自転車競技におけるロードレース(英: road bicycle racing, 仏: cyclisme sur route, 伊: ciclismo su strada)は、主に舗装された道路を自転車で走り、ゴールの順番や所要時間を争う競技。走る距離は短いものでは数km程度(ステージレースのいわゆる「プロローグラン」)、長いレースでは1日で300km弱(ミラノ〜サンレモなど)にも及ぶ。どのレースでも個々の成績を争うため、基本的には個人競技であるが、上級カテゴリーのレースでは、複数人のメンバーが役割を分担して、チームが定めた目標達成のために走るため、ほとんどの場合、団体競技の様相を呈するのが特徴である。
ロードレースの最も単純な形態はワンデイレース(1日で終了するレース)で、「個人」が、「ゴールの順番を競う」というものであり、これはアマチュアレースや小規模なレースでよく見られる形態である。しかし、プロのレースや、アマチュアのレースの中でも大規模なものでは、ワンデーレースだけでなくステージレース(複数日行われるレース)も加わり、「チーム」が「メンバーの誰かを勝たせるために走る」ことが多い。
ジャージやヘルメットにはユニフォーム広告が入っているため、たとえ勝利につながらなくても、序盤から積極的に先頭を走るなど印象深い走りを見せた選手には「敢闘賞」が与えられる。また、メディアへの露出が多い有名なレースで見せ場を作ることは、チームにとってもスポンサーの宣伝になるため、タイトルに絡まない選手やチームであっても、時に有力な選手やチーム以上の走りを見せる場合がある。
大きなレースでは上記に挙げた敢闘賞だけでなく様々な賞が設定されているため全ての選手が優勝目指して走るのではなく、個人やチーム単位でいくつかの戦略目標を設定し、それに向かって各自が最善を尽くすことになる。
結果として、グランツールをはじめとする大きなステージレースでは個々の選手の思惑や意地、チーム単位での戦略が絡み合い、更に刻々と変わる気象条件や落車、選手の微妙なコンディションの差異などの偶発的要素もそれらの戦略目標に大きな影響を与える為、極めて複雑な頭脳戦の様相を呈する。
ロードレースに参加するチームにはサッカーのクラブチームにおける一部リーグや二部リーグのようなカテゴリーがあり、参加できるレース、出来ないレースがある。詳しくはUCIワールドツアー#チームのカテゴリーを参照のこと。
ロードレースの競技規則は国際自転車競技連合(UCI)によって決められている。
全選手が一斉にスタートし、ゴールの順番や所要時間を競う。通常行われるレース形式であり、「ロードレース」と言うとこの競技方法を指している場合もある。
TTT(Team Time Trial)。
一定時間毎にチームの全員が出走し、チームごとのゴールタイムを競う。チームのうち規定の順番(1チームの定員によって異なる)でゴールした選手のタイムがそのチームのタイムとなる。
ITT(Individual Time Trial)。
一定時間毎に選手が個別に出走し、ゴールタイムを競う。
レースにおける距離、ステージの構成やポイントの配分などは、レースの主催者が決定している。
ステージレースでは、一般的なマスドスタート以外にもタイムトライアルのステージが設定されることがある。上記の競技方法が用いられているが、グランツールにおいては下記の特色がある。
ステージレースでは「時に個人、時にチーム」で、「その日のゴールの着順」「最終的な所要時間など各種の総合成績」などいくつかの目的のために走ることになる。例えば最も有名なステージレースである3つのグランツールでは、勝利を争う主体は「個人」及び「集団(チーム)」であり、争われるのは「ステージごとの着順」と「最終的な走破時間」及び「最終的な獲得ポイント」であり、
といういくつもの賞をめぐる争いが展開される。
ワンデー、ステージ各レースをひとつのシリーズとしているもの。各レース成績優秀者にポイントを付与し、そのシリーズ全レースが終了後に付与されたポイント最上位の選手が優勝となる。
女子については、世界選手権、夏季オリンピック、年間シリーズ戦であるUCI女子ワールドツアー、ジロ・ローザなどのステージレースが重要な大会である。
各チームにはエースとアシストという役割分担が存在する。
ロードレースでは走行中の空気抵抗による体力の消耗が非常に大きい。プロのレースにおける巡航速度は平均で40km/hであるが、これは風速11m/sの向かい風を浴びているに等しく、単独で走りきって勝利するのは困難である。そのため、必然的に集団を形成し、他の選手を風よけにして体力の消耗を減らすなど、選手間で協力することも多い。その際は、数人から十数人の選手が順番に先頭を交代しながら走り、他の選手の体力回復(心拍数やATP-CPエネルギーなど)を助けるという戦術が採られる。(スリップストリームも参照)
