『らんま1/2』(らんまにぶんのいち、ラテン文字表記: Ranma 1/2)は、高橋留美子による日本の漫画作品。
『週刊少年サンデー』(小学館)で連載されていた『うる星やつら』の次作であり、1987年36号から1996年12号まで連載、単行本化された。また2002年から2003年にかけて新装版が、2017年から2018年にかけて少年サンデースペシャル版がそれぞれ出版された(#書誌情報)。
作品の特徴は、水をかぶると女になってしまう高校生格闘家・早乙女乱馬とその許婚・天道あかねの交流を軸に家族・友人を巻き込んだドタバタ騒動の日常を描いたラブコメを基調としながら基本的には中長編で展開されつつ、格闘シーンに富んでいることである(#あらすじ)。
単行本は2007年現在、少なくとも22カ国・地域で19言語版が出版されている。ノルウェー語訳・ロシア語訳された初の日本漫画でもある(タイトルはそれぞれ"Ranma1/2”、"Ранма1/2")。1996年には、小学館で『少年サンデーグラフィック らんま1/2メモリアル・ブック』が刊行された。また2021年6月時点で単行本の累計発行部数は5500万部を突破しており、世代をまたがり根強いファンを持つ高橋留美子の代表作となっている。
1989年にはフジテレビでテレビアニメ化され(#アニメ)、その後は劇場版やオリジナルビデオアニメ(OVA)版、オリジナルストーリーでの実写テレビドラマ化(#テレビドラマ)、ゲーム化(#ゲーム作品)もされた。また本作は声優がキャラクター名義で多数の楽曲をCDでリリースし(#アニメーション企画音盤)、1990年には、第5回日本ゴールドディスク大賞アルバム賞アニメ部門を受賞した。
早乙女乱馬は、幼少の頃より無差別格闘流の修行に励む高校生。ある時、修行のため中国へ渡ったが、父・早乙女玄馬と共に悲劇的伝説が伝わる泉が多く湧く修行場「呪泉郷」で稽古中に、父の玄馬は熊猫溺泉(ションマオ・ニーチュアン、パンダが溺れた泉)に、乱馬は娘溺泉(ニャン・ニーチュアン、若い娘が溺れた泉)に落ち、それぞれ水をかぶるとパンダと女の子になり、お湯をかぶると元の姿に戻るという変身体質を背負ってしまった。
中国での修行を終え、日本(東京都練馬区)に帰国した後、乱馬は玄馬から、友人である天道早雲の娘と自分が許嫁であると聞かされる。嫌がる乱馬を無理矢理天道家へ連れて行った玄馬だが、早雲の前に現れた2人はパンダと女の子の姿だったため、娘を乱馬と結婚させて乱馬に自身が経営する天道道場を継いでもらうことを夢見ていた早雲は、乱馬を女の子だと思い込んでショックを受ける。
一方、父と同様に乱馬を女の子だと思い道場に誘った天道家の三女天道あかねは、乱馬と手合わせをし仲良くなった。その日の夜、乱馬は風呂を勧められしぶしぶ入浴する。湯に浸かると変身が解けてしまうため、男に戻って風呂から出るか女のまま出るか悩んだ末に、男の姿で風呂から出ようとした乱馬だったが、あろうことかそこで風呂に入ってきたあかねとお互い裸のまま出くわしてしまう。
事情を知った早雲は乱馬が男であったことを喜び、長女天道かすみと次女天道なびき、あかねの中から好きな娘を選ぶようにと薦めるが、かすみとなびきは「乱馬くんは半分女の子だから男嫌いであるあかねが適任だ」と勝手に決めつけ、乱馬の許婚はあかねに決まってしまう。だがあかねは風呂での一件で乱馬を変態呼ばわりして激しく拒否し、一方の乱馬も理不尽に変態と言われたことに対して怒り、2人は互いに対立する。
その後、早乙女親子はしばらく天道家に居候することになり、乱馬はあかねと同じ風林館高校に通うこととなる。こうして、恋や格闘、そして乱馬の変身体質による周囲の混乱で騒々しい日常生活が始まるのであった。
物語は主人公の乱馬を中心に、許婚のあかねや天道家の住人、乱馬のライバルたちを巻き込んでの格闘物からコメディー、学園、季節のイベントごとが中心となる。基本的には格闘ものとそうではない話が交互に展開され、物語のコンセプトでもある呪泉郷絡みの長編がそれに交わる形となる。長編では必ず乱馬たちと敵対する強敵が登場するが、強さのバランスを考慮してか、八宝斎とコロンは不在だったり戦線に立たないよう工夫がなされている。
呪泉郷(チョウチュアンシアン、じゅせんきょう)とは、中国にあるとされる作中に登場する修行場。100以上の沢山の泉があり、いくつかの泉には足場にも利用される長い竹が立ててある。一つ一つの泉に悲劇的伝説から生まれた呪いがあり、泉で溺れると、最初にその泉で溺れた者の姿となる。それ以降、水に濡れると変身し、湯をかぶると元に戻る体質となる。この作品の根幹となる設定の一つであり、主要登場人物の何人かは呪泉郷の泉で溺れ、変身体質となる呪いにかかっている。
