浜松市(はままつし)は、静岡県の西部、遠州地方にある県内で最多の人口を有する都市。政令指定都市と国際会議観光都市に指定されている。国土縮図型都市と称されることがある。
県庁所在地である静岡市を上回る人口を持ち、川崎市(神奈川県)、北九州市(福岡県)、堺市(大阪府)に次ぐ県庁所在地以外の市で4番目の人口を有する。静岡市とともに北九州・福岡大都市圏に次ぐ、全国5位の規模を有する静岡・浜松大都市圏の中心都市として機能している。面積は静岡県内最大である。
平成の大合併以前の旧浜松市の人口は約61万人、人口密度2368人/㎢であり、旧浜北市との小規模合併のみで政令市移行の基準を満たしていたが、財政が逼迫した北遠自治体等との大規模救済合併により、静岡県では静岡市に次いで2番目の政令指定都市に移行した。ピーク時には81万人であったが、現在は80万人を割り込み79万人と減少傾向が続いている。全国の市町村で2番目の面積で3つの行政区を持ち、面積の約6割を天竜区が、人口の97%以上を天竜区を除いた2区が占めている。湖西市にまたがって存在する浜名湖は、湖としては日本で10番目の大きさを持つ。
遠州地域(静岡県西部)における経済・文化・観光の中心となっており、浜松市を中心とする浜松都市圏は、都道府県庁所在地以外の都市圏で2番目の人口を有する。また愛知県の東三河、長野県の南信州地域との結びつきも強く、これらの地域を総称し三遠南信と呼ばれる。
ホンダの発祥地であり、スズキが本社を構えるなど全国でも有数の自動車工業都市であり、東海工業地域の中心的地域である。また、ヤマハやカワイ、ローランドや鈴木楽器製作所といった多数の楽器メーカーが立地する「楽器の街」として知られ、「楽都」とも称される。また、音楽文化活動も盛んでユネスコの創造都市ネットワークに音楽分野で加盟している。工業が盛んであることから、日系ブラジル人など在留ブラジル人総数が全市町村の中で最も多く、在浜松ブラジル総領事館が置かれ、2001年には第一回外国人集住都市会議が開催されるなど、多文化共生が進んでいる。また、同市はSDGs未来都市に選定されており、パートナーシップ宣誓制度導入や積極的実証実験サポート事業など多様性ある持続可能な社会の実現に向けた取り組みが行われている。
戦国時代には浜松城の城下町、江戸時代には東海道の宿場町(浜松宿)として栄えた。毎年開催される浜松まつりでは、3日間で約200万人の参加者が訪れる。中心部の浜松駅前にはアクトタワー(アクトシティ浜松)など超高層ビルが林立し、三大都市圏以外では唯一の200m級スカイラインを構成する一方、イオンモールなど多数の郊外型大規模商業施設の集積や都田テクノポリスなど高度技術集積都市の開発など郊外化が進んでいる。2020年に、政府から新興企業を生み出すための「グローバル拠点都市」に選定された。
現在の東海旅客鉄道浜松工場一帯に広がる、7世紀後半~9世紀前半の古代敷知郡衙跡である伊場遺跡群から出土した木簡に「濱津郷(浜津郷)」と書かれたものがあり、古代には「はまつ」と呼ばれており、港や渡し場を意味する「津」が由来であったと考えられている。何故「はまつ」が「はままつ」となったかは不明であるが、承平年間(931年~938年)に編纂された『倭名類聚抄』では「浜津」、弘安6年(1283年)頃成立の『十六夜日記』では「浜松」となっており、平安時代後半から鎌倉時代までの間に変移したと考えられている。
12世紀頃には北海道を除く全国各地で荘園が整備され、旧敷知郡濱松町域に濱松荘が配置された。
なお、徳川家康が一時期本拠にした浜松城は、それ以前は曳馬城と呼ばれていた。「曳馬」は「引間」という地名から転じたと推測され、近世以前は「引馬」と表記される文献も存在している。濱松荘と引間とは、地域が天竜川によって独立していた、もともと別の土地であった。引間の地において瀬名姫の先祖である今川貞相によって引間城が築城され、城の近郊に濱松という町があった。家康が曳馬城を元に増築した城を名付ける際、近郊の町の呼び名に因んで濱松城と改めたことで、城下町も濱松と呼称されるようになった。以後城名・町名ともに濱松(現在の浜松)として定着した。
