コーラ(cola)とは、コーラの種子エキスを含んだ炭酸飲料全般を指す。ただし、コーク(Coke)はザ コカ・コーラカンパニー(コカ・コーラ社)のコーラ飲料を指す。
1886年にアメリカ合衆国の薬剤師ジョン・ペンバートンがコカ・コーラを開発し、発売し、その後アメリカの国民飲料となった。第二次世界大戦時にアメリカ軍によって世界各地に紹介された。日本には1912年には輸入されていたが、大衆化しなかった。
代表的な銘柄としてアメリカのコカ・コーラとペプシコーラがあるほか、世界各地の企業が独自のコーラ飲料を生産・販売している。
コーラは、そのまま飲用されるだけではなく、しばしば、他の飲料などと混合した上で飲用される場合がある。それらの中には、コーラを材料の1つとして使用したカクテルとして一定の知名度を持った飲み方が幾つも存在する。例えば、ウイスキーにコーラを混ぜたウイスキー・コークのように、コーラを意味する「コーク」と付く単純な名称のカクテルも見られる。一方で、ラムやライム果汁と混ぜた「クーバ・リブレ」や、赤ワインと混ぜた「カリモーチョ」、黒ビールと混ぜた「トロイの木馬」などのように、特別な名称が与えられたコーラ入りカクテルも知られる。
コーラ(Cola)という名称は当初コーラの実 (kola nuts) から抽出した、ほろ苦い味のコーラ・エキスを用いていたことに由来している。現在はコーラの実は含まれていないのが一般的であり、コーラの実の代わりに様々な香料や調味料が用いられている。また、コーラの実にカフェインが含有されていることの名残で、カフェインを添加している製品も多く見られる。
なお、ザ コカ・コーラ カンパニー(コカ・コーラ社)のコカ・コーラのレシピが秘密とされていることは有名であるが、これはコカ・コーラ社が事実を誇張した作り話である。実際には発明者であるペンバートン博士が複数の相手に対して初期のレシピを販売している。現在のレシピは公表されていないため不明であるが、初期のコカ・コーラにはコカが含まれていた。
コカ・コーラは当初、独自のシロップを水で希釈した商品で、炭酸飲料ではなかった。コカ・コーラが炭酸飲料になったのは、提供時に誤って炭酸水で希釈したことが始まりだとされている。
一般的なコーラには甘味料が含有されている。使用されている甘味料は製品によって異なるものの、スクロース(砂糖)、グルコースやフルクトース(ブドウ糖果糖液糖、高濃度の果糖を含んだコーンシロップ)など、他の炭水化物と同様にエネルギーになる糖が用いられる。ただし、糖尿病や肥満などの原因になることを嫌って、ステビアのような天然物由来の甘味料や、アセスルファムカリウムやスクラロースなどの人工甘味料が用いられている製品も存在する。中には、人工甘味料のみが使用されている製品も存在する。
なお、ヒトの味覚では、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロースなどは、スクロース、グルコース、フルクトースと比べて数百倍の甘さに感じられる。このため、スクロース、グルコース、フルクトースを甘味料として用いた製品では、しばしばこれらの成分が水の次に多量に含有されているのに対して、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロースなどを甘味料として用いた製品の場合は、水の次に多量に含有されている成分が甘味料ではない例が見られる。
一般的なコーラに含有される炭酸自体も酸味を持つものの、コーラにはしばしば酸味料も使用される。酸味料の多くはリン酸由来であり、製品によってはクエン酸やその他の酸を含む。
香味は、コーラ以外に、レモン、ライム、ナツメグ、シナモン、カシア、コリアンダー、クローブ、ジンジャーなどが配合されている。ただし、コーラに用いられる香料は製品によって様々であり、一概には言えない。例えば、シトラスオイル(オレンジ、ライム、レモンなどの柑橘類の果皮から採取)、シナモン、バニラ、その他、複数あるコーラ飲料製造社では、これらの香料以外にその会社独自の香料を加えることで独自の製品として開発している。そうした香料の中にはナツメグやラベンダー、その他幅広い成分が含まれることがあるものの、ほとんどの人がコーラ特有の風味だと認識するのは依然としてバニラやシナモンである。安価なコーラ飲料の中には、このようなシナモンやバニラといった香味料のみで製造されているものもある。
製品によってはカラメル色素が用いられている。
