飯塚 昭三(いいづか しょうぞう、1933年〈昭和8年〉5月23日 - 2023年〈令和5年〉2月15日)は、日本の声優、俳優、ナレーター。シグマ・セブン最終所属。
東京府(現・東京都)で誕生し、小学生時代に母親の実家がある福島県磐城市(現・いわき市)に疎開し、高校卒業まで過ごす。仕事の表現者は嫌いであり、小学校から柔道、野球をしていたことから、当時は演劇には興味がなかった。
福島県立磐城高等学校在学中の高校1年の時に恩賜上野動物園に、象のはな子が到着していたこともあり、先輩に「俺が後ろ足をやるから、お前、前足をやりなよ」と誘われて、仮装行列の出し物で象の足の役を演じて芝居を始める。そのときの先輩が、のちに演劇部を結成して誘われて入部する。
最初の演劇では女の子役であり、母が「これ、付けたら?」と毛糸の髪の毛も見つけてきた衣裳を着ていた。6つか7つセリフがあるうち、本番では2つか3つしか言えず、悔しかった。それで、次の演劇の『法律の轍』では、法律家役を演じていたが、その時はしっかりセリフも言えて演じ切った。その後は「芝居が面白い」と思うようになり、結局、負けず嫌いで始まった。
それまでは演劇の「え」の字も無知だったが、先輩に聞いて色々な本を読むようになった。台本も読み、色々な芝居をしていくうちに、高校3年生の時には先輩から引き継いで部長になった。その時に木下順二の『夕鶴』で与ひょう役を演じ、福島県の演劇コンクールで2位を獲得。女子高との合同公演であり、あの頃は、映画を観るにも「男は木曜日で女は金曜日」というように男女別の時代だったことから、演劇でも男が女役を演じ、男だけでしていた。しかし「そんなのおかしい」と女子高の教師に許可をもらい、男女合同での演劇を実現させたという。
芝居をしていくうちに、「演劇を専門で勉強したい」と思うようになり、日本大学芸術学部演劇学科に進学。当時は母は新聞記者にさせたがっており、父も他の学校に入るのを希望していた。しかし飯塚は同大学は内緒で受けて、他の学校はわざと失敗といい、実力が足りなかったとも語っていた。在学中に劇団を結成して、日本各地で演劇を上演する。大学卒業後も、仲間と劇団を組んで公演を行っていた。当時は劇団仲間たちと一緒に「マスコミに通用するプロダクションを作りたい」と思うようになったという。しかし個人では作っていいのかも分からず、そんなお金もなく、仲間5人で劇団若草でスタッフとしても就職していた。
テレビ局を担当するからマネージャーになり、テレビ局を回る仕事をし、必要なノウハウを3~4年で学び、劇団若草を退社。学んでいたノウハウを活かし、独立後は、劇団チャイムや劇団アポロなどの5つくらいプロダクションを結成。
プロダクションのマネージャーをしていた時に、ある撮影で「役者の隣に座ってくれ」と言われた。そのまま出演していたところ「出てくれてありがとう」とお金をもらった。ギャラを渡されることを体験して、「役者っていいな、役者やろうかな」と少し考えるようになったという。
洋画の吹き替えに出演したことがきっかけで、声優としても活動するようになった。
東映での最初の仕事は、『好き! すき!! 魔女先生』のクモンデス役。この役がきっかけで、その後も怪獣、悪役、敵役を演じるようになった。その次が、『超人バロム・1』のドルゲ役だった。6か月間、病気により声がまったく出なくなったため、特撮「メタルヒーローシリーズ」第1作『宇宙刑事ギャバン』のドン・ホラー役を第10話で降板して半年間の休養後、アニメ『愛の戦士レインボーマン』の帝王ドンゴロス役で復帰する。
東京俳優生活協同組合を経て、1988年からシグマ・セブンに所属。
後進の育成にも精力的であり、シグマ・セブンの関連会社養成機関であるDOA The・声優塾の主任講師を2022年末まで務めていた。この他、2007年から専門学校アートカレッジ神戸にて「飯塚ゼミナール」という講義を行っていた。1999年時点から40年近く福島県いわき地区の高校演劇コンクールの審査員もしていた。
2010年には「スーパー戦隊シリーズ」第34作『天装戦隊ゴセイジャー』では物語序盤のレギュラーとして大王モンス・ドレイクの声を担当することになった。2006年発売のゲームソフト『宇宙刑事魂』にて過去に降板したドン・ホラー役に復帰し、魔王サイコの声も担当した。その後の映画作品などでも、それらの役を引き続き担当している。
