ドット符号は、ダイアクリティカルマーク(発音区別符号)の一種で、ラテン文字の上または下などに付される点である。用途や読みは言語によってさまざまである。
日本語等でも強調のために文字の上(横書き)や右(縦書き)に点が付される場合があるが、これは傍点という。
各言語における用法
- ポーランド語
- ż が使われ、そり舌の /ʐ/ を表す。
- リトアニア語
- ė が使われ、/eː/ を表す。
- カタルーニャ語
- ŀ が使われる。カタルーニャ語の正書法では l を2つ書いた ll で口蓋化した /ʎ/ を表すため、長子音 /lː/ を表すためには ŀl と綴る。
- マルタ語
- ċ, ġ, ż が使われ、それぞれ /tʃ/, /dʒ/, /z/ を表す(z は /ts/ または /dz/ を表す)。
- トルコ語、アゼルバイジャン語
- İ が i の大文字として使われる。I は点のない ı の大文字として使われる。
- チェチェン語
- 1992年の正書法改定案でċ, ġ, ẋ, ç̇, q̇を使用するとされた。それぞれцӀ, гӀ, хь, чӀ, къに対応。なお、ç̇, q̇には単独のコードポイントが割り当てられていないため、合成で再現する必要がある。
- アイルランド語
- 現在の正書法では使用されない。弱化した子音を示すために、かつて ḃ, ċ, ḋ, ḟ, ġ, ṁ, ṗ, ṡ, ṫ が使われていた。
- ベトナム語
- ナンという声調を表す声調記号として、文字の下に付される。ạ, ậ, ặ, ẹ, ệ, ị, ọ, ô, ợ, ụ, ự, ỵ がある。
- 閩南語
- 教会ローマ字で o͘ が使用され、広い /ɔ/ を表す。Unicode ではこの字のための単独の記号を用意していないので、「o」の後ろに「U+0358 COMBINING DOT ABOVE RIGHT」を書く必要がある。
- 中国語
- 注音で軽声を表す。
- スロベニア語
- 半狭母音/e/, /o/を半広母音e/ɛ/, o/ɔ/との区別のためẹ, ọと書くこともあるが、正書法ではドット符号は表記されない。
その他の用法
サンスクリットなど、インド系言語の翻字として、ṛ, ṝ, ḷ, ḹ, ṃ, ḥ, ṅ, ṭ, ḍ, ṇ, ṣ が使われる(IASTを参照)。このうち ṛ, ṝ, ḷ, ḹ は音節主音の r, l を表すものであるが、そり舌の /ɽ/, /ɭ/ を表すためにも同じく ṛ, ḷ を使うことがある。音節主音の r, l についてはドットのかわりにリング符号を用いる方式も存在する。
アラビア語の翻字には、ḥ, ṣ, ẓ, ṭ, ḍ が使われる。
符号位置
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