『孤独のグルメ』(こどくのグルメ)は、2012年よりテレビ東京系列で放送されている、原作・久住昌之、作画・谷口ジローによる同名の漫画作品を原作とするテレビドラマのシリーズ。2023年現在、10のテレビシリーズと、スペシャルドラマ版が数作放送されている。
主演は松重豊で、本作が初主演作品である。
テレ東特有の典型的な低予算番組でありながら、DVDや動画配信などの二次収入で多額の利益を上げており、現在ではテレ東を代表する看板番組となっている。
テレビ東京の深夜ドラマ作品は近年は製作委員会方式を主に採用しているが、本作はテレビ東京が自社で著作権を持つ単独製作方式を採用している。
制作協力は共同テレビが担当しており、吉見健士プロデューサーが強く望み、松重を五郎役に起用した。久住はSeason1以前にも長嶋一茂を主演としたドラマ化のオファーがあったが断った。また久住は、別のインタビューで「漫画とドラマとは別」として、漫画版の五郎とはあえて似てない人間の方が良いと思ったこと、候補者の中で「ものすごくロケ弁を美味そうに食べる」という点を評価して松重を推したことなどを明らかにしている。
ドラマ化の企画は当初、共同テレビのグループ会社であるフジテレビへ持ち込んだものの幹部に一蹴され、仕方なくテレビ東京へ持ち込んだという。当初はドラマではなくドキュメンタリーとしての映像化を企画していた。
1話につき2日かけて撮影される。1日はドラマパートの撮影、もう1日はグルメパートの撮影が行われる。松重は、グルメパート日の前夜から食事を抜いて撮影に臨んでおり、「その日初めての食事を摂った五郎の表情」を演出することに成功している。また、撮影現場に脚本家が同席しており、実際に食事をした松重の感想などを踏まえ台本が加筆修正された上で、食事をしたその日のうちに、撮影場所の控え室やロケバスなどで「五郎のモノローグ」が録音される。
ドラマ化する際に久住が「原作漫画に登場した店は使わない」という条件を提示、これを踏まえつつ実在する大衆食堂や居酒屋など庶民的な店が主で、放送後は「同じものを食べてみたい」と長蛇の列ができるという。店の選定のため、1シーズンにつき150軒程度をスタッフが手分けして回り、同じ店に複数回通った上で撮影オファーを出している。逆に店の側から売り込んでくることも多いが、一軒も採用していない。ただし地方ロケの場合などは、当地のフィルムコミッションや観光協会などからの推薦を受けることがある。
Season7以降、五郎が料理の追加注文を行う例が増えているが、これはあらかじめ台本に書かれている料理以外に、松重が当日現地で店のメニューを見てアドリブで追加しているもの。なお追加料理の選択の際は、過去にドラマで登場した料理と同じものは極力避ける、量的に食べ切れるものを選ぶなど、いくつかポイントが存在するという。
原作漫画と同様エピソード毎に一話完結で、ストーリー構成は基本的に、五郎が顧客の元へ向かうシーンから始まり(途中で軽く食事を摂る場合もある)、顧客との商談中に映像が切り替わり、ナレーション「時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たす時、つかの間、彼は自分勝手になり自由になる。誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の癒しと言えるのである。」およびタイトルテロップ、そのエピソードのメインメニュー映像が入る。顧客との商談を終えた後、もしくは商談中に空腹を感じ、その空腹を満たすべく付近で店を探しにいそしみ入店、食事中および店を出た後に感想を独白し、その場を立ち去る場面を背景にエンディングロール、となっている。
食事シーンがメインである点は原作と同じだが、原作ではほとんど触れられることのない「本業」である輸入雑貨の購入を検討する顧客(または仕事仲間)とのやり取りが概ね毎回描かれている。
ドラマオリジナルのエピソードが基本となっている。時間軸は原作よりも後年の設定で、井之頭五郎も経年から性格が原作よりもやや柔和になっているほか、実在の飲食店が登場するため、基本的に原作のような失敗エピソードは無い。ただし、原作での五郎の言動が挿入される演出が度々行われ、Season1第8話やSeason2第9話のように原作に近いエピソードや、Season1第4話及びSeason6第9話やSeason3第1話のように原作の延長にあるエピソードも存在し、あちこちでドラマ版が原作のやや後年であることを示唆する演出がある。また、Season4第9話の回想の場面やSeason8第8話の前半部分はほぼ原作通りの展開である。Season4第9話についてはエキストラを200~300人ほど起用して撮影したため、久住としても「この番組も、そういうこともできるようになったんだな」と感慨深かったという。一方で原作の展開をアレンジしたエピソードもあり、Season4特別編「真夏の博多出張編」において、中洲の店に入った五郎が地元客に標準語をネタにされるシーンは、原作では大阪のたこ焼き屋でのエピソードである。