本作について高橋は、「前作『うる星やつら』のアニメ化以降、女の子からのファンレターが増えて嬉しかったので、新連載では読者層を広げようと考えて企画を立てた」と語り、「うる星とはちょっと違うノリの学園物がやりたいとか、性の入れかわりとか、いくつか描きたいものが明確にあったので、それらを全部ぶち込んで描いたようなところもあった」とインタビューで語っている。ボーダレスなキャラを主人公にし、水とお湯で性が変わる設定を思いついたあとで、その原因としての「呪いの泉」を考え、そんなものが現代でもあるのは中国しかないだろうと構想が進み、それにあわせて中国の女の子っぽいヒロインの造形を考えたと述べている。性転換の設定については「男でも女でもある主人公なら、男の子も女の子もたくさん描けると思ったから。男女両方描けるって、とても楽しいし、絵的に飽きが来ない」とし、それまでの多くの作品は性の目覚めがテーマになっていたりするが、高橋の場合は別に性の目覚めを描きたいわけでなく、変幻自在なキャラクターの格闘を描きたかったので、(女らんまは)あっけらかんとして、服がはだけてもかまわずにバトルに勝つほうを優先するキャラにしたという。乱馬と天道あかねの関係については「(『うる星』の)追いかけっこじゃなくて、お互い対等な立場でガンガンぶつかっていく」関係を描きたかったと語っている。作品中のコミカルな拳法は一連のジャッキー・チェンの映画の影響、必殺技については車田正美へのオマージュとしている。『うる星やつら』同様に日常がループするスタイルについては、藤子・F・不二雄の作品からの影響が大きいと述べ、編集部からは、引きを多用して「ラスボス的なキャラを出せとよく言われていましたが、そういうバトル漫画を描きたかったわけじゃないから困りました(笑)」と語っている。
テレビシリーズは原作22巻の乱馬の母が登場するエピソードまで、OVAや劇場版を含めると、原作34巻までの一部の内容まで制作された。
山口勝平の初主演作品であり、本人曰く「右も左も分からない状況で、とにかく一生懸命乱馬役を没頭して演じた」「声優として形が出来ていなかったため、第1話と最終話では演じ方がまったく違う」との事。原作者の高橋は山口の演技力を高く評価しており、彼女の推薦により次作『犬夜叉』でも主人公・犬夜叉を演じる事となった。他にも本作で出演した多数の声優陣が同作に出演している。
なおアニメでは原作の最終回が制作されていない。これに関して、キッズステーションで2001年11月23日にOVAシリーズが一挙放送された際に山口勝平と日髙のり子が解説者として出演したが、その際に「完結編を作って欲しい」とコメントしている。
同じ高橋留美子原作の『うる星やつら』(1981年版)後半や『めぞん一刻』の流れを汲み、キティ・フィルムとスタジオディーンによって制作され、前2作品同様にフジテレビ系で放送された。当初は『らんま1/2』のタイトルで、1989年4月から毎週土曜日の19:30 - 20:00枠にて全国ネットであったが、同年10月より『らんま1/2 熱闘編』(らんまにぶんのいち ねっとうへん〈以下、「熱闘編」と略す〉)と改題の上、フジテレビでは金曜17:30 - 18:00枠でのローカルセールス枠に移動した。
『らんま1/2』で監督とクレジットされた芝山努は多忙のため参加できずにそのまま降板となり、シリーズディレクターの望月智充が実質的に現場の監督を任せられた。「熱闘編」として平日夕方枠へ移動すると共に制作費が削られ、作画の海外丸投げなどにより一部影の描かれていない絵になるなど質の低下が見られたが、原作人気が継続したこと、中嶋敦子のキャラクターデザインが一定の評価を得たこと、声優ブームに乗る形で企画CDがヒットしたことなどにも支えられ、熱闘編は3年間に渡って放送された。2019年の番組『発表!全るーみっくアニメ大投票 高橋留美子だっちゃ』で発表された作品部門の順位は第2位。
フジテレビでの放送終了後はケーブルテレビ、スカパー!などのキッズステーションで繰り返し再放送されている。
2013年5月、ブルーレイBOXの発売に伴いネガフィルムのHDスキャンと修復を実行、16:9のフルHDにテレシネされた高画質のデジタルリマスター版が制作。2013年6月にBS/CS放送のキッズステーションにて世界初放送が開始された。以降、テレビ神奈川などのローカル放送局でも放送された。
