コストコ・ホールセール(英語: Costco Wholesale Corporation、アメリカ英語: COSTCO の読み方は [kɔstko]、イギリス英語: [kɔ:stkəʊ])は、アメリカ合衆国ワシントン州イサクアに本社を置くホールセールクラブ(会員制倉庫型卸売・小売)チェーンである。
Costco には、アメリカ英語の発音に近い「コスコ」の片仮名転写があるが、本項では、日本法人である『コストコホールセールジャパン株式会社』の定めた日本語の『コストコ』に表記を統一する。
コストコのストアコンセプトは、入荷したままのパレットに乗っている商品を、大型の倉庫に並べて販売することにより、商品管理や陳列にかかるコスト(費用)や手間を、徹底的に抑える倉庫店スタイルである。
入荷した商品は、閉店後の深夜にフォークリフトで店内に運び、パレットに載せたままの状態で販売することが特徴である。また、どの店舗にもフードコートが併設されており、買い物後に持ち帰りも可能な安価な軽食が提供されている。
1983年9月15日に創業者のジェームス・シネガルとジェフリー・ブラットマンが倉庫型小売店を、ワシントン州シアトルに開店。そもそもシネガルはフェドマートとプライス・クラブにてその創業者ソル・プライスに仕えていた。ブラットマンは小売業の家系に生まれた弁護士だったため、若い頃から小売業に携わっていた。
1993年、同スタイルでほぼ同規模であった競合企業プライス・クラブと合併し、社名を「プライスコストコ(PriceCostco)」に変更。両社の幹部で経営を行ったが、1994年にソル・プライスとその息子ロバート・プライスが経営から離脱した。ちなみに両社の合併前、ウォルマート創業者のサム・ウォルトンは、自社の会員制ウェアハウスチェーンであるサムズ・クラブとコストコの合併を狙っていた。
1997年、社名を「コストコカンパニー」に変更。
1999年8月30日、社名を「コストコ・ホールセール(Costco Wholesale)」(ホールセール=卸売)に変更した。
2013年、日本の中部空港倉庫店(愛知県常滑市)オープン前の事前入会者が、世界最高の5万人以上を記録した。
コストコは2020年12月に、ケージドエッグを世界的に禁止すると発表した。これは、サプライチェーンへの動物の閉じ込めに関するグローバルポリシーを発行した、最初のアメリカ小売業者になった。コストコのフィナンシャルプランニングおよび投資家向け広報担当ディレクター、ジョシュ・ダーメンは「ケージのない鶏卵への移行を進めており、最終的に100%に到達することを目標に、今後も割合を増やしていく」と述べた。
2023年8月24日現在、世界で860の倉庫店を展開している。
世界で一番広い倉庫店は、アメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティの倉庫が最大。ハワイのオアフ島にあるイウィレイは、世界で最も忙しい(2022年現在)。
2019年8月27日に、中国上海市にコストコがオープンした。中国初のコストコオープンとなった。
コストコは倉庫店スタイルで展開している関係上、かつてはパレットに載せるだけの箱詰めの商品であった。現在では取り扱い製品とサービスの枠を広げ、肉、野菜、乳製品、海産物、花といった生鮮品や服、本、ソフトウェア、掃除機、家電、ソーラーパネル、腕時計、宝石、タイヤ、美術品、ワイン、ホットタブ(浴槽)、家具などを販売している。
ほとんどの倉庫店には、薬売り場(調剤薬局)、補聴器センター、メガネコーナー(メガネ・コンタクトレンズ)、フォトセンター、タイヤセンター、ガスステーションがある。
コストコの検眼所はアメリカで4位を誇る。会員がコンタクトレンズの購入時には眼科で処方箋を入手する必要がある。
アルコール飲料を取り扱う倉庫店の一部は、展開するそれぞれの国家や地域における法律や条例による販売規制の都合上、別の建物で販売しているところもある。ワシントン州やテキサス州などアメリカの一部の州では、酒類を販売する際は、小売事業者と酒類販売者を別にして販売しないといけない。2006年、コストコは酒類販売に関する州法をめぐり、ワシントン州の規制当局を相手取って訴訟を起こしたが、コストコが敗訴している。
英語: Kirkland Signature(カークランド・シグネチャー)は、小売業では『自社ブランド』『ハウスブランド』や『プライベートレーベル』で知られているコストコのPB(プライベートブランド)である。よくコストコのウェブサイトや倉庫店で見受けられる。名前はコストコの創業地で、1987年から1996年まで本社があったワシントン州カークランド市からとっている。