2020年大晦日スペシャル以降では新型コロナウイルス感染症を反映した演出を取り入れ、出演者は原則としてマスクを着用している。
各Seasonの最終話にドラマの中で久住がカメオ出演している。各Seasonの最終話では五郎の「さて、明日は浅草だ、何を食おうか…。」という言葉で締められることが多い。長らく次回Seasonへの繋ぎとして使われた言葉だったが、Season8第6話にて、浅草の案件へ訪れるエピソードが登場した。
ドラマ本編終了後、本編に登場した飲食店を原作者の久住昌之が訪れ、店舗のおすすめメニューを試食する取材形式のミニコーナー「ふらっとQUSUMI」が挿入される。ナレーションは植草朋樹(テレビ東京アナウンサー)。
本編での店舗従業員役は基本的に俳優、もしくはタレントが演じているが、こちらは通常のグルメ番組と同様に、実際の従業員が対応する。
「ふらっとQUSUMI」は午前中の収録であることも多いが、久住は酒を飲みながら「飲兵衛」の視点で、本編で五郎が興味を惹かれながらも選ばなかったメニューを補完するように注文することが多い。 そしてその際には、ビールは「麦ジュース」「麦スカッシュ」「サイダー」「ゴールデンサイダー」、日本酒や焼酎は「水(井戸水と表現する事もある)」、ワインは「ブドウジュース」、紹興酒は「烏龍茶」など、あたかも水やソフトドリンクを飲んでいるかのような体で言い換えられるのが恒例となっている。なお昼限定、または夜限定のメニューを時間外に作ってもらって食べることもある。
Season2のみ、久住に加えてゲストが出演する回があった。Season9の途中からは新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言中の飲食店での酒類提供停止に伴い、飲酒しないようになっていた。Season10では、新型コロナウイルス感染の状況は変わらず続いているものの、行動制限が緩和された事もあって飲酒を再開している。
松重演じる井之頭五郎の健啖ぶりが、放送している時間帯も伴って視聴者の食欲を刺激し「夜食テロ」として人気を博し、松重の知名度を大きく上げることとなった。当初は成功を不安視して「漫画とは別物」と述べていた久住も、言を訂正して絶賛する仕上がりとなった。
松重はSeason3で辞するはずだったが、意外にも高齢者たちから「次は何時やるのか?」と言われ、続ける意義が残った事と、人間ドックにも引っかからなかったために現在に至っている。
有料CSのチャンネル銀河ではSeason1からSeason8までを再放送している。2018年からはBSテレ東で、日曜18時20分からスペシャルドラマ版を除くSeason1からのシリーズを再放送している。また、制作局のテレビ東京でも土・日曜の16時台に不定期で再放送を実施している。
2022年の年末は特番以外にも翌1月1日まで延々と再放送され、久住も「あれ、ずるいよね? あれで休んでるよね、テレ東は(笑)」と述べている。
韓国では、最も人気の高い海外ドラマとして賞を受賞するほどの話題作となっており、同国第20代大統領の尹錫悦も本番組のファンであることを明らかにしている。ドラマに登場した料理を食べるために来日する人もいるという。
2012年5月20日、レコードレーベル・地底レコードからテレビドラマ版のオリジナルサウンドトラック「孤独のグルメ」発売。テレビドラマ版の音楽を担当した「The Screen Tones」が制作しており、原作者の久住もメンバーの一員である。2012年11月に音楽配信サイトのOTOTOYで同サウンドトラックを配信開始。iTunesでの配信は2013年3 - 4月頃に開始。全43曲で、劇中にて数十秒しか使われなかった効果音や背景音楽などをフルバージョンに仕立て上げ、ソロやボーカル音を加えるなどのアレンジを行っている。
楽曲はJASRAC非登録曲である。楽曲の使用は版権元である地底レコードの許諾が必要となる。2015年現在、事前に連絡があれば、選挙運動のほかアダルトビデオや社会のモラルに反する作品を除けば、利用を許諾している。
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