岩谷産業株式会社(いわたにさんぎょう、英: Iwatani Corporation)は、本社(本店)を大阪府大阪市中央区に置く産業・家庭用ガス専門商社であり、LPG分野で日本の市場占有率1位の総合エネルギー企業である。燃焼機器・調理器具・健康食品などの販売事業もおこなっている。
創業者の岩谷直治が、神戸で運送会社勤務を経て、1930年(昭和5年)にカーバイド・酸素・溶接棒の製造・販売をおこなう岩谷直治商店を大阪に開く。
戦後間もなく改組し、1953年(昭和28年)には日本で初めてとなる、家庭用LPGを「マルヰプロパン」という名で販売を開始、本格的なエネルギー供給に乗り出す。1969年(昭和44年)には、供給ホースの要らない家庭用ガスコンロ「カセットフー」(現商品名は「カセットこんろ」)を販売、イワタニの代表商品に育て上げると共に、エネルギー総合商社としての地位を確立させる。
展開事業
総合エネルギー事業を中心にエネルギー分野、エレクトロニクス分野などで多角事業を展開している。
総合エネルギー事業では、LPGとして知られる「マルヰガス」やLNG、ガス器具の販売をはじめ、カセットボンベ・カセットフー(カートリッジガスボンベを使用する燃焼器具)の製造販売、プリムス社のアウトドア用品(主としてプリムス・ストーブ)の輸入販売、ミルサー(フードミル)、あっとスライス(スライサー)、フィスラー社製の圧力鍋といった調理器具の販売、アララクリーン(洗剤)や健康食品(黒酢・スッポンなど)の販売、富士の湧水(ミネラルウォーター)の宅配などを手がける。
産業ガス・機械事業では、ヘリウム(国内にヘリウムセンターを保有)や水素(詳細は下記)、エアセパレートガス(窒素や酸素等、国内のガスセンターで製造)といった工業用各種ガスの製造販売、半導体やその関連機器、溶接材料、産業用ロボットの販売、エネルギーステーション設備の販売・施工事業を展開する。
マテリアル事業では、アイラップや灯油缶、湯たんぽなどの生活用品をはじめ、100%権益の豪州自社鉱区から採取されるミネラルサンド(ジルコン・チタン鉱石など)、ペット樹脂、バイオマス燃料、ステンレス等の加工金属、園芸用品など幅広く取り扱う。また、内外装工事や資材販売も専門の子会社を通じて行っている。
その他、ケンボロー種の種豚の販売、食品の輸入販売、スーパー向けの物流サービスなども手掛ける。
水素を熟知した企業
古くから水素を取り扱っており、太陽光発電やDMEなどの新エネルギーシステムにも取り組んでいる。水素の国内トップメーカーで国内シェアは約4割を占めている。国産宇宙ロケットへの液体水素供給や、大規模な水素製造プラントの立ち上げ、燃料電池車の分野でもトヨタ自動車やホンダなどに燃料電池車の開発当初から、水素ステーションの供給をし普及に向けた一端を担っている。また、『水素を熟知した会社』をコンセプトに、水素エネルギー普及の一端を担っており、日本や欧米各国でのビジネスに関わっている。また、2023年時点で国内唯一の液化水素サプライヤーであり、千葉、大阪、山口の3拠点体制で液体水素の製造を行い、全国への供給を行っている。2016年には川崎重工やシェルジャパン、電源開発と日豪間の水素サプライチェーン「HySTRA」を設立し、実証実験に取り組み2022年に実証プロジェクトを完遂。コスモエネルギーホールディングスとも水素ステーションの普及に向けて取り組む。
コスモエネルギーホールディングスとの資本提携
2023年12月1日、石油元売のコスモエネルギーホールディングス(コスモHD)の株式約1,740万株を旧村上ファンド代表の村上世彰が関係する投資会社2社および村上の長女である野村絢から1,053億円で取得したと発表した。既に保有する株式と合わせ株保有比率は19.93%となり、コスモHDの筆頭株主となった。
2024年3月27日、公正取引委員会からの承認が得られたことを受けて、旧村上ファンド関係者から更に25万株を追加取得した。これにより、コスモHDの株保有比率は20.07%となり、同社を持分法適用会社にした。同年4月23日、コスモHDとの間で資本業務提携を締結した。
オリンピックの聖火台
1964年(昭和39年)に行われた東京オリンピックの聖火台では、同社のLPGが使用された。
2021年(令和3年)に行われた東京オリンピックの聖火台では、オリンピック史上で初めて水素ガスが使用された。この水素ガスは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ株式会社、東北電力株式会社とともに岩谷産業が運営する「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)において太陽光を利用して製造されている。
その他
三水会とその後身社長会である水曜会及びみどり会の会員企業であり三和グループに属している。
本社
研究所
支社・支店・事務所
子会社
岩谷記念財団を設立して「エネルギー及び環境に関する優れた研究に対する助成」・「自然科学分野における人材育成と国際交流への助成」などを行っている。
また、岩谷産業のキャラバン隊が、次世代の環境対応車として注目を集める燃料電池自動車と水素自動車を使い、日本列島を南から北へ縦断しながら各地の学校などにも立ち寄り、クリーンエネルギーについて分かりやすく解説し、地球温暖化への配慮の観点からの環境保全の大切さも訴える活動も行っている。
スポーツに関しては、チームが好成績を挙げていないため、一般への認知度は高くないが、1988年(昭和63年)から2010年(平成22年)まで社会人アメリカンフットボール(Xリーグ)西地区2部所属のクラブチーム「サイドワインダーズ」のスポンサーとなっていた。バブル景気崩壊以降の世相の中、企業スポーツにおいては、宣伝効果が見込めなければ早々にスポンサー契約を打ち切る、あるいは単なる名義貸し程度の支援しか行わない企業の多い中、社会の景気動向に左右されず、22年に渡りスポンサー契約を継続した。企業チームを除き、同じXリーグ内で、このような長期に渡ってクラブチームを支援している企業は他にアサヒビールが見受けられる程度である。
長年に渡り、浜木綿子を同社のイメージキャラクターに起用しており、浜が主なご当地鍋料理とその地方に合わせた、おいしさを表現する言葉を口にするカセットコンロのCMの他(2012年には孫の五代目市川團子と共演している)、近年では海部剛史が武士に扮したバナジウム天然水のテレビCMが放送されている。
なお、1997年から2000年にかけて同社ブランドで発売した単機能型電子レンジにおいて、部品の欠陥による発煙・発火事故のおそれがあるとして、2011年より同製品の無償点検を告知する、お詫びCMが放映されている。
ほか
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