青池 保子(あおいけ やすこ、1948年7月24日 - )は、日本の女性漫画家。山口県下関市長府出身。『エロイカより愛をこめて』、『アルカサル-王城-』など少女漫画の枠を超えた硬派の作品で知られる。
1948年(昭和23年)7月24日、姉5人兄1人の7人きょうだいの末っ子として生まれる。日本画を趣味としていた父親の影響で絵を描くようになり、また姉や兄の購入した漫画に親しみ、小学校1年生のときに初めて漫画を描く。
1961年(昭和36年)、私立梅光女学院中学校・高等学校に進学。中学1年生の夏休みに、敬愛する少女漫画家の水野英子宅を姉と二人で訪問。その人柄に感銘し、大きな刺激を受ける。
一念発起し、ファンタジーものの漫画を描き始める。とくにプロ志向があったわけでもなく、ただ敬愛する水野英子に観てもらいたい一心だったという。
中学3年生の時に、前年から一年がかりで書きあげた60頁ほどのファンタジー漫画を、水野英子宛てに送る。しばらくして、集英社の『りぼん』編集部から「水野先生から作品を見せてもらいました、お正月号用に短編を描いてください」と手紙が届いた。青池はこの依頼に応え、日本人孤児とフランス人少女の交流を描いた15頁の短編『さよならナネット』を描き上げる。
1963年(昭和38年)、『りぼん』お正月増刊号に『さよならナネット』が掲載され、15歳でプロデビュー。デビュー作の評価は芳しくなく、『りぼん』とはこれきりとなる。
デビュー作を読んだ講談社から第一回少年少女新人漫画賞への参加を誘われ、青池はイタリアを舞台にした画家とモデルの恋物語を描いて応募、受賞こそ逃したものの最終審査に残るなど評価され、1964年12月に再デビューを果たす。以後、「高校一年のおねえさん漫画家」のキャッチフレーズで、『週刊少女フレンド』で活躍。講談社との専属は、以後10年間続き、『なかよし』などにも作品を発表。
1976年(昭和51年)、日本を舞台にした学園ものにスランプを感じ、心機一転して海外を舞台とし、大好きなロック歌手達をキャラクター・モデルにした『イブの息子たち』を『月刊プリンセス』(秋田書店)で連載開始。それまでのシリアスな作風とは一変した、さまざまな歴史上の人物が入り混じる、知的パロディカルなコメディ作品に新境地を開く。
これをきっかけに、伝統的な少女マンガの範疇から大きく離れた題材にて魅力的な作品を次々と発表していく。
同年、『イブの息子たち』と平行して『月刊プリンセス』誌上で『エロイカより愛をこめて』を連載開始。この作品は当初、美術品専門の泥棒の伯爵と超能力者3人組を主人公としたドタバタ喜劇であったが、脇役として登場した北大西洋条約機構(NATO)軍情報部少佐の強烈な個性が人気を集め、ついには主役のはずだった超能力者3人組を押しのけて主人公となり、伯爵と少佐を中心としたシリアスでかつコミカルなスパイものに変貌した。
この『エロイカより愛をこめて』は青池の作風をも変え、男たちの戦いをテーマとした硬派な物語が以降の青池作品の基調となっていく。
1991年(平成3年)、『アルカサル-王城-』で第20回日本漫画家協会賞優秀賞受賞。
2007年(平成19年)2月に、10年間連載が中断されていた『アルカサル-王城-』が月刊少女漫画雑誌、『プリンセスGOLD』(秋田書店刊)3+4月号に前後編として掲載され、完結した。同年11月には『エル・アルコン-鷹-』と『七つの海七つの空』を原作とし、齋藤吉正が脚本、演出を行った舞台が宝塚歌劇団の星組により宝塚大劇場で公演された。翌2008年1月には東京宝塚劇場でも公演された。
2016年、「プリンセスGOLD」1月号より『修道士ファルコ』で活躍するオドの出家前の市警時代を描く『ケルン市警オド』の連載を開始した。
2018年、「プリンセスGOLD」の電子書籍専売による紙版終了に伴い、『ケルン市警オド』は『ミステリーボニータ』6月号より移籍新連載を開始。
家業が建設業経営だったため、幼少の頃から従業員であるたくましい男性に囲まれた、男くさい環境に育った。家族は両親と兄弟姉妹(姉5人、兄1人)合わせて9人の大所帯だった。父親は俳画に親しむ文人でもあり、水墨画では南宋画の師に学んでいた。この父から受け継いだものは多いと青池は語っている。家系に「保(やす)」の字を子供のひとりにつける慣習があり、末っ子である保子の名は、父の保の名を受け継いだものという。
『エロイカより愛をこめて』の番外編といえるスパイもの『Z -ツェット- 』や、中世の歴史に題材をとった『アルカサル-王城-』、『修道士ファルコ』など、広範な取材と緻密で丁寧な表現が評価されている。少女誌にとどまらず、少年誌に連載をしたこともある。
『エロイカより愛をこめて』のヒットにより、作品の主人公、エーベルバッハ少佐と同名の都市であるドイツ・エーベルバッハ市を訪れる日本人観光客が急増した。青池はこの功績によって同市から名誉賞と、市のシンボルであるイノシシの彫像を贈られた。市観光局の依頼で日本語の観光パンフレットの表紙にエーベルバッハ少佐を描き下ろしている。
『エロイカより愛をこめて』の新作について問われ「今の世界情勢は難しいですからね、少佐を絡ませるのは難しいかもしれないです。楽しく描けるようなネタがあれば、あの人たち好きですから やっぱり」と語った。
アルカサル-王城-、修道士ファルコ、ケルン市警オドの3作について、それぞれ王侯貴族、修道院、庶民と階層の異なる視点から中世の欧州を描いており、自身で「中世3部作」と呼んでいる。
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