『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(ハムナプトラ/うしなわれたさばくのみやこ、原題:The Mummy)は、1999年に公開されたアメリカのアクション映画・ファンタジー映画。スティーヴン・ソマーズ監督・脚本のアドベンチャー映画。1959年に英国ハマー・フィルム・プロダクションが制作した『ミイラの幽霊』(テレンス・フィッシャー監督)に続き、1932年公開の『ミイラ再生』(カール・フロイント監督)の二度目のリメイク作品である。
公開時は、パソコンが一般に普及しつつある頃であり、最新のVFXを全編に取り入れた作品として、日本では注目された。
今から約3000年前。大神官イムホテップはセティ1世の愛人であるアナクスナムンと恋に落ちる。セティ1世から仲を疑われた2人はとっさに彼を殺害。異変を察知した王の近衛兵が迫る中イムホテップはアナクスナムンを生き返らせることを彼女に約束し逃亡、アナクスナムンは自害する。死者の書を手に、死者の都ハムナプトラへ赴き儀式を行うイムホテップだが、完遂を目前にして王の兵団が乱入。儀式の中断によりアナクスナムンの蘇生は失敗に終わる。部下の僧たちは罰として生きながらミイラにされ、王を殺害し愛人を奪おうとした重罪から主犯格のイムホテップは“その残酷さゆえに一度も行われたことが無い”という禁断の呪い「ホムダイ」にかけられ、石棺に封じ込められた。
それから3000年後の1923年。フランス外人部隊所属のリック・オコーネルは、ハムナプトラにて部隊がトゥアレグ族に敗北、部下のベニーにも見放され、1人で砂漠を放浪するはめになる。3年後、死刑が確定し、カイロ刑務所に服役していたオコーネルの元を、ハムナプトラの場所を知る人物を探していたカイロ博物館に勤務する女性エヴリンとその兄でお宝目当てのジョナサンが訪れ、救い出す。
船でハムナプトラに向かうオコーネル一行は、同じくハムナプトラを目指すアメリカ人のグループと、彼らの案内役として雇われたベニーに遭遇する。途中で謎の組織からの攻撃を受けて船は沈没するも、彼らはハムナプトラに辿り着いた。
敵対しながら発掘作業を進める2つのグループを再び謎の組織が襲い、「去らねば死ぬ」と言い残して去る。そして、アメリカ人達は死者の書を、エヴリン達は謎の石棺とそこに眠る生乾きの奇妙なミイラを発見する。こっそり拝借した死者の書をエヴリンが解読し音読すると、叫び声をあげるミイラ。イムホテップが蘇ったのだ。
イムホテップは人々の生気を吸うたびに完全復活していき、呪いから復活するとエジプトに10の災いが起きると言われ、蝗の大群の襲撃、火球の落下、日蝕、水が血に染まるなどの異変が次々と起きる。ベニーはイムホテップに仕えることで、生気を吸われることを免れた。オコーネル一行は太古よりイムホテップの復活を防いで来た集団「メジャイ」らと協力し、イムホテップを倒す相談をしている途中、イムホテップはアナクスナムンを復活させる為の生け贄としてエヴリンを選び、連れ去る。
「メジャイ」の指導者アーデスとオコーネル、ジョナサンは再びハムナプトラに向かい、イムホテップを倒す方法が書かれている黄金の書「アムン・ラーの書」を発見する。リックは手下のミイラ達を次々と倒していくなか、ジョナサンは「アムン・ラーの書」を解読しようとする。エヴリンは、甦ったアナクスナムンに襲われる。ジョナサンは必死に書の解読を試みたが、誤ってミイラ衛兵達を呼び出す呪文を読み上げてしまい、召喚してしまった事で更なる窮地に陥らせてしまう。ミイラ衛兵達の襲撃に遭いながらも、どうにかかわしつつ、順調に解読する。最後のコウノトリの文字だけがわからなかったもののエヴリンの力を借りてどうにか解読に成功。間一髪でミイラ衛兵達を味方に付けることに成功し、アナクスナムンはジョナサンの命令によってミイラ衛兵によって殺害される。それに怒り狂ったイムホテップは再度リックに襲い掛かったが、「アムン・ラーの書」を手にしたエヴリンに封印の呪文を唱えられた事でようやく倒された。
イムホテップの目を盗んで財宝を持ち出そうとしていたベニーが、ハムナプトラ諸共崩す罠を起動してしまう。ジョナサンが本を落としてしまうが、彼ら3人はハムナプトラから脱出する。逃げ遅れたベニーはハムナプトラに閉じ込められ、夥しい数のスカラベに襲われて死亡。リック、エヴリン、ジョナサン、アーデスの4人は無事に生還し、ベニーが駱駝に積んだ財宝を持ち帰る。
