在日クルド人(ざいにちクルドじん、クルド語: Kurdên Japonyayê)は、日本に滞在するクルド人である。クルド人は多数派を占める民族国家を持たず、中東、南コーカサスのトルコ、シリア、イラン、イラクなどにまたがった地域「クルディスタン」に暮らすことから「国なき最大の民族」とも呼ばれる。そのため国籍だけで在日“クルド人”かを識別することはできない。
クルド人人口が最も多く、また差別や迫害の対象となっているトルコ共和国(トルコ・クルド紛争)から各国に逃れたクルド人は多く、欧米諸国では難民認定される例が多い。日本にも1990年代以降、来日して難民認定申請するクルド人がいる。しかし彼らのうち日本政府によって認められた難民申請は、2022年に裁判で日本政府に勝訴した1件のみである。
トルコと日本の短期滞在ビザ免除の制度があり、在日クルド人の多くはトルコ系だとされる。しかし在日クルド人には、シリアに侵攻したトルコによるクルド人自治区などでの迫害(トルコ軍によるシリア侵攻 (2019年) )などを理由に、トルコ以外の国から逃れて難民申請をしている者もいる。
日本クルド文化協会によると、難民などで構成される在日クルド人の数はおよそ2000人。1990年代にはトルコ政府からの迫害を恐れて来日し、知人などを頼って埼玉県の蕨市や川口市で居住をはじめたトルコ系クルド人は多い。現在この地域には、トルコ国籍のクルド人の難民約1300人が集住している。そのためこの地域をクルド人の居住地域クルディスタンにちなんで「ワラビスタン」の愛称で呼ぶものもいる。
2024年4月13日の産経新聞の記事によると、難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた不法滞在状態の「仮放免者」が、埼玉県川口市内に700人程度いることが出入国在留管理庁のまとめで判明し、その大半はトルコの少数民族クルド人とみられると報じられた。これまでは仮放免者の情報は自治体へ通知されておらず、実態把握が困難だったが、入管難民法の運用が見直されたために実数の把握が進んだ。入管庁によると、仮放免者数は日々変動するが、2024年4月時点では川口市内に約700人おり、大半はトルコ国籍という。また不法滞在状態の仮放免者とは別に、同市内にはトルコ国籍の正規の在留者が約1300人いるとされている。なお、改正法施行後は、難民認定申請中の強制送還停止が原則2回までに制限され、仮放免者の数も減ることが想定されていると報じられている。
埼玉県南部にクルド人が移り住んできた背景として、川口市が鋳物産業が盛えた工業の街であったことが挙げられる。川口市は中堅・中小企業が集積しているため、外国人労働者に寛容だったようである。在日クルド人の中には、日本政府に対して難民認定を申請している者も多いが、後述の理由もあり実際にこれらの申請が認められるのは極めて稀である。川口市周辺では在留資格を取得させるブローカーが活動しており、強引な手法で日本人女性との婚姻を画策する状況も見られる。日本国籍者との婚姻やクルド人経営の法人等を通じて滞在許可を得るケースもあるが、難民申請者や在留特別許可による滞在が大多数を占めている。
なかでも、在留資格をもたず、入国者収容所から仮放免の状態にある者は、就労が禁止され、国民健康保険への加入もできず、また移動も制限もあるなど困難な生活を強いられている。また、収容所内での暴力・侮辱事件などにみられるように、彼らがおかれる劣悪な状況も問題になっている。
在日クルド人はトルコ国籍が大半を占めるが、イラン国籍のクルド人も少なくない。さらにISILの支配によるイラクやシリア情勢の緊迫化などに関連して、イラクまたはシリアの国籍を持つクルド人もみられるようになった。そのような背景から、近年、来日するクルド人は増加し、一説には在日クルド人の総数は埼玉県内だけでも1,300人以上と推定されているが、正確な統計は無い。