太平洋ベルト沿いで東京と大阪の中間付近に位置し、南部の平野と北部の山間で構成されている。 南部の平野は、沖積平野、海岸平野、台地(三方原台地)で構成され、県内自治体で最大の平地面積を持つ。 面積は岐阜県高山市に次いで全国で2番目に広い。 豊かな自然に囲まれており、北部は赤石山系、東部は全国でも有数の流域を持つ天竜川、南部は広大な砂丘(中田島砂丘)からなる遠州灘、そして西部は浜名湖と四方を異なる環境に囲まれている。 市内各所に舘山寺や奥浜名湖、弁天島、白倉峡などの景勝地がある。旧水窪町は豪雪地帯でもある。
浜松市に鉱山があったという話は余り知られていない。現在の天竜区に久根鉱山(銅)及び峰之沢鉱山、北区に黒姫鉱山(マンガン)があった。
都田地区、旧引佐町、旧浜北市根堅地区では石灰岩の採掘が行なわれており、一部は現在も操業中である。
政令指定都市でかつて鉱山を有していたのは手稲鉱山と豊羽鉱山があった札幌市、秋保鉱山があった仙台市、梅が島鉱山のあった静岡市、峰之沢鉱山や久根鉱山などがあった浜松市の4市のみである。
主に市域の南側に広がっている。 南海トラフ巨大地震が発生した際には、西区で最大4m、南区で最大14mの津波が到達することが予想されている。南区の値は静岡県下の市町村で2番目に高い値である。
平野部の年降水量は1843.2mmで全国的に見ると少し多めだが、静岡県の中では少ない方である。山間部に行くにつれて年降水量は多くなる傾向がある。
夏は山間地は暑さが厳しく、フェーン現象により、全国一の高温を記録することもある。また平野部でも時折35℃以上の猛暑日が発生しており、2020年(令和2年)8月16日に浜松市中央区で初めて40℃を記録、翌8月17日午後0時10分には、浜松市中央区で日本歴代最高に並ぶ41.1℃を記録した。
平野部は冬でも温暖で、2月でも晴れた日には上着なしで外出できる日もある。ただしこれは浜松市に限らず全国的に気温が上がっている日であって、基本的には「遠州のからっ風」と呼ばれる強い季節風が吹くため、気温以上に寒く感じられる日が多い。 平野部での冬の降雪は稀であるが、強い寒気が流れ込むと浜松市でも雪が降ることがあり、山間部では積もることがある。 山間部の天竜区水窪町が豪雪地帯に指定されている一方で、沿岸部の浜松市中心部(中央区)は降雪量累計の平年値が0cmであるなど地域差が大きい。
浜松市は2005年7月1日に12市町村を編入合併し、2007年4月1日に非都道府県庁所在地では4番目、静岡県内では静岡市に次いで2番目の政令指定都市となった。移行当初は7つの行政区が置かれ、それぞれの区域および区役所の位置は、合併協議の際に決められた。
2021年11月、行政区再編を議論する特別委員会が開かれ、行政組織の見直しのため、2024年前半を目途に7つの行政区を3つに再編・削減する方針が示された。2022年11月1日に浜松市行政区画等審議会が新区名について答申したのち、2023年2月22日の浜松市議会本会議において、浜松市区及び区協議会の設置等に関する条例の一部を改正する条例が議決・公布され、2024年1月1日から正式に行政区が3区に再編され、静岡市や相模原市とともに、政令指定都市では最少の行政区数となった。なお、気象情報に関しては同年1月10日まで旧区での発表となっていた。
各区の記事を参照。
浜松市役所では、部制を採用している。
市長 - 副市長(3)
市長 - 会計管理者
浜松市議会 (定数46、2023年4月選挙、任期:2023年5月1日 - 2027年4月30日、2023年5月現在)
管轄区域の詳細は各リンク先参照
浜松市には浜松医科大学や浜松医療センターをはじめとして、聖隷三方原病院、聖隷浜松病院、遠州病院などの医療機関が集中している。浜松ホトニクスはPET機器の開発を行っており、研究開発と臨床実践を兼ねた財団法人浜松光医学財団が健診センターを設けている。
この他にも2014年にはユネスコの創造都市に認定された(国内では神戸市、名古屋市、金沢市、札幌市に続く5番目に鶴岡市と共に認定。音楽部門ではアジア初)。