コストコは1995年、カークランド・シグネチャーを企業ブランドとすることを発表した。目的は商品の個別化と安値にしながらも高品質を目指すため。
コストコ倉庫店内では、「ロードショー」と呼ばれる実演販売やサンプル配布、試食販売のイベントが行われている。
ロードショーを行っている従業員はコストコの従業員ではなく、デイモン・ワールドワイド傘下のクラブ・デモンストレーション・サービシズ(CDS)という企業より派遣されている。
店舗内外の両方、もしくはどちらか片方の場所に自動販売機が設置されており、カークランドシグネチャーのミネラルウォーターやお茶などが販売されている。店舗外に設置されているものは非会員、つまり一般の者でも使うことができる。
国や地域、店舗によって多少の違いはあるが、おおむね下記の内容となっている。
コストコ倉庫店の出口付近には、ピザやホットドッグなどの軽食を販売する、会員限定のフードコートがある。さまざまな商品があるが、中でもドリンクバーが利用可能なクォーターパウンド(1/4ポンド=約113グラム)のホットドッグが人気である。ホットドッグの価格は米国では1980年代半ば以降1ドル50セントで据え置かれ、これは創業者のジェームス・シネガルが経営陣に価格維持を厳命しているためとも言われる。
広島倉庫店では、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島整備事業(広島ボールパークタウン整備事業)の一環として、例外的に屋外にフードコートを設置。球場観客の利用を想定し、会員以外でも同一料金で利用できる。会員以外が利用できるコストコのフードコートは日本初となった。
幕張倉庫店のフードコートは、屋内から屋外に場所が変更され、座席エリアが拡張され、倉庫店左右に設置されている。こちらも会員以外の一般者の利用が可能である。
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策に伴い、2020年5月から当面の間、幕張・広島両倉庫店共に、会員のみの利用に限られている。
日本法人のコストコホールセールジャパン株式会社(法人番号:3020001079681)は千葉県木更津市瓜倉に本社を置く。1999年、福岡県糟屋郡久山町に第1号店となる久山店を開店。2023年8月時点で33店舗を有しており、アジア地域の中では最も店舗数が多い。
2020年11月現在のコストコホールセールジャパンの社長は、ケン・テリオである。
2020年12月に千葉県庁が販売していた木更津倉庫店(千葉県木更津市瓜倉)の隣接地を落札。隣接地にオフィスを建設した上で、2022年8月に神奈川県川崎市川崎区池上新町の川崎倉庫店から本社機能を移転した。
コストコに併設されているガソリンスタンド(コストコでの名称は「ガスステーション」)は、当然ながら石油元売り系列ではなく「無印スタンド」である。仕入れ先については公表していない。価格については周辺のガソリンスタンドの価格を考慮した上で設定している。利用にはコストコ会員証が必要だが、支払い方法がマスターカードかコストコプリペイドカードに限られるため、コストコ会員であっても現金での支払いに対応していない。
食品に限っても、Driscoll'sのイチゴやカンタロープメロンやシーアスパラガスなど、世界で有名であるが日本では見掛けないブランドや食材を数多く取り揃えている。
アメリカと同様、日本でも自動車での来店を前提としているため、多くの店舗は郊外でのロードサイド型店舗となっている。新店舗オープン直後や休日にはコストコ来店の車で渋滞となるケースも少なくなく、一例として、栃木県壬生町の壬生倉庫店のオープン直後は周辺道路が渋滞し、所轄の警察署に苦情が寄せられたり、路線バスの運行に影響が出る事態になった。このため、新規出店の際の選挙の争点に発展したり、店舗誘致を断念した事例もある。
優秀な人材を確保する観点から、従業員の賃金体系や福利厚生はグローバルスタンダード(国際基準)を採用しており、日本国内の店舗共通で設定している。このため、時給は1,200円からとなっており、地域によっては最低賃金を大幅に上回っている場合もある。1000時間(約半年)ごとに昇給となり、最高で1,850円から2,000円の間となっている。
会社登記された名称に基づき、Costco の片仮名転写は「コストコ」である。また一般的に日本語では、アクセント核を持たない平板型アクセントで「コ↗ストコ」と発音されている。これに対して、アメリカ英語での発音では「t」は無声音で、初めの部分に強勢を置いた「カースコウ」または「コースコウ」に近い。
○=該当、×=非該当