日本とトルコの間には相互ビザ免除制度が適用されているために、観光ビザで入国して難民申請を行うケースが多い。2015年(平成27年)のトルコ国籍者の難民申請者数は926人と、全体では3番目に多くなっている。川口市だけでもトルコ国籍者は平成28年には800人を超えており、その大半がクルド人であると推定される。諸外国の中でもとりわけトルコ政府との良好な関係を持つ日本政府は、トルコ国籍保持者をトルコ人と認定しているため、欧米諸国などが行っている、クルド人としての民族認定は行っていない。したがって、日本にクルド民族がどの程度いるのかを把握することは難しい。
また、1990年代に来日した世代の2世も誕生しており、蕨市周辺には日本で生まれ育ったクルド移民2世の若者の姿をよく見られるようになった。
多くの在日クルド人はクルド語とトルコ語を混用して使用し、クルド人男性の大多数は日本語を習得している。日本で生まれ育ったクルド人の子などは3言語を話す。在日クルド人はトルコ国内では制限されているクルド人の文化を自由に表現し、トルコでは政治的な側面から禁止されている"Runi"や"Rohat"という名前を子供に付ける人も多い。また、ネブロスと呼ばれるクルドの新年を祝う祭りなどを県内の公園で盛大に祝うなど、彼らはクルド文化を紹介するイベントを開催し、周辺住民と積極的に交流している。また、クルド人はもともと宗教的な民族ではなく世俗主義的であるため、イスラム主義とは距離を置いている人が多く、祈りをしない人も珍しくない。
山岳地帯に散在するクルド人は、元来地縁的性格の強い部族(アシーラ)をつくる。一族の長アーガーは、儀式・裁判の執行、成員からの罰金、アハティーという税金の徴収、外来者の接待を行い、その地位を長子が相続する。クルド系トルコ人ジャーナリストによる在日クルド人コミュニティ調査によれば、在日クルド人社会ではアーガーは不在である。
在日クルド人の出身地は主にトルコ南東部、特にガジアンテップやカフラマンマラシュ、アデゥヤマン、シャンルウルファなどの都市やその近郊の村である。
イルファン・アクタンによると、2022年時点で80%がマフキャーン族(Mahkânlı, Atma族の支族)と呼ばれる部族で構成されるという。
クルド人は建設業や飲食業で働く人が少なくない。また前述のように、難民申請が不許可となった後も迫害のおそれなどを理由に帰国を拒み「送還忌避者」となった者など、「仮放免」状態の者には就労資格は与えられないが、非正規に就労してしまうものもいる。しかし日本人との婚姻等で永住権を取得するなどして、就労ビザを取得した人の中には起業する人もいる。日本国内にはクルド人が設立した会社が20社以上あるとする者もいる。またそれらの企業に雇用されている日本人もいる。そして、クルド人が日本で定住を始めてから長い年月が経つなかで、幼い時から日本で暮らしていたり、生まれも育ちも日本という在日クルド人も増えている。彼らのなかでも、就労許可が無いために大学等を卒業しても就労できない者が出るという問題も起きている。
在日クルド人が多く居住する埼玉県川口市では、市による日本社会への統合・同化の取り組みとして、児童生徒への日本語指導教員による指導プログラムの導入やスポーツ少年団への加入推進、成人に対してはロータリークラブなどの奉仕団体や商工会議所などの経済団体への加入の検討が進められている。
また、日本クルド文化協会と埼玉県警によって犯罪抑止のための合同パトロールなどの取り組みも実施されている。
クルド人のイラン研究者メヘルダード・イザーディーによれば、クルド人における女性器切除の習慣は非常に古く、イスラーム化以前から神への捧げ物として行われていたとされる。
4-7歳など幼少の時期に年長の女性によって行われることが多い。文化的伝統と宗教上の理由に基づいているため、自らも切除を受けた女性が特にこの風習を支持していることが知られている。
2011年に世界保健機関が行った調査では、イラク北部のクルド人女性の40%以上が女性器切除を受けていた。日本在住のクルド人の多数を占めるトルコ系クルド人においては、女性器切除の習慣については比較的まれとも言われるが、体系的な調査は知られていない。米国内務省は、トルコ国内では難民も含めて、女性器切除・切断(FGM/C)の慣習は存在しないと報告している 。
