敗で終わった。
2017年1月、年初の会見でジョセフHCは、今後はサンウルブズを中心にした代表強化を進めていく考えを打ち出すとともに、サンウルブズが海外で試合をする際は、遠征に参加しない選手を自ら指導するなどで若手を育成していく方針も明らかにした。
アジアチャンピオンシップは全勝で優勝。6月に強化試合でルーマニアに勝利、アイルランドに2連敗した。
秋シーズンでは、世界選抜戦において27-47で敗れる。11月4日に日産スタジアムで行われたオーストラリア戦でも30-63で敗れたが、国内開催ラグビーテストマッチ史上最多43,621人の入場者数を記録した。フランス遠征でトンガに39-6で勝利、フランスとは23-23で引き分けた。
2018年5月15日、ルーマニアが代表資格がない選手をワールドカップ2019ヨーロッパ予選に出場させたとして、ワールドラグビーはルーマニアの出場権を取り消した。これによりワールドカップ2019開幕戦で日本代表の相手は、ルーマニアからロシアに変更された。
6月は国内でイタリア戦で1勝1敗、ジョージアに勝利。10月に国内での世界選抜戦 とニュージーランド戦 で敗れた。
11月3日に味の素スタジアムで行われたニュージーランド戦でも31-69で大敗したが、国内開催ラグビーテストマッチで史上最多43,751人となり、入場者数の記録を1年ぶりに更新した。続く11月のイングランド遠征では、イングランドに15-35で敗れ、ロシアに32-27で勝利した。CTB中村亮土は、イングランド戦で2トライして前半15-10で日本がリードしたことで、日本代表の成長を強く実感したという。
11月1日、B’z「兵、走る」(つわもの、はしる) が「リポビタンD ラグビー日本代表応援ソング」としてリリース。以降、テレビCMや試合会場内CMのほか、ワールドカップ2019の日本代表試合会場でも流れ、2023年に至るまで、日本代表戦の国内会場で選手入場時やハーフタイム、試合後などに流れた。
2019年2月の合宿で、山本幸輝の提案によりチームソングが「ビクトリーロード」に決まる。
ワールドカップ2019の前哨戦となったパシフィック・ネイションズカップではフィジー、トンガ、アメリカ の3か国に勝利して優勝した。2019年8月29日にW杯最終登録メンバーを発表。9月6日に熊谷で南アフリカに7-41で敗れ W杯前最後のテストマッチを勝利で飾ることはできなかった。
ホスト国として挑んだワールドカップ2019では、予選プール・開幕戦(2019年9月20日)においてロシアと対戦。序盤、日本のプレーには硬さが見られ、ハイパントの処理ミスからロシアに先制トライを許したが、松島幸太朗の2トライで逆転に成功し12-7で前半を終える。後半もピーター・ラピース・ラブスカフニと松島のハットトリックとなるトライなどで突き放した日本が30-10で快勝を収める。
2戦目(9月28日)は、静岡県小笠山総合運動公園スタジアムで、ランキング9位の日本と、ランキング2位の強豪アイルランドの対戦(いずれも試合前の順位)。主将のリーチマイケルをリザーブに残し、ラブスカフニをゲーム主将とする陣容で挑んだ。前半にアイルランドに2トライを許したものの、田村優の3本のペナルティゴールで9-12と接戦に持ち込むと、後半に福岡堅樹のトライにより逆転し、相手を無得点におさえ、19-12で勝利した。アイルランドには、通算10戦目にしての初勝利となった。イギリスBBCは「アイルランドの崩壊、日本の歴史的勝利」と報道し、フランスAFP通信は「Shizuoka shock(静岡の衝撃)」と呼んだ。これにより、9月30日付のワールドラグビーランキングにおいて、日本は8位となった。
3戦目(10月5日)のサモア戦はリーチがスターターに復帰。前半はラファエレティモシーのトライなどで16-9でリードして折り返した。後半は54分にラインアウトモールから姫野和樹のトライでいったん突き放したが、72分にサモアもトライを返し7点差となった。しかし日本は75分に福岡、試合終了間際に松島がそれぞれトライを決め再度サモアを突き放し、合計4トライのボーナスポイントも得て38-19で3連勝を飾った。この時点でA組3位以内が確定し、次回2023年フランス大会の出場権を獲得。
