『日野ミッドナイトグラフィティ 走れ!歌謡曲』(ひのミッドナイトグラフィティ はしれかようきょく)は、1968年11月19日から2021年3月27日まで文化放送の制作で放送していたラジオ番組である。
長距離輸送を担う深夜運行のトラック運転手を対象にした番組である。
放送時間は番組開始から2006年4月2日までは 火 - 日曜日3時 - 5時(月 - 土曜日深夜)、2006年4月4日から番組終了までは 火 - 土曜日3時 - 5時(月 - 金曜日深夜)となっている。放送上や実際の時間軸上では早朝番組扱いとなっているが、番組表(タイムテーブルやラ・テ欄)上は前日の深夜番組扱いとなっている。番組開始から1991年3月まで、オープニングのアナウンスメントは「深夜の国道を歌と話題で綴る…」と述べていた。
スポンサーは日野自動車(2001年にトヨタグループ入り)の一社提供。2020年9月29日から番組終了までの半年間は文化放送以外のネット局の提供は廃止。文化放送では3時台のみの提供となった(下記で詳述)。
深夜から早朝にかけて働く長距離運行トラック及び夜行高速バスの運転手(日野ファミリー)をメインターゲットに据えて、演歌を中心とした音楽のリクエストに応え、最新の曲が流れることも少なくない。
サブタイトルは番組開始から1991年3月までは「日野ダイナミックスコープ」(ひのダイナミックスコープ)、1991年4月から番組終了までは「日野ミッドナイトグラフィティ」となっている。
TBSラジオが同様のコンセプトで、1974年から2001年まで「いすゞ歌うヘッドライト〜コックピットのあなたへ〜」 を制作・生放送した。ネット局はNRN単独局のうち、東名阪3局ネット だった本番組に対し、JRN系列(クロスネット局を含む)の「ヘッドライト」の方が多かったが、放送時間の縮小を経て、先に終了した。日野自動車は元来、いすゞ自動車の前身であるヂーゼル自動車工業の日野工場が分離独立した同門企業であり、その後は両社のバス事業において、合弁会社ジェイ・バスを設立して再び共働することになる。
当初は週刊誌等に「演歌専門番組」と紹介される程にほぼ全編、演歌しか流さず、スタンダード・ナンバーから新譜、有名歌手から無名歌手まで演歌の見本市的な番組であったが、1990年頃から日曜日を中心にJ-POPを含めた歌謡曲全般がかかるようになる。入れ替わるように「ヘッドライト」はJ-POPと演歌を満遍なくかけていたジャンルを演歌に絞り込む。
声優がパーソナリティを担当する場合はアニメソングが流れるケースもある。
2019年10月1日より、番組タイトルに1社スポンサーの「日野」を含む形に変更はないものの、文化放送以外のフルネット4局(東海ラジオ、ラジオ大阪、中国放送、北日本放送)は日野自動車のCM枠が4時台のみに縮小。3時台のCMは各局別もしくはACジャパンのCM、フィラー音楽が流れる様になった。3時台のみのネット局である静岡放送と福井放送は3時台に日野自動車のCMを引き続き放送する一方で、3時台終了時の飛び降り方法を変更した。
2020年9月29日より、地方ネット局の提供は全廃され、文化放送でも3時台冒頭のみと大幅縮小された。北日本放送と静岡放送がネットを終了、東海ラジオがフルネットから、4:30飛び降りと放送時間を変更。これにともない、天気予報後の放送局読み上げを廃止。3時台終了時の飛び降り方法が2019年9月までの形式に戻した。
2020年11月19日、番組開始記念日に『2021年3月27日(26日深夜)の放送を最後に52年半に亘る番組の歴史に幕を下ろす』ことが発表された。スポーツニッポンの取材に対し、文化放送は「視聴者の聴取形態が変わり、一つの役割を終えました」とコメントした。
週刊新潮によれば、文化放送幹部が「2、3年前(2018年から2019年頃)、日野自動車が宣伝費の見直しを理由に撤退を打診してきましてね。今年9月には中部、中京、関西エリアの放送局への提供が終わったばかり。終了は時間の問題でした」と開始当初より50年以上に亘り、一社提供を続けてきた日野自動車のスポンサー撤退がネット局の離脱および番組終了の背景であることを明かし、日野自動車も「ドライバーの嗜好性の変化、スマホの普及などを総合的に勘案して判断しました」とこれを認めている。