クルド人が最も多くを占める移民集団となっているノルウェーでは、1995年に女性器切除を禁止する法律が定められた。
2015年6月のトルコ総選挙でクルド人政党の国民民主主義党(HDP)が躍進して以降、クルディスタン労働者党(PKK)を武装集団叛徒だとするトルコ政府がクルド人地域を空爆したことで多数の死者が出るなど、トルコ政府とクルド人との対立は激化した。そのよう情勢のなか、2015年10月25日には、11月1日のトルコ総選挙の在外事前投票を行なっていた、在日トルコ大使館の周辺において、トルコ政府を支持する在日トルコ人と在日クルド人が乱闘となるなど、日本国内においても両者の対立が表面化した。この事件について、在日クルド人団体の日本クルド文化協会は2015年10月28日に会見を開いた。騒動が起こったことを謝罪したうえで、トルコ人たちと対立する意思はないことを表明。また騒動の原因がクルド人とトルコ人双方が支持する政党や組織の旗を掲げたことが原因と報じられていることについてが、クルド側の旗について否定した。
2023年のトルコ総選挙において、在日トルコ国籍者からの最も票を集めたのは、HDPなどが統一名簿に加わった緑の左派党(選挙後に人民平等民主党に改称)で、投票総数の30.99%を占めた。在外投票のなかで緑の左派党(当時)が第一位となったのは日本だけだが、得票率が20%を超えた国はほかに英国、フィンランド、スウェーデン、スイスがあった。
民主人民党は、2023年8月時点でトルコ政府などから「テロ組織」とされるPKKと実質的に一体化しているとして、トルコ最高裁検察より解散を要求されているHDPの分派(事実上の後継組織)である。PKKの賛美を行ったことなどから収監中こHDP元党首、セラハッティン・デミルタシュは、HDPの議会候補者が2023年の総選挙で当時の緑の左派党のリストに加わることを表明した。2023年時点で600席中61席と、トルコ議会では第5党にあたる。
前述の通り、現地の情勢、トルコ政府からの迫害などを理由として、多くのクルド人が各国に難民として移り住んできた。日本の難民認定数は諸外国と比べ著しく少ないが、一貫して“親日”のトルコ政府側に立つ日本政府は、クルド人を難民認定の申請に対し、ほぼその全てを難民だと認めたことがない 。
ただし、日本とトルコには、最大90日間の査証免除協定があるため、欧米に比べ渡航がしやすいために難民認定を目的とした渡日について在日「在日トルコ社会」が心配していると産経新聞が報じた。これに関して、警視庁公安部は、2006年11月から2007年4月にかけて、埼玉県に居住していたトルコ国籍クルド人8人を入管難民法違反容疑で逮捕した。2007年6月27日、公安部の調べでは、8人のうち数人はテロ組織に指定されているクルディスタン労働者党の支援者であると認めており、彼らがテロ活動の支援をしていた可能性があると見ているが、十分な証拠が見つからなかったため、全員の身柄を入管に引き渡した。彼らのうち数人は既に強制退去となっている。
2005年1月、トルコ国籍クルド人で難民申請者だったアフメット・カザンキラン(父親)とラマザン・カザンキラン(長男)は突如、不法入国として収容され、彼らが最高裁判所に退去強制令書取消訴訟の上告中であったにもかかわらず、すぐさまトルコへ強制送還された。1990年代から家族7人で日本に暮らしていた彼らは、高校生の娘ら残りの家族と引き離されることとなり、一家の処遇改善を求めていた弁護団や難民支援協会(JAR)の訴えや6万人の署名も聞き届けらない結果となった。彼ら一家は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民認定した「マンダート難民」であったが、日本側は東京高等裁判所が「迫害はなかった」とする判決を出したことと、イギリスが2人の難民申請を却下したことを根拠として、難民として認定しなかった。2006年1月、家族はニュージーランドで難民認定され、同国に移住した。兵役のためにトルコに留まることを余儀なくされた息子のラマザンも、2007年3月13日もニュージーランドに移住し、家族と再会した。この一家についてはドキュメンタリー映画『バックドロップ・クルディスタン』で描かれている。
