磐越自動車道(ばんえつじどうしゃどう、英語: BAN-ETSU EXPWY)は、福島県いわき市のいわきジャンクション (JCT) から、郡山市を経由して新潟県新潟市江南区の新潟中央インターチェンジ (IC) へ至る高速道路(高速自動車国道)である。略称は磐越道(ばんえつどう)。
高速道路ナンバリングによる路線番号は、「E49」が割り振られている。
全区間を東日本高速道路(NEXCO東日本)が管理・運営している。関越自動車道、仙台東部道路・山形自動車道、釜石自動車道・秋田自動車道とともに、太平洋側と日本海側を結ぶ横断軸の1つで、福島県浜通り・中通り・会津地方と新潟県下越地方を結ぶ。また、高速自動車国道だけでも、常磐自動車道・東北自動車道・北陸自動車道・日本海東北自動車道の4路線と連絡している。路線の大半は国道49号と並行しているほか、阿武隈高地では国道349号や国道288号に並行している。1997年(平成9年)10月1日に全線開通した。
いわきJCTから新潟中央ICまでの直線距離は182.4キロメートル(km)であるが、磐越道の延長距離は212.7 kmと、約30 km迂回している。これは、いわき - 会津若松間で郡山へ迂回している(直線で結ぶと東北道との交点は須賀川市付近である)ため。
2011年(平成23年)6月20日から、東日本大震災の被災者については2012年(平成24年)3月31日まで、復旧・復興の物資等輸送のためのトラック・中型車以上のバスについては2011年(平成23年)8月末まで無料開放された。また、福島第一原発事故の避難者については、上記の措置が終了した後も無料通行を可能とする措置がとられている。
「磐越自動車道」の名称はいわきJCT - 新潟中央IC間の道路名である。また、新潟中央JCT - 新潟中央ICは事実上、北陸自動車道・日本海東北自動車道としても一体的に運用されている(新潟中央ICとJCTが一体化)。法令(国土開発幹線自動車建設法)による路線名としては、全線が東北横断自動車道いわき新潟線である。
IC・SA・PA・一部のトンネル付近に追越車線あり。新津IC付近の追越車線は80 km/h。
売店はすべてのサービスエリア (SA) と五百川パーキングエリア (PA) に設置されている。レストランは磐梯山SA上りと阿賀野川SAにあるほか、磐梯山SA下りと阿武隈高原SAにはフードコートが設置されている。ガソリンスタンドは阿武隈高原SAと磐梯山SAにあり、阿武隈高原SAが深夜営業をしていないほかは24時間営業である。24時間営業の売店は、阿賀野川SA下り線のファミリーマートと五百川PAのミニストップのみである。それ以外のパーキングエリアについてはトイレと自動販売機のみとなっている。
トンネル・橋梁・シェッドの延長は、NEXCO資料に基づく。
※会津若松IC以西でトンネルのある区間は暫定2車線の対面通行であるため、上下線で1本のトンネルとなっている。
磐越道は1997年(平成9年)の全線開通以降も拡幅工事が順次進められ、会津若松IC以東では2008年(平成20年)に4車線化が完成した。一方で会津若松IC以西においては、区間の殆どがICや休憩施設周辺の本線合流部を除き暫定2車線区間であり、このうち事故の多い三川ICから阿賀野川SAにかけての一部区間(約1.5 km)で2013年(平成25年)11月から2017年(平成29年)11月まで4車線化整備が進められたほか、2019年度(平成31年度・令和元年度)からは土砂災害防止のため阿賀野川SAから安田ICにかけての区間(約5.1 km)で4車線化整備が始まったが、全線4車線化の見通しは立っていない。これは、4車線化整備の目安となる交通量が1日1万台とされるなかで、既に整備済みの猪苗代磐梯高原IC - 会津若松ICなど東側区間が1万3千台を数えるのに対し、未整備区間の会津若松より西側区間では最大となる新潟中央IC - 新津IC間ですら8千台余りという交通量の実績(いずれも2010年度)がそのまま反映された形となっている。路線全体で見ても対面通行区間の延長は約95.2 kmと道路全体の約半分にのぼるため、特に路面状況が悪化する冬季期間においては安全面の問題が指摘されている。
磐越道は太平洋と日本海を単独で結ぶ国内唯一の高速道路であり、東日本大震災や2011年の新潟・福島豪雨の際には指定道路として緊急車両や資材運搬車両の往来に活用され、被災地を支える“命の道”として機能したほか、震災以降新潟東港の取り扱いコンテナ量が増えたため磐越道を通行する大型車の数が増えるなど、その重要性も見直されている。
こうした状況を踏まえ福島県と新潟県の沿線の8つの商工会議所は、2012年(平成24年)5月7日に北陸地方整備局、同年5月10日に東北地方整備局に、それぞれ全線4車線化に向けた要望書を連名で提出した。これに対し北陸整備局長は「次の4車線化の候補にはなってくると思われる」「財源の問題、交通量を踏まえ今後の検討課題」と応じ、東北整備局長も「縦軸ばかりでなく、横方面の安定した交通軸は重要」と回答している。
また太田昭宏国土交通相(当時)は2015年(平成27年)9月8日の参議院国土交通委員会にて、常磐道暫定区間の4車線化とともに磐越道の4車線化にも言及し、「交通量は比較的少ないが、大雪で閉ざされる課題もある。優先順位を明確にした上で対策を検討」と述べ、国土交通省として同年10月の高速自動車国道法施行令の改正後の整備計画策定に向けて含みを残している。
その後、2019年(平成31年)には国交省より、全国約1600 kmの有料高速道路の対面通行区間の内、およそその半分にあたる約880kmの4車線化を優先する方針が出され、磐越自動車道の一部がそれに該当した。会津若松ICから安田ICの間約71kmを優先整備区間に選定して、10年から15年で完成を目指す方針が出されたが、安田ICから新潟中央JCTの間約25kmについては、4車線化を優先する区間に含まれなかった。
24時間交通量(台) 道路交通センサス
(出典:「平成22年度道路交通センサス」・「平成27年度全国道路・街路交通情勢調査」(国土交通省ホームページ)より一部データを抜粋して作成)
2002年(平成14年)度 区間別日平均交通量
通常期には渋滞することはほぼないが、ゴールデンウィーク・お盆などの繁盛期になると一部区間で渋滞が発生する。
いわきJCT - 郡山JCTは常磐道と共に東北道の迂回ルートとして機能しており、一部区間で数キロメートル程度の渋滞が発生する場合があったが、4車線化に伴って解消しつつある。また、東北道下りの安達太良SAや福島トンネルを先頭とする渋滞が郡山JCTを過ぎて磐越道下りの郡山東IC付近まで延びてくることもある。
また、会津若松IC以西の対面通行区間でも一部区間で数キロメートル程度の渋滞が発生することがある。
以前は会津若松IC - 磐梯熱海IC、いわきJCT - 郡山JCTの間も対面通行でお盆やゴールデンウィーク、紅葉シーズンなどに激しい渋滞が発生していた。
2008年(平成20年)の岩手・宮城内陸地震ではいわきJCT - いわき三和ICで通行止めとなった。
注釈
出典
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