障害者(しょうがいしゃ、英:disabled, differently-abled, disordered, challenged)は、心身の障害の発露により生活に制限を受ける者。児童福祉法は18歳未満を障害児とする。
法律は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者を含む。軽度の障害で制約を受ける者も同様に分類されるが、本項は下記の内容を中心に説明する。
デラウェア大学出版の『脳性まひ看護ガイド』(Cerebral Palsy: A Guide for Care)は、以下の様に述べている。
1975年、国際連合は身体障害(Physical Disability)及び精神障害(Mental Disability)に対する「障害者の権利宣言(Declaration on the Rights of Disabled Persons)」を決議した。同宣言は「『障害者』という言葉は先天的か否かにかかわらず、身体的または精神的能力の欠如のために、普通の個人または社会生活に必要なことを、自分自身で完全、または部分的に行うことができない人のことを意味する」と述べている。
障害者基本法の障害者の定義で、障害者は、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」とされている。各種の法整備がすすみ、従来であれば障害者に含まれない者についても、障害者の対象とされている。また、身体障害者福祉法、身体障害者福祉法施行令(昭和25年政令第78号)、身体障害者福祉法施行規則(昭和25年厚生省令第15号)及び各都道府県の身体障害者手帳に関する規則等に基づき等級認定や身体障害者手帳等の交付に係る申請・認定・交付に係る以外では、上記の状態におかれる場合は身体障害者手帳等の交付の有無は関係ない。
1992年(平成4年)6月12日に日本が批准した「障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約(第159号)」
2006年(平成18年)12月13日に国連総会において「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約):(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」が採択され、2008年5月3日に発効した。日本は2007年(平成19年)9月28日に、高村正彦外務大臣(当時)がこの条約に署名し、2014年(平成26年)1月20日に批准書を寄託し、同年2月19日に同条約は日本において効力を発生した。
障害者基本法第二条 - 障害者
身体障害者福祉法第四条 - 身体障害者
「別表」に「視力障害」「聴覚または平衡機能の障害」「音声機能、言語機能、咀嚼機能の障害」「肢体不自由」「重篤な心臓、腎臓、呼吸器機能の障害」がある。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第五条 - 精神障害者
知的障害者福祉法 - 知的障害者 の記載無し
児童福祉法第四条第二項 - 障害児
第四条 - 児童
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第四条 - 障害者
第四条第二項 - 障害児
発達障害者支援法第二条第二項 - 発達障害者
障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)第二条第1号 - 障害者
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)第二条第一項 - 障害者
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)第二条第一項 - 高齢者、障害者等
障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(障害者文化芸術活動推進法)第二条 - 障害者
聴覚障害や自閉症など特定の病状を「障害」と表現することに抵抗を抱く者は、発達上の相違と捉えるべきことが社会によって不当に汚名を着せられていると主張する。
医学モデルとは、障害を引き起こすものは病気・トラウマ・その他の健康状態を起因とする個人の問題をして扱い、専門家が個別に継続的な治療を施す考え方である。このモデルは、障害の管理とは「治療」もしくは「ほとんど治療」または効果的な治療へと繋がる個人に対する調整や行動の変更を目的としている。医療が本題で、政治的な意味で統計解析がヘルスケアに関する政策へ改革を促すものになる。
イギリスの障害者団体「隔離に反対する身体障害者連盟(UPIAS)」が1976年に発した、「障害とは社会が障害者としている人たちにもたらしている不利益である」という声明は、障害観のパラダイムを転換させる契機となった。障害学のマイク・オリバーは、この声明を承けて障害の社会モデルという認識枠組みを提示した。障害の社会モデルでは、身体的(精神的・知的)制約を「インペアメント(impairments)」、社会によって作られる障壁や差別を「ディスアビリティ(disabilities)」と呼び、それぞれを明確に区別している。
