『逮捕しちゃうぞ』(たいほしちゃうぞ)は、藤島康介の漫画作品『逮捕しちゃうぞ』を原作としたアニメ作品。1994年にOVA化されたのが最初で、その後何度か続編に当たるテレビアニメが製作され、いずれもTBS系にて放送されている(一部関東ローカル放送のものもあり)。いずれも制作はスタジオディーン。1999年には劇場版アニメも公開された。
2007年10月には最新作として6年ぶりに深夜枠のテレビアニメで復活(『フルスロットル』)し、TBSとBS-iで放送された。
※一部の配役がオリジナルビデオ版、TVシリーズ(『1st SEASON』と『SECOND SEASON』)で変更になっている。
『逮捕しちゃうぞ』。1994年9月24日から1995年11月25日にかけて発売。全4話。現在は全巻、廃盤となっている。
1995年2月、FILE.2とFILE.3の間に墨東署公認ビデオ『カラオケしちゃうぞ』FILE2 1/2「そしてみんなで歌おう」が発売。FILE.2以降の発売延期にともなうファンサービスの一環として急遽企画された。婦警姿の玉川紗己子・平松晶子やストライク男が実写で出演しているミュージック・ビデオ集。当初DVD版は未発売であったが、後に第1シリーズのDVD-BOXの特典であるDVDコレクションに収録された。
原作者の藤島康介は自分の絵柄の変化に肯定的である。しかしアニメでは絵柄の統一が要求されたため、原作単行本の4、5巻の絵柄に統一することになった。
放送期間はいずれもキー局のTBSを基準としている。
『逮捕しちゃうぞ』。1996年10月から1997年9月にTBSの土曜夕方5時30分枠にて全51話放送。ただし、FILE.4まではオリジナルビデオ版を編集したものを放送したためTV版としての新作はFILE.5からとなっている。
第1‐4話は、オリジナルビデオ版をTV放送の尺に合わせて再編集したものを放送。OVAからテレビアニメという流れは1990年代以前にはよくあるが、本作のようにストーリーが継続している例は珍しい。なお、パッケージソフトにおいては、テレビ版の第1巻は第5話からとなっておりテレビ版1話から4話はソフト化されていない。
設定原画などはオリジナルビデオ版で製作したものを流用し、葵や徳野、ストライク男などを適宜追加した。BGMについてもオリジナルビデオ版のものを流用し、ストライク男向けのものなどの新曲を追加した。冒頭のタイトル、アイキャッチは新規に制作。オリジナルビデオ版、『Special』と共に、原作にある話、エピソードを元ネタとしたストーリーが多数製作され、『SECOND SEASON』以降との大きな違いとなっている。
饅頭などキャラの嗜好、趣味に関する設定などは原作ではなくこのシリーズで原型が造られた物も多いが、本作の脚本を手がけた横手美智子の手により小説版に継承され、小説内では他の側面が語られ拡張されている。
本作のTBSでの放送期間は秋の改編からで、季節描写については警察制服の衣替えで顕著に明示されている。FILE.5以降はOVAのFILE.4から引続いて合服となっており、11月末放送のFILE.9より、FILE.3に基いた冬服に移行し、クリスマスシーズンの直前にクリスマスに関連するエピソードが放送された。その後FILE15より再び合服となったが、この後に1年への放送延長の発表があり、現実の6月の衣替えの際の放送で夏服となった。なお、FILE.48「夏の終わり」の放送以降の9月放送分は再び合服に移行している。そのため、合服での登場回、期間が長い一方、冬服での登場・および冬を舞台にしたエピソードは少ない。
当初、放送期間は半年の予定だったが、好評により1年に延長されることがアフタヌーン他で発表された。半年での放送を前提としていたため、監督のわたなべひろしは最初の半年でかなりの原作ストックを使い、数少ないオリジナルエピソードもボトルショー的な扱いになっている。前半のEDは美幸のウェディングドレス姿のズームバックの後、夏実が仲人のように花束を渡すものであった。後半のEDは一転して警察官としての2人に着目した映像であり、本編も終盤はコンビに焦点が合わされ、美幸と中嶋の恋愛の進展速度が抑制されている。