熱闘編は放送開始当初オープニングテーマがなく、オープニングナレーションのみだった。ナレーションは中村正が担当していた。
第1期後半エンディングテーマの『EQUALロマンス』はCoCoのデビュー曲だが、わずか5話しか使用されていない。2003年放送の『デ・ジ・キャラットにょ』では本曲のアレンジ曲を前期エンディングテーマとして計20話で使用した。元々アニメソングとしての制作ではなかった曲がアニメソングとして使用された後、後年にカバーされ、さらに別のアニメに恒常的に使用され、なおかつ、アニメソングとしては、『デ・ジ・キャラットにょ』の方で長く使われるという珍しい例となった。
第1期後半のシリーズ構成を務めた井上敏樹は、本作品はやりたくなかったが、プロデューサーが自宅まで押しかけてきたので嫌々引き受けたと述べている。井上は本作品参加のため、『天空戦記シュラト』を降板している。
カートゥーンネットワークで1999年に放送された際、アイキャッチと次回予告が省略されていた。
※ここでの話数は実際に放送された順とする。BDやHDリマスター版再放送では『熱闘編』の冠が外され、前シリーズから話数を引き継いでいる。
熱闘編は、時折作画監督に実在のアニメーターではなく作中の登場人物がクレジットされていることがあった(例:第53話、第59話)。
第1期第13話放映時の次回予告では第14話は「さらわれたPちゃん 奪われたらんま」になっているが、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件に配慮し、第14話 - 第16話(格闘フィギュアスケート編)の放送が他の話に差し替えられ、のちに熱闘編第7話 - 第9話として放送された。そのためその後の話でカットされたシーンの回想をするなど話のつながらない部分がある。これらの順番はLD・DVDでは放送順で収録されていたが、2013年に発売されたBD版では当初の予定通り収録されている。
判明している局のみ表記。
※第1期と「熱闘編」の区別は特にない。
※脚本はいずれも山口亮太が担当。
OVA版主題歌ではその大半を、らんまと天道3姉妹にシャンプーを加えた仮想ユニット「DoCo」が担当している。DoCoは企画音盤(CDの項を参照)で生まれたユニット設定であり、ユニット名はテレビ版主題歌を担当したCoCoをもじって付けられた。
乱馬的企画音盤として5枚のキャラクターソングアルバムを制作しており、声優ブームもあって本作人気の一翼を担った。1枚目の『熱闘歌合戦』ではブックレットに曲それぞれのシングルジャケットがデザインされて、 カップリング曲まで記載される(カップリング曲は、後に4枚目の『格闘歌かるた』に収録)という凝った作りになっており、2枚目の『歌暦』も収録している全12曲(うち2曲は上記『熱闘歌合戦』収録曲のカップリング曲)を後にシングルにカットして同時発売した。3枚目の『DoCoファースト』と5枚目の『DoCo Second』は上記の「DoCo」のアルバムと位置づけて制作されている。なお、本作のキャラクターソングの歌手名表記は、一般的なキャラクター (の役でその歌をうたう声優) ではなく、キャラクター名のみが表記されている(声優はブックレットに記載)。
いずれも1991年1月21日発売
らんま1/2関係曲を、声優等がカバーしたモノの一覧。企画音盤のアルバムに収録されているものが多い。
『らんま1/2』(らんまにぶんのいち)は、2011年12月9日に日本テレビ系列の『金曜スーパープライム』枠(19時00分 - 20時54分)で放送されたスペシャルドラマ。主演は新垣結衣。視聴率は7.9%。
マダム・カマンベール率いる謎の組織と乱馬による和風男溺泉の鍵を巡る争奪戦を描く単行本8巻のパラレルワールド作品である。
小林よしのり作の『おぼっちゃまくん』の主人公、御坊茶魔と『週刊少年サンデー』誌上でコラボレーションも果たしている。同誌1990年42号の表紙は、らんま(女)が茶魔を抱っこしているという図柄で、『おぼっちゃまくん』の特別読みきりが掲載された。しかし小林は、本作のファンから嫉妬が大半の不興を買っているとして、『おこっちゃまくん』(宝島連載版)で、本作のファンを激しく批判したことがある。因みに、『おぼっちゃまくん』のアニメ版は、一時期本作のアニメ版の裏番組であった。
サウンドトラックの一部が日本テレビ放送網のクイズ番組『マジカル頭脳パワー!!』で使用されていた。
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