多くの製品にはカフェインが含有されており、摂取することで向精神作用も認められる。一部愛好家に至っては自嘲的に「コーラ中毒」と表現する者もある。コーラに含まれるカフェインは、元々はコーラの実のエキスによるものであったが、コスト的な問題もあり、今日では茶葉から抽出された物が主に利用されている。しかし、銘柄によってはいまだにコーラの実も使われている。
なお、これらとは別に全くカフェインを添加していない製品も散見される。ただ単にカフェインを添加していないだけであっても、そのような製品は「カフェイン0」などと標榜されている例が見られる。
一般的なコーラには用いられない成分ながら、例えばゲンチアナを加えて苦味を出したオーヴェルニャ・コーラのような特殊なコーラも存在する。また、酒類ではない一般的なコーラの中にも香料の溶媒などとして用いられているエタノールが極微量含有されている例が見られる他に、酒類の中にはコーラの風味を持たせた製品も存在する。
非常に多様なコーラ風の清涼飲料水が世界各地に存在しており、またそれらが様々な風味であることから、人によっては特定企業の製品を好んで飲用することもある。この風味の違いは、同じ会社の製品であっても年代により様々な変化を見せるが、これは各々の会社が時代の流行を反映していることに起因する。ただしそうした企業戦略は、旧来のファンが味の変更を嫌い、競合他社に切り替えるというリスクも同時に伴うことになる。各社のシェア争いは熾烈を極め、外食産業チェーン店や国際イベントでの採用を巡っては、様々な営業上の駆け引きも行われ、その熾烈さもあって「コーラ戦争」と形容されることもある。
アメリカにおけるコーラ戦争においては主要メーカーにより莫大な広告費が掛けられるのが通例で、近年では全米規模でGPSを使って懸賞賞品をその場にお届けなどといった社会現象さえ巻き起こしている。またボトルキャップフィギュアなどの、後にコレクター市場が成立するようなアイテムの付録が付くといったイベントも度々行われている。
1914年(大正3年)に発刊された高村光太郎の道程においてコカコーラが紹介されている。
1960年代には日本においてもコーラブームが到来し、当時、全国各地に散在した中小飲料メーカーが「コーラ」と名の付く製品を次々と発売した。しかし、コカ・コーラに代表される大手メーカーには到底及ばず、多くの業者が比較的短期間でコーラ製造から撤退した。
一方で、「しずおか茶コーラ」(静岡県島田市)、「金沢カレーコーラ」(石川県金沢市)、黒糖を使った「ブラックケインコーラ」(沖縄県の伊江島)、「甲賀コーラ」(滋賀県甲賀市)など定着したご当地コーラも複数あるほか、独自にブレンドしたコーラを提供する飲食店もある。柑橘類のシラヌヒ(不知火)を使う「熊本クラフトコーラ」のように、こうした地域・店独自のコーラを「クラフトコーラ」と呼ぶこともある。クラフトコーラは香辛料やハーブ、各種柑橘類、ショウガなどを煮立ててそれぞれの味を出す。北海道では地元産のテンサイ糖で甘味をつけるなどして地域おこしとして商品開発に取り組む例が多い。家庭でつくる人もいる。最近では麹甘酒をベースにしたUMAMI COLAなど、第3世代とも呼ばれる様々な切り口のクラフトコーラもでてきた。
2021年6月以降には、カルディコーヒーファームの「ドライクラフトコーラ」や、ポッカサッポロフード&ビバレッジの「THE CRAFT COLA」など、大手企業からもクラフトコーラが発売されるようになった。
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国では1953年、コカ・コーラに似せて開発された炭酸飲料Cockta(コクタ、カクテルに由来)が発売された。スロベニアにあったワイン会社の幹部がコカ・コーラを持ち帰って類似商品の国産化を計画し、勤務していた食品科学者エメリク・ゼリンカがレシピを考案した。カフェインは含まず、10種類以上のハーブやレモン、オレンジでフレーバーをつける。ユーゴスラビア解体後の21世紀も、旧ユーゴの一国クロアチアのアトランティック・グループが生産を引き継いでいる。
ドイツ民主共和国(東ドイツ)でも、1958年にヴィタ・コーラ(Vita-Cola)が開発され、ライセンス生産を含め100を超える国内企業で生産された。ドイツ再統一後にほとんどが製造中止となったが、1994年にテューリンゲン州の飲料メーカーによって大規模生産が再開された。他にも、東ドイツでは1967年にクルプ・コーラ(Club-Cola)が開発され、ベルリンの国営飲料工場で生産された。ドイツ再統一後に製造中止となった後、1992年に同ブランドのコーラが復活したが、製法は別のものに変更された。
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