本放送初期は作画の乱れが見られた。一部はビデオ化の際に修正されているが、設定画そのままで残された物もある。また、美幸が風邪声の回が存在したが、同様にリテイクがなされ、バンダイチャンネルなどの動画配信でも修正版のものを使用している。作画も毎回異なり、特に瞳のデザインが大きく違う。
日常ギャグ中心の本作品の中でFILE41・42の「回れ!! 炎の回転灯」では警察不祥事を扱い、一般市民の警察への不信感が強調され、ギャグが少ないシリアスな雰囲気が漂う。ストーリーが原作から大幅に翻案されることも多い中では、犯人の設定を除き比較的原作に忠実な流れとされ、作品名も同一だが、原作版はアニメ版ほどにはシリアスではない(原作の他の話との比較で述べるなら、原作版もシリアスな部類に属する)。
原作本は青年誌であるために夏実と美幸の乳首つきヌードやアダルト用語の使用が見られる。しかしOVA、並びにその設定を引き継ぎ、かつ夕方の放送を前提に製作された本作ではアダルト描写はあまりない。数少ない例外として12話では原作FILE.51「AV女優は楽しい」をモチーフとした違法なアダルトビデオ(劇中では「カスビデオ」と呼称)の撮影を扱っている。
『逮捕しちゃうぞ Special』。1999年3月から4月に『ワンダフル』内の短編アニメなどで放送。全21話。『ワンダフル』未ネットの毎日放送では、1999年5月15日から5月29日に『アニメシャワー』枠内で放送された。作中にはサブタイトルの話数表示はないため、本稿ではDVDに基づく。監督による原作初期のテイストを強く出す旨のコメントがあり、他のシリーズとのつながりは示されていない。デジタル化の過渡期のため同じ話でセル画、デジタル画で交互に描かれているシーンがある。
FILE.1.1‐5.4は他シリーズとは異なり、1話当たり約7分くらいの短編であり長編中心の1stシーズンでは描かなかった原作初期の短編のアニメ化となっている。またアニメオリジナルの幼稚園児が出番がないなど深夜放送のためアダルト要素が強い。FILE.6「渚の交通誘導」は、TBSではこの年の春休みのアニメ再放送枠での通常通りの30分枠で放送された。
(FILE.6のみ、前シリーズのOP・EDを引き継いでいた。)
『逮捕しちゃうぞ SECOND SEASON』。2001年4月から9月に放送。全26話。本シリーズではTBSに加えて、系列局のMBSとCBCの3局共同製作となっている。
キャラクターデザインは線が少なく制服などの色指定もよりカラフルなものに変更され、『Special』までのセル主体からデジタル主体に移行した。一方、準レギュラーの出演、BGMの流用、以前の出来事の影響が濃厚に現れている描写などが多く、1stからのストーリー上の継続性は徹底されている。主要スタッフもオリジナルビデオ版や『Special』から関わっている者が多い。
本シリーズより、テレビアニメでも美幸の目の色が青→紫、夏実の目の色が紫→緑に変更された。
他シリーズのオープニングが日常の印象的場面、あるいはイベントの一部を切り取ったような描写であるのに対して、本作のオープニングはほぼ全編がキャラクターの心象風景を描いたものとなっており、歌詞とその場面の映像、オープニング全体の流れと本編での主要キャラの心情変化に相関が見られる。
本作はFILE.1での桜など、季節描写が視聴者に明瞭に分かるようになっており、終盤を除いてTBS放送時の現実の季節変化とリンクしていた(警察の夏服への衣替えは6月放送分から)。
本シリーズのみ、墨東署の外見が3階建てのようになっているシーンが存在する(他と同様4階建てと分かるシーンもある)。
本シリーズで登場する墨東大橋は作中のVICSの地図での表記より駒形橋の位置にあたっている。なお、それより上流の桜橋(劇場版参照)が再建されたかどうかは不明。なお、FILE.1のカーチェイスは橋の北側の墨堤通りを北上しながら行っていたが、その後「北進」を続ける暴走車を墨東大橋前の交差点で包囲しようとしているなど、世界がループしている。
