増山 江威子(ますやま えいこ、1936年〈昭和11年〉4月22日 - )は、日本の女優、声優、ナレーター。東京府(現東京都)品川区荏原出身。青二プロダクション所属。
4人姉妹の末っ子として生まれる。小さい頃はゆっくりした話し方で、教師に「あなた、ちゃんとお話しできないの」と言われショックを受けるなど、次第にその話し方に劣等コンプレックスを持つようになる。
幼少期はバレリーナを目指しレッスンも行っていたが、肺病のため12歳の時に断念。「何か夢を持ちたい」と思っていたころに、義理の兄の紹介もあり、話し方の改善も考え新児童劇団(現在の劇団新児童)に所属。指導担当だった麻生美代子に師事する。そこで話し方の劣等感を克服し、自然と演技に興味を持つようになる。
立正学園高等学校出身。
15歳の頃、児童劇団に所属する年齢でもなくなったため、近い世代の毒蝮三太夫・稲吉靖司・影万里江・北浜晴子・豊原ミツ子らと「劇団山王」を立ち上げる。数年後、浅利慶太に「女優が少ないから」と頼まれ、影万里江とともに劇団四季に移籍。テレビ出演、海外ドラマの吹き替えの仕事もするようになったという。四季にラジオドラマやアテレコの仕事が入って来るうちに声の仕事に興味を持ち始める。プライベートで時間の制約ができてしまい、時間が不規則なテレビ、稽古が必要な舞台の仕事が難しくなっていったという。
その後、「声の仕事だけに集中しよう」と決意し、家庭や子育てを仕事と両立させるため、舞台などよりは比較的短時間でできる声優業に専念するようになり、1960年代から青二プロダクションに所属。
2017年、『東京アニメアワードフェスティバル 2017』において「アニメ功労部門」を受賞。
2021年、第十五回声優アワードにて「功労賞」を受賞。
声種は「上品で情熱的なメゾソプラノ」。
役柄としては、少女役から大人の女性役まで演じ、色っぽいキャラクターを演じる一方で、優しい母親役も多い。藤子不二雄作品では、『怪物くん (第1・2作)』の怪子ちゃん役、『パーマン (第2作)』の星野スミレ(パー子)役を演じ、『オバケのQ太郎(第3作)』のU子役では独特なだみ声も披露した。2005年時点では老け役が回ってこなず、未だに若い感じの役が多いため、「いつまでも若手で行くか!」という感じである。声は、歳を重ねていくと、少しずつ下がり、若いキャラクターを演じるための、音程を維持するトレーニングが、結構大変だという。2005年時点で2004年まで『パーマン』のパー子役も演じており、「子供役もやらなきゃいけないし、若いキャラもやらなきゃいけないし……」とそういった、若いキャラのオファーがいつ来るか分からないため、何十年、怯えながら暮らしているという。また、ハンナ・バーベラ作品にも複数出演している。吹き替えではリー・レミックを数多く担当している。
幼少期から宝塚歌劇団の大ファンである。宝塚に入団しようとした時期もあり、そこを受けるために前述のとおり、バレエをしていた。しかし肺病で断念した結果、宝塚も断念することになったという。夫の仕事が落ち着いた2005年から約9年間は宝塚大劇場付近に住んでいたといい、タカラジェンヌや関係者とも組に関係なく幅広い交流があるという。
児童劇団時代に麻生の引率で劇団東童の公演を見学、そこで王子様役を演じた俳優に憧れ「あの人と同じ舞台に立ちたい」と思った。その俳優こそが後に『ルパン三世』で40年近く共演し続けた納谷悟朗だった。
デビュー当初は本名で活動したが、演出家の星野和彦に「こんな名前じゃねえ、やっていけないよ」と高島易断に連れていかれ、現在の芸名となった。
同年代の仲間からは「トンチ」という愛称がある。本人によると、二人の実姉が“イッチー”“キョーチ”と呼ばれていたため本名が「トモコ」の増山も“トンチ”と呼ばれ、それが仕事仲間にも広がったという。
リー・レミックとは感じ、骨格が似てると言われ、一番アテやすいという。『ハイウェイ』もよかったが、特に『酒とバラの日々』は感動しており、とてもやりがいがあったという。
