駅集中管理システム(えきしゅうちゅうかんりシステム)とは、一部の鉄道事業者が導入している、無人駅または駅員が常時対応していない駅(特殊勤務駅)の無人時間帯で、自動券売機、自動改札機、自動精算機などを管理駅で遠隔管理・制御するシステムのことである。駅務自動化システム、無人駅システム、駅遠隔案内システムとも呼ばれる。
北総開発鉄道(現在の北総鉄道)が1979年の開業当初から短期間(正式廃止は都心直通を開始した1991年)、駅集中管理システムの原型のような方法を導入していた(同社記事の「合理化に関する取組みとその後の展開」の節を参照)。その後、2000年代初頭に名古屋鉄道(名鉄)が本格的なシステムを導入するまで、採用歴のある鉄道事業者は同社の他数例のみであった。
交通輸送において自動車への依存度が高い名古屋圏の中で、自社の持つ広範な営業線区には閑散線区も多く、またこれらの多くは無人駅であるため、車掌の改札作業の負担やキセル乗車による減収などの問題を抱えていた。また人口減少などによる運賃収入の減少も見込まれ、一層の省力化も必要となるため、これらに対応すべく、駅集中管理システムの導入が図られることになった。
1990年代後期には自社線沿いに光ファイバーの敷設を完了し、本システムにおける素地となる高速通信網が完成したことによりストアードフェアシステム「SFパノラマカード」(トランパス)や遠隔によるカメラ監視システムも導入されることになり、利用客へのサービス向上など図られた。これらの導入により、列車内における(ミューチケットを除く)車内精算が2012年5月から廃止された。
名鉄ではまず、2000年(平成12年)5月に高架化された高横須賀駅に駅集中管理システムの試行導入を行い、翌2001年(平成13年)より各線へ本格導入を進めた。
最初の導入は三河線(山線)の三河知立駅 - 平戸橋駅間で、同区間はシステムを活用してワンマン運転に切り替えた。その後も小牧線、豊田線など路線単位での導入が進んだが、なかには高架化や駅舎の改築などで先行導入された駅もあった。
このシステムは機器の購入・設置と駅の部分改良が必要で初期投資が高額になるだけでなく、導入後の維持費も今まで以上に高額になるので名鉄は利用者が非常に少なく、かつ市街地に位置しない駅は廃止とする方針をとった。このため、2005年1月29日に名古屋本線の東笠松駅と広見線の学校前駅、2006年12月16日に西尾線の鎌谷駅・三河荻原駅、河和線の椋岡駅・布土駅、尾西線の弥富口駅の計7駅が廃止された。
このシステムは、無人駅に自動券売機(一部の駅では継続manaca定期乗車券の購入もできる)・自動改札機・自動精算機・ICカード積み増し機(ICカード積み増し機を置かない代わりに、自動精算機にICカード積み増し機能を備えている駅もある)が設置されている他に、構内放送装置・モニタリングカメラやインターホンを備え付け、管理駅の駅員が磁気非対応券等の精算や問い合わせを受け付けることができる。手持ちの乗車券が裏が白い非磁気券の場合や何らかの原因で乗車券の磁気が乱れるか抜けてしまった場合はインターホンで管理駅の駅員を呼び、読み取りカメラが付いている載せ台に乗車券を置く(併せて出場時は乗車券を備え付けの乗車券ポストに入れる)と、遠隔操作で改札機が開放される。過去の名鉄の無人駅では、終電時間になると駅の照明がタイマーで消灯するようになっていた。このため事故や災害などで終電が遅れると、真っ暗なホームを歩かざるを得ない状況になっていた。このシステム導入に伴い照明も管理駅で操作できるようになったので、その問題は改善された。システム導入に伴い、駅舎を改築した駅も多いが、そのほとんどは緑色の屋根に白と茶色の濃淡のタイルの壁面である。
また、車掌による車内検札や乗車券の発券作業や無人駅での改札作業が、各駅に設置されたこれらの機器に置き換えられたことで車掌の乗務が不要となり、ワンマン運転が可能となる(小牧線と三河線で実施)他、システム導入線区内の駅員配置駅を無人化、または特殊勤務駅にすることもできる。これまでは1駅に1人ずつ駅員を配置させていたところ、1人で複数の駅を管理する形に切り替えたことで人件費を削った。
導入する自動改札機にストアードフェアシステム「SFパノラマカード」(トランパス)対応の機能を併せ持たせることで、利用客は対応カードを持っていれば乗車券を購入する必要がなくなる。
名鉄ではこのシステムを2007年度までに全線に導入する予定であったが、計画を変更し、蒲郡線の全駅(吉良吉田駅を除く)、広見線の4駅、並びに尾西線の弥富駅には導入しないことを正式に発表した。また、モンキーパークモノレール線は導入されることなく、2008年12月28日付けで路線自体が廃止された。
以下、『名鉄120年:近20年のあゆみ』をもとに2014年3月31日現在の状況を基本に掲載する。以降の変遷は個別注記を参照。
有人駅でも改札口を増設する際にこのシステムを導入する例が時々見受けられる。2023年現在の導入駅と改札口は以下の通り。
2023年1月18日プレス発表分より、「集中旅客サービスシステム」から改称し、「お客様サポートサービス」の呼称を用いている。 従来、同社が簡易委託開始を含め無人化をする際には券売機も撤去し、運賃は着駅または車内で精算する方式をとっていたが、2013年10月1日の武豊線への導入以降は、鳥羽駅を除き有人きっぷうりば閉鎖・無人化にあたっては原則として本サービスを稼働させた上で、ワンマン列車乗車時でも全ての扉から乗降を可能としている。2017年10月1日から東海道本線豊橋駅 - 岡崎駅間、2020年12月1日から東海道本線岡崎駅 - 大府駅間、2021年2月1日から関西本線名古屋駅 - 桑名駅間、2022年3月12日から中央本線大曽根駅(南口)および鶴舞駅(名大病院口)、2023年3月頃から飯田線牛久保駅および武豊線半田駅、2024年2月1日から東海道本線名古屋駅 - 米原駅間、同年3月1日から中央本線勝川駅でも導入されている。なお、導入済み区間内でも一部対象から外れている点が特徴である(後述)。
自動券売機、自動精算機、チャージ機を列車を運行する全ての時間帯で稼働させ、係員が終日または早朝夜間に不在となる場合であっても、出札と精算が終日可能となる。改札外、券売機付近と改札内にインターホンないし「ご案内タッチパネル」が設置されており、案内センターのオペレーターがきっぷの精算や質問対応を行う。このオペレーターは各駅のカメラ監視も担い、必要に応じて案内放送を行う他、場合によっては近隣駅から現地へ係員を派遣させる。
これらは当初から無人駅で、駅舎を備えないまたは既に簡易委託されている。
2024年現在の導入駅と改札口は以下の通り。
その他、関西の私鉄各社にもスルッとKANSAI加入をきっかけにこのようなシステムを導入した会社も多い。
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