JR西日本183系電車(ジェイアールにしにほん183けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)が485系・489系から改造して製作した特急形電車である。
日本国有鉄道から東日本旅客鉄道(JR東日本)に引き継がれた183系と同じCS15主制御器・MT54主電動機・3.50の歯車比を持つため同系を称するが、全く系譜を異にするため別項にて記す。
485系から交流用の機器を撤去または使用停止した形式であり、交流機器を完全に撤去した700・800番台グループと、車両に搭載したまま使用停止措置のみとした200番台グループが存在する。制御回路は種車と共通しており、直流電化区間であれば無改造の485系および583系との混結も可能であるが、JR東日本所属の本系列とは総括制御に同じKE70形ジャンパ連結器を使用するものの引通構造が異なるため、ジャンパ変換器を用いて信号線を合わせない限り、混結・併結することはできない。また第2パンタグラフの撤去は施工されていないが使用停止措置が採られた。
車体も国鉄時代の新造・改造車と異なっており、485系時代と同様の外観を有し、ドアステップもそのまま存置されている。塗装は485系と区別する必要から変更され、当初の改造車は通常の国鉄色に子持ちラインが入った準国鉄色となった。1996年と2003年の改造車はライトグレーにブラウンとブルーの帯をまとったJR西日本標準色、2009年の改造車は塗装変更が行われていない。
最終的な改造数は116両となるが、1997年と2004年に廃車が発生したため、全車両が同時期に在籍したことはなく、実際の在籍数は2010年の104両が最大となる。
1986年11月1日に行われた国鉄最後のダイヤ改正で福知山線(宝塚 - 福知山)、山陰本線(福知山 - 城崎)電化に伴い、同区間を運行する新設エル特急「北近畿」に「くろしお」などで使われていた485系が転用されることになり、福知山運転所(現・福知山電車区)に配置された。
その後、1991年にJR西日本が七尾線を直流電化するのにあたり、交流電化の北陸本線と直通運転するため普通列車用の交直流電車が必要となった。一方、福知山所に配置されていた485系は直流電化区間のみの運用であり、交流機器は不要であった。そこで、1990年から1991年にかけて、同区の113系800番台および網干・日根野両電車区の113系0番台に交流機器を搭載して415系800番台に改造するために485系から交流機器を取り外し、直流専用車両にしたのが本グループである。その後、列車の増発により1996年・2004年・2009年に追加改造が行われた。
改造はモハ484形に搭載している床下の主変圧器・主整流器・屋根上の空気遮断器・交直切換器など交流機器類の撤去およびその他一部機器を直流専用化、制御車の交直切換スイッチ撤去・運転室表示灯の一部変更などで、施工は吹田・鷹取・松任の各工場である。
形式はモハ183形・モハ182形・クハ183形のほか、独自の形式としてクロ183形・クロハ183形が存在する。
2001年の「スーパー雷鳥」683系化および「しらさぎ」への683系投入で余剰となった付属編成のクモハ485形200番台・モハ484形・クハ481形200番台を2003年 - 2004年に編入したグループである。前述の700・800番台が交流機器を完全に撤去したのに対して、本番台は機器使用停止のみの措置をしている。本グループでは新たにクモハ183形が登場している。
クモハ183形とクハ183形は、485系時代から引続いて電気連結器・自動解結装置を装備しており、綾部駅などでの分割併合の際に活用された。また、クモハ183形+モハ182形のユニットは、分割併合の関係で他の電動車ユニットと逆向き(クモハ183形が城崎温泉駅方)で使用されていた。各形式ともドアステップも存置されていたが、2009年から順次埋められた。
2009年改造車は、クハ183形に電気連結器・自動解結装置を装備していないなどの相違点があるほか、新たにモハ484形600番台・1000番台が種車に加わったため、それぞれモハ182形300番台・1300番台の番台区分が起こされた。
1990年から順次183系化改造を施工し窓下赤細帯が追加された。1991年10月1日現在では4両編成7本+増結用MM'ユニット4組8両の36両 が「北近畿」「ほくせつライナー」(大阪 - 篠山口)で運用された。