アニメソングの歌唱も数多く担当していた。これは『ひょっこりひょうたん島』で出会った宇野誠一郎が増山をよく起用するようになったためで、当初は「私でいいの?」と思ったが、現在では「とてもうれしいことだった」と回想している。『ひょっこりひょうたん島』ではテケ役を演じていたが、この頃は、少年役にキャスティングされることなど想像もつかず、「プリンちゃんかしら、チャッピーかしら」と、女の子役だと思い込んでいた。NHKのプロデューサーに「いえ。男の子のテケですよ」とハッキリ告げられた時には、「エエーッ!私、男の子の役なんて、やったことないんです……」と、言ってしまった。しかし演じていたところ意外に楽しくて、「やらせていただいて、よかった」と思ったという。
近年の声優志望の人に対しては、読む時にキャラクターを想像することで役作りに生かせるため、様々な本を読むことが大事だと発言している。
井上喜久子が『アタックNo.1』の再放送を見た後、井上が昔から好きな声の人物である増山がいたことに気付いたという。子供の頃から普通に色々なアニメを見ていたため、声がテレビから流れるたびに、「あー好き、この人の声好き!」と思っており、声優の勉強を始めてから、その「好き」が繋がったという感じだったという。増山とは井上がプロになってから、仲良くさせてもらっているという。久川綾が増山と同じ青二プロダクション所属なため、井上のことを紹介してもらい、毎年皆の誕生日にお祝いで食事に行ったりするくらい、仲良くさせてもらっているという。井上によると会えば会うほど素晴らしく、いつも輝いている素敵な人物だという。井上曰く増山は会うたびに、たくさんの愛をくれる、「永遠に憧れの人」、と語る。
夫は、TBSテレビのチーフ・プロデューサーを務めた政田一喜(2022年没)。娘がいる。
アニメのアフレコの際は「絵が主役」であり、「絵があるからこそ声もピッタリ合う」との考えを持っている。また、絵がないと演じてきた色々なキャラクターの声が混ざってしまうので、絵もなく突然「○○の声をやって下さい」と言われるのは苦手だと発言している。
アニメのアフレコの際に絵がほとんど入らないことに苦言を呈している。ある作品ではこのことが原因で台詞を入れ忘れたように見えるシーンが完成してしまった他、絵と演技が一致しない場面が放送され「何で増山さんは何年もやってるのにこれ(演技)が出来ないのか」と投書が来てしまい、現場に「恥はかきたくない」「何とか収録時には絵が欲しい」と頼んだこともあるという。
以前はテレビ番組のゲスト出演など顔出しの出演も多かったが、近年は「みんなの知ってる私の声はハニーや不二子などの若い声。そんな若いキャラクターのイメージを壊したくない」という理由で顔出しをあまり好んでおらず、『大胆MAP』では顔出しを拒否するような発言もしている。ただし、同番組ではアフレコをしている様子を遠目で録るという条件で承諾し出演した。2019年9月21日放送のNHK BSプレミアム『セカンドの美学』でも同様に顔を映さないことを条件にインタビュー出演した。
1973年放送の『キューティーハニー』で、初代ハニーの声を担当。リメイクである『キューティーハニーF』では友情出演として、神崎美津子の声を担当。『Re:キューティーハニー』では別世界からやってきたという設定で初代ハニーを再演した。
増山によると、それまでは可愛らしい役柄を演じることが多かったため、ハニーはセクシーな役を担当するようになる転機だったという。また、ハニーはアンドロイドであることを意識して演じていたため、脱いでも「いやらしい」と思ったことはなかった。
2005年に再びハニーを演じた際は、「こんないい作品に出会えたということはそれだけで嬉しいものですね」とコメントしている。
1977年の『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』より、峰不二子役を沢城みゆきに交代する2011年まで長年にわたり演じた。
