三越前駅(みつこしまええき)は、東京都中央区日本橋室町にある、東京地下鉄(東京メトロ)の駅である。
駅名の由来である三越日本橋本店の地下売場と直結している。
銀座線と半蔵門線が乗り入れ、各路線ごとに駅番号が与えられている。
半蔵門線の列車は東急電鉄と東武鉄道との3社直通運転を行っている。
なお、新日本橋駅と連絡しており、連絡通路を経由して東日本旅客鉄道(JR東日本)総武快速線に乗り換えることができる。
銀座線・半蔵門線のいずれも島式ホーム1面2線を有する地下駅。両線は改札外連絡となり、乗り換えるためには一旦改札を出場し、「夢ロード」と呼ばれる連絡通路を経由する。東京メトロが公表している乗り換え時間の目安は5分となっている。2013年(平成25年)に連絡通路の拡幅工事が完成し、従来の倍以上の幅員となった。
銀座線の駅と新日本橋駅の位置はそれほど離れていないが、新日本橋駅が地下深くにあるため、乗り換え時間の目安は4分である。また、半蔵門線の駅と新日本橋駅は銀座線の駅を挟んで反対側にあり、両駅の乗り換え時間の目安は10分とされている。
半蔵門線ホームの渋谷寄りから通じる常盤橋方面改札(B1 - B3出入口)はコンコースが完全に独立しており、銀座線や三越方面への通路とは接続していない。
トイレは従来半蔵門線の改札内に2か所設置されていたが、2007年4月に銀座線中央改札外コンコースにオストメイト対応設備やベビーシートを設けた多機能トイレや幼児専用トイレが新設された。なお、半蔵門線側の押上側改札口内のトイレには多機能トイレが併設されている。
銀座線の開業時は、当駅の浅草寄りに両渡り分岐器を設置して折り返し運転を行っていた。この分岐器は1934年(昭和9年)の銀座駅延伸時に片渡り線に変更された。早朝には神田駅・末広町駅に夜間留置された車両を、浅草方面へ回送するための転線に使用されている。
「日本橋駅務管区三越前地域」として近隣の駅を管理している。
半蔵門線の当駅は外堀通り(都道405号)の常盤橋交差点から中央通り(国道20号)日本橋北詰交差点間の地下深くに位置し、道路の両側には東京銀行本店・別館、東洋経済ビル、三越百貨店本店新館、日本橋大栄ビル、興亜火災海上ビルなどの高層ビル(ビル名は建設当時のもの)に挟まれた幅員22 mの中央区道下に建設された。
駅両端にはシールドマシンの発進・到達立坑が開削工法で建設されており、シールド基地として使用後は駅施設に改装した。渋谷寄り発進立坑が延長36.5 m(掘削深さ32.4 m)、押上寄り到達立坑(後述の引き上げ線シールド機の発進立坑としても使用)が延長97.2 m(掘削深さ30.4 m)、乗降場(ホーム)は地下5階部に位置し、駅部延長385.5 mのうち乗降場(ホーム)と通路となる延長251.8 mをシールド工法で施工した。
渋谷方から押上方に向かって、2本の単線シールドトンネル(トンネル外径8.0 m、最下段に掘削機(バックホー)を備えた半機械掘り式シールド機)を掘削後、シールドトンネル間の上部をルーフシールド機(前面に掘削機付き)で掘削し、ホーム延長218.3 m(通路部33.5 m)、幅員9.9 mの島式ホームとしたものである。(めがね形駅ルーフシールド工法)。両側にあるビル群には、シールドマシンによる影響を避けるため、薬液注入による建物防護工事(地盤改良)が行われた。
乗降場(ホーム)は中央に半径700 mの曲線が、また押上方面に向かって8‰の上り勾配に位置している。半蔵門線当駅の深さは27.8 mで、半蔵門線全駅では3番目に深い。銀座線の深さは8.5 mと浅い位置を通っている。東京地下鉄における「駅の深さ」とは、駅中心部における地表からレール面までの深さを表す。
このほか、押上方面に向かって延長282 mの複線シールドトンネルが同時に建設された。これは1989年(平成元年)の開業時から翌年の水天宮前駅延伸までの期間、両渡り分岐器を設置した折り返し用の引き上げ線として使用するものであり、延伸後は本線となった。このため、現在の4番線を降車専用ホームとして押上方面に引き上げた後、折り返して3番線に始発電車として発車していた。水天宮前延伸開業後、折り返し用の両渡り分岐器は撤去された。