山陰本線(京都 - 福知山)の電化完成に伴い、山陰本線系統での電車特急運用が開始され、新たに6両編成×7本の42両と485系ユニット車8両が追加、以下の変更を実施した。
G編成は福知山線系統を中心に運用され、6両編成が「北近畿」7往復に、4両編成が「北近畿」1.5往復と「文殊」1往復、「ほくせつライナー」上り1本に充当される。
T編成は山陰本線系統を中心に運用され、6両編成が「はしだて」2往復、4両編成が「はしだて」2往復と「きのさき」「たんば」の全列車、「文殊」上り1本、「ほくせつライナー」下り1本に投入された。4両編成に関しては、多客期に増結ユニットを組み込んで6両編成で運転された。1999年10月には「まいづる」が運転を開始し、3往復すべてがT編成の運用に追加された。
太字:編成組替で余剰廃車
2001年から2003年にかけて北陸特急への683系電車投入によって485系に余剰車が生じていた。2003年10月1日ダイヤ改正での特急「まいづる」の併結運転開始に伴い、3両編成×6本とモハ182-713と489系改造のクハ183-601の20両が追加された。
増結ユニットを抜き基本4両編成、C編成と連結して最大7両編成で運転されるようになったA編成だが、C編成改造に時間がかかることから、A編成の一部が増結ユニットを組み込んで6両編成となり「北近畿」を中心に運用された。
この組替に伴い余剰となったモハ183-809・モハ182-802・804・クハ183-751の4両と485系MM`ユニット10両が2004年に廃車となった。
北陸特急での余剰車の編入改造が終了し、A編成は4両編成に統一された。ダイヤ改正以降、以下の列車で運用された。
A編成は「北近畿」4.5往復、「文殊」上り1本、「はしだて」2.5往復、「きのさき」1往復、「たんば」2.5往復に充当された。また、「はしだて」2号の福知山 - 京都間でもC編成と連結して運転された。
B編成は「北近畿」5.5往復、「文殊」下り1本、「はしだて」1.5往復、「きのさき」2往復、「たんば」下り1本に充当された。多客期には、増結ユニットを組み込んで6両編成で運転された。
C編成は「北近畿」2往復、「まいづる」5.5往復、「はしだて」上り1本に充当された。「北近畿」に関しては全区間でA編成と連結の上、従来の6両編成より輸送力増強がされた。また、「はしだて」1号の京都 - 福知山間、「はしだて」6号の綾部 - 京都間でもA編成と連結して運転された。
2009年にはB編成へのATS-P搭載工事による予備車確保として、京都総合運転所から捻出された485系6両編成3本計18両が編入された。
BB編成は2010年3月13日ダイヤ改正で定期運用から離脱。その後は波動用や「タンゴエクスプローラー」を含めた各列車の代走や増発列車などに投入された。
太字:JR西日本標準色から準国鉄色に変更(T編成からB編成へ編入)
太斜字:準国鉄色からJR西日本標準色に変更(G編成からC編成へ編入)
2011年3月ダイヤ改正で287系電車を投入し、「こうのとり」(「北近畿」の名称変更)「はしだて」「まいづる」「きのさき」の一部を置換えた。このためA・C編成は運用から離脱した。B編成はATS-P搭載車であることから「こうのとり」「きのさき」「はしだて」の一部で運用が継続された。
2012年3月17日ダイヤ改正以降に日根野電車区所属の381系40両(6両編成6本・4両編成1本)が福知山電車区へ転入。このためB編成は順次運用から離脱し、2013年3月16日ダイヤ改正で定期運用が終了した。
2012年4月時点では、40両が稼動しており、以下の編成が組成されていた。
2012年6月1日以降のB編成使用列車は以下の通り。他に定期列車では、山陰本線普通列車ならびに北近畿タンゴ鉄道宮福線快速列車にも充当されていた。
定期運転終了後の2013年3月30・31日にJR西日本と日本旅行が主催の団体専用列車として「なつかしの北近畿」が運転された。ヘッドマークも特急「北近畿」運行開始当時の絵柄ヘッドマークが掲出された。
参加者には、記念乗車証ならびに記念弁当などが配布された。
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