元々、2本製作された『ルパン三世 パイロットフィルム』では増山が不二子を演じており『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』にも参加予定だったが、実際に放送されると録音監督の田代敦巳から謝罪があり、何故か不二子役が二階堂有希子に代わっていたという。一方、『TV第1シリーズ』の演出を担当したおおすみ正秋はこのことに関して後に「ルパンが不二子に挑みかかる場面があるんですよ。ところがその場面になるとシーンとしちゃって」「『どうしたの?』って聞くと『どうしてもできません』って」と、増山がお色気シーンをできなかったため仕方なく変更したと発言している。その後、第14話「エメラルドの秘密」でキャサリン・マーチン役としてゲスト出演、キャサリンは前述の二階堂演じる不二子と頻繁に会話を交わしており、初代・二代目両不二子声優による共演回となっている。
その後も不二子への思いが強かった増山は、『TV第2シリーズ』放送前のオーディションに参加。見事不二子を担当することになったという。
『パイロットフィルム』が一般に知られていなかった当初は、「何故不二子が二階堂さんじゃないんだ」という抗議の投書が殺到。しかし日本テレビのスタッフからこれを聞いた増山は、「どうあがいても二階堂さんにはなれないから、私の持ち味でやるしかない」と発奮して演じ続けたという。
増山は「不二子はすべての理想を兼ね備えた女性であり、いつも憧れている」と語っており、不二子のファンは女性が圧倒的に多いと語っている。ルパンについては、裏切っても不二子のことを想う所が「男性の可愛さみたいで、好きですネ」と語っている。自身が演じた中で思い出深いルパン作品には『ルパン三世 カリオストロの城』を挙げている。
長年共演してきたレギュラー声優陣について、プライベートでも頻繁に交流があったと思われがちだが、増山曰く「実際には私語も少なくみんなバラバラで大人の関係。ただし、目的が一緒だとバッとまとまる」という、本当に演じるキャラクターのような関係だったという。
2019年に原作者のモンキー・パンチが亡くなった際は、「役者は作品との出会いが全てです。私の財産となった『峰不二子』に出会えたこと。モンキー・パンチ先生に感謝しています」とコメントしている。
2022年に次元大介役の小林清志が亡くなって以来、『TV第2シリーズ』から長期にわたり固定されたメインキャストの中で唯一の存命人物となった。
『天才バカボン』はこれまでに5回テレビアニメ化されているが、主要キャストが変わる中、バカボンのママだけは4作目『レレレの天才バカボン』まで一貫して増山が演じていた。これは原作者である赤塚不二夫の希望であり、4回目のTVアニメ化に際して、赤塚からの唯一の希望が「ママの声だけは(増山から)変えないで欲しい」だったという。それまでに増山以外の声優が演じたのは1作目の第70話「パパとママがけんかをしたのだ」の1回だけ北浜晴子が代役で演じたのみである。。
増山は私生活でも母親だったことから、今でもママを「私そのもの」だと思っているという。また、初めてママの絵を見た際「私、絶対ピッタリだわ」と思ったという。
ある番組の収録で青梅赤塚不二夫会館(2003年10月-2020年3月運営)へ行った際、壁に様々な赤塚のコメントが貼ってある中で実際に「ママは絶対増山さんじゃなきゃダメだ」と書かれているのを見つけた時は、「自分が勝手に言ってる訳ではなく、本当に原作者である先生に認められていた」という気持ちで、とてもうれしかったという。
増山が高齢等の理由で降板し、持ち役を引き継いだ人物は以下の通り。
ただし、リメイクやリブートによって降板した作品については記載しない。
太字はメインキャラクター。
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