2023年8月現在の時点で33店舗となっているが、2030年までに全国60店舗以上、最終的には100店舗にまで拡大することを目標としている。なお、出店の目安について、半径10km以内の人口が50万人以上、郊外店舗の場合は近隣に競合する大型商業施設が存在しない地域としていることから、空白地帯である新潟市や岡山市、鹿児島市、松山市などが新規出店の有力候補地とみられている。
2023年10月、コストコ誘致を掲げて再選した埼玉県幸手市の木村純夫市長は、2023年9月に発行した市政レポート「コストコ特集号」にて、コストコ本社と協議をした内容を公表しており、それによるとコストコ側は「埼玉県については人口規模からの購買力や雇用確保が容易であると考えており、是非出店したい地域であるが出店可能な土地の確保が困難な状況にある」「幸手市周辺のエリアは現状の出店状況から見ると空白のエリアであり将来の道路整備や交通状況(圏央道や新4号国道の接続道路である埼玉県道383号惣新田幸手線バイパスが整備中で、将来は東埼玉道路が国道16号から市内を通り隣町の茨城県五霞町まで延伸予定)を考えると魅力のある地域である」と回答している。
2022年6月、コストコホールセールジャパンが山梨県南アルプス市の南アルプスインターチェンジ(中部横断自動車道)近くの南アルプス完熟農園跡地に出店を計画していることが山梨日日新聞から報じられた。その後、2025年4月を目処に同地に出店することを2022年7月4日に同社が正式発表した。山梨県では初の出店となるほか、同県内や静岡県・長野県中部(中信地域・諏訪地方・(中部横断自動車道北部区間全線開通したら)小諸佐久エリア)からの集客も見込んでいる。
2021年7月の時点で既に4店舗出店しているが、2025年までに三重県に進出した上で、更に愛知県内でも中部空港倉庫店と守山倉庫店に加えて、2店舗から3店舗程度出店する意向であることを2021年6月にコストコ日本支社長のケン・テリオが明らかにしていた。その後、三重県亀山市の亀山インターチェンジ(東名阪自動車道)近くに出店する方向で地権者と交渉していることが2022年2月に報じられた。その後、コストコホールセールジャパンは同市に「コストコ亀山倉庫店(仮称)」を出店することを同月28日に正式発表した。
2024年8月頃を目処に滋賀県東近江市の八日市インターチェンジ(名神高速道路)近くの農地に「コストコ東近江倉庫店」を出店する方向で調整していることが2022年2月に同市から発表された。
コストコホールセールジャパンは2024年4月22日、滋賀県東近江市に「コストコ東近江倉庫店」を8月にオープンすることを正式に発表した。
この他、兵庫県たつの市は大手ゼネコン系列の竹中土木と組んで、龍野インターチェンジ(山陽自動車道)近くの農地に誘致を目指す計画を2023年2月に明らかにしている。たつの市は2024年度予算案に龍野インターチェンジ周辺区画整理事業に1億7400万円を計上している。
2024年秋頃を目処に福岡県小郡市の筑後小郡インターチェンジ(大分自動車道)近辺に「コストコ小郡倉庫店」を出店することが2022年3月に発表された。1999年に日本1号店が出店した福岡県内では3店舗目、九州地方では4店舗目となり、未出店地域の長崎県や大分県からの集客も見込んでいる。沖縄県への進出も計画しており、2024年8月頃を目処に南城市のつきしろインターチェンジ(南部東道路、2020年代後半開通予定)周辺に「コストコ沖縄南城倉庫店(仮称)」を出店する予定。
また、長崎県諫早市の諫早インターチェンジ(長崎自動車道)近くの民有地にコストコを誘致する運動を市民団体が展開している。
兵庫県三木市(2014年稼働)、千葉県市川市と市原市(2020年11月稼働)に、自社の物流センターを保有している。
以下はコストコが禁止または許可している事であるが、一般的な登録商標の取り扱いと同じであり、コストコが明示しなくても許可または禁止されている(基本的にビジネス会員(法人会員)であれば、商品の再販は可能であるが、再販に当たってその商標を権利者の許可なしに使う事は出来ないが、商品説明又は出所を示すための説明としては使用できる)。
再販時に『Costco』又は『コストコ』商標として使う事は禁止しているが、商品説明資料に通常の字体で商標を記載することは許されている。なお、「コストコ公認」や「コストコ再販店」など、再販事業者がコストコと提携していると消費者に誤認させる様な表記については禁止している。