FILE.11、FILE.12で登場した災害救助ロボットT-5はテムザックが災害救助や工事用の汎用ロボットのコンセプトモデルとして実際に製作したものであり、パシフィコ横浜で開催された「ROBODEX 2000」でプロトタイプのデモンストレーションが行われている。作中で一般人が携帯電話やPHSに関して会話する場面が挿入されているが、T-5はPHSの電波が届かない状況を想定して、無線LANによる操縦系も開発されている。当時は2001年より販売する予定だったが、腕の把持能力などが実証されておらず、同社は今後用途に応じて開発する旨を表明していた。作中では科学捜査研究所が警察仕様の開発過程に5年間タッチしかなりの予算がつぎ込まれたことになっており、実機で問題となったアームの持ち上げ能力が飛躍的に強化され、キャタピラも大型化している。
地上波ネット局の放送時間は2001年7月中旬 - 8月上旬時点。
『YOU'RE UNDER ARREST 〜逮捕しちゃうぞ〜』。2002年3月、『TBS春休みアニメフェスタ』内で放送されたスペシャルアニメ。30分。
夏実と美幸がアメリカの警察署に出向したという設定で、そこの警官たちはなぜか墨東署の面々と瓜2つ。
主人公の二人を除く。
『逮捕しちゃうぞ フルスロットル』。2007年10月から2008年3月に放送。全23話 + 特別編1話。本作ではTBSにおいてシリーズ初の深夜枠で放送され、それまでのテレビシリーズに比較して変更された点が多く見受けられる。
スタッフは主要キャスト、キャラクターデザイン・メカニックデザイン・サウンドデザイン(音響効果)・宣伝プロデューサー・制作会社を除いてほぼ一新された。劇場版を除き2ndまで引き継がれていたBGMが一新され、劇中で多数の挿入歌(おおむね挿入した回につき1曲)が使用されている。
キャラクターデザインの絵柄は、『SECOND SEASON』でのコミカルで線を省略したものから一転して、線の多い劇画調のタッチに変化した。第1期や第2期に比べて、目が点になるなどのギャグ要素的な顔を崩した描写はない。
『SECOND SEASON』終盤で警視庁の特殊部隊に転属した夏実が、いつ墨東署に戻って自衛隊に出向したのか、美幸がいつアメリカに派遣されたのかが語られていない。またこれに関連して、『SECOND SEASON』まではあった年齢設定が本シリーズでは不明。
シリーズ単体での時間の流れは『1st SEASON』、『SECOND SEASON』でも比較的はっきりしていたが、本作では回を重ねるごとにモブキャラなどの私服に半袖が増えた末、墨東署では第12話より夏制服に衣替えしており、春から夏に向かっている。
夏実が遅刻癖を直し、定時に出勤して来る姿が描かれた。また、怪談話を聞かされた時の美幸の驚き方が、過去のシリーズに比べてそれほど大げさなものではなくなった。このように、登場人物の内面にも時間の経過による変化が見られる。
第1話で佐賀沙織は転属したことが語られ、第18話で登場、異動先が城北署サイバー犯罪対策室であることが明らかになった。美幸と夏実が墨東署に復帰したことは二人(や周囲)が沙織に伝え忘れていた。なお、既述のように2nd以降は担当声優が変更になっているが、『SECOND SEASON』での初登場の際には墨東署の面々にキャラの特徴が変わっていると受け取られたのに対し、本作18話で墨東署の面々と再会した際には会話の流れは互いに変わりが無いというものであった。
『1st SEASON』や『SECOND SEASON』で登場していた準レギュラーは、事実上ゲストキャラ扱いになっている。また、一部の準レギュラーは、本作では一度も登場することはなかった。
第22話で大丸と瀬奈が登場。瀬奈は、大丸のことを『SECOND SEASON』までは「大丸さん」と敬称で呼んでいたが、『フルスロットル』では、「大ちゃん」と愛称で呼ぶようになっている。
夏実・美幸が住んでいる住居が『SECOND SEASON』までの丸型のマンションではなく、通常街中で多く見かける角型のマンションになっている。夏実が自衛隊、美幸がアメリカにいた時期は重なっておりマンションには誰も居住していなかった筈だが、復帰早々普段通り帰宅しており部屋自体は以前から確保されていた模様。引越しなどの詳細な経緯不明。
それまでのシリーズで1階にあった受付が交通課の入口前に移動している。