カザンキラン一家の父と長男の強制送還から約半年前の2004年7月、一家は、同じく国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民と認められたトルコ国籍クルド人のドーガン一家とともに、UNHCRからの日本政府への積極的な働きかけなどを求めて、UNHCR事務所がある東京・青山の国連大学前で72日間にわたる座り込み抗議活動を行った。しかし彼らの抗議は日本政府からの難民認定には繋がらなかった。 ドーガン一家は1999年に来日し日本政府に難民認定を求めたが、認定されずに強制退去の処分を下され、処分取り消しを求める訴訟を起こしていた。その後2006年にドーガン一家の敗訴が確定。一家は2007年5月にカナダ政府から難民認定を受け、カナダでの生活をはじめた移住した、2007年7月10日にカナダに出国した。
2019年1月、東日本入国管理センター(牛久入管)収容中に職員から暴行を受け、精神疾患を発症したなどとして、在日クルド人のデニズが国を提訴した。デニズは2007年に来日し、日本人女性と結婚していたが、2016年に入管に収容させられた。入管職員による暴行の様子を撮影した動画はネットに公開され、密室だった入管の劣悪な状況が知られるきっかけとなった。この件は2021年のドキュメンタリー映画『牛久』でも取り上げられている。
2019年3月、入管に長期にわたって収容されていた在日クルド人のメメットが極度の体調不良を訴え、家族は救急車を呼ぶことを求めた。駆けつけた救急隊員に対し、入管はメメットの移送を2度に渡り拒否。メメットが病院に搬送されたのは30時間後のことだった。この件は2021年のドキュメンタリー映画『東京クルド』にて扱われている。
2022年8月、日本ではじめてクルド人の難民認定がされた。このトルコ国籍を持つ男性は帰国すれば迫害される恐れがあると来日して行った2回の難民申請を却下されていた。そのため男性は国を相手取って提訴し、札幌高等裁判所は「難民に該当する」として国の難民不認定処分の取消しとの判断を示した。判決受け、札幌出入国在留管理局は男性を難民として認定した。
2015年10月25日、東京都渋谷区のトルコ大使館周辺で在外投票のために訪れたトルコ人とトルコ国籍クルド人の間で断続的な乱闘騒ぎが発生し、警察官2人を含む12人が負傷した(詳細は前記「#トルコ政府との対立」を参照)。
2021年10月13日、19歳のクルド人少年が自動車運転処罰法違反(過失致死)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで埼玉県警に逮捕された。容疑者は、10月8日午後9時21分ごろ、川口市伊刈の県道を、父親が所有する中型トラックで暴走し、道路を横断しようとした男性をはねて、そのまま逃走した。被害者男性は、胸と腹部の損傷が原因で死亡した。県警の捜査によって、事件現場から約200メートル離れた駐車場で、事故を起こしたトラックが発見された。右前部が大きく壊れ、フロントガラスが割れており、周辺の聞き込みや防犯カメラの精査などから、容疑者の少年が判明。容疑者は事故を起こした際、運転免許をもっていなかった。事件後の12日、容疑者の少年は国外逃亡のため、東京出入国在留管理局を訪問しており、県警から交通死亡事故の発生の連絡を受けていた同局が、同日午後1時50分ごろ、県警に通報し逮捕された。
2023年9月16日、川口市付近を廃材などを積み上げて走行するトラックについて、SNSで情報を募ったジャーナリストの石井孝明のもとに多くの情報提供がされていることを、週刊新潮が報じた。記事では、それらトラックについて「市民から『クルドカー』と呼ばれている」などと記述されているが、トラックの写真を石井に提供したいずれの撮影者も「中東系の人が運転していると確認」しただけだったという。また情報提供者のなかには、トラックからの積載物の落下に遭遇して警察に通報した者もいたことも紹介されたが、その証言によれば、駆けつけた警察によって、そのトラックの積載が法令に違反していないことが確認されたという。