1992年、プロデューサーのジェームズ・ジャックスとショーン・ダニエルが、『ミイラ再生』のリメイク作品を製作することを企画した。ユニバーサル・ピクチャーズは企画を承認したが、製作費は1,000万ドルしか認められなかった。ジャックスは、ユニバーサルが「本質的に低予算のホラー・フランチャイズを望んでいた」と述べている。二人はホラー小説作家で映画監督のクライヴ・バーカーに監督を打診し、バーカーはミイラを復活させようとする美術館館長の周辺で巻き起こる物語を暴力的に描く構想を練った。ジャックスは、バーカーの構想を「ダーク、性的、神秘的」で、「素晴らしい低予算映画」になると述べた。しかし、バーカーとユニバーサルは数度の企画会議を経て興味を失い、バーカーは企画を離れた。
新しい監督としてジョー・ダンテが候補に挙がり、ダニエル・デイ=ルイスのアイディアを脚本に盛り込んだ。アラン・オームスビーが原案、ジョン・セイルズが修正した脚本では、現代を舞台にミイラの転生を通して恋愛要素に重点を置いたものになった。この時点で、肉食のスカラベなどの要素が脚本に盛り込まれていた。しかし、この時点でユニバーサルは1,500万ドルの製作費を上限にしたため、高額な製作費が必要になるダンテの脚本を却下した。
ダンテが降板した後、ジョージ・A・ロメロが『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と同様のゾンビ・スタイルの企画を持ち込んだが、その脚本は「悲劇的なロマンスとアイデンティティの葛藤」に大きく依存する内容だった。1994年10月にロメロはオームスビー、セイルズと共同で、「女性考古学者ヘレン・グローヴァーがアビドスでラムセス2世時代の神官イムホテップの墓を発見する」という脚本を完成させた。アメリカの研究施設に運び込まれたイムホテップのミイラは、MRIスキャンを浴びたため目覚めてしまい、現代社会に適応しようとする。ヘレンはイムホテップとの関係に引き込まれ、イムホテップは呪文を使い美術館に眠る臣下カーリスを復活させる。しかし、復活したカーリスは地下水道から逃げ出し、墓を暴いた人間を殺し回るようになる。この脚本は、あまりにも暴力的で暗い内容だったため、ジャックスとユニバーサルは難色を示し、また、ロメロもMGMと別の映画を製作することになったため降板してしまう。
ロメロの後にミック・ギャリスが脚本を依頼されたが、彼はすぐに製作から離れてしまい、監督を打診されたウェス・クレイヴンも辞退した。1997年にスティーヴン・ソマーズがジャックスとダニエルに呼ばれ、彼はインディ・ジョーンズ シリーズや『アルゴ探検隊の大冒険』のような冒険映画にすることを提案した。ソマーズは8歳の時に『ミイラ再生』を見ており、彼は自分の好きな映画をより大きなスケールで映画化することを望んでいた。また、彼は1993年以来ミイラ映画を作ることを望んでおり、18ページの企画書を作成してユニバーサルにプレゼンした。当時、ユニバーサルは『ベイブ/都会へ行く』が興行的に失敗したことで対応が変化し、1930年代に成功した作品のリメイクに前向きになっていたためソマーズの企画を承認し、製作費を1,500万ドルから8,000万ドルに増額した。
主役のリック・オコーネルにはトム・クルーズ、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ベン・アフレックなどが検討されたが、全員が脚本に興味を持たず、スケジュールの都合を合わせることができなかった。ジャックスとソマーズは、『ジャングル・ジョージ』で主演を務めたブレンダン・フレイザーの演技に感銘を受け、ソマーズは彼がオコーネルのキャラクターに完全に一致していると感じた。ヒロインのエヴリン・カナハン役にはレイチェル・ワイズが起用された。彼女はホラー映画のファンではないが、『ハムナプトラ』はそれとは異なると考えていた。彼女は後のインタビューで「この映画は漫画のような世界です」と語っている。悪役であるイムホテップ役にはアーノルド・ヴォスルーが起用されている。ヴォスルーは映画について、「イムホテップの視点から見ると、この映画は歪んだ『ロミオとジュリエット』になる」と述べている。
1998年5月4日にモロッコ・マラケシュで17週間撮影が行われた。その後、サハラ砂漠のエルファードでの撮影を経て8月29日にモロッコでの撮影が終了し、イギリスに異動した。サハラ砂漠での撮影では脱水症状を避けるため、医療チームがキャスト・スタッフのために2時間おきに飲む飲料水を作った。また、撮影は砂嵐やヘビ、クモ、サソリに悩まされ、噛まれた多くのスタッフは現場を離れることになった。撮影がモロッコで行われたのは、政情不安でエジプトでの撮影が不可能だったためである。
フレイザーは、刑務所で絞首刑が執行されるシーンで実際に死にかけている。ワイズはこの出来事について、「彼の呼吸は停止し、蘇生する必要があった」と語っている。撮影にはモロッコ王立軍が協力しており、キャスト・スタッフには誘拐された場合に備えて保険が掛けられていたが、ソマーズは撮影が終了するまで、そのことを伝えずにいた。
