『魁!!男塾』(さきがけ!! おとこじゅく)は、宮下あきらによる日本の漫画作品。また、それを原作にしたテレビアニメ、実写映画作品。2019年5月時点で単行本の累計発行部数は2700万部を突破している。
行き場の無くなった不良少年たちを全国から集め、過激なスパルタ教育を施す男塾。そこに籍を置く塾生たちの根性や友情、死闘を描く物語。初期は軍国主義テイストのギャグ漫画であったが、途中から信念を掛けての上級生との決闘、ライバル学校との抗争、闇の世界で繰り広げられる格闘トーナメントなどのバトル中心の展開へとシフトして、連載期間6年余り・単行本全34巻という長丁場の人気漫画となった。
登場人物のほとんどが中国拳法やインド・エジプトなどに伝わる様々な武術の達人とされ、物語中期には15人以上におよぶ主要人物に満遍なく見せ場が与えられている。また闘いの舞台には様々な仕掛け、特殊な決闘方法を用いたものが大半であり、各々がトリッキーな秘技を駆使することにより、バリエーション豊かな死闘が繰り広げられる。
作者の宮下は、「人を死なせないことを意識して描いた」と語っており、死んだ(と思われていた)人物が「実は生きていた」と、再登場するパターンが多い。これは自分が生み出したキャラクターをそう簡単に死なせたくないという愛情と、読者に対する配慮からだというが、死亡している設定の登場人物をうっかり原稿に描いてしまい、担当編集者やアシスタントに指摘されたこともあるという。本編中では死亡したままのキャラクターも、後継作品では復活している場合がある。
タイトルの「魁!!」は宮下が気に入っていた文字であり、魁傑から取ったとのこと。
作中、多岐に渡る様々な流派とその奥義が登場するが、空手とボクシングと相撲を除き、全て架空の流派である。中国拳法、もしくはそれに源を発する設定の物が大半を占める。
武器に関しても日本刀・槍・ナイフなどを基本としたものが多く、連載が進行するにいたりスポーツ用品・玩具・日用品に着想を得た武器も登場。また哺乳類・鳥類・ヘビ・魚類・昆虫類といった動物を操る流派・奥義のほか、毒や特殊な薬品を技の一環として利用する者も多い。
なお天挑五輪大武會編においては銃器の使用は反則であるという解説がなされる。
それぞれの技・武器の詳細については「魁!!男塾の登場人物」を参照。
民明書房(みんめいしょぼう)とは、作品中にたびたびその名が登場する、架空の出版社。
1926年(大正15年 - 昭和元年)創業。所在地は東京神田神保町。社名は、中国の武術に関する本を出版した創業者・大河内民明丸(おおこうち みんめいまる、1904年 - )の名に由来する。創業当初は経営不振に陥っていたが、中国拳法を使う老人・神拳寺師範の韓友諒(かん ゆうりょう)と出会い、神拳寺で韓から中国拳法界の通行手形をもらい、中国や周辺各地の格闘技類を取材して武術書「世界の怪拳・奇拳」を刊行、話題を集めて立ち直った。
この民明書房の刊行物を引用するといった体裁で、作中で過去の偉人たちの逸話や登場人物が用いる武術、荒唐無稽な決闘方法、男塾内での常軌を逸した荒行などを解説して、ある種のリアリティを持たせている。宮下によれば昔の忍者漫画で技や武器に科学的な解説がなされていたことに発想を得たアイディアだという。そのほかに「太公望書林」「英学館」「時源出版」「曙蓬莱新聞社」「ミュンヒハウゼン出版」といった他社の出版物が引用されていることもある。
民明書房および上述出版社の解説は全てフィクションであるが、作者が「ウソか本当か微妙な境目がミソ」と語るように、もっともらしいエピソードや用語などが多く、読者層の少年たちを中心に本の内容を信じたり、実際に民明書房の書籍を探し回る人が続出した。作者によると「ゴルフの起源は中国であるという説が支配的」とした民明書房の解説に、「ゴルフの起源はイギリスです」と抗議の電話をかけてくる大人の読者もいたという。また宮下はこれらを基にした技の名前に当て字をする際、漢和辞典を調べて難しい字を使用したことから、別の漢字の部首を組み合わせて表現する「作字」という作業が多く必要になり、写植屋を非常に苦労させたという。