番組は3月27日をもって放送終了。「日野ダイナミックスコープ」時代から続いた番組は53年の歴史に幕を降ろした。同時に日野自動車はラジオ番組の提供から撤退した。
当初は文化放送のアナウンサー、フリーアナウンサーが出演していたが、1980年に川中美幸が出演して以来、週1回程度(2回のときもある)演歌歌手がパーソナリティを務め、以後は松原のぶえ、村上幸子、坂本冬美、香西かおり、城之内早苗、大石円(まどか)、Gパン娘。(上杉香緒里、水田竜子、渡辺ひろ美(後の鹿島ひろ美))、市川由紀乃、大黒裕貴、南かなこ、杜このみが担当してきた。コーナー担当としては田川寿美(たがわ としみ)、多岐川舞子、瀬口侑希(せぐち ゆうき)、井上由美子も出演。
近年は演歌歌手だけでなく、あさみちゆきや伊藤美裕などのようなポップス系歌謡曲の歌手がパーソナリティを務めるケースもある。
出典:。人名の後ろに「*」の人物は当時のQRアナウンサー
ちなみに、木曜日担当だった杜このみが降板した2017年5月末以降、演歌・歌謡曲歌手は登板しておらず、同年6月に杜から引き継いだ佐藤以降のパーソナリティは、舞台を中心に活動する女優の遠海、キャスターなども務めるタレントの福井、声優の千本木を除き、フリーアナウンサーである。
1990年の村上幸子(同年7月没)、1997年の寺瀬めぐみ(現:寺瀬今日子)、1998年の新山志保(降板後の2000年2月没)、2004年の南かなこ がそれぞれ病気療養中で長期離脱中だったとき、あるいは現在のパーソナリティがドライブイン レポートやその他の所用などで出演できない場合、歴代パーソナリティや番組ゆかりの歌手がピンチヒッターとして、番組を担当した。レギュラーパーソナリティと一緒に歌手が「スペシャル パーソナリティ」として出演することもある。
2005年4月以降は、3:20頃に交通情報と天気予報、4:03頃に交通情報を放送している。この時のジングルは、文化放送で使用しているものが、そのまま全国送出されている。2015年12月5日までは交通情報は「No regret/スティーヴ・バラカット」、天気予報は「I'm sorry/スティーヴ・バラカット」を使用していたが12月8日分より文化放送で汎用されている新しいステーション・ソングのアレンジ版がそのまま使用されている。
突発の事故・事件が入った場合、また台風接近・地震発生時は、スタジオに文化放送報道部(現:報道制作部)のデスクもしくはキャスターが入り、詳細を伝えることがある。
交通情報は「主なハイウェイ情報」として、日本道路交通情報センターが各情報の10分前までにまとめたものを読み上げている。天気予報は、日本気象協会の協力で、全国の天気概況と番組ネット局(東京・愛知・福井・大阪・広島)と札幌・仙台・新潟・富山・静岡・福岡・那覇の天気と気温・降水確率を読み上げている。(過去には高知の天気も読み上げていた。また静岡・富山は当該エリアのネット局がネットを終了して以後も読み上げている。)
この番組での交通情報は、1991年以前は3時台、4時台に放送していたが、1991年から2005年3月以前は、交通情報は3時台のみだった。
以前は3時台にニュース・3時台と4時台にスポーツニュース を放送したこともあった。
2001年9月12日、日本時間で前日にアメリカ同時多発テロ事件が発生したときは、この日のパーソナリティは登場せず番組自体も休止し、報道特番として放送した。さらに、東日本大震災が発生した翌日の2011年3月12日(担当は小林奈々絵)も休止し、報道特番となった(こちらは、番組内CMもカット)。
この交通情報と天気予報は、通常担当パーソナリティが伝えるが、杜このみが担当していた放送では、フリーアナウンサーの須藤悟(元FM青森アナウンサー)が交通情報と天気予報を伝えていた。
中田譲治のナレーションによるインフォマーシャル『日野自動車 お役立ちインフォメーション』を放送していた。
中田が1986年7月頃から担当するまでは、みのもんたなどが担当していた。
あらゆる分野の雑学を月単位で語りかけて、必ず「〜なんですね」で終わるDJ風のナレーションとなっている。
