セガ・マスターシステム(Sega Master System)は、セガ・エンタープライゼスが発売した、8ビットの家庭用ゲーム機である。日本での型式番号はMK-2000。
日本で発売されたセガ・マークIII(以下、マークIII)の北米市場向け機種として、1986年6月にセガの米国法人セガ・オブ・アメリカから発売された。開発は日本のセガ本社とセガ・オブ・アメリカ共同で行われた。
その後、欧州など世界中で販売展開され、日本でも1987年10月18日に米国版をベースにFM音源や連射機能の内蔵などのマイナーチェンジを行い発売された。
日本と北米ではライバル機である任天堂のファミリーコンピュータおよびNintendo Entertainment Systemの市場を崩せなかった一方で、日本や北米とはTV放送方式が異なるため任天堂の参入が遅れたヨーロッパや、家庭用ゲーム機があまり普及していなかった南米では大きなシェアを獲得し、成功を収めた。
2022年時点でもブラジルでは現地製造が行われており、全世界累計販売台数はおよそ1850万台以上に達する。
米国ではMaster Systemは周辺機器も含めたシステムの名称であり、特に本体だけを指す場合はPower Baseと呼ばれる。
米国版マスターシステムは、マークIIIに以下の改良を加えたものである。
最大の違いはデザインの変更である。米国では光線銃と対応ソフトが本体と同梱されたセット等も発売された。日本では光線銃用ソフトは発売されなかった。ちなみに光線銃の形状は日本でサバイバルゲーム用玩具として発売された『超高速光線銃ジリオン』と同じである。
カートリッジ端子に変更が加えられ、日本のマークIIIソフトが使用出来ない様になった。ただし、カートリッジの各ピンの出力そのものは同じなので、日本のマークIII用ソフトを使用するための非公式のアダプタも存在した。また、逆に米国向けのカートリッジを日本版マスターシステムで使用するためのアダプタもあった。なお内部的にはSG-1000/SC-3000互換モードも持っており、「F-16 Fighting Falcon」のゲーム中画面で使用されている。
発売はセガの米国法人であるセガ・オブ・アメリカ(SOA)によって行われた。
なお、ソフトを挿さずに電源を入れ、警告メッセージ表示中に隠しコマンドを入れると迷路ゲームがプレイ出来る裏技が存在する。日本版には存在しない。
後期バージョンではあらかじめソフトが内蔵されており、ソフトを挿さずに電源を入れると内蔵ソフトが起動するようになっている。
なお欧州版とブラジル版のマスターシステムは、各国のテレビ規格への対応のために本体の動作クロックが若干異なる以外は基本的に米国版と同一である。また、映像信号の走査線数の違いによりアスペクト比が変わり、上下が潰れて若干横に間延びした表示となる。
日本版マスターシステムは、米国版マスターシステムをベースに更に以下の変更を加えた物である。
ソフトを挿さずに電源を入れると、カートリッジ未挿入の警告メッセージと『スペースハリアー』のステージイメージ映像と共に、FM音源のデモも兼ねて同ゲームのメインテーマが奏でられた。ちなみに、ここで流れる曲がマスターシステムでFM音源とPSGを同時に音声出力させている唯一のサウンドであり、通常のゲームカートリッジでは、マークIIIでFM音源ユニットからFM音源を鳴らすとPSGにノイズが入る制約があるため、FM音源とPSGは同時に使用されない。
連射機能が標準搭載されているゲーム機はマスターシステムが初めてである。コントローラに連射機能を持たせるのではなく、本体に連射機能・設定用ボタンを実装しているため、本機種用のコントローラーであれば種類を問わず同様の連射機能が付加される。
マスターシステムに付属しているコントローラの大きさは、ファミコンのコントローラより若干小さめ。操作キーは四角に近い形に、真ん中に窪みの形状が付いているマークIII版ジョイパッドに少し段差をつけた形状になっている。今までの機種のコントローラにはボタンの表示がなかったが、本機種のコントローラには明記されており、二つのボタンの左側は「1,START」、右側は「2」と明記されている。
ハード性能は、マークIIIにFMサウンドユニット・ラピッドファイアユニット・3-Dアダプタを全て装備した状態とほぼ同一である。
マークIIIに装備されていた拡張端子が削除され、SG-1000シリーズ用オプションである外付けキーボード(SK-1100)を必要とするBASIC等のソフトが使用出来なくなった。それ以外の対応ソフトウェアは100%の互換性がある。
内部基板にはマークIIIにあった拡張端子とは別の拡張端子が装備されている。ただし、筐体の端子カバーが封印されており外部からのアクセスは出来ない。公式ではこの拡張端子を使った周辺機は発売されていない。なお、拡張端子としての機能は従来機と同じであり、ケーブルを自作してSK-1100を接続し動作させたユーザーも存在する。