首都東京以外の地方都市でブラジルの総領事館があるのは、同市と愛知県名古屋市のみである。
浜松は名古屋と並んで、東海地方に多い在日ブラジル人コミュニティの中心都市の一つとなっている為、ブラジルの文化が多く見られる都市でもある。
浜松市に合併された地区を中心に農業が盛んであり、農業産出額は全国4位となっている(2006年)。野菜や花き、果実の他に、浜名区の区域の内、旧浜北市の区域では植木生産が行われ、天竜区などの北部森林地域は、東海地方屈指の林業地帯となっている。
浜松市において産出されている品目のうち、産出額が上位15位以内のものを掲載する。
浜松市は工業都市であり、本地を発祥とするホンダは今なおトランスミッションや船外機の工場を置く。他にもスズキや楽器メーカーのヤマハといった国内屈指の大企業も本社を構え、製造品出荷額は2兆円を超える。浜松の工業の大半は小規模工場で、その多くは繊維、楽器、自動車・オートバイに関連する大企業の下請け工場である。近年、ホンダやスズキなどの工場再編計画で下請け企業にとって厳しい状況である。
市街地の周りには古くからある繊維工場や楽器、機械工場があり、郊外には輸送用機器工場などの大規模工場が各工業団地とともに分布している。北区の都田テクノポリスや細江テクノタウンには、先端技術産業の工場や研究施設が設置されている。
浜松駅のある中心市街地に多くの商店街が形成されているが、空き店舗の増加など商店街の機能低下の課題を抱えている地区が多くなっている。
2013年時点で店舗面積が3,000平米を超す大規模店舗が54店舗存在する。まちづくり三法の制定以降、大規模店舗の出店が急増した。
市域全体で見た場合の小売店舗の売り上げや店舗面積は増加傾向にある。
商店街
大型店
東部エリア
西部エリア
北部エリア
南部
浜松市に本店を置く(第一)地方銀行・第二地方銀行は存在しないが、上記の2つの信用金庫が市内全域に 店舗網を有している。
浜松市内の代表店舗を掲載する。
浜松市内に静岡FMの本社があるほか、NHKおよび民間放送のテレビ局は、NHK静岡放送局や静岡市に本社があるテレビ局の支社があり、放送を中継する浜松中継局がある。新聞は、中日新聞の遠州地方を管轄する東海本社や、静岡新聞の浜松総局、各新聞社の支局や通信部が置かれている。
固定電話の単位料金区域は浜松MAである。市外局番は、053(400〜599・920〜959・964〜973・975〜976・978〜989)である。なお、隣接する湖西市も浜松MAである。2007年3月31日までは天竜区の区域が天竜MAで、0539(20〜61・63〜99)、その他の地域が浜松MAで053(400〜599)と、同一市内でも複数の市外局番があり、相互の通話は市外通話扱いだった。
市内局番900番台で欠けている局番は、磐田市豊岡地区(天竜MA[現在でも名称は変更なし]、0539-60〜62・74・77・90〜99および63-0GHJ・5GHJ〜9GHJ)で使用中であることが理由である。(豊岡地区は同じ0539でも浜松市ではないため、市外局番統合の対象からは除外された。)同地区は市外局番統合までは、天竜区となる地域と市内通話エリアであった。浜松市内の0539-63-1GHJ〜4GHJを使用している区域は市内局番も含めて053-973-1GHJ〜4GHJに変更された。この変更の影響で、天竜区(浜松MA)と磐田市豊岡地区(天竜MA、現在でも名称は変更なし)は同一MAではなくなったため、相互の通話は市外局番からのダイヤルとなり、通話料も市内通話料金ではなくなった。
1992年までの浜松市内の市外局番は、旧浜松市の大半は0534で、浜名区の旧引佐町・三ヶ日町・細江町は0535(20〜49)、旧浜北市は05358、中央区の旧雄踏町・舞阪町は05359、天竜区の旧天竜市は05392、旧春野町05398(5・6・9)、旧龍山村・佐久間町・水窪町は0539(64〜69・82・87)だった。
保育所
職業訓練
自動車教習所
静岡労働局長登録教習機関
その他
不祥事
祭事の文化面については遠江を参照のこと。