2023年6月、川口市議会は、市内で「一部の外国人」と地域住民との間に軋轢が生じているとして、国や県などに「一部外国人による犯罪の取り締まり強化」を求める意見書を可決した。
2023年7月4日、川口市内の路上でクルド人グループから追いかけ回されたクルド人男性が刃物で襲われ、頭部・顔部・首などに全治不詳の重傷を負う事件が発生した。被害者は川口市立医療センターに救急搬送された。犯人グループは現場から逃走したが、そのうち1名が救急搬送で、軽傷の1名が自力で同病院に収容された。そして事件を聞きつけた双方の親族・知人ら約100人が病院周辺へと駆けつける騒ぎとなった。そして病院からの通報を受けた警察によって2人が公務執行妨害で現行犯逮捕される事態となった。騒ぎは4時間ほどで収まった。また、病院側は騒動との関連を認めていないが、約5時間半にわたって病院の救急受け入れは停止していた。この事件や騒動が報じられたことが、その後の保守系メディアによるキャンペーン、電話・メール・SNSなどでのヘイトスピーチを伴う嫌がらせや誹謗中傷、排外主義団体によるデモといった在日クルド人を標的する攻撃のきっかけになったと評されている。
2023年8月、川口市居住でトルコ国籍の14歳のクルド人男子中学生が、脅迫と威力業務妨害の疑いで埼玉県警川口署に逮捕された。被疑者の少年は、2023年7月12日に川口市内の商業施設に、複数人と施設内で大音量で音楽を流したり、たばこを吸うなどの迷惑行為を繰り返したとして、男性警備員から出入り禁止を告げられた。これに憤慨し「外国人を差別するのか」「爆破してやる」と警備員を脅迫し、一度立ち去り、煙幕花火を持って施設に戻り、火を付けた煙幕花火を投げ付けて業務を妨害した。逮捕された少年は、「僕が外国人で店で悪いことをすると自分だけが怒られ差別されたことに腹が立った」と供述し、容疑を認めているという。
2023年9月、川口市は「不法行為を行う外国人への厳格な対処」、「仮放免者が最低限の生活維持ができるように、就労可能とする制度の構築」、「生活維持が困難な仮放免者に対する健康保険その他の行政サービスについて、国からの援助措置を含め、国の責任による適否の判断」を国に求める要望書を提出した。
2023年9月26日、川口市在住の30代クルド人男性が川口警察署を訪れ、月刊誌などでクルド人について発信していたジャーナリストの石井孝明について「石井孝明がクルド人の悪口を言っている」「警察は発言をやめさせろ。さもなければ石井を殺す。2週間後に死体を持って来る」などと話し、その場で脅迫容疑で逮捕された。石井は逮捕の翌日には殺害予告だとして被害届を出したという。しかし勾留請求も認められず、被疑者は2日後には釈放され、10月には不起訴処分となった。石井はSNSや自身のサイトにおいて、この件で警察官から引っ越しをすることも検討して欲しいと言われたことに「警察が日本国民である私の安全を守らず、外国人犯罪者を野放しにし、私に責任を押し付けるのはおかしい」との不満を述べたほか、大紀元などでもこの事件について語っている。
2023年10月8日、政治団体「日本第一党」によってJR川口駅周辺での「反移民デモ」が企画された。日本第一党は同年8月のチラシにおいても「(川口市への)クルド人流入」問題視していた。しかし当日、デモ参加者の40人を大きく上回ってデモ開催に抗議する市民が集まったこともあり、デモは中止となった。このデモは日本第一党は同月22日、改めてJR川口駅周辺及びJR蕨駅周辺で「反移民デモ」や街宣活動を行なった。