2022年、『東京アニメアワードフェスティバル 2022』において「アニメ功労部門」を受賞。
最晩年の2022年末頃からは、体調を崩し仕事を控えていたという。2023年2月15日午前9時14分、急性心不全のため死去。89歳没。訃報は、同月28日に所属事務所により発表された。
遺作は、かつて主演したアニメーション映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の続編であり、2023年8月に劇場公開された短編アニメーション映画『カールじいさんのデート』のカールじいさん役となった。
方言は東北弁(福島弁)。資格は普通自動車免許。
声優としては、ナレーション、アニメ、外画の吹き替えなどを中心に活躍していた。
多数の特撮・アニメ作品で悪役の声を演じている。役を演じていた時に「こういう感じでやってください」と具体的な注文をされたことはなく、何も指示がなかった中で演じていたという。特撮作品『人造人間キカイダー』ではハカイダーを演じており、『人造人間キカイダー』のムック本が発売された際、その編集者から「30年間地球と戦い続けた男」という称号を送られたと嬉しそうに語っていた。
書籍『キカイダー讃歌』におけるインタビューにあたっては、部屋に入るなり、出版を記念して復刻されたハカイダーのスーツを目にするや「この年でかぶり物をやらされるとは思わなかった」と、頼まれていないのに自ら本物のハカイダーに扮している。
ボランティア活動にも積極的に参加しているが、その理由をこれまでの経歴にかけて「何度も地球を征服しようとした罪滅ぼし」と冗談めかして語ったこともある。また、「宇宙刑事シリーズ」など、音声はアフレコを前提とする特撮番組の収録の際は新人俳優に台詞の特訓をしていたこともあり、特撮番組に出演した経験のある俳優からも人望が厚い。
過去に『超人バロム・1』においてドルゲを演じ、その後、ゲーム『ローグギャラクシー』でドルゲンゴアという名の類似したキャラクターを演じている。これは偶然であり、レベルファイブ社長の日野晃博は「特に意味はない」と『ローグギャラクシー』収録の際に語っており、このため、飯塚が「昔ドルゲをやっていた」と言うと驚いていたという。ドルゲの特徴的な「ルロロロロロ…」という怪音は、本人によると脚本には「レロレロ」などとしか書かれていなかった。飯塚は先んじて『好き! すき!! 魔女先生』で敵役のクモンデスの「チューカカカッ」という奇妙な鳴き声をアドリブで生んでいて、これがプロデューサーの平山亨に強い印象を残し、ドルゲでの起用となったという。
声帯を痛めて『宇宙刑事ギャバン』を降板している間は「声優の仕事はもうできない」と考えていたという。『愛の戦士レインボーマン』で復帰できた時は有り難かったと述懐している。
日本大学在学中は、原節子と田中絹代のファンで、熱心に映画を観ていたという。そのため『千年女優』で立花源也を演じた際、主人公・藤原千代子を具現化するのも早かったという。
声優をするために舞台活動をする若手声優に対し、「目的を他において舞台をやってほしくない」と苦言を呈している。本人によると、この苦言の真意は「声優の仕事がない時の穴埋めとして、安易に舞台に立つ者がいるので、そういうことはやめてほしい。舞台に立つ以上は真剣に取り組んでもらいたい」とのことである。
内海賢二とは「昭ちゃん」と「賢坊」と呼び合うほど親交が深かった。その内海が2013年6月に他界し、同年10月に放送される『はじめの一歩』の第3期で内海の持ち役である鴨川会長の声を引き継ぐことになった。飯塚はオファーを受けた際、非常に悩みながらも「賢坊のまねはできませんが、僕なりに葛藤しながらこの役を精いっぱいやらせていただければ」と語っている。
かつては「他の役者さんが僕のモノマネをできないってことが自慢」と発言していたが、2022年のインタビューでは自身のものまねタレントが現れてほしいと発言しており、「面白いじゃない? 野沢のマコさん(野沢雅子)みたいに。ハカイダー芸人とか飯塚昭三芸人とか現れないかな?(笑)」とコメントしている。
飯塚の降板および死後、持ち役を引き継いだ人物は以下の通り。
太字はメインキャラクター。
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