下記の一部は、浜松市のみならず遠州地区全域にいえる。
高校野球では、浜松商業高校、浜松工業高校、浜松西高校、興誠高校(当時)、浜松北高校、浜名高校、浜松開誠館高校などが甲子園に出場しており、浜松商業高校は1978年春の選抜高等学校野球大会で全国優勝した。近年においては、2002年夏の甲子園に興誠高校、2003年春の甲子園に浜名高校(当時浜北市)、2023年夏の甲子園に浜松開誠館高校が、それぞれ出場を果たしている。
プロ野球では、中日ドラゴンズが年に数回公式戦とオープン戦を浜松球場で行っている。
社会人野球では以下のチームが浜松市を本拠地に置き活動している。
中央区に航空自衛隊浜松基地がある。その歴史は古く、大正時代に浜松に設置された陸軍飛行連隊がその前身である。昭和に入ると陸軍飛行学校が設置され、浜松は陸軍の重爆撃機の基地となった。太平洋戦争の戦況が悪化すると、浜松は航空基地や、軍需工場の存在とともに、米軍機の日本侵入路に当たっていたため、ほぼ同様の地理条件にあった静岡市と並び、米軍の爆撃目標値に対する実際の爆撃率において全国の都市の中では数少ない100%を超える空襲や艦砲射撃を受け、多くの市民が命を落とし、市街地は焦土と化した。
終戦後一時、浜松基地はアメリカ空軍の不時着飛行場となり、1952年に組織された保安隊の航空学校が設置され、日本初の航空基地となった。保安隊はその後、航空自衛隊に改称され、1958年に浜松基地は南基地・北基地に分離したが、1989年に統合して、現在に至っている。所属部隊はパイロットや航空機等の整備員を養成する教育部隊が中心で、航空教育集団司令部がある。1999年には広報館「エアーパーク」も開館し、多くの人が訪れている。また、毎年行われる航空祭(エア・フェスタ)には、全国から多くの航空ファンが訪れている。
中心駅:浜松駅
※ LRT(ライトレール)を導入する構想がある。市民団体などによって研究部会が発足し、浜松駅周辺へ郊外に延びる路線策定等が行われている。現状では市民が中心となった構想の段階で、行政側としてはまだ目立った動きは無いが、リチウムイオンバッテリー等の代替燃料を使用した「世界初の二階建て無架線LRT」を導入の主眼として構想されている。
遠鉄バスを中心に運行されている。2007年に浜松バスが浜北区内で路線バス事業を開始した(現在は廃止)。合併前の浜松市では交通部による公営交通「市営バス」を運行していたが、1986年に廃止し遠州鉄道に全路線を移譲している。現在の浜松市自主運行バスは浜松市が運行主体ではあるが公営交通ではなく、廃止代替バスやコミュニティバスなどの自治体バスである。また、天竜区春野町のみ秋葉バスサービスが乗り入れている。
浜松市出身の人物一覧を参照。
2005年(平成17年)7月1日の合併前における浜松市のデータを記載。
1911年(明治44年)7月1日に制定された市章(記章)は、2005年6月30日をもって廃止された。
合併当初、(浜名区)三ヶ日町は、三ケ日町であった。三ヶ日町と東浜名村の合併時に国が三ケ日町と告示したためである。政令指定都市になる前の2007年3月に三ヶ日町に変更された。三ケ日町も参照。
浜松市には鈴木姓が多い。2013年の調査では、鈴木姓の割合は人口の7%であり、その比率は日本一と言われている。特に多い地域は、中央区篠原町で、その割合は人口の約3割に及ぶ。篠原町の中でも権現地区は人口の8割に達する。
浜松市は政令指定都市に移行した自治体の地域型JPドメイン名は city.hamamatsu.jp が割り当られるが、政令指定都市移行の前に hamamatsu.jp が汎用JPドメイン名として浜松市以外の一般事業者に取得されており、浜松市が使用できない状態にある。このようなケースは堺市と相模原市でも発生しており、堺市では.osakaに代えて『地域』を表す.lgを挿入している。浜松市では政令指定都市移行前と同じ city.hamamatsu.shizuoka.jp ドメインを引き続き使用している。
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