2024年1月、クルドの新年を祝う春祭り「ネウロズ」を前年と同様に秋ヶ瀬公園(さいたま市)で開催しようと考えてた主催者側が、公園を管理する県公園緑地協会に対して開催の打診。したところ、公園側は「貸し出しを懸念する電話やメールが来ている。(祭りに反対する人たちが来てトラブルになった場合に)利用者や事務所員の安全を担保できない」として、公園使用を認めない旨を通知した。しかし公園側は、その根拠となる規定などを示さなかった。また同公園ではその前年も含め、過去に3回「ネウロズ」が開催されてきたが、そのなかで苦情などは出ていなかった。しかし、前述の医療センター周辺での騒動についての報道後から、「懸念する電話やメール」が県や公園管理事務所に寄せられるようになっていた。その後、主催側と後援側による協議が続けられるなかで公園側の説明や対応は二転三転し、最終的に公園側は「当初の対応はよく調べずに行った」と釈明・謝罪して開催を認めた。開催に反対して神奈川県などから駆けつけた数人が旭日旗を掲げたり、拡声器でヘイトスピーチをしたものの混乱はおこらなかった。また両者の協議について報じられると、県公園緑地協会に対して、ときには1日に10件以上もの「テロリストに加担するのか」といった電話が押し寄せる事態となった。そんななか産経新聞は、ネウロズで使用される楽曲の歌詞がテロ行為を賛美しているものであるという指摘、また、テロ組織と報じられているPKK(クルディスタン労働者党)の旗が掲げられていた指摘がある、などと報じた。
2024年2月3日、デイリー新潮は、在日クルド人による執拗なナンパが問題になっているとして、「駅周辺のコンビニ前や自転車置き場、ショッピングモール前で女性を待ち構えて声をかける、強引に連れ去ろうとする行為」が発生していると羅列したうえで、住民の50代女性の「 突然、車のドアが開いて『どこ行くの? 乗せてくよ』と声をかけられて。 」という証言を「無理やり車に連れ込まれそうになった」と紹介した。また同記事は、別の住民の女性から類似の被害の話を聞いたいう松浦市議の「蕨駅前の自転車置き場で毎日のようにしつこく声をかけられ、被害女性は引っ越した」との発言を紹介した。また同じ記事のなかでは、在日クルド人の自動車運転の非常識さ、危険さが問題視されており「車間距離を過剰に詰めてきたり、割り込みをしてきたり、午前3~4時に爆走したり」(松浦洋之市議)SNSで危険運転を自慢する若者もおり、映像ではハンドル脇には缶チューハイ、メーターは時速約150㎞であったことも報じられた。記事は続けて、事故に遭遇した住民の体験談は珍しいものではないとして「私の車が盗まれ街路樹に激突して全損した状態で見つかったんです。自分で調べてクルド人が犯人だと目星をつけました。その後、彼らが住む集合住宅を発見。警察に通報し逮捕に至りました。が、彼らには支払い能力がなく、結局、自腹を切って直しました」「2年前、同級生の家にクルド人の車が突っ込んできて。その後すぐ、クルド人が15人ほどすごい勢いで集まってきたんです。彼ら、声がとても大きくて、『むしろ悪いのはそっちだ』と意味不明の主張をしていました」などの証言を紹介した。
2024年2月18日、「日本第一党」元幹部が主宰する団体による在日クルド人による違法行為、迷惑行為に対する反対デモがJR蕨駅周辺で行われた。主催団体は、それまでにも東京、神奈川の街頭で排外主義的な主張をするデモや街宣活動を行なっており、この日のデモにおいても「根絶せよ!!クルド犯罪と偽装難民」などと書かれたプラカードを掲げてクルド人らの店舗前を通ったり、「クルド人は日本から出ていけ」などの発言が行われたため、「排外主義的な主張を繰り返すデモ」として報じられた。現場にはデモ開催に反対・抗議する人々が、デモ参加者(10人未満)を大きく上回って集まった。SNS上では、それら抗議側の一人が「日本人死ね」と言っているように聞こえるとの指摘とともに、デモ現場を撮影した一つの動画が拡散された。翌19日、日本クルド文化協会は、拡散された動画に写っているデモ隊への発言は「日本人死ね」ではなく、「病院へ行け、病院へ行け、レイシストは精神科へ行け」であったと説明した。同月25日には同協会事務局長のワッカス・チョーラクが会見を行い、自身が動画に写っていた発言者であり、「病院に行け」と発言したものであって「日本人死ね」との発言は「一切していない。(発信者の)空耳だ」と説明したうえで、その発言について謝罪した。また会見翌日、同協会は「いかなる理由があるとも『病院に行け』との発言も事務局長の立場にあり、かつまた、大学で教鞭をとるものの発言としては不適切であり、日本の皆様に不快な思いをさせたことに対し深くお詫び申し上げます」との謝罪声明をネット上に公開した。また、前年7月の川口市立医療センターでの騒動についても「病院の皆様、近隣の皆様、警察の皆様にご迷惑をおかけし、大変不愉快な思いをさせてしまいました」と改めて謝罪し、「クルド民族の問題ではなく、全て埼玉在住のクルド人の不徳の致すところであり、日本の皆様、特に地域の皆様に、大変御迷惑をおかけしましたこと、協会メンバー、役員一同、深くお詫び申し上げます」と発信した。