半蔵門線ホームの駅名標の周りには、猪熊弦一郎による壁画デザインパネル「21世紀をめざす創造の街」が配置されている。このデザインパネルは36枚すべてが異なるデザインとなっている。
(出典:東京メトロ:構内図)
銀座線ホームでは2018年(平成30年)7月27日から、半蔵門線ホームでは同年9月13日から、スイッチ制作の発車メロディ(発車サイン音)を使用している。曲は両ホームとも、民謡「お江戸日本橋」をアレンジしたもので、1番線と4番線のバージョンは福嶋尚哉、2番線と3番線のバージョンは塩塚博が編曲を手掛けた。
近年の1日平均乗降人員推移は下表の通り。
1日平均乗車人員推移は下表の通り。
最寄りのバス停留所は、日本橋三越・室町三丁目・地下鉄三越前駅(A2出口)・三井記念美術館(A8出口)・日本橋室町一丁目(A4出口)・本石町一丁目・新日本橋駅(A10出口)・室町二丁目(A4出口)となる。以下の路線がそれぞれの停留所に乗り入れ、東42-1系統は都営バス、メトロリンク日本橋は日の丸自動車興業、中央区コミュニティバスは日立自動車交通によりそれぞれ運行されている。
また、付近に位置するマンダリン・オリエンタル東京(日本橋三井タワー)には東京空港交通により運行されている成田空港行の空港連絡バスが乗り入れている。
一説によると、新橋への延伸を目指しながらも資金難に陥っていた東京地下鉄道に対し、目の前の中央通りに本店を構える三越が駅の出入り口と三越の店内を直結させることを条件に、駅の建設資金をほぼ全額(当時の価格で46万3000円)負担して開業させた駅であるとされる。
これに関し三越側では、店舗への直通出入口の設置費用を負担したという資料はあるものの、駅の建設費を全額負担したという資料は確認できないとしているが、東京メトロ側は銀座線リニューアル情報サイトにおいて、三越が建設費用を全額負担したと明記している。
一方、三井広報委員会によれば、三越が駅の全額負担をしたのは、工事の視察をしていた当時の三井銀行筆頭常務理事であった池田成彬が三越の負担で駅を設置することを提案したためとしている。このことは1934年(昭和9年)刊行の「東京地下鉄道史」にも同主旨の記述がある。
この経緯から、銀座線ホームの壁面には三越の「三」をモチーフにした赤い3本線が引かれ、輸入タイル・大理石貼りや真鍮製手摺り、日本初の駅構内エスカレーターの設置、それに当駅独自の駅名標など、三越の意向を隅々まで反映して他の駅にない異例に豪華な意匠の内装が施された。また、後年開設された半蔵門線ホームの壁面デザインは三越の包装紙「華ひらく」をデザインした猪熊弦一郎の作品であるが、駅名標は他の営団→東京メトロの駅と同じものである。
『三越前』の駅名は、鉄道時刻表や旅行ガイドブック、市販手帳の地下鉄路線図、ウェブ上の経路検索サービス、経路案内ソフトの他、都営の地下鉄路線図にも一切改変されることなく掲載されている。
なお、その後の駅施設の営団→東京メトロ管理部分の改修や、半蔵門線の駅施設の建設は、全額営団→東京メトロ側の費用負担により行われた。
東京地下鉄道では上野広小路駅(松坂屋)、日本橋駅(髙島屋・白木屋)、京橋駅(明治屋)、銀座駅(松屋・三越)の5駅が駅上の百貨店等の資金提供を受けて建設され、その際に各店舗と結ばれた特約は現在でも活きており、これらは駅名アナウンスにスポンサー名を入れているが、駅名に百貨店等の屋号を入れるまでに至っていない。
半蔵門線が三越前駅までの部分開業だった時代、東京急行電鉄(現・東急電鉄)は、新玉川線(当時)・田園都市線と半蔵門線の直通運転を行っていたが、自社線内では「半蔵門線直通電車」や「半蔵門線方面行き電車」など、行先を曖昧にしたアナウンスを行い、「三越」と呼ぶことを可能な限り避けた。その後、半蔵門線は1990年(平成2年)に水天宮前駅まで延伸したことで、このアナウンスは解消された。
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