警官達の制服、警察全般の映像面の描写は毎回実物を一部簡略化して設定が起こされる。省略される部分はシリーズごとに異なるが、本シリーズは初めて女性警官の白編み警笛ひもが省略され、スカートのプリーツは映画以来二度目の復活。ネクタイなど服飾の色指定は実物に近いやや暗めのものとなった(制帽とワッペンは多くのシリーズ同様省略)。なお、夏制服でもベストを着ている女性警官が増えた。制服では無いが、OVA以来登場していた美幸の作業用ツナギがオレンジ色の物に変わっている。
2002年の警察手帳のデザイン変更、2004年にあった制服などの変更(階級章への識別章追加)や、2006年頃より警視庁で採用され始めた警邏用パトカーのデザイン変更が反映されている。
第2話では美幸が私用で車を運転していたが、車種は『SECOND SEASON』まで美幸の私用車として登場していたブルーのトヨタS800ではなく、ピンクのヴィッツだった。しかし、第18話では美幸はトヨタS800を運転し、頼子が同色のヴィッツを運転していた。ヴィッツについて所有者などの経緯は不明。
オリジナル設定として、S180系クラウンパトカーが登場している。
第24話はDVDオリジナル。キッズステーションでも2009年7月4日に放送された。
地上波での放送は関東ローカルであった。なお、当シリーズでは初めてTBSの関連会社であるBSデジタル放送局・BS-iでも放送されている。BS-iでは番組スポンサーが付かないため提供バックはない。
TBSでの放送の初回視聴率は、深夜1時55分の開始にもかかわらず、4.0%(ビデオリサーチ関東地区)を獲得した。
『逮捕しちゃうぞ the MOVIE』。1999年4月24日に上映された。東映配給。
勝鬨橋や東京ヘリポートなど実在する東京名所をストーリーに組み込み、リアルに描画した点が劇場版の特徴である。監督の西村は本作のコンセプトを「どれだけリアルな絵面を持ってきて嘘をつくか」と説明している。制作前に綿密な現地調査が行われ、巡視船『やしま』が勝鬨橋を通れることも確認済みであるとのこと。 また、綿密に取材する一方で本編中巡視船が偽装船を停止させるために威嚇発砲したことについて「巡視船はあんな安易には発砲しない」という海保側からの指摘により、海上保安庁取材協力の表記はエンドロールにて行われなかったが、感謝の気持ちを込め台詞が変えられた。
辻本夏実を演じた玉川紗己子は、あるシーンをアフレコ中、監督からの指示もあって雄叫びを上げていた際、絶好調だったため「全開でズドーンと」行ったところ、限界を超えて横隔膜が痙攣し、横にいた平松にもたれて倒れ、その日の収録は中止された。当人は「夏実が乗り移った感じ」と述べた。
2000年12月にTBSで1時間半の枠に収まるように再編集して放送。
2007年11月23日にHDリマスター版のDVDが発売され、2010年7月23日にはBlu-ray Disc版が発売された。
暑い夏の日、辻本夏実巡査と小早川美幸巡査は本庁研修を修了し、1年ぶりに墨東署交通課へ帰ってきた。同僚の二階堂頼子・葵双葉・中嶋剣、そして課長・徳野刑事も笑顔で2人を迎え入れる。さらにはヒマラヤに行っていた東海林も帰国するとの連絡を受け、夏実は早くもウキウキモード。そんな中、頼子と葵が駐車場に止めてある車から大量の銃器を押収。さらには墨東各地で信号機一斉故障が発生。またタレこみにより、またも大量の銃器及び謎のMOを押収した。
捜査が進む中、墨東署に蟻塚警視正が来署。今回の事件には課長が関わっているとし、課長は逮捕されてしまう。尋問から出た言葉は「柄本警部」そして「蜂一号」。そしてついに大事件が発生。隅田川にかかるさくら橋が爆破された。犯人によると爆弾は他にもあるという。東京の警察官総出で探すが、爆弾は見つからない。その時、拘置所にいた課長が「蜂一号」とは「本庁所轄警察署襲撃要綱」であると説明を始める。そして調べの中、その警察署のモデルが墨東署だということが発覚。墨東署への魔の手は確実に迫っていた。
果たして夏実と美幸は犯行を阻止することができるのか。2人の乗るTODAYが東京の下町を疾走する。
主な登場人物の声優は、OVA・テレビ版と同一。
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