2024年3月7日、 女子中学生に性的暴行をしたとして、トルコ国籍の20歳の男性が、不同意性交等の容疑で埼玉県警川口署に逮捕された。被疑者は「日本人女性と遊んだが暴行はしていません」と容疑を否認していると報じられた。翌日、産経新聞は被疑者の男がトルコ生まれ日本育ちの在日クルド人で、事実上の「移民2世」であり、難民認定申請中で仮放免中だったことを報じた。 同年4月5日、この事件の続報が報じられ、3月7日に逮捕されたのは、さいたま市に住むトルコ国籍の20歳、解体工であるとされた。容疑者は都内の女子中学生とSNSで知り合い、2024年1月13日に被害者を含めた複数人でドライブし、二人きりになった後、川口市内のコンビニの駐車場に停車し、車内で犯行に及んだと報じられた。川口市議の奥富精一はこれらの事件に触れ「不安に思う市民が増えていると感じます」「これまでも一部のクルド人が改造車で危険運転や違法駐車をしたり、あるいはけんかをしたりという事例が見られてきました」「そこにきて今回の事件ですから、市民の不安がますます増したとしても不思議ではありません」「今回の事件もそうですが、2世の中には学校に行かず、いわゆる“グレて”しまうケースも少なくない。この問題を指摘するとすぐ差別と言われますが、まずは実態を正しく直視することが重要だと思います」と述べた。
2024年3月9日、産経ニュースが、在日クルド人問題について読者の声をメールで募集したところ、多数の意見が寄せられたと報じられた。全体の約4割が埼玉県民からで、うち約7割が川口市民であり「政府も自治体も何もしてくれない」「このまま川口で暮らしていけるか不安」とクルド人とみられる集団の行為を具体的事例を上げて批判する意見が多かった。川口市の60代女性は道路にあふれるゴミの問題や公園の使い方、夜のコンビニでの体験などを述べ、警察に連絡しても特に改善はなく「パトロールもしてくれない」とし、治安への不安と改善を訴えた。同市内の40歳男性は、クルド人とみられる若者グループによる一方通行での改造車の逆走などの多数の目撃例を述べ、「彼らは『一部のクルド人』だと言いますが、もはや全体の問題と考えてもおかしくない。一刻も早く、安心して暮らせる社会になることを願う」と述べた。同市内の55歳男性は、「もともと外国人の多い川口は、日本のどこの住民よりも外国人に慣れている」とした上で、「ただ、クルド人とほかの外国人が違うと思うのは、彼らが警察を何とも思っていない点です。法律も関係ない、警察も怖くない、集団で行動するクルド人をこのままにしておけば、この街は無法地帯になります。誰か助けてください」「まじめに仕事をしているクルド人もたくさんいるでしょう。日本人がやらない仕事をしてもらって、助かっている部分もあるでしょう。ですが、法律を守らないクルド人は日本から即刻出ていってもらいたい。これはヘイトでも差別でもなく、日本人として当たり前の感情だし、当たり前の前提だと思います」と述べた。
2024年3月28日、大野元裕埼玉県知事は定例記者会見で「クルド人に限らず、ヘイトスピーチというのは、地域社会から、徹底して排除されなければならない」と述べ、また県南地域の治安については「良くない」というのは誤解だと述べた。