従来から一般的だった障害の個人モデル(Individual model of disability)では、障害者が直面する問題の根本原因は障害者個人のインペアメントにあるとし、問題を解決する方法はインペアメントの除去であるとされてきた。障害の社会モデルでは、「障害」の問題を社会的に発生したものと捉え、個人が社会へ全面的に適応する際の課題とみなす。このモデルは、障害は個人に帰する問題ではなく、様々な状態が絡み合った複雑さとして受け止め、多くは社会環境から発生していると考える。従って、この問題と向き合うには社会活動が求められ、人々が障害者と社会生活全般の場面で供に生きられる環境を整備する社会全体の集団責任となる。この問題は文化と、健常な心身を正常なものとするイデオロギー双方に関わり、また個人・共同体・そしてより広い社会の変化が必要になる。これらから、減損や障害を持つ人々の機会平等は、重要な人権問題となる。
全世界または国単位での障害者数割り出しには多くの問題がある。さまざまな障害者の定義があるにもかかわらず、人口統計学者らは世界人口に占める障害者の割合は非常に大きいと考えている。例えば、2004年にWHOは世界65億人のうち、それなりの程度かもしくは深刻な状態の障害を持つ人は1億人近いと推計した。障害を取り扱う専門家の中で広く行き渡った共通認識に、障害は一般に先進国よりも発展途上国で多いある。障害と貧困の関係は一種の「悪循環」にあり、双方が状況の悪化を招き合っている。
アメリカ合衆国国勢調査局によると、2004年に同国内の障害者数は18歳以上の大人で3,200万人、18歳未満の子供で500万人がおり、障害までには行かないが減損を抱える人々を加えると総数は5,100万人になる。ベトナム戦争の帰還兵でも、負傷して戻った15万人のうち少なくとも2万1,000人が障害を抱えることになった。2001年以来、合衆国軍の関与行為が増え、その結果として軍人が障害を負うケースが非常に増加している。フォックスニュースによると増加率は25%、290万人の退役軍人が障害者である。
数年間にわたるアフガニスタン戦争によって、100万人以上の身体障害者が生じた。アフガニスタンは障害者の数が非常に多いがおよそ8万人は地雷によって四肢のどこかを失った。
2008年3月24日に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課より発行された平成18年身体障害児・者実態調査結果によると、在宅の全国の身体障害者数は、348万3,000人と推計されている(2006年7月1日現在)。
障害と貧困には、さまざまな要因によってもたらされた結果として、世界的に相関関係がある。これらには悪循環を形成する可能性がある。身体的な障壁は収入を得る行動を難しくさせ、そのために治療機会や健康的な生活の維持を難しくしてしまう。
障害者及び連帯者は、障害者の尊厳や人権の回復のために社会運動を行っている。
世界では1981年に障害者インターナショナル(DPI)が設立され、1986年には日本でもDPI日本会議が設立され、DPIに加盟している。
日本においてはCP者が主体となって結成した1960年代頃から70年代から今に至るまで全国青い芝の会や在障会が活発に活動している。
身体に障害を持つ生徒の普通学級への就学運動は1970年代から始まった。
精神障害者の運動としてはS闘争や全国「精神病」者集団が知られる。
1986年には女性の障害者の運動体としてDPI女性障害者ネットワークが結成された。
米国の障害者の社会運動としての自立生活運動が日本国内でも紹介され、1991年には全国自立生活センター協議会(JIL)が立ち上げられた。JIL所属の事業者は身体障害者のみならず、知的障害者の地域での自立生活の支援も行い始めている。
知的障害者とその家族が結成した全日本手をつなぐ育成会は1950年代から運動を行っている。
1977年には、障害者の働く共同作業所が合同して、共同作業所全国連絡会を結成して、現在に至るまで運動を行っている。
障害当事者の政治参加も行われ始めていて、1994年に樋口恵子(無所属)が町田市議会議員に、2019年には木村英子と舩後靖彦(共にれいわ新撰組)が参議院議員に当選している。2023年に堀合研二郎(立憲民主党)が大和市議会議員に当選している。
障害児は1947年(昭和22年)に成立した学校教育法に「障がい児」の定義があり、重度障害児は就学を希望しても就学猶予・就学免除とされた。1979年(昭和54年)に養護学校が義務化され、地域の公立小・中学校に通学する障害児も反対がなければ分離された。養護学校の設立当初は機能訓練が中心で、現在の養護学校とは様相が異なる。学校教育と精神科医療で、障害者の分類が異なる。
2001年(平成13年)に文部科学省は、障害児教育を「特殊教育」から「特別支援教育」に改めたが、学校教育法上の法文は「特殊教育」から変更されなかった。2007年4月1日に「学校教育法等の一部を改正する法律」(平成18年6月21日法律第80号)が施行され、それぞれ別個の学校種であった盲学校・聾学校・養護学校は特別支援学校に移行し、以後は校名を変更した学校と変更していない学校が混在している。法文上「特殊教育」と記されていたものは、すべて「特別支援教育」と記された。
現在は統合教育と並行して、インクルージョン教育が推し進められている。
障害者の雇用は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)で、一定規模以上(2013年時点で常用労働者数50人以上)の事業主は、障害者を一定割合以上雇用すべき法律上の義務を負う。
障害者雇用(法定雇用)の割合が障害者雇用率(法定雇用率)で、
実際は障害者の就業が困難な職種もあり業種ごとに除外率を定めているが、下記職種を対象除外として廃止予定である。