プロダクションデザイナーのアラン・キャメロンは、エルファードの近くで休火山を発見し、その側にハムナプトラのセットを作った。ソマーズは「火山の中に隠された都市は外からは絶対に見えない。これは完璧な意味合いを持っていました」と述べている。スタッフは火山の調査を行った後、スタジオに戻り火山や建物の模型を作り撮影のシミュレーションを行った。また、ハムナプトラの地下室の撮影はロンドンのシェパートン・スタジオで撮影された。イギリスのチャタム工廠では、ギーザ港のシーンを撮影するためのセットが作られた。
特殊効果を担当したインダストリアル・ライト&マジックによると、製作費のうち1,500万ドルが特殊効果のために使用されたという。ソマーズは、過去のミイラ映画との比較を避けるために、新しいスタイルの映画を作ることを望んでいた。視覚効果スーパーバイザーのジョン・アンドリュー・バートン・ジュニアは、撮影開始の3か月前から特殊効果の製作を開始した。彼はモーションキャプチャを使用して「人間に迫る現実的なミイラ」を作り出した。バートン・ジュニアは、ヴォスルーと他のキャストの共演シーンを撮影した後、ヴォスルーを除いたキャストだけで同じシーンを撮り直してCGを違和感なく合成させた。また、イナゴの大群が現れるシーンは、本物のイナゴ数匹をCGでコピーして合成している。
Rotten Tomatoesには85件のレビューが寄せられ、支持率58%、平均評価5.8/10となっている。Metacriticでは34件のレビューが寄せられ、48/100点の評価となっている。
ロジャー・イーバートは四つ星満点中三ツ星を与え、「私は脚本や演出には何も言えないが、映画には退屈しなかったことは言える」と批評した。オーウェン・グレイバーマンは「B-」の評価を与え、「この映画はあなたを震え上がらせようとする」と述べている。サンフランシスコ・クロニクルのボブ・グラハムは、演出だけではなく特殊効果を高く評価している。ヴ
ニューヨーク・タイムズのスティーヴン・ホールデンは、「この映画は、スクリーンに飛びつく派手なビデオゲーム以上のものにはならない。漫画のようなキャラクター、辻褄の合わない脚本、派手だがチープな特殊効果を用いている。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の恐怖感を取り除いたエジプトのハロウィン・パーティーだ」と酷評した。The Austin ChronicleとDallas Observerはキャストの優れた演技と特殊効果があったにもかかわらず、映画にまとまりが欠けていたと指摘した。一方で、Jump Cutは特殊効果が映画に不利益を与えたと主張している。英国映画協会のキム・ニューマンは、クラシックな雰囲気を作り出す代わりに特殊効果に多くの割合を割いているため『ミイラ再生』よりも劣っていると述べている。USAトゥデイは四つ星満点中二つ星を与え、「ステレオタイプから抜け出していない」と批評した。
本作の高い興行収入を受け、シリーズ化が行われた。2001年に続編『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』が公開され、夫婦となったリックとエヴリンに息子のアレックスが加わり、復活したイムホテップやスコーピオン・キングと三つ巴の戦いを描いている。また、TVアニメシリーズ『ハムナプトラ(原題:The Mummy: The Animated Series)』が製作され、2002年にはスコーピオン・キングを主人公にしたスピンオフ映画『スコーピオン・キング』が公開された。2008年には中国を舞台にした『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』が公開されたが、ワイズが降板したためエヴリン役がマリア・ベロに交代している。同年に『スコーピオン・キング2』が製作されたが、これらの作品は批評家からは酷評されている。
2000年にはコナミとヴィヴェンディ・ユニバーサルゲームズからPlayStation・パソコンゲーム専用のゲームが発売された。また、2004年にはユニバーサル・スタジオ・ハリウッド、ユニバーサル・スタジオ・フロリダ、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールに本作をテーマにしたアトラクション「リベンジ・オブ・ザ・マミー(リベンジ・オブ・ザ・マミー)」がオープンした。
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