在日クルド人と地元住民等のトラブル問題などに対して、日本に滞在して10年近い在日トルコ人男性は、産経新聞の取材に答えて一部のクルド人の行動で、日本・トルコ両国の関係が悪化することを非常に懸念しているとし「一部のクルド人のために多くの善良なクルド人もトルコ人も迷惑している。日本とトルコのよい関係を続けるためにも日本政府は入国管理をより厳しくしてほしい」と訴えた。また、マスコミはトラブルの当事者を「トルコ国籍」としか報じないケースが多いため、在日トルコ社会では「わが国のイメージが悪くなる」という困惑が広がっているという。また難民認定を申請をするクルド人に対して、ビザ免除の観光名目で来日して難民申請を行うが、実際は日本での就労目的であるケースが多いとして「彼らの多くは本当は就労目的だと思う。なぜなら彼らはパスポートも持っているし、来日する航空機代もある。大統領選にも投票できる。国会にはクルド系議員がおり、クルド系のビジネスマンもいる。何より、日本にいる彼らは何か問題を起こすとトルコ大使館へ保護を求める」と指摘している。SNS等で、労働目的での来日の情報交換が頻発していることにも触れ「きちんと就労ビザで来日すべきだと思うが、毎日のように同じような質問が書き込まれていて、うんざりすることもある」「一部のクルド人のためにわれわれ全体が迷惑している。日本政府は入国管理を厳しくしてほしいし、日本のメディアは、『かわいそうなクルド人』という視点だけでなく、『トルコ国籍者』の背景をもっと報道してほしい」と訴えた。
クルド人の一部と住民のトラブルが表面化している問題で、コルクット・ギュンゲン駐日トルコ大使は産経新聞の取材に応じ「治安上の問題を大いに懸念している」と述べた。ギュンゲン大使は、川口市の現状について「治安に関わる事件が起きたことを大いに懸念している。それがごくわずかの人数であっても、わが国民全体のイメージが形成されることを大いに懸念している」、クルド人による日本国内での暴動や暴走行為に対しては「大使館として日本の法令に逆らうような行為は容認しない。常に日本の警察当局と連携し、市や政府関係者、国会議員らとも話をしている」、埼玉県警の治安対策については「大使館としても協力できる部分があれば喜んで協力したいと、警察当局などへ伝えている。日本側もわれわれの立場や姿勢を承知してくれていると思う」、警察への協力の方法については「日本の法令にのっとって、どんな具体的措置を取れるか対話している。情報共有や情勢評価についての対話もあり得るだろう」、大使が川口市の視察の要請を行ったかという質問については「2021年に大使として赴任後、川口、蕨両市を訪問した。両自治体とも連絡を取り合って協力態勢にある。両自治体と接触する中で、常に協力の用意があると伝えている」と答えたことが報じられた。
2024年2月18日、サウジアラビアの英語ニュースメディアであるアラブ・ニュース・ジャパンに、ワッカス・チョーラクの「我々は日本の過激派の攻撃を受けており、支援が必要だ」という内容の発言が掲載された。ワッカス・チョーラクは、アラブニュース・ジャパンのインタビューに対して「昨年のトルコ大統領選挙中、日本の極右グループがオンラインで私たちを攻撃しましたが、これは私たちにとって驚きでした。彼らは誤った保守派、人種差別主義者、あるいはどのように呼べばよいのでしょうか」「私たちはクルド人を支援しなければならず、私たちに対する差別やヘイトスピーチを止めなければなりません」「日本政府は国内の労働力不足を理由に、より多くの移民や外国人労働者を受け入れる政策をとっていますが、日本のヘイトグループは移民、外国人、難民に反対しています。それらのグループは私たちを標的にしてこの政府の政策を攻撃しています」「彼らは外国人を礼儀を知らずで、日本の習慣や社会ルールに従わない悪い人として情報を捏造しています。彼らはそのような間違った認識を広めました。多少の問題が発生しており、誤解も産んでいることは否定しませんが、私たちは地元コミュニティと良好な関係を築き、相互に尊重しています。」「ヘイトグループは、政府からの怒りの反応を恐れて、ここにいる中国人、韓国人、ベトナム人の巨大なコミュニティを攻撃する勇気はありません。しかし、私たちのクルド人コミュニティの人口は僅かに2000人前後なので、迫害を行う集団は私たちが格好の標的であると考えています」と語った。
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