障害者雇用促進法第44条、第45条は、親会社が多数の障害者を雇用する目的で設立し、一定の要件を備えた子会社を障害者雇用率の算定で親会社の雇用とみなす制度を設けている。これが特例子会社制度である。2007年4月末現在、213社が特例子会社に認定されている。
厚生労働省の障害者雇用調査(2006年6月1日時点)によれば、従業員5000人以上の企業の平均雇用率は1.79%としている。
難病患者にも、特定求職者雇用開発助成金、障害者トライアル雇用事業、障害者雇用納付金制度等の就労支援を行っている。
しかし障害者枠は適用されておらず、差異が残る。
国際人権法に基づき、2006年に国連総会で採択された「英語: Convention on the Rights of Persons with Disabilities」(外務省仮訳、障害者の権利に関する条約)は、当事者に言及する際「handicapped」や「disabled」ではなく、一貫して「with disabilities」の表現を用いている。これらの三語はどれも障害と訳され、"challenged" は「(体の)不自由な」の訳になる。
戦前は不具者(ふぐしゃ)、不具癈疾者(ふぐはいしつしゃ)などと表記され、一般には「片輪者(かたわもの)」と呼ばれていた。
学術用語として、1924年(大正13年)に刊行された樋口長市『欧米の特殊教育』に視覚障碍者・聴覚障碍者・言語障碍者という表現がある。新聞記事には、1921年(大正10年)の大阪毎日新聞に「工場主は労働者に賠償の方法を講じてゐるが一時に多数の障害者を出した場合等が」という使用例がある。障碍者・障害者のいずれも、第二次世界大戦前のこうした用例は僅少である。
平成の常用漢字表改定議論中に、戦前は「しょうがいしゃ」という語はなかったという主張があった。法律名に現われたのは1949年(昭和24年)の身体障害者福祉法などである。同法は当用漢字の使用制限で「礙」や「碍」が使えないことから「障害」が採用されたと周藤真也は述べている(碍は礙の俗字)。「者」の付かない「しょうがい」であれば、障礙・障碍もさることながら、明治10年代には障害を見出しに掲げた辞書が発行されている。障害の語義のうち、現在の「身体の器官や能力に不十分な点があること」は、後年に成立した。
個々の症例名については日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会の「DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン」(2014年)に考え方の一つをみることができる。同書に先立つ議論においてDSM-5の一部または全部の訳語を障害から症に改めるべきだという主張とその反対論があったことが示された。公表された初版においてはDSM-IV時代の名称を並記しつつ多くを症に改めている。
「害」の字が好ましくないとして、地方公共団体や主要なメディアなどが「障がい者・障がい児・障がい者手帳」と平仮名と交ぜ書きにする変更しているケースもみられる。
このような変更については、
といった批判もある。また議論されること自体が不快とする障害当事者もいるほか、障害者団体の中にも表記を改めていないものがある(後述)。
「障害者」の表記・表現の変更は、賛否両論があるが「『害』の字を不快に感じる人が一人でもいるのであれば」の観点で変更されてきた。
これに対し、文化庁文化審議会国語分科会は、2010年5月に公表した答申案において、使用される熟語の少なさや、歴史的に「障碍」は「悪魔や怨霊が悟りへの到達を妨げる」とする、否定的な意味を有していたとする調査結果を挙げて、「碍」の常用漢字追加を拒否する方針を決定。
但し、障がい者制度改革推進会議における議論の結果、同会議より追加の要望が出された場合は、11月に予定されている内閣告示前に改めて協議するものとしていたが、2012年(平成24年)7月24日に当本部は廃止された。
中国大陸は伝統的に「残疾人」の呼称が使用されているが、儒教思想に基づく差別的概念を前提とする呼称と批判が生じて、障害者権利条約の批准に伴う、中華人民共和国残疾人保障法を始めとする国内法の整備に合わせ、「残疾」を「残障」とする案も提示されていたが、既に市井で「残疾人」が広く使用されているため、呼称の変更を周知するのに時間がかかる、さらには「残障」も十分に理想的な用語とは言えないとの理由で、現行のままとなっている。
台湾(中華民国)は、繁体字を用いて「障礙者」もしくは「障礙人」が用いられている。
中国語は大陸・台湾とも共通で、アクセシビリティあるいはバリアフリーのことを「無障碍(礙)」と表記する。
イギリス英語でも「人を前に置く表現」に似た用法があるが、「people with impairments」(たとえば視覚減損を対象にした「people with visual impairments」)と減損に言及が多い。イギリスの場合、「disabled people」の方が人を前に置く表現よりも一般に都合が良い。社会モデルが議論される中で、障害 (disability) はその人の個性であり、例えば車椅子で通勤経路にスロープを設けるなど、公共設備の改善を促す契機に繋がるためである。
日本でよく言われる「ハンディキャップ(handicap)」は、英語圏でもよく使われる表現であるが、本来の語源とは別に、民間語源によって「物乞いをする人が手にキャップ(帽子)を乗せている状態」を表すとされる。
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