議院運営委員会(ぎいんうんえいいいんかい)は、日本の国会法に規定された常任委員会のひとつであり、衆議院、参議院それぞれに設置される。略称は議運(ぎうん)。
国会における枢要な委員会であり、法案の審議を各委員会に振り分けるいわば国会のコントロールルームの役割を果たしている。その重要性に鑑み、議院運営委員長は概ね閣僚クラスの人材を充てる慣行になっている。
委員は、各会派の所属議員数の比率により、選任される。委員会理事や委員には各党の国会対策委員会の幹部(副委員長・委員)が多く含まれる(ただし参議院では10人未満の院内会派には割振りがされない)。
議院規則上の所管事項は次の通り(衆議院規則第92条、参議院規則第74条)。
このほか、議員の逮捕許諾請求の審査、本会議・委員会のテレビ放送・インターネット中継、議員にかかわる庶務(議員会館・議員宿舎の部屋割り)などについても所掌する。
慣例として国会開会中の議員の外遊には本委員会で許可、ないしは理事会の了承を得ることになっているため、行き先を秘匿した電撃訪問は基本的には出来ない。2023年(令和5年)の第211通常国会会期中に第101代内閣総理大臣岸田文雄がウクライナを電撃訪問したが、岸田が総裁を務める自由民主党は、「ガーシーこと東谷義和を除名した理由と整合しない」という野党の指摘を受け、「内閣総理大臣および国務大臣に限り、国会および本委員会に事前に報告ができない場合は、事後に衆参両院の本会議で報告のための発言とそれに対する代表質問を行うことで許される」という新たな見解を示し、今後は閣僚限定という条件付きながら外国電撃訪問を認めていく方針に転換した。
また、閣僚以外の国会議員が本委員会の許可を得ずに外遊や外国への滞在を強行した場合は、懲罰の対象になる。過去にはアントニオ猪木が北朝鮮への訪問強行を理由に登院停止の懲罰を受けた他、2023年には東谷が当選後1度も召集に応じずアラブ首長国連邦に滞在し続けたとして参議院から除名されるにまで至っている。
2008年(平成20年)3月からは、国会同意人事の中で特に重要な人事案件について、候補者から直接所信を聴取することになったが、これについても所掌する。
また、衆議院議院運営委員会は憲政記念館の運営についても所掌する。
会議は議長の諮問によって本委員会へ付託された法律案の審議を行う場合以外は原則として議長応接室で開催され、委員のほか、議長、副議長、事務総長が陪席する(議長と副議長は別席が設けられている)。また、委員会において意見聴取のために招請した議員や委員会において発言のため特に出席が認められた議員も出席する(ただし、これらの者が発言するには委員長許可が必要)。
慣例では議院運営委員会において議事日程をとりまとめ、それに従って議長は議事運営を行う。また議院運営委員会における審議は他の委員会同様、委員同士の問答はほとんど行われず、各会派の代表が自会派の主張を述べた後に採決が行われるという流れが通例である。議事日程作成についての各会派間の実質的な交渉は理事会や国会対策委員長会談などにおいて行われ、議院運営委員会での審議はその結果を追認する形となる。ただし、本会議中に予めとりきめた流れと異なる事態が発生した場合は、議運理事が議場内で寄り集まって協議し、その結論にしたがって議長が議事運営を行う。
衆議院議員総選挙後は衆議院の議運がまだ構成されておらず、正副議長も欠けているため、衆議院事務総長が各会派の代表を集めて各派協議会を開き、通常議運が取り扱う事項について協議する。議長選出後にまだ議運が構成されていない場合は、議長が各派協議会を招集し、通常議運が取り扱う事項について諮問する。
55年体制時、衆院議院運営委員長は退任後、大半が次回組閣時に入閣している。委員長が問題なく1年務めた場合、退任時に与野党問わず理事全員の連名で入閣の推薦状を作成し総理大臣に提出する慣例が存在した。今日では閣僚経験者が就任するのが一般的であり、予算委員長と並んで概ね閣僚級の重要ポストとみなされている。
議院運営委員会の審議は通常、テレビ・ラジオ・インターネット等による国会中継の対象外であるが、議長の諮問に関する事項で特に重要な議案や、国会同意人事のうち日本銀行正副総裁候補者の所信を聴取する場合など、特例として中継が入ることがある。
2017年(平成29年)6月1日に行われた、上皇明仁の退位特例法案を審議するための衆議院議院運営委員会は、NHK G・R1で全国放送され、現在も衆議院インターネット中継のサイトでライブラリとして公開されている。
1970年代までは、外交や内政の重大案件のために議院運営委員会で内閣総理大臣に対する質疑が行われることも珍しくなかった。1960年(昭和35年)、内閣総理大臣岸信介が安保闘争デモが激化する中で国会周辺のデモを警察権で規制することの是非について答弁した。1971年(昭和46年)10月には佐藤栄作が日米繊維交渉の経過を報告した。また1975年(昭和50年)10月には三木武夫が建設大臣仮谷忠男の自民党青森県連の会合での「国会答弁のようないいかげんなことは言わない」発言を陳謝したことなど、多くの実例がある。しかしその後は、国政全般に渡る質疑は予算委員会や国家基本政策委員会(党首討論)で扱われるケースが増え、議院運営委員会での同種の質疑は、半世紀近く途絶えた。
先述の三木の事例から45年経過した2020年(令和2年)4月7日、内閣総理大臣安倍晋三が同年3月の新型インフルエンザ等対策特別措置法改正時の附帯決議に明記されていた「緊急事態宣言発令に際しての国会への事前報告」を行うため議院運営委員会での発言を通告した。この通告に野党からも立憲民主党代表枝野幸男、国民民主党代表玉木雄一郎、日本維新の会総務会長東徹、日本共産党書記局長小池晃ら党首・党三役クラスが質疑通告し議場に立った。これに伴いテレビ・ラジオ・ネットでも国会中継が入った。
議院運営委員会の員数は衆議院・参議院共に25人である(衆議院規則第92条・参議院規則第74条)。いずれも委員長1名、理事9名が選出または指名される。
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