また1990年代までは、上記インフォマーシャル担当者による日野の製品(レンジャーやスーパードルフィンなど)の当番組専用のCMもしていた。
2020年10月~番組終了は上記のとおり提供が文化放送の3時台のみのため、インフォマーシャルも文化放送のみ3時台に放送されていた。
インフォマーシャルは、過去には3時台冒頭・4時すぎ・4時台終盤に3度放送しており、『歌うヘッドライト』とは違い3時台冒頭・4時台終盤のみ提供クレジットも兼ねている。 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生以降はこれが大幅に変化した。提供読みは切り離されて別のナレーションに変更された(後述)。
日野のコマーシャルが再開されて以降の提供読みは、各曜日のパーソナリティー、後に太田英明(文化放送アナウンサー)が担当し、コメントも「日野ミッドナイトグラフィティ 走れ!歌謡曲 この番組は(トラック・バスの)日野自動車がお送りします(しました)」に簡約化されていた。
2012年10月まで、インフォマーシャルは4時すぎの1回となり、エコドライブと整備点検を呼びかける内容が長期間放送され、中田が出演する頻度は激減した。同年11月から前項の各時間帯でインフォマーシャルを再開している。
2013年4月、3時台冒頭・4時台終盤の提供クレジット込みのインフォマーシャルが復活した。
年末の提供クレジット込みのインフォマーシャルは、最後に中田が「今年1年『走れ!歌謡曲』をお聴きいただき、ありがとうございました。」と言っている年もあった。
2006年頃から2020年3月までは中田のナレーションに加えその年のダカールラリーに参加した全国の日野自動車社員のコメントも折り込まれていた。
2019年5月から10月中旬まで、番組内の全CM枠 においてインフォマーシャルが流されていた。
2020年3月頃から日野レッドドルフィンズ所属選手の不祥事発覚 にともない、本番組のインフォマーシャル及びCMが一時的に自粛されていた。後に再開したものの、4月から3時台冒頭と4時台終盤の提供クレジット込みのインフォマーシャルが廃止(お役立ちインフォメーションは新バージョン追加で継続)され、提供読み は東日本大震災後同様の太田英明による簡易版になった。
中田の「日野自動車は今、トータルサポート宣言」とナレーションした後、その年のダカールラリーに参加した各地の日野自動車ディーラーのメカニックが「○○日野、××のトータルサポート宣言です」から始まり、コメント終了後、中田の「私たち日野自動車は……」から始まるナレーションをした後、3時台冒頭は「これから朝までの2時間は……この番組は……(中略)……トータルサポート日野の日野自動車がお送りします。」を流し、ジングルを挟んで1曲目に流れ、4時台終盤(4:50頃)は「さて、午前3時からお届けしてきた『走れ!歌謡曲』もそろそろお別れの時間です……この番組は……(中略)……トータルサポート日野の日野自動車がお送りしました。」で締め、エンディングにつながっていた。その際のバックミュージックにはデイヴィッド・フォスターの「Love Theme From St. Elmo's Fire(セント・エルモス・ファイアー 愛のテーマ)」が使用された時期がある。2018年4月以降は「この番組はトラック・バスの日野自動車がお送りします(しました)。」に改められている。上記の通り提供告知を兼ねたインフォマーシャルは2020年4月改編で廃止された。
番組テーマ曲は口笛ジャックの「口笛天国」が使用されている。 1991年のサブタイトル変更時から2002年10月6日放送分までは、ポール・モーリア・グランドオーケストラ「(青春に乾杯)」が用いられたが、2002年10月6日以降は、再び「口笛天国」が使われ、現在に至る。エンディングには2019年10月改編以降からYuM「とき」のインスト版を用いている。ただ、生放送の「目指せ○○曲!オールリクエストウィーク」や、前年12月下旬に事前収録して放送する年始編成などの場合は、時間調整などのため、「青春に乾杯」がエンディングテーマに用いられる場合があった(後述)。「とき」がエンディングテーマに採用されてからは、事前収録日のエンディングも「とき」が使用された。
