本作はオリコンアルバムチャートにおいて最高位第1位を獲得した。本作からは先行シングルとしてフジテレビ系木曜劇場『恋のパラダイス』(1990年)の主題歌として使用された「JEALOUSYを眠らせて」の他、ノンタイアップとなった「CRIME OF LOVE」を収録している。
背景
前作『NEO FASCIO』(1989年)リリース後、氷室は「NEO FASCIO TOUR」と題したコンサートツアーを同年10月6日の群馬音楽センター公演からツアーファイナルとなった1990年1月17日、18日の日本武道館公演まで23都市全36公演を実施した。ツアー中の1989年12月24日にはBOØWYのライブ・アルバム『“GIGS” JUST A HERO TOUR 1986』(1986年)が再リリースされ、オリコンアルバムチャートにおいて初登場第1位を獲得、売り上げ枚数は120万枚となった。その後「NEO FASCIO ENCORE TOUR ARENA '90」と題した追加公演を2月26日の福岡国際センター公演を皮切りに7都市全7公演を実施し、最終日の4月3日にはソロとして2度目となる東京ドーム公演を実現、5万6000人を動員した。
同年4月12日から放送開始されたフジテレビ系木曜劇場『恋のパラダイス』において氷室の楽曲「JEALOUSYを眠らせて」が主題歌として使用され、5月16日にシングルとしてリリースされた。同曲は氷室として初のテレビドラマ主題歌となった。また5月からはエフエム東京ラジオ番組『プレミア3』(1990年 - 1992年)における氷室のレギュラー出演が開始され、1991年3月まで継続することとなった。その後は前年のツアーにて結成されたバックバンドであるSP≒EEDが帯同する形で、7月7日に日比谷野外音楽堂にて開催された「GOLDEN AGE OF R&R」、8月12日に真駒内陸上競技場にて開催された「JT SUPER SOUND '89」、8月12日に仙台SUGOにて開催された「R&R OLYMPIC '90」、10月7日の自身の30歳の誕生日にはグリーンドーム前橋のこけら落し公演として開催された「GREAT DOUBLE BOOKING」の2日目に出演するなど多数のイベントライブに参加した他、10月27日に国立代々木競技場 第一体育館にて開催されたARBのラストライブにゲスト参加として氷室が単独で出演した。12月24日には前出のグリーンドーム前橋でのライブの模様やミュージック・ビデオ集が収録されたビデオ『Birth of Lovers』が限定10万本でリリースされ、初登場第2位を記録した。1991年2月27日には6枚目のシングル「CRIME OF LOVE」がリリースされた。
ディレクターの子安次郎は本来であればヒット曲となった「JEALOUSYを眠らせて」およびそのカップリング曲であった「LOVER’S DAY」を軸にアルバム制作を検討していたが、すぐにアルバム制作に取り掛からなかったため間が空き、後に氷室はバンドサウンドを軸にしたアルバム制作を希望、またエグゼクティブ・プロデューサーの石坂敬一が日本のヒット曲は「イントロは短くマイナー調」であるとの持論から「CRIME OF LOVE」がマイナー調であった事を絶賛、アルバムの方向性が決定する事となった。
アルバムタイトルの「Higher Self」とは、「大いなる自己、自分の精神性の高み」という意味である。収録曲の「CRIME OF LOVE」について2013年に氷室は、「自分が持っているマイナーなコードを持ったメロディの憂いの雰囲気、俺独自の持ち味と、永井利光のドラミングが大好きで、今聴いても全然古く感じない」と述べており、ミューズのアルバム『アブソルーション』(2003年)に収録された「タイム・イズ・ランニング・アウト」に引けを取らないドラミングであると述べるなど氷室本人は非常に気に入っている曲ではあるが、ライブでの演奏時に聴衆のリアクションがあまりなく、またインターネット上の意見としても同曲を好まないという意見が多いとも述べている。また歌詞はBOØWY時代の作詞において多用していた「メタファーを使ってちょっとシュールな感じ」へと回帰して作詞を行ったとも述べている。アルバム全体の歌詞について氷室は作詞家の松井五郎との間で、「『NEO FASCIO』みたいなちょっと高みにいる氷室京介じゃなく、もっと等身大、同視線上にいるオレを表現していこうか」等と話し合いを行っており、本作では全体的にラブ・ソングが多い構成になっていると述べている。氷室は松井の作詞に対して「STORMY NIGHT」では哲学的な面が導入されていることや、「MOON」では人間が最終的に向かうべき優しさの表現などがあるために、単なるラブ・ソングではなく大きなメッセージ性を内包していることから好んでいると述べている。
ディレクターの子安は、本作の音楽性に関しては突然変異的なものではなくライブアーティストとして必然性のあるものであったと述べ、「CRIME OF LOVE」に関してはミステリアスな雰囲気も含めてBOØWY時代とは異なるバンドサウンドであると指摘している。また収録曲の「MOON」は「月から見た地球」をテーマにした曲であり、「肌の色や宗教の違い、性別や貧富でいがみ合っているのは月からでは見えない。とても美しい星に見えるだろう」と氷室が語った事を引き合いに出し、「素晴らしい切り口」であると評価した。
氷室によれば本曲は「SP≒EEDのメンバーでスタジオに入って彼らなりの氷室京介の解釈っていうか、オレが欲しがるであろうビート感を追求した一曲」であるという。氷室は「WILD AT NIGHT」も同様の楽曲であると述べた上で、前年のツアーに帯同したことにより氷室の歌に合うバンド演奏を自分たちで形成したメンバーによる「一つの答え」であると述べている。
「CRIME OF LOVE」のカップリング曲。デモテープ制作時に先の展開が読めずに没になりかけたが、試しにレコーディングを行ったところ友森昭一の弾いたギターの音色を氷室が気に入ったために採用となった。氷室は友森のギターに対して「普通、こういうフレーズのアレンジにはこういうギターは弾かないっていうところを、物怖じせずに弾く姿勢がイイよね」と述べている。
本作は1991年4月6日に東芝EMIのイーストワールドレーベルよりCD、CTの2形態でリリースされた。また氷室のアルバムは本作以降レコードでのリリースはされていない。CDの初回限定版には24ページの写真集が同梱されていた。本作からは先行シングルとして1990年5月16日にフジテレビ系木曜劇場『恋のパラダイス』の主題歌として使用された「JEALOUSYを眠らせて」の他に、1991年2月27日にリリースされた「CRIME OF LOVE」がリリースされている。本作はオリコンアルバムチャートにおいて最高位第1位を獲得、登場回数は16回で売り上げ枚数は64.6万枚となった。
本作を受けてのコンサートツアーは「OVER SOUL MATRIX TOUR 1991」と題し、1991年5月9日の群馬音楽センター公演を皮切りに、39都市全45公演を実施、約15万人を動員した。ツアーファイナルには有明コロシアムでの4日間連続公演を行った。バックバンドのメンバーは、永井利光(ドラムス)、西山史晃(ベース)、香川誠(ギター)、西平彰(キーボード)の4名。