先頭交代は必ずしも同じチーム内で行われるとは限らない。例えば、大集団から抜け出した異なるチームの選手たちは逃げ切ってステージ優勝するため、あるいは各種ポイント賞争いを有利に運ぶために、ゴール直前までは交代で先頭を走るのが普通である。しかしこうした逃げ集団の中に個人総合優勝や新人賞に絡みそうな有力選手、またその選手と同じチームの選手が入っている場合、彼らは余計なタイム差がつかないように牽制するのが目的なので、先頭交代には参加せず体力を温存する。
また、逃げている集団を追いかけるために後続集団に残ってしまったチーム同士が協力して先頭交代をし、速度を上げて追い上げることもある。
ステージ優勝争いから総合成績争いまで、様々な思惑や戦略が絡むのが先頭交代である。
先頭交代で述べたように、ライバル同士であっても、当面の目的が一致した場合は「呉越同舟」状態で協力し合うのが、ロードレースの最大の特徴である。しかし、競技の序〜中盤にかけては、一致団結して走っていた選手たちも、終盤にさしかかるにつれ、各チームないし選手ごとの思惑の違いからさまざまな駆け引きが発生してくる(例えば、逃げ切り優勝を狙っている先頭集団なら、どこでアタックをかけて相手を出し抜くかで腹の探りあいが始まり、追撃する集団ではゴール前で競り合いになったときに有利な場所を確保するための位置取り合戦が起こるなど)。
このように、状況の変化に応じて生まれる選手同士の多様な駆け引きが、レースに強い緊張感を生み出し、それが魅力の一つとなっている。
競技時間が3〜7時間と非常に長時間にわたるため、水分や栄養を補給しないままだと脱水症状やエネルギー切れの状態になって競技が続行できなくなる危険が非常に高い。そのため選手たちはロードバイクのフレームにボトルホルダーを取り付けて水やスポーツドリンクなど各種飲料を入れたボトルを携帯したり、レーシングウェアの背中に付けられたポケットにパン、菓子、ゼリー飲料などの機能性食品、小型缶の炭酸飲料などを入れておいて、走りながら適宜補給する。競技中に固形物を摂取するというのは、トライアスロンのアイアンマンなどごく一部を除くほかの競技には見られない、ロードレースの大きな特徴である。
プロレースでは、こうした補給用の飲料や食料は選手自身が携帯するほかに、レースで併走するサポートカーやあるいは補給エリアにスタンバイしたチームスタッフから「サコッシュ」(sacoche:フランス語で肩掛けの鞄や袋を指す。英語圏では「ミュゼット」musetteと呼ばれる)と呼ばれる肩掛け型の袋に数種類を入れて随時供給され、レース中にはアシストの選手が大量のボトルを背中などに入れてチームメイトに配って回る姿がしばしば見られる。サコッシュを受け取った選手はサコッシュからウェアのポケットなどに補給食を移し、サコッシュは捨ててしまう。
なお、空になったボトルやサコッシュは道端に捨てられることが多いが、これは沿道で応援するファンへのプレゼントにもなっており、チーム側もこれを見越して、チームロゴやマークを入れた物を使用している(袋の作りや材質そのものは頑丈ではなく、縫製も非常にいい加減である)。
ただし周囲にファンのいない場所で捨てられたボトル等は単なるゴミになってしまうため、近年では環境保護の観点からボトル等の無制限な投げ捨てに対する批判も一部で高まりつつあり、フランスの地方レースなどでは空になったボトルや補給食の包装等をレース中に投げ捨てなかった選手に対し「エコロジー賞」を用意するケースが増えている。また近年ではコース中でゴミを捨てて良い区間が一部に限定されている場合もある。
食事以外にも、レースでは機材故障(タイヤのパンク、変速機の不調など)に伴う部品や自転車の交換が必要になる。プロレースでは各チームのサポートカーがそれらを供給するのが普通だが、何らかの事情によりサポートカーがすぐに駆けつけられない場合もあり、そのような状況ではレース主催者側が用意するニュートラルカーが必要な部品等を供給することもある。
ロードレースには何種類かの典型的な展開がある。本節ではステージレースで最も頻繁に見られる展開の各段階を解説する。
ロードレースには正々堂々と闘うための紳士協定として、選手間に暗黙の了解事項(不文律)が多数存在している。
ロードレース選手で特定の成績を上げた選手は、レース中それに応じたジャージを着なければならない。また、着用が義務となっている場合が多く、レースで着用をしなかった場合に罰金などのペナルティを課せられることがある。
ロードレースにおいては以下のようなジャージが代表的である。
ステージレースのリーダージャージには胸部にA4サイズの白い枠が設けられている場合がある。これは、ジャージ該当選手のチーム名・チームロゴを入れるためのものである。一つのステージが終了しジャージ該当選手が確定した後、白い枠の部分に昇華インクでチーム名・チームロゴを鏡像印刷したシートを乗せ、プレス機で熱転写を行うことでジャージにチーム名・チームロゴをプリントする(場合によってはステッカーで済ませる場合もある)。
自転車ロードレース選手一覧も参照のこと
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