おひつじ座(おひつじざ、牡羊座、Aries)は、現代の88星座の1つで黄道十二星座の1つ。2世紀頃にクラウディオス・プトレマイオスが選んだ「トレミーの48星座」の1つ。ヒツジをモチーフとしている。
国際天文学連合 (IAU) によって6個の恒星に固有名が認証されている。
上記以外で、以下の星が知られている。
どれも暗く、望遠鏡でもかすかにしか見えない。
紀元前500年頃に制作されたとされる古代メソポタミアの粘土板文書『ムル・アピン』では、「雇夫」と呼ばれる麦播きの農繁期に雇われる日雇い農夫を指すアステリズムであった。この雇夫は、現在「ペガススの四辺形」と呼ばれているペガスス座α星、β星、γ星、アンドロメダ座α星からなるアステリズムである「野(耕地)」を耕すものとされた。「男」と「羊」を表す言葉の発音が共に「ル (lu)」であったことから、羊と同一視されるようになったとされる。
中国の天文では、おひつじ座の星々は、二十八宿の婁宿と胃宿、昴宿に配されていた。α・β・γの3星は婁宿の星官「婁」を成した。μ・ν・ο・π・σの5星からなる婁宿の星官「左更」は山林を管理する官職を指す。35・39・41の3星からなる胃宿の星官「胃」は穀倉を指すとされる。昴宿に属するδ・ζを含む5つの星は星官「天陰」を成した。同じく昴宿のHD 20644は単独で星官「天河」を成した。
紀元前3世紀頃の学者エラトステネースの著書『カタステリスモイ』や紀元前1世紀の著作家ヒュギーヌスの著書『天文詩』では、ヘーシオドスやペレキュデースが伝える伝承として、ボイオーティア王アタマースの息子プリクソスと娘ヘレの双子の兄妹が、継母イーノーの悪巧みによって生贄にされそうになったときに、大神ゼウスが遣わして二人を乗せて逃げた金の毛皮を持つ雄羊であると伝えている。ヘレは羊が走る途中に手が滑り、現在のダーダネルス海峡に落ちて溺れ死んでしまった。そのため、ギリシアではこの海を「ヘレの海」を意味する「ヘレースポントス (Έλλης πόντος)」と呼んだ。プリクソスは逃亡先のコルキスでこの羊を生贄に捧げ、その金羊毛を当地の王アイエテスに贈った。この羊の皮を手に入れるための冒険がアルゴー号(アルゴ座)の冒険、アルゴナウタイ神話である。
またヒュギーヌスは著書『天文詩』の中で、紀元前5世紀頃のアテネの喜劇作家ヘルミッポスの伝える話として、アフリカに遠征したローマの豊穣神で酒神のリーベルの軍隊が渇きに苦しんでいるときに彼らを水場へ導いた羊の伝承を紹介している。羊は兵を水場に導くと姿を消した。リーベルはこの地にユピテル・アモンを称える神殿を建立し、雄羊の角を持つ神の像を立てた。
日本では、1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳した『洛氏天文学』が刊行された際には「牝牛」と誤訳されていた。のちに「牡羊」という訳が充てられ、1908年(明治41年)4月に創刊された日本天文学会の会誌『天文月報』では同年9月の第6号から「牡羊」という星座名が記された星図が掲載されている。1910年(明治43年)2月に訳語が改訂された際も「牡羊」がそのまま使用された。戦後の1952年(昭和27年)7月、日本天文学会は「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」とした。このときに、Aries の訳名は「おひつじ」と定まり、以降この呼び名が継続して用いられている。
二十八宿の婁宿を「たたらぼし」と訓読みしていた。
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