続編の『曉!!男塾 青年よ、大死を抱け』や『天下無双 江田島平八伝』では民明書房創業者の大河内民明丸が登場するなど、あくまで作中の出版社であることが演出されている。また、民明書房主催の漫画賞「民明漫画賞」と称して自らの作品を受賞させている。同作者の別作品『私立極道高校2011』の作中には「新民明書房刊」なる新たな出版形態も登場する。
民明書房風の演出は他の漫画家も用いており、同じ『週刊少年ジャンプ』で連載していた荒木飛呂彦は『ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』の作中に、民明書房が刊行した設定の旅行ガイド「旅行するなら日本のここベスト100」を登場させている。
作中において民明書房刊行の書籍から「引用」された文献は『民明書房大全(ISBN 4-08-859469-X)』として、『魁!!男塾』を刊行する集英社より実際の本にまとまっている。このムックは劇中に登場する設定をまとめたものだけでなく、同書房の生い立ち・関連人物紹介・社歌など、あたかも同書房が実在するかのように構成されている。
各出版社ごとに登場順で表記。
大河内民明丸の親友英之本学を社主とする大阪の小規模な出版社だが、1990年経営不振で倒産。
民明書房で民明丸を補佐した春日井健介が中津川大観の出資で時源出版を創業するも、中津川のわがままに耐えかねて失踪、1996年倒産。
社主は大河内民明丸の親友茂木鮎乃進。当初は自然科学関係の書物を刊行したが、民明丸の影響で中国拳法関係に移行。しかしそれが災いして民明書房の盗作との悪評が立ち、1995年に倒産。
ドイツの出版社で児童書の編集を務めたカール・ハインツ・ミュンヒハウゼンが民明書房に移転した後に独立して創立したが、下記の一冊しか刊行されなかった。ミュンヒハウゼンは、後に帰国して農場主となる。
日本曙蓬莱武術協会の機関誌を出す出版社で、理事長は大河内民明丸の親友盛田慎之助。盛田は作中にて談話をたびたび述べ、民明書房社歌「ああ、我が民明書房」の作曲も手掛けている。
1988年2月25日から同年11月14日まで、フジテレビにて『北斗の拳2』の後番組として放送された。キャッチフレーズは主人公・桃の声で「観ねえ奴は、男じゃねえぜ!!」。全34話。
アニメ化に当たっては、とりわけ原作の特色の一つだった軍国主義的な描写が変更になり、危険な描写も緩和されている。また、アニメ独自の解釈が折り込まれている。大威震八連制覇編で放送は途中打ち切りすることが決定し、第31話にて第2戦途中から最終対決までの経過をダイジェストで進める手法がとられた。また、次回予告は第28話まで桃が日々男を磨いている友人の失敗談を話したり、視聴者からの便りを読みそれに桃たちが答えるという形式となった。のちに『雨上がり決死隊のトーク番組アメトーーク! 魁!!男塾芸人』(2011年8月11日放送)で紹介され、同様の次回予告を剣桃太郎(堀秀行)が担当した。
最終回は大威震八連制覇から1か月後、男塾に戻る桃、富樫、虎丸、Jら一号生が桜吹雪の中を歩きながら入塾以来の一年を振り返る総集編となっている。
上記2曲を収録したCDは、アルファ・ムーンより発売された。また、スタッフクレジットはオープニング・エンディング共にアニメでは珍しい縦書きである。
放送日時は個別に出典が掲示してあるものを除き、1988年11月終了時点、放送系列は放送当時のもの。本作終了後、2019年現在、この枠でアニメが放送されたことはない。
『週刊少年ジャンプ』創刊20周年記念企画として制作された東映・東映動画提携作品。『聖闘士星矢 真紅の少年伝説』と同時上映で1988年7月、東映洋画系にて公開された。
敵キャラクターのデザインは宮下あきらによるもの。