JOYポート7番ピンの扱いは海外版マスターシステムと同じてあり、この機種でも光線銃の使用が可能である(日本国内での光線銃と対応ソフトの市販はされていない)。
韓国版は日本版マスターシステムがベースとなっており、RAPIDボタンや3-Dグラス端子も搭載している。また、カートリッジ端子も日本版と同じ形状である。ただしFM音源は搭載されていない。添付されているコントローラは韓国版オリジナルの物になっている。BIOSは日本版と同じなのでカートリッジ未挿入時の文章は日本語だが、FM音源が無いためBGMはPSG音源部分のみが流れる。
1992年頃、サムスン電子が旧来の「三星」のロゴから国際的な「SAMSUNG」のロゴに変更するのとほぼ同時期に、「GAMBOY」が「ALADDINBOY」に、メガドライブに相当する「SUPER GAMBOY」も「SUPER ALADDINBOY」に、名称がそれぞれ変更された。
中国圏向け仕様のマスターシステムIIでは本体裏に「SEGA ENTERPRISES. LTD.」と「MADE IN JAPAN」の表記がある。外箱の表記は「世嘉 Master System II」である。
中国圏向けマスターシステムIIは、添付されているマニュアルが英語・中国語(簡体字・繁体字)・日本語で書かれている。また「チャンネルの合わせ方」としてNTSCとPALの両モデル用の説明表記がある(マニュアル上ではPALモデルが「香港と台湾用モデル」とされている)。本体には「アレックスキッドのミラクルワールド」が内蔵されている。中国・台湾モデル以外にはACアダプタのコンバージョンプラグが付属される。
また、香港では「世嘉电子智能机」の名称でマスターシステムが販売された。
欧米では1990年に筐体をコンパクトにし、ゲームソフトを1本内蔵、リセットボタンとマイカードスロット及び光線銃用の端子が削除された「Sega Master System II」が発売された。
ブラジルでは上記欧米のモデルが「Sega Master System III」の名称となり、ソニック・ザ・ヘッジホッグを内蔵したモデルやライトフェイザーガンの同梱版が発売された。またカートリッジスロットを廃して、あらかじめ132タイトルのゲームを内蔵した「Master System Evolution」と、コントローラ一体型で30タイトルのゲームを内蔵した「Master System Portátil(Portable)」がブラジルの代理店であるTectoyによって2011年時点でも販売されている。
韓国でもマスターシステムIIに相当する「SAMSUNG GAMBOY II」が発売された。ヨーロッパやブラジルなどで発売されたマスターシステムIIと同じ仕様ながら、カートリッジ端子のみが初代GAMBOYや日本版マスターシステムと同じ形状という、独自の仕様となっている。ハングル版『アレックスキッドのミラクルワールド』を内蔵している。
後継機である16ビットゲーム機「メガドライブ」の発売以降も欧州及びブラジルでは販売台数の多さからソフト開発が継続され、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』や『Streets of Rage 2』『SAGAIA』『Winter Olympic '94』、欧州でのみリリースされたU.S. Gold社の『Out Run Europa』や『ストライダー飛竜 II』、ブラジルでのみリリースされた『Street Fighter II』(Tectoy社)など、メガドライブ版と同じタイトルが発売された。
これらは日本国内では未発売であるが、一部ソフトはほぼ同じ性能であるセガの携帯型ゲーム機「ゲームギア」に移植されるなど、日本市場のゲームギアユーザーにも恩恵が得られた。なお日本未発売のソフトの中にFM音源対応のものがいくつか存在し、変換アダプタを使用して日本国内版マスターシステムで起動すると再生することができる。
韓国では『将軍の息子』(『장군의 아들』、Daou Infosys社)などが発売された。なお韓国では1987年7月までコンピュータプログラムの著作権保護法が設けられていなかったため、Zemina社によって『スーパーマリオブラザーズ』を不正移植した『SUPER BOY』や、コナミの『NEMESIS』『NEMESIS 2』や『イーガー皇帝の逆襲』『KNIGHT MARE』『KNIGHT MARE 2』『F-1 SPIRIT』など、MSX用ソフトをコンバート移植した海賊版も存在する。
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