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耳嚢


耳嚢


耳嚢(みみぶくろ)は、江戸時代中期から後期にかけての旗本・南町奉行の根岸鎮衛が、佐渡奉行時代(1784-87)に筆を起こし、死の前年の文化11年(1814)まで、約30年にわたって書きためた全10巻の雑話集。公務の暇に書きとめた来訪者や古老の興味深い話を編集したもので、さまざまな怪談奇譚や武士や庶民の逸事などが多数収録されている。耳袋とも表記される。

概要

奇談・雑話の聞書の集録で、話者には姓名または姓を記した者が約120名、ある人の話としたものや、又聞きの話も収められている。その他、著名な高級旗本、同僚、下僚、医師、剣術者の名が見られる。収録された話の内容は、そのほとんどが奇異談・巷説だが、虚偽の噂話や先行する小説の内容を事実談として収めるものもある。文章は文学的表現というには粗く、当時の社会相を知る資料としては虚構が多いが、当時の幅広い階層の人々が享受した巷説を知ることができる作品とされる 。

『耳嚢』の諸本は、二巻本・三巻本・五巻本・六巻本・八巻本などがあるが、五巻本を二分して10冊としたり、貸本屋側で冊数を細分化したりした本が見られる。なかでも、カリフォルニア大学バークレー校所蔵の旧三井文庫本は、現在唯一知られる十巻完備本として貴重とされる 。

著者はこの書の流布することを嫌い、読みたいと望む人のために同家に近しい者などが無断で、急ぎ筆写したために何種類もの刊本が出回りその間に異同があるとも推測されている。この門外不出の方針は、本書を無断で出版した者があったためにさらに強まる。ただしその出版の時期や犯人の正体は明らかではない。

明治にも、林若樹『集古随筆 : 四大奇書』に伊勢貞丈、東蘭洲、山東京伝と並んで収載される。

内容

書かれた主な人物、事物

刊行本

発行年順
  • 『耳嚢』柳田國男、尾崎恆雄(校註)、岩波書店〈岩波文庫〉上下、1939年。
電子化された上巻doi:10.11501/1684161と下巻doi: 10.11501/1684162の公開範囲は、共に国立国会図書館/図書館送信参加館内での公開。
  • 『耳袋』岩波文庫、再版1949年、1966-1967年、NCID BN02575734。
  • 『耳袋』旧岩波版は、のち復刻版(オンデマンド版、一穗社、全1巻)が出版。ISBN 4-86181-025-6
  • 『耳袋』鈴木棠三編注、各・全2巻〈平凡社東洋文庫、第207、208巻〉、初版1972年、NCID BN0313975X、第1巻:ISBN 4582802079、第2巻:ISBN 4582802087。
    • 『耳袋』平凡社〈ワイド版東洋文庫〉、2006年。 ISBN 9784256802076、ISBN 9784256802083。オンデマンド出版
    • 『耳袋』平凡社〈平凡社ライブラリー 340、346〉、2000年。 (第1巻:ISBN 978-4582763409、第2巻:ISBN 978-4582763461)
  • 『耳嚢』長谷川強 校注、岩波文庫(上中下)、初版1991年。 (上巻 ISBN 978-4003026113、中巻 ISBN 978-4003026120、下巻 ISBN 978-4003026137)
    • 原本は『旧三井文庫 10巻本』(カリフォルニア大学バークレー校所蔵)に基づく。
現代語抄訳
  • 『耳袋 原本現代訳』 長谷川政春 訳(教育社歴史新書、1980年)
  • 『耳袋の怪』 志村有弘訳(角川ソフィア文庫、2002年)、ISBN 978-4043490035

注釈

脚注

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関連文献

発行年順

  • 佐藤恭道、戸出一郎、雨宮義弘「「耳嚢」にみられる歯痛の治療法について」『日本歯科医史学会会誌』第27巻第3号、東京学芸大学国語科古典文学研究室、2008年4月、139-142頁、ISSN 02872919、2020年8月8日閲覧 
  • 佐々木雅章「近世随筆『耳嚢』における狸 : 類話を通じて」『学芸古典文学』第6巻、東京学芸大学国語科古典文学研究室、2013年3月、151-160頁、ISSN 18827012、2020年8月8日閲覧 
  • 佐々木雅章「『耳嚢』における猫 : 怪異譚の視点から」『学芸古典文学』第7巻、東京学芸大学国語科古典文学研究室、2014年3月、139-150頁、ISSN 18827012、2020年8月8日閲覧 
  • 東雅夫ほか(編纂)『鉱物』国書刊行会〈書物の王国 6〉、1997年、ISBN 4336040060、NCID BA33421471。収載した作家はアンドレ・ブレトン、渋沢龍彦、宮沢賢治、稲垣足穂、杜光庭、葛洪、戴孚、蒲松齢、柴田宵曲、田中貢太郎、寺山修司、H・G・ウェルズ、ジョルジュ・サンドほか。
  • 人文社編集部(編)、根岸鎮衛『耳嚢で訪ねるもち歩き裏江戸東京散歩』、人文社 〈古地図ライブラリー別冊〉、2006年、ISBN 4795912971 、NCID BA76286957。
  • Z会(編)『日本の名作「こわい話」傑作集』、集英社〈集英社みらい文庫 あ-4-1〉、2012年、ISBN 9784083211119、NCID BB11884848。収載した作家は芥川龍之介、ラフカディオ・ハーン、上田秋成、小川未明、中島敦、岡本綺堂、根岸鎮衛、夏目漱石、内田百間、平尾リョウ。
  • 京極夏彦、根岸鎮衛、宮部みゆき『旧談』、KADOKAWA 〈角川文庫19551, き26-64〉、2016年、ISBN 9784041035511、NCID BB20921650。
  • 東雅夫、松川碧泉、伊東潮花、門賀美央子『あやかしの深川 : 受け継がれる怪異な土地の物語』、猿江商會、2016年、ISBN 9784908260056、NCID BB21991414。文学散歩のガイド。谷崎潤一郎、日影丈吉、宮部みゆき、泉鏡花、永井荷風、種村季弘、今尾哲也、三遊亭円朝、根岸鎮衛などの作品に取材した。

関連項目

  • 新耳袋 - 現代怪談集
  • 風野真知雄 - 耳嚢を題材とした時代小説『耳袋秘帖』シリーズを執筆。

外部リンク

  • 現代語訳のサイト 1 2

Text submitted to CC-BY-SA license. Source: 耳嚢 by Wikipedia (Historical)