数年に一度アメリカを舞台に繰り広げられる世界格闘技選手権「ビッグ・バトル・オーガスト」に、前回優勝チームの男塾が日本代表として招待された。男塾塾長・江田島平八は三号生ではなくあえて頼りない一号生の中から桃、富樫、J、虎丸、田沢、松尾、秀麻呂、椿山を選出して派遣する。優勝するためには全世界から集まったケンカのプロフェッショナルたちと争いながら六大関門のチェックポイントを突破しなければならず、日本代表・男塾一号生チームは第1関門ハワイ、第2関門ナイアガラ瀑布、第3関門アラスカ・マッキンリー氷河、第4関門ニューヨーク・マンハッタン、第5関門ニューヨーク・モータウンを次々に突破していく。そして第6関門である最終決戦地・ニューヨーク沖監獄島地下3000mで、アメリカチーム「スリーS(スペシャル・シークレット・ソルジャー養成機関)」と4対4の四大死闘を戦うことになる。第一死闘のJ対サー・ロイヤル三世は両者死亡による引き分け、第二死闘の虎丸対ビック・モーガンは虎丸の勝利、第三死闘の富樫対ブロンコ・サンダースは富樫の死亡により敗北となり、第四死闘の桃対B.J.ブルースで桃が激闘の末勝利を収めることにより男塾の優勝が決まった。桃たちが地上に出ると、そこには江田島塾長や死んだはずのJ、富樫が待っており、一同は再会を喜んだ。
KDDIとディー・エル・イーの共同制作によるWEBアニメブランド『スキマノアニメ』の第1弾として配信されるスピンオフアニメ。YouTube・X・TikTokで配信される。
過激なスパルタ教育を施す塾として描かれていた男塾が、令和へと舞台を移し家事、育児、メイクにSNSと、現代の価値観に則った新しい男性像を学ぶ塾に変貌を遂げる。
アニメ放送終了後、アニメ未放送の天挑五輪大武會編がカセットブックによる全2巻のオーディオドラマとして発売されている。ボイスキャストはテレビシリーズと同じ。収録されている戦いは後述のとおり。
2007年7月6日に実写映画化が発表された。ゼアリズエンタープライズによる制作・配給で、2008年1月26日に公開。上映時間は110分。アクション俳優の坂口拓が監督・脚本・主演を兼務。坂口は本作が初監督作品、山田親太朗は本作が映画デビュー作となる。ナレーションは千葉繁が担当。
極小路秀麻呂の視点を中心に物語が展開しており、前半は原作の初期エピソードをアレンジ、再構成し、一号生たちの日常が描かれる。原作にはない塾生の恋愛シーンなども存在。後半は関東豪学連との驚邏大三凶殺に桃太郎らが挑む。
原作での驚邏大四凶殺が驚邏大三凶殺に変更されており、Jおよび雷電は本作に登場しない。製作スタッフによれば、Jのような筋骨隆々で流暢な日本語を話す外国人役者が用意できなかったからだという。
坂口は、「映画のバランスとして、4つの対決アクションを見せるとダレるんですよ。そこで、映画では3人で3つの闘いに絞ったんです」と意図を明かし、出演者については「照英さんに関しては、彼を富樫源次と想定して脚本を書きました。普段から熱い方ですし(笑)。山田君は、本当に沖縄から出てきたばかりで、凄く澄んだ目と野生っぽさがあったんです。そこを活かしたいと思って、台詞も訛りで、何言ってるのかわからなかったんですけど、『お客さんにニュアンスを伝えられればいいよ』ってことで、そのまま活かしました」と語っている。
坂口と伊達臣人役の榊英雄は本作以前にも『VERSUS -ヴァーサス-』など多くの映画で対決シーンを演じている。
原作者の宮下あきらは「期待通り。実写ならではの迫力とリアリズムだった。原作の3倍くらい面白くなっている」と評している。
男塾の塾舎のシーンは栃木県大田原市の旧須賀川小学校(2006年廃校)の木造校舎で撮影された。宝獄院のシーンは静岡県御殿場市の二岡神社で撮影された。
舞台 魁!!男塾というタイトルで2022年10月7日から11日に渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールにて上演。
これ以外にも『ファミコンジャンプ 英雄列伝』、『ファミコンジャンプII 最強の7人』、『ジャンプアルティメットスターズ』、『ジェイスターズ ビクトリーバーサス』に『男塾』のキャラクターが登場する。
以下の作品において、男塾の周辺世界が描かれている。
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