予選プール最終戦となる4戦目(10月13日)は、前回大会で唯一敗れた強豪スコットランドと対戦。対戦前の勝ち点は日本14、スコットランド10であり、日本は勝利または引き分けなら無条件で、負けてもボーナスポイントの獲得状況によっては予選突破が決まる状況であった。試合序盤の6分にスコットランドに先制トライを許したが、日本は細かくパスを繋ぎ17分に松島のトライと田村のキックで同点。25分にはフィールド中央で堀江翔太、ジェームス・ムーア、ウィリアム・トゥポウが連続でオフロードパスをつなぎ、最後は稲垣啓太がそのまま中央でトライを決めて逆転。39分にもラファエレのキックパスを受けた福岡がトライを決め、前半を21-7とリードして終える。後半開始早々42分に福岡のトライで28-7とリードを広げたが、スコットランドも49分、54分に立て続けにトライを奪い28-21と7点差に迫った。しかしその後日本はスコットランドの猛攻を凌ぎ28-21で勝利。勝ち点19の予選プール1位通過で、史上初の決勝トーナメント進出を決めた。ティア2の国が予選プール全勝で1位となるのはワールドカップ史上初のことである。10月14日付のワールドラグビーランキングにおいて、日本は7位となった。
準々決勝は10月20日にプールB2位の南アフリカと対戦。開始早々の4分に南アフリカが先制トライ。日本は20分に田村のペナルティキックで3点を返した。日本は30分ごろまで速い連続パスをつないで優勢に立っていたが、その後は徐々に南アフリカの反撃を受けて守勢にまわるようになった。しかし南アフリカの反則やミスもあり、前半はそのまま3-5と接戦で折り返した。後半に入っても日本の劣勢が続き、南アフリカの3本ペナルティキックで徐々に差をつけられると、さらに66分と70分の2本のトライで突き放された。日本は後半は得点を奪えず、3-26で敗れてワールドカップ初のベスト8で大会を終えた。南アフリカ戦直後から大会終了まで、日本のランキングは8位となった。
トンプソンルークは、準々決勝の南アフリカ戦において、38歳6か月4日で出場し71キャップ目を獲得。日本代表の最年長キャップ獲得者になった。田村優は、W杯1大会での日本代表最多得点記録で歴代2位(51点)となった。大会終了後、ジェイミー・ジョセフの続投が決定した。
12月11日、東京都千代田区の丸の内仲通りで、晴海通りから御幸通りまでの800メートル にわたり日本代表28人が歩いてパレードを行った。平日ながら約5万人(主催者発表)の観衆が集まった。ワールドカップでの活躍を受けラグビー日本代表は空前のブームとなり、その年の新語・流行語大賞にチームスローガンの「ONE TEAM」が大賞に選ばれた。第70回NHK紅白歌合戦では日本代表選手19人がゲスト出演し、後半冒頭でチームソング「ビクトリーロード」をアカペラで司会者や観客と共に合唱、番組終盤近くで松任谷由実は日本代表メンバーが見つめる中、W杯を振り返る映像をバックに「ノーサイド」をテレビ初歌唱した。
年齢は、2019年9月20日時点(ワールドカップ2019開幕日)に固定。
備考
備考
備考
備考
ラグビーワールドカップ2019では、日本国内開催および日本代表の快進撃により、日を追うごとに視聴者が増加していき、以下のように記録的な高視聴率をおさめた(ビデオリサーチ社による関東地区の地上波テレビ 世帯視聴率)。いずれも生中継。
準々決勝の南アフリカ戦の平均視聴率41.6%は、2019年の全番組で1位だった。また、決勝トーナメントへの出場(ベスト8)をかけた予選第4試合スコットランド戦は、2019年の全番組で2位。
放送権を持つ日本テレビとNHKは、その日の深夜あるいは翌日すぐに再放送し、見逃し視聴者への対応を行った。この他に、有料BS放送J Sportsによるワールドカップ全試合の生中継や時間差放送、頻繁な再放送があった。
ラグビーワールドカップ2019は、前大会で話題を集めた五郎丸歩選手が不在のため、視聴率は大苦戦するという予想もあった。しかしこのような高視聴率を獲得した原因を、テレビ評論コラムニストの木村隆志は、「『ルールがわからない』『ほとんど選手を知らない』という“にわかファン”の多さ」と、彼らが「自ら『私、“にわか”だから』と公言して楽しむ」ことができたからだと考察している。さらに4つの要因として
を挙げている。またメディアアナリストの鈴木祐司も、視聴率の詳細データをもとに、にわかラグビーファンがラグビーの歴史を変えたと考察している。ビデオリサーチ社の柿倉樹は、ドラマ『ノーサイド・ゲーム』がラグビー応援ムードを醸成し、予選第2試合アイルランド戦の内容が「にわかファン」に火をつけたと分析している。「にわかファン」だと肯定的に自称する多くの新しいファンの存在を、日本ラグビー協会も歓迎し、大会成功の一因だとしている。
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