2003年まで毎年1月1日(元日)放送は全曜日パーソナリティーと番組に縁の深い歌手、レコード会社、スポンサーの日野自動車の関係者らが総出演し生放送で歌手の歌を披露する特別版として放送されていた。また、関東地区のみこの日だけ2:00から放送していた。また、2001年のように、元日が月曜日の時はネット局では放送がなかった。
年始(2003年までは1月2日、2004年以降は1月1日から4日頃まで)放送分は、原則として撮って出し(前年末に予め通常放送時間の118分に合わせて収録したものをそのまま生放送に準じた形式でオンエアする)という形で放送される。1月5日(5日が土曜日の場合は翌週火曜の8日)より通常の生放送になる。ただし、2013年は、1月5日が土曜日であったものの、翌週火曜の8日よりではなく、5日より通常の生放送となっている。
当該日の放送は録音放送のため、3時台の交通情報と天気予報、4時台の交通情報、スポーツニュース並びに番組内でのメールによるリクエスト告知がない。エンディングが前述のとおり放送時間を調整するため、「青春に乾杯」になっていた時期もあった。2020年と番組最終年の2021年はエンディングは通常通り「とき」だった。
2020年から2021年にかけての年末年始は通常放送となっていた。上記の通り過去のパーソナリティ経験者による復活放送が行われていたのでこの日をレギュラー出演者の正月休みの代休に充てたものと思われる。
『走れ!歌謡曲』のレギュラー放送終了後も、2022年4月9日(4月8日深夜)から、本番組のスタンスを踏襲した『ヴァイナル・ミュージック~for. EK~大人の歌謡クラブ』を毎週土曜日(金曜深夜)3:00 - 4:45まで生放送するようになり、週替わりのパーソナリティのうち小林奈々絵が第1金曜深夜、仁科美咲が第2金曜深夜をそれぞれ担当するようになった。
2023年10月29日に東京ビッグサイトで行われた「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」における日野自動車の展示ブースで番組の復活イベントが行われ、仁科美咲のディスクジョッキーと、井上由美子によるトークショーが行われた(このトークショーの音源は収録して、2023年11月3日から11月5日に同じ会場限定での再放送が行われた)。
なお、井上由美子は、後継枠である『ARTIST FC』で、2023年11月から概ね月1回ペースで「ARTIST FCスペシャル井上由美子の時間です」を生放送で担当している。
2024年には、ラジオ番組としての特別番組を、「オトナのホンネ 文化放送スペシャルウィーク」期間中の4月16日(火曜日未明=15日深夜) - 20日(土曜日未明=19日深夜)に限ってラジオ大阪との2局ネットで3年ぶりに放送。文化放送が2024年度の上半期に「トラックドライバー応援キャンペーン」(いわゆる「2024年問題」で物流危機に直面しているトラックドライバーへの応援企画)を展開していることに関連した再開で、ラジオ大阪が常時ネットを実施しているレギュラー番組(前述した『ARTIST FC』と『ヴァイナル・ミュージック~for.EK~大人の歌謡クラブ』)の放送枠を充てたほか、歴代のパーソナリティから以下の人物が日替わりで出演している。ただし、5日間を通じてスポンサーを付けなかったため、『ミッドナイトグラフィティ 走れ!歌謡曲』というタイトルで放送。
また、「トラックドライバー応援キャンペーン」アンバサダーの春風亭一蔵(かつて長距離トラックのドライバーだった落語家)からのメッセージ(収録音源)を随時挿入。パーソナリティはレギュラー放送時と同じく、天気予報と「ハイウェイ情報」(主な高速道路における交通情報)を生放送で伝えている。さらに、上記のパーソナリティがレギュラー放送に出演していた時期のジングルの音源も特別に使用。3時台には、レギュラー放送の終了後に開設・改装されたパーキングエリアを紹介する目的で、「ドラパラ」のコーナーを復活させている。
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