コストコ自体が卸売業であるため、ビジネス会員(法人会員)になっていれば、コストコの商品を再販売することも認められている(仕入れは同会員又は同伴者のみである)。消費者にとってはコストコの会員登録が不要であることやコストコが遠方にあって来店することが困難な地域でも手軽に商品を入手できることから、日本では再販事業者にも一定の需要がある。オンラインショッピング事業者のサイトでは常時購入できる。コストコの未出店地帯となっている地域を中心にコストコの商品を再販する専門店が存在するほか、中小のスーパーマーケットや食品問屋でも「コストコフェア」と称して、販売日を決めた上で実店舗販売することが多い(ただし、コストコフェアなどと表示することは前述の規約に反している)。東京都内の一部地域では、店舗価格から一部上乗せする形でコストコの商品を自宅まで届ける買い物代行サービスも存在する。
2011年(平成23年)3月11日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で東京都町田市小山ヶ丘の多摩境倉庫店は震度5の揺れに見舞われ、立体駐車場のスロープが崩落し、乗用車3台が下敷きとなり、2人が死亡、6人が重軽傷を負った。
市内の他の建物に大きな被害が無かったことから、警視庁は設計や施工に問題があったとみて捜査に乗り出し、2013年(平成25年)3月に、構造計算を担当した石川県野々市市の建築事務所社長(一級建築士)、最初に構造計算をした東京都豊島区の設計事務所社長、工事監理担当だった東京都港区の建築設計事務所の社長と設計部長(当時)を、業務上過失致死傷容疑で送検し、同年12月27日に東京地方検察庁立川支部が建築事務所社長(以下「A」と記述)のみを在宅起訴した。残る3人は、嫌疑不十分で不起訴とした。Aは取材に対し「私の構造計算は正確。引き継ぎ前の担当者の計算が間違っていたか、ゼネコンの造り方に問題があったため崩落が起きた」と述べた。地震による建物崩落で刑事責任が問われるのは初。同店は2012年(平成24年)2月24日に営業を再開した。
2016年(平成28年)2月8日、東京地方裁判所立川支部は、Aに禁錮8か月・執行猶予2年の判決を下した。公判で東京地方検察庁は当初「被告の設計ミスによって事故が発生した」との理由で提訴したものの、公判中に設計ミスが存在しないことが判明したため「構造が異なるスロープと店舗建物とのつなぎ目の強度を高める必要があったのに、Aが他の建築士にわかるように伝えなかった」と訴因を変更した。弁護士は「Aはつなぎ目の強度を高める設計をしており、設計図通りに施工していれば崩落しなかった」と主張し無罪を訴えていた。なお、この一審判決ではAを有罪としたものの、不起訴になった前任の設計者の方が被告よりも責任が相当大きいと言及し、被告に長期の禁錮刑を科すと処分の均衡を失すると、判決文の中で異例の指摘を行っている。
同年10月13日の東京高等裁判所判決では「被告は設計内容を書面で総括責任者らに伝えており、説明義務は果たしていた。むしろ総括責任者らの側に設計内容を確認すべき義務があった」として、Aの過失を否定し、逆転無罪となった。東京高等検察庁は10月27日に「適法な上告理由が見いだせなかった」ため、最高裁判所への上告を断念したと発表し、上告期限である翌28日0時に、無罪が確定判決となった。
刑事裁判では、実際に建築を監督した工事監理担当の建築士が不起訴となり「Aが他の建築士に設計変更内容を伝達したか」のみが争点となったため「なぜ設計図通りに施工されずに、欠陥建築が出来上がったのか」は全く未解明のままであり、Aの弁護士は控訴審判決後の会見で「検察は捜査を尽くさずに、起訴すべき相手を間違えて起訴した。訴因変更した段階で捜査をやり直すべきだった」と述べている。
その後、東京地方検察庁は不起訴処分となっていた設計責任者ら3人の建築士に対して、異例となる再捜査を行ったものの、起訴しても公判を維持することが困難と判断し、2017年7月18日に嫌疑不十分で捜査打ち切りを発表した。
2023年(令和5年)10月、東京国税局はコストコが外国人客に対して免税品を販売する際、一度に大量の家電製品を購入するなど、免税要件を満たさない外国人客にも適用した事例があったほか、「非課税取引」と「不課税取引」の一部を混同し、消費税の税額計算をミスしたまま申告した事例があったとして、過少申告加算税を含む約15億円を追徴課税したことを明らかにした。
2024年(令和6年)3月、公正取引委員会は一部の下請け事業者に対して、不当な理由で商品の返品や減額を行っていたとして、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づき、コストコに勧告を行ったことを発表した。コストコは既に減額